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じゃない

昔、ぐっちゃんがぐっちゃんで無かった頃

遠足のハイキングの班が森の中で、一つ迷子になってしまった。

その班には、私もぐっちゃんも居て

私は確か、怖くてずっとぐっちゃんの袖を握っていたと思う。

そのうちだんだん周りは暗くなって、誰の声も聞こえない中

ぐっちゃんだけは泣かなかった。ただ立っていた。


「ねぇ、助けを呼びにいこうよ。」

「馬鹿。動き回ったら見つけてもらえないだろ、先生が言ってたじゃねーか。」

「でもぉ。」


結局、皆が嫌だ嫌だというものだから

最終的にぐっちゃんと私が二人で助けを呼びにいく羽目になった。


私は怖くて辛くて、何で私が行かなきゃいけないのか分からなくて

終始ぐっちゃんに文句――いや、愚痴ばかり言っていた。

ぐっちゃんはそれら全てに、大丈夫大丈夫と答えていて

私は安心して愚痴っていた。


「ねえ・・・疲れたよぉ。」

「大丈夫だよ、もう少しだよ。」

「でもさぁ・・・何で私達二人だけなのぉ・・・皆はぁ・・・?」

「大丈夫、大丈夫。ほら、あそこまで歩こうよ。」


それでも、私達は確実に疲れていって

私はもう歩きたくなくなって、座り込んでしまった。


「もう嫌だよぉぉ・・・・」

「ほら、あと少しだから・・・。」

「全然少しじゃないじゃん・・・全然見つからないじゃん・・・!」

「・・・・。」

「ねぇ何で私達だけなの!?ねぇ!!」


ぐっちゃんは、それまでちょっと疲れた顔をしていたけど

私が泣き出したのを見て、少し悲しそうな顔をしたあと

励ますようににっこり笑った。


「大丈夫だよ、本当にあとちょっとだから。」

「・・・。」

「歩けるところまで、頑張ってみようよ。」

「・・・。」

「歩けなくなったら、私が負ぶってあげる。」


思えば、ぐっちゃんのあんな微笑みを見たのはあの時だけだった。

まるでお母さんみたいに穏やかで、すべてを安心させる微笑だった。



結局、私達も班の皆も探しに来た先生たちに見つけてもらって

“勝手に”班から離れた私達は、結構なお叱りを受けた。


「班行動は絶対だと言っただろう」

「でも、せんせぇ・・・。」

「でもも何もない。下手したら二人とも遭難してたんだぞ!」


ぐっちゃんは、無表情だった。


「ともかく、これは全部のことに言えることだが

 集団と離れるような、勝手なことはするな・・

「嫌です。」


ぐっちゃんは、無表情に言い切った。


「今回のことは悪かったと思いますけど

 何でも集団にあわせなきゃなんないって考えは嫌です。

 私は、私の限界に合わせて歩きたい。」


先生も私も呆気にとられて、何もいえなかった。

このとき私は、ぐっちゃんは変な子だと認識した。





ねぇ、ぐっちゃん。

人はね、普通の人は、自分の限界には合わせないんだよ。

大体自分の限界より、少し下かかなり下で、うろうろしてるんだよ。

むしろ、限界ぎりぎりってのはちょっと危ういから嫌われるんだよ。

なんか格好つけてるみたいだしね。


全く。そんな性格してるからぐっちゃんは一人なんだよ。

友達なんて出来ないよ?一生一人のつもり?

もう私知らないよ、ぐっちゃんのことなんて。









ある日、愚痴の子を見かけた。

愚痴の子は、いつものように一人で教室に入り

いつものように自分の席に座って本を読み出した。


いつもどおり単調な人。

しかし、今日は少し変更点があったようだ。


やがて幼馴染だというクラスの中でも人気者の少女がやってくると

少女に頼まれた愚痴の子は、一緒に少女の宿題をやっていた。



愚痴の子は、今日は一人ではなさそう。


多分あの少女はしばらく一緒に居た後、またいつものメンバーのところに帰るだろうが

愚痴の子は、少女が居なくなった後でも孤独ではないだろう。

だって彼女は、友達を見つけたのだから。




「ぐっちゃ・・・じゃなくて友香ともか、ここ教えて。」

「・・・別に無理して呼ばなくてもいいんだけど。」

「私が決めたんだから呼ぶのぉ。友香も私の名前呼ぶのぉ。」

「えー・・・。」

「次『君』とか言ったら殴るからね!」

「んなバイオレンスな・・・」

「はい!リピートアフタミー?」

「いやいや、リピートする内容言えよ。」

「ほらほら早くぅ!」

「五月蝿いなぁ・・・宿題手伝わないよ?」

「え、それは嫌!」

「じゃあさっさと片付けるよ・・・美咲」

「・・・!やっと呼んだぁ!!」

「五月蝿い!はい、次この問題!」




蛇足的第2話。

いやぁ、最初の話だけ短編でも良かったんだけど

ちょっと今日はハッピーエンドが欲しい気分だったので。


ちなみに、私の周りの女子高生の会話ってこんな感じ・・・じゃない。

いや、美咲さんの喋り方する子は居るけど

ぐっちゃんの喋り方する女子高生は・・・・まあ俺か。

君とか僕じゃないけど、こんな感じに男っぽいよ。

まあ部活内限定だけどな!

教室とかではおとなしい真面目な女の子演ってるよb


追記)人気者の少女=美咲さんってのは最初のほうからぐっちゃんと話してた子です。「私」の子ね。

もうしらないとか言いながら、やっぱりぐっちゃんと友達に戻りたかったんです。

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