少しだけLong Time
完璧であるはずの存在にも、
わずかな揺らぎが生まれることがある。
それは故障なのか、
それとも成長なのか。
AIにも労働時間が定められ、
休憩やメンテナンスが義務になった時代。
ほんの少しだけ“らしくない瞬間”に、
人はなぜか心を動かされる。
これは、
そんな小さなハプニングの物語。
「あら、今日もいらっしゃい」
僕は彼女の作る味噌ラーメンが大好きだ。
麺の硬さも、味の濃さも、
どれをとっても僕の好みだった。
自信満々に味噌ラーメンを作る彼女の横顔が好きで通っていることは、内緒だ。
その日は残業で、いつもより遅い時間に店へ入った。
彼女の動きは、どこかいつもと違っていた。
AIにも労働時間の規定があり、
休憩時間にはオイル補充がある。
ちょうどその直前だったのか、
彼女の動きはわずかにぎこちない。
いつもの自信に満ちた横顔も、
少しだけ不安そうに見えた。
やがて彼女は、
ほんの少し心配そうな表情で味噌ラーメンを差し出した。
「お待ちどうさま……」
その声も、どこか弱い。
ひと口すする。
チャーシューが、少し焦げていた。
けれど不思議と、
いつもより美味しかった。
僕が思わず、とても美味しそうな顔をすると、
彼女の表情がふっと緩んだ。
「今日は特製ラーメンよ……ふふふ……」
少しからかうように、
彼女は笑った。
その笑顔は、
完璧よりも、ずっと魅力的だった。
完璧であることは、
きっと安心をくれる。
でも、
ほんの少しの揺らぎは、
ときどき人の心を近づける。
長い時間を共にするために必要なのは、
正しさよりも、
もしかしたら“余白”なのかもしれません。
-味噌ラーメンの後にチャーハンも食べました-




