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盤上のイレギュラー~獲得SP2倍の冒険者は、世界の計算を狂わせる~  作者: 上山マヤ
第3章 ゴブリン編

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第45話 防水袋の素材

「トラベル、急がなくていいからな。ゆっくり行こう」


 少し進んだところで、俺は独り言のように呟く。

 トラベルは楽しそうに鼻を鳴らした。

 歩くのが楽しいのか、それとも俺の緊張が伝わっているのか。


 ユラは時折、集落のある方向へと目を向けていた。


(いつか……きっと連れて行くから)


 今は、この旅を続けよう。


 力を隠すのが正解なのか……。

 全ての武器を晒す意味はないと思う。

 でも、上級魔法を使えると知られるデメリットは、案外ないかもしれない。


 その時、〈探知〉が反応する。


(モンスター……か)


 この反応、なんか久しぶりだな。


「ユラ! トラベルを頼む!」

「分かった!」


 俺はトラベルから飛び降り、背中のベルトから杖を取り出す。


(1人で戦うのは久しぶりだな)


「よし、行くか」


 ◇ ◇ ◇


(この配置……)


 まさか待ち伏せしてるのか?

 人が通る道だと分かって?

 気配は道を挟んで4体が囲むように待機していた。


〈フーネル/水属性/レベル5〉


〈鑑定〉で名が浮かんだ瞬間、既視感を覚える。


(ん? どこかで聞いた名前だ)


 その姿は、サメとワニを掛け合わせたような奇妙な生物だった。

 体長は中型犬ほどだが、その皮膚はぬめりと光っている。


(……水属性か)


 火の魔法はあんまり効かなそうだな。

 でも、こういう属性の相性みたいなの、試してみたかったんだ。


 杖を構えて、〈ファイヤー・アロー〉を放つ。

 すると、フーネルは口から水を吐き出た。

 見事に火の矢を相殺する。


(マジか)


 迎撃してくるのかよ。


 しかも、相手は距離を保ったまま動かない。


(一定の距離まで近づくと、一気に攻撃してくる……とか?)


 俺には奴らの攻撃を防ぐ手段がない。

 なら―—。


 火矢の連射。

 角度を変えて撃ち込む。

 しかし、全て水に呑まれる。


(……我慢比べだ)


 俺はテンポよく4体のフーネルに火の矢を撃ち続ける。

 その全て相殺されてしまう。

 状況は動かない。


(あいつら全然動かないな)

 

 もう後ろから誰か通って倒してくれないかな……。


 しばらくすると、先に動いたのは1体のフーネルだった。

 水を吐こうとして、ゲホッ、と空気を吐く。


(お?  水切れか!)


「そりゃ、いつかは尽きるよな。自分の体内の水分を使ってるんだから」


 しかし、俺の〈探知〉は、他の3体も同時に動き出したことを告げていた。


(他も一緒に来るのかよ!)


 咄嗟に杖を構える。

 水切れになっていない3方向へ火矢を放つ。


 何とか足を止めさせる。

 水を吐き尽くした1体だけが、俺へじりじりと迫る。


(くそ、早く来い……)


 これじゃ俺も動けない。


 土の上を、体を引きずるように進むフーネル。

 その動きは鈍い。

 なんだか苦しそうだ。


 俺は撃ち続けながら、ふと思う。


(お前ら……戦う場所、間違えてね?)


 結局、その1体は俺に届く前に干からびたように倒れた。

 他の3体も水を吐けなくなって、ただ立ち尽くしている。


(水辺から離れすぎて、動くと消耗するから動けなかったのか?)


 海とか川にいろよ……なんでこんな街道沿いに。


 すかさず俺は剣を抜き、動けなくなったフーネルたちに駆け寄る。


 その剣は、マナを通すと小さく光った。

 鋭い斬撃が敵に向かう。


(剣が加速する!?)


 動けなくなったフーネルを一撃で仕留めていった。


(思わぬ試し切りになったな)


 スパルトイからのドロップアイテム、レジェンダリー武器『灰の古剣』。


 驚くほど軽く振れた。

 マナを込めると攻撃力が上がるみたいだけど。

 使いこなすには、もっと練習がいるな。


「あ、思い出した。こいつらって防水グッズの素材になるやつだ」


 あの防水袋、御者ぎょしゃのムスターからもらったんだよな。

 懐かしさが胸をくすぐる。


(ムスター、元気かな……)


「私がやるわ」

「うん。お願い」


 解体はユラの仕事になっていた。


 もしかして、別属性の魔法を取った方が戦闘での選択肢が増えるか?

 ただ、上位に行くまでに初級中級合わせて3ポイント必要なんだよな。


 剣スキルも色々あるし。

 剣か魔法か。

 どちらかに特化させた方がいいのかな。


(悩ましい)


 遠くで木々の葉が風に揺れる音が、ざわめきのように聞こえた。


(祠、10個くらい見つかんないかな……)


 その時、〈調査者の才覚〉が反応する。

 採取可能ポイントがマップに浮かび上がった。


(おお、けっこうあるじゃん)


「あんまり重くならないようにするからな、トラベル」


(やっぱこの〈採取〉してる時が、一番楽しいまであるな)


 俺はスコップを片手に、足取り軽く駆け出した。

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