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満魔に生きる  作者:
プロローグ
1/15

オワリとハジマリ


やっぱり転生モノが好きな自分。

そして、現在連載中の小説のネタが浮かばず、

本気で逃げに入ってしまっている自分。


気晴らしって大事デスネ!!


 普通に生きる分には、問題のない体だった。

 ただ、生まれた時点でちょっとした病気があり、無理ができなかっただけで。

 でも、無理さえしなければ普通の生活を送ることができた。

 ただ、風邪をひいたりしないよう、気を付けてさえいれば。


 一度風邪をひいたりすると、厄介だった。ちょっとした風邪ですら、すぐに肺炎まで発展する確率が高かった。だから、普段は風邪をひかないよう、気を付けていた。もちろん、インフルエンザなども気にかけ、毎年予防接種もしていた。


 手術さえ受けられれば、健康になれる病気だった。だけど、難しいせいか、日本では手術をしてくれる先生がいなかった。だから、アメリカなどで受けられるよう、何度も頼んでいた。

 この病気は、薬では絶対に完治せず、完治させるには手術を受けるしかなかった。


 つい先日、その手術が受けられると連絡があった。後は、都合を合わせて渡米し、手術を受けるだけだった。


 それなのに。なのに、運命は、冷たかった。


 渡米する一週間ほど前、風邪を引いた。だが、それは風邪ではなく、新型インフルエンザだった。弱い体は、新型インフルエンザのウイルスには勝てなかった。

 そして、かかっていたものが新型インフルエンザだと分かった時点で、小さいころから診てくれていた医者は入院を決めた。


 だが、その病院で最期を迎えることとなった。



「以上が、あなたの人生をかなりおおざっぱですが、まとめたものですね。ご自分がもう死んでいることは、納得できましたか?」


 何もない真っ暗な空間。そこでは、一人の青年が紙に書かれた内容を読み、目の前にいた少女へと話しかける。

 真っ暗だというのに、青年と少女の姿だけは確認できるというのが、妙に違和感たっぷりで、神秘的とも言えるかもしれない。

 そんな中で、話しかけられた少女がのろのろと、青年のほうへと顔を向けた。


「自分が死んでいることを納得できたなら、こちらを向いて座ってくれる? まだ分からないなら、そのままでいい。もう一度説明しよう」


 青年がそう告げると、少女はやはりのろのろとではあるが、青年のほうを向いて座りなおす。それを見た青年は、淡く微笑んだ。


「納得してくれたようで何よりだ。―――だが、まずは謝らせてほしい。実は、君は死ぬ予定ではなかったんだ」

「え?」


 そして次の青年の言葉を聞いて、若干うつろだった目ははっきりと開かれ、その双眸に青年の姿をはっきりと映す。


「君は、インフルエンザにはかかる運命ではあったが、死ぬ予定ではなかったんだ。十日ほど入院して、無事に手術を受けて健康になる運命だった」

「それが、どうして―――?」

「我々の失態だよ。愚か者が一人、間違えて君の命のともしびを消してしまったんだ」

「は?」

「すぐに君の命のともしびを確認し、少しでも火種が残っていることを祈っていたのだが、残念だが、すべて消えてしまっていたんだ」


 それはつまり?


「君の死の原因は、我々にあるということだな」

「――――ふざけんな」

「ああ。だから、謝罪と、君に新しい人生を与えたい。君は、生まれ変わってどのような生活がしたい? 叶えられる限り、叶えよう」


 願い? 少女はそういうと、開かれたその目に、ほんの少し、生気が戻る。それを確認した青年は、重ねてにっこりとほほ笑みながら告げる。


「ああ、願いだ。あるのなら、言って? 転生を司る神、リーディルドの名に誓う。叶えられるだけ、叶えよう」

「―――ちょっとした風邪で命の危険に陥らないような体が欲しい」

「後は?」

「後は………、優しい両親と、兄と姉―――できれば一人ずつが欲しい」

「うん、後は?」

「後は……えっと………、魔法とかって、憧れる」

「うん、じゃあ転生先は魔法がある世界だね。後は?」

「後は………、うん、そのくらいかな」

「それだけでいいの!?」


 そして、少女の願いを聞いていた青年、リーディルドは、少女の願いの少なさにびっくりしたらしく、つい、大声を上げていた。彼の知っている者たちは、願いを叶えると言ったら本気でいくつもいくつもいくつも、遠慮なく願いを出してきていたのだ。それも、その願いは老人になるほどに多くなる。なまじ世間を知っているため、こんな世界は嫌だ、こんなのは嫌だ、こんな容姿にはなりたくないなど、欲求が多いのだ。

 それ故に、青年は少女の欲求の少なさに驚いた。そして、本当にそれだけでいいのか、本気で確かめていた。些細なことでもいいから、希望があるなら言ってごらん? と優しく諭した。だが、少女は本当にこれ以上の望みはないらしく首を横に振る。


「そっか。君は謙虚ないい子だね。なら、せめて僕からも贈り物をするよ。君の来世に幸多からんことを」


 そして少女の言葉を聞いた青年は、少女の頭に手を置き、優しく声をかけた。


「さあ、じゃあ次の人生を歩みに行こうか。大丈夫、いろんな神様が、見守ってくれているからね」


 青年が言うと同時に、少女の目の前が真っ暗になる。そして、沈み込むような感覚に襲われた。そんな少女に、青年はあくまでも優しく声をかける。


「怖くないから、落ち着いてね。次にその目に光が灯る時、君は新たな人生を歩んでいる」



 そうして新たな生を受けた少女は、名をエリエイア・シスリア・コーナモント・アイジェリアという少女へと生まれ変わった。


 ガルガンダー国王都、ガルーダにあるアイジェリア公爵家にて、新たな少女の誕生が国へと報告された。

 春の一月、四十一日生まれの子供。アイジェリア公爵家、第三子。


 そして少女は、新たな世界で生きている証明を得た。


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