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8話:●●●●の運命

「……異世界人ですか?」

鋭く細められた視線が、俺の全身に突き刺さる。初期装備ローブは脱ぎ捨てたのに、なんでわかった!?

なんて、まぁ簡単な話。今この街にいる冒険者っぽいやつなんて、9割以上がプレイヤーに決まっているし、


「その貴縁は、どちらで手に入れたのですか」

だが、こっちもバレるのは想定外!?【鑑定】スキルでも使われたのかも。

腰の鎖も、せっかくならかっこいい設定でも作って話したかったのに、いきなり聞かれてはどうにもできない。最初の子供に引き続き、ここでもRPらしさのかけらもない話をするしか、ないのかっ……!!しどろもどろに、今日の朝、ここの露店で買ったものだと白状。うう、本当に情けない。


だが彼はほうっと、詰めていた息を吐いた。なんだろ、都合が良かったのかな。てかこの鎖、説明欄には何も書いてないのに、何かあるのか?


「ソレ、がないと私たちに気がつくことはできないのです」

そんな効果が!貴縁とかいうくらいだし、貴族と接触できるようになるとか、そんな効果があるのかしら。ウィンドウ欄を普通に見るだけでは、出てこなかった情報だ。【鑑定】スキルは、やはり早めに取得条件を満たしたい。


とはいえ、「これが店に流れているなんて……」とため息をつく彼に、ちょっとだけコチラも気まずい。何も知らなかったとはいえ、もしや盗品、だったり?買った側も、責任取れとかだったらどうしよう。冷や汗が背筋を走る。


「……どこかに届けるべきものか?」あえて衛兵とは言わない。収監なんてされたくないので。

「いえ、構いません……買ったのでしょう?あなたが持っていて欲しいのです。それも縁ですから、」

おお、許された……だけど、

だから、と彼は続けた。


「見逃す代わり、ではないですが……私の話を聞いてくれないでしょうか」

砂埃が混じった風が、俺たちの間を駆け抜けた。日も翳り、寒気が首筋に走る。イベント空間に飲み込まれたのか、今度こそ周囲から人が消えていた。


聞くだけなんて、間違いなく嘘だろう。それだけで、何かに巻き込まれるような話をきっと彼はする。目が合う前に想像した話は、きっと大きくズレていないはずだ。


面倒臭いな。クエストを探していたはずなのに、つい思ってしまう。それこそ最初に出会ったあの子のような、軽くて責任も負わなくていいような。そんな楽なのが良かったのに。ここから走って逃げてみる?なんて考えが頭に浮かぶ。ゲームなんだし、無責任に生きるのもまた一つの道だ。


だけど。

目前の彼は、いくつなのだろう。こんな見知らぬ怪しい大人に、何かを求めるしかない彼は。膝上で寝かされてる子供は、俺が見捨てたらどうなるのだろう。


「……分かった」

ゲームだとしても、子供は幸せであってほしい。……つくづくやりたいRPに合わない性格をしてるもんだ、俺も。



―●●クエスト≪●●●●の運命≫が開始しました―




彼は僅かに目を見開き、はくりと小さく口を動かした。子供を撫でていた手のひらは止まり、小さく震える。

「……っ、」

視線が右へ左へゆらゆらと揺れ、どこか途方に暮れたように見上げてくるから。


彼らが座るベンチの前まで足を進め、その前に膝をつく。目と目が合う。だがそれ以上はしない。急かされると苛立つもんだ、こういうのは。


朝まではまだまだ時間もある。ボックスから、母親から貰ったアップルパイも取り出して、二切れ分を切り出す。

「食べるか?」

なんて押し付け。自分用もさらに一つ切って、その場で食べる。うん、美味い。トロトロに煮詰められたりんごの優しい味だけでなく、パイ生地もサクサク。うーん、現実でも食べたくなってきたから、ログアウトしたら注文しとこ。


さて、【鑑定】でもすれば、毒が入ってないことは分かりそうだが。彼は手元のパイを見つめるばかり。まさか、アレルギー。焦ったが、どうやらソレも違うらしい。片手で俺からは顔を隠しながらスカーフを下ろし、そっと彼がパイを口元へ運ぶ。

さくっと、軽い音が鳴った。


「おいしい……」

そうだろう、そうだろう。青年?の小さな声に内心めちゃくちゃ頷く。俺が作ったわけでもなんでもないが、なぜか誇らしい。高級品はきっと食べ慣れてるだろうに、一言呟いてからは無言で食べ進める彼へ勝手に、勝った……!とか思っちゃう俺は庶民。


一切れを食べ切ると、彼はまた膝上の子供を見つめた。ここまで近くで見ても、血色は殆ど感じられず、息をしているようにも──あまり見えない。手の甲で頬を撫でられても、身じろぎ一つすることはなかった。まつ毛長いな、なんてどうでも良いことを考えてしまう。


「この子は……」

そこでようやく、彼がまた口を開いた。気が付けばその灰白色の瞳がじっと俺を見つめて、待っていたのだ。


「母から、死ぬことだけを望まれていました」


思わず、息が詰まる。

「──望まぬ妊娠だったということか」

そのくらいしか、俺の想像力の足りない頭では思い浮かばなかった。というのに、いやと彼は首を振る。

「望んでいましたよ。いつかこうして、殺すためだけにあの人は……弟を産みました」

どうして。言葉も出なかった。目の前の年若い兄を責めても仕方がないことだけは、俺でもわかったから。


「あの人を止められる人は、誰もいません。このうねりを止められる人も、もう誰もいません」

いたら、つぶします。そう彼は吐き捨てる。

「この国で、まもなく動乱が起こります」

メインストーリーのことだろうか。あまり詳しく知らないが、このブリア王国を中心とする物語が展開されるはずだ。こんなダークそうな話だとは、聞いていなかったが。


「罪ある命は当たり前に、罪なき命であっても失われます」

そうでもしないと、もう間に合わないんです。だから母は正しくて、と。言葉に詰まりながら、必死に語られる言葉は平和な世界で生きている俺には、到底分かってあげられるものではない。だが、


「──その哀れな子供も、そのうちの一人だと?」

膝上の幼子を撫でる手が止まる。酷な話だろう、この──ただの子供でしかない彼にとってはどこまでも。

誰かに助けを求めるなんて、できなかったに違いない。周囲はきっと、母親の息がかかった者ばかりで。それこそ、怪しい俺なんかに声をかけるしかなかったほどに、彼は追い詰められている。だから、仕方ないと


「本当は──そうしなきゃ、いけませんでした」

だが、想像していたのとは違う言葉を彼は吐いた。

「仮死状態です。そうするために私は手を挙げて、この子を殺す役に志願しました」

仮死。だからこの幼子からは、殆ど生気を感じないのか。本当に殺すわけでなくとも、己の手で殺したくない弟の命を奪う羽目になった少年の心を思う。


「もう、死んだことになっています。死体も見つかった、葬儀も行われます」

子供の瞳は潤んでいる。だが頬に涙は一滴も垂れない。己は流してはなるまいと、きっと。

「これから罪なき命を手にかけるであろう私が、願っちゃいけないことなのは知っています。だけど、」

風も止み、声変わりの狭間の震える声だけが辺りに響いた。


「この子だけは、生きていて欲しかったんですっ……!!」

とても良い子なんです!母親からお前は何もするなと、抱きしめてすら貰えなくても。使用人から見捨てられた子供だと、蔑まれ続けても。何か、誰かに、ほんの少しでもお役に立ちたいって、いつも……と。言い募り、彼は手袋をつけた手で顔を覆った。


「分かっています。自分の家族だから、例外だなんて──あまりに身勝手で、母より許されない振る舞いをしようとしているって」

私は誰かにとっての、大切な人をきっと奪うのに。己だけは逃れようだなんて。それこそ、己も子供も皆差し出した母の方がどれだけ、と。嘆く彼はしかし、


「命を奪うことは、やめられないのか」

「……やめられません」

面を上げた彼から、今にも消えそうな声が返ってくる。

「最善を選ぶにはあまりに時間がなくて、最善を阻むものはあまりに多いのに、時間だけは殆どないんです……」


だからといって、この蛮行が許されるとは思っていません。私もまともに死ねないでしょう、だなんて。子供にそんな言葉を吐き出させることが憎たらしい。俺の顔は全く動かなくても、ぎしりと、膝上で握りしめた拳にも力が入る。


「私が払わなきゃいけないものは払います……だけど、この子は………………」

「その幼子を失う痛みも、支払うべきだと思っている──か?」

「……っ、」

茶色いスカーフの奥で、子供は息を呑む。何も知らない第三者が言うのもなんだが、この子供の行動は色々と中途半端だ。


本当に何がなんでも逃がしたいなら、もう少し何か方法がある。貴縁がないと接触できない……のは仕方ないのかもしれないが、それにしてもこんな街のはずれなんて。中心の方が人には会える、その分貴縁を待ってる人にだって会えるだろうに。


もしくは貴縁がなくても誰かと接触する方法だって、きっと全くないわけじゃない筈だ。そうして神殿とかに、助けを求めても良かっただろう。

環境もあって他人をやすやすと信用できないのだろうが、それならそれで俺に話してるのだっておかしい。やけっぱちなのだとしても。


「それに仮死状態にして、自分で保護できるわけでもないのに、どうするつもりなんだ」

話を聞いて欲しい、だなんて。本当に誰かにしてほしいことは、まるで違うだろうに。

面倒臭いなんて思ったことなんてすっかり忘れて、光のない瞳へ語りかける。


「私は、お前が支払うべき痛みを、勝手に幼子が支払わされるべきではないと思っている」

さて、くさい程にいこう。

「私は、異世界人のカル・アーデスタだ。お前は私に何を望む」



「………この子に追っ手はいません」

いたとしても、私が責任を持って始末します。震える声で、涙に揺れる瞳で、だが彼は俺を見据えた。小さく息を吸う。

「お願いです、この子を私たちから逃がしてください……!!名前すら、もう名乗れなくなったこの子をどうか……」


頭を下げる。きっと貴族かなにかなのだろう彼にとって、とてもコレは大きなことだ。──だからこそ、そうまでして叶えたい大切な願いは間違えないでほしい。


「──いつか迎えに来い」

「……え、」

灰白色が見開かれる。

「この幼子が、勝手に痛みを支払わされるべきではない。──良い子なんだろう、この子は」

なら、また会いたいと願うんじゃないか?こんなに自分を思ってくれる兄なら。


目頭を押さえ、黙って何度も頷く子供を前に考える。


さて……勢いで言ってしまったが。ド初心者プレイヤーが、どうやって厄ネタを匿おうかな。

あと……


重いよ、このゲームっ!!!!!





SNSより抜粋

このゲームってさ、やっぱアーサー王伝説なんだよね。あの女がマリーンって名前なのって、やっぱそういうことなん??


メイン2章まで進めば分かる


なんなら、サクス帝国ルート分岐の3章進まないと分からない情報もあるぞ。あんな絶望ルートで出す情報じゃない人の心!!

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