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7話:犬も歩けば棒に当たる

軽く軽食を取って再ログイン。数時間前とはいえ、あれだけゲーム内で菓子を食べてたというのに、現実に戻ると腹が空くのだから、人体もゲームもどっちもすごい。



現実ではまだ昼だったのに、ゲーム内ではもう赤い西陽が辺りを照らしていた。まもなく、月が昇るだろう。うーん、これからどうしようか。レベルを1つもあげてない今、夜間に外に出るのは得策じゃないだろうし。


何をして時間を潰そうか。さっきのお勉強のおさらい?悪くはないが、面白いとは言っても流石にちょっと疲れたしなぁ。あの少年のところに押しかけるのは、時間も時間だ。ギルドをちらっと覗いてみたが、今から受けられる町中依頼とかになると、草むしりとかゴミ拾いしかない。初日から、時間潰しのためだけのログアウトをするのは寂しいし。

……犬も歩けば棒に当たる、クエスト捜索にしよう。キツイ系のこの美人が草むしりは、とても似合わない。



EPがそこそこ減っていたので、露店で買った黄桃っぽいジュースを飲みながら適当に町をぶらつく。そろそろ残金がやばくなってきた。次のログボでまた貰えるはずだが、明朝は町の外で魔物狩りでもしたほうがいいのかも。


え?クール男子がジュースを飲むのはイメージ破壊じゃないかって??良いんだ、これは頭を使った糖分補給ってことになるから、俺がそうするから!!



とここで、

「ガーヴェ、アーサーは見つかったか?」

なんて都合よく、路地裏から人の声。お、何かクエスト見つけられたかも。なんて期待してちらっと確認してみると、そこには3つの人影があった。


「……いや、私は残念ながら。」と顔を横に振りながら、ケイはどうだった?と問いかけるプレートを身に纏う大柄な女性。同じように首を振り、「一体、今度はどこに雲隠れしやがったんだアイツは」とため息をつく、髭を蓄えたドワーフらしき小柄な男性。彼らへ、「せっかく指輪を貸してくれたのに、私も見つけられてなくてごめんなさい」と謝る、初期装備のままの女性プレイヤー。


……どうやら、すでに他の人が進めてるクエストだったようだ。話しかければ乱入することもできそうだが──やめておこう。ゲーム内だとしても、いきなり男が初対面の女性に話しかけるのは、きっと怖いだろうから。中身の性別もそうであるかは一旦置いておく。


なんて、自分の口下手には見ないふりをした言い訳。これは歩いて棒に当たったんじゃない、掠ったんだとかなんて。誰に言うわけでもないのに。

周囲からも見咎められないうちに足早に立ち去り……ながらも、少しばかり惜しくてちらりと彼らを振り返る。


ケイ、アーサー、それにガーヴェ──もしや、本当の名はガヴェインではなかろうか。かのアーサー王伝説の。だとしたら、勿体無い選択をした。こんなの絶対に彼らは重要NPC、メインクエストにも大きく関わるものだったのかもしれないのに。


……だが、もう関係ない話だ。彼女が無事にクエストを成功させられることを祈り、今度こそ俺はその場から立ち去った。



その後再び、あてなく砂道を踏み締め散策を続ける。そういえば、この町にいるプレイヤーの数がだいぶ少なくなった。きっともう次の町、ツヴァイに行ったのだろう。次の町へのルートは、攻略をしっかり見ている人なら予めわかっているだろうし、ペースは速いはずだ。俺のように初日から、長時間クエストに2連続で掴まる人も、そう多くないだろうしな。


いいんだ、俺はのんびりプレイだから。

適当に、MP自然回復の範囲内で本に魔力を流す。【本】のスキルは魔法スキルや戦闘で使わないと上がらないと思っていたが、あのエルフ曰くこうやって魔力を流すだけでも、少しずつ経験値はたまるらしい。

なので地味作業も、なんだかんだ悲鳴をあげつつできてしまう俺なのでやってる。ついでに、美形が本を浮かばせているのカッコいいし。


あ、町にいる間はHPとMPは少しずつだが、回復するのだ。原理は回復薬なんかと同じ。各町に神殿があり、その力によってプレイヤーも町中にいる間は世界の一部と誤認。それで徐々に復元していく、ということになっているようだ。


ちなみに街中ではスリやPKの類も、神の加護下のため基本的にはできない。やりたいなら加護から逸脱するスキルを持たないといけないし、代償としてこの継続回復もなくなるのだとか。ん?つまりPKする人は、普通の回復薬とかの効きも悪くなるのだろうか。

なんか、修羅の道だな……流石に何かしらの方法はあるんだろうが、謎に同情してしまった。PKされるのはまっぴらだけど。



と、変なことを考えていたからか。いつの間にやら、はずれの方まで来てしまったいたようだ。人の往来も少ないし、木造の建物も風が吹けばキィと彼方此方から鳴り、全体的になんか頼りなくてボロい。ひょっとして、ここはスラム?困った、【盗み防止】なんてまだ取得してないぞ。


警戒しながら辺りを見回すと、ふと、不自然なものが目に飛び込んできた。


木の腐りかけたベンチに、少し俯きながら座る1人の青年……いや、少年か?首に巻いたスカーフで、鼻までをも覆ってもいるものだから、大人なのか子供なのか分からない。だが腰に刺した短剣を始めとした格好からして、冒険者か何かだろう。ここまでは良い。ゲーム世界だし、ままいるNPCだろう。


だが問題は、彼が膝の上に寝かせている子供だ。

歳の頃はおそらく最初に出会ったあの子と同じか、それより幼い6、7歳前後。手入れのされた艶やかな金髪、ふっくらとした子供らしく可愛らしい顔立ち──までは良いとして。

服の良し悪し、布の良し悪しなんて知るはずもない一般人でも分かる、繊細な刺繍の入った絹地の豪華な服をその子は身に纏っていた。

そして、あまりにも顔色が悪い。

まるで──


すでに、死んでしまっているかのように。


そんな子供と、思い詰めたように膝の上の子を見つめる彼。あまりに異様な、目立つ組み合わせだった。

なのに数少ないながらもいる周囲は、誰もが一切、彼らに視線なんて向けていないのだ。見ないようにしている、興味がないなんてレベルじゃない。彼らがそこにいることに、一切気付いていないかのような様子で。


朝の彼以上に、厄介ごとの匂いが鼻が捻じ曲がる程にぷんぷんする。犬も歩けば棒に当たると言うが、俺が歩いて当たるのはおそらく厄だ。少なくとも今日は絶対。


どっかの貴族の子供か?あの少し関わるだけでも、家督争いや復讐とかに巻き込まれるタイプのやつ。この子らは家での立場が悪くて……とかそんな感じだろ。命狙われているんだろ、どうせ。

──それか、もう。



様々なことに思いを馳せ、その場に立ち止まって見つめてしまったから。きっと視線を感じたのだ。

子供だけを見つめていたはずの彼は、ふと目線を上げる。


光が全くない、その灰白色の瞳と──目が合ってしまった。





別サーバーのゲーム内掲示板より抜粋

869 名前:名無しの異世界人

どの鯖でもやっぱアーサーは名前変わんねぇな。20鯖も同じなんだって?


874 名前:名無しの異世界人

>>869

我らが王だけじゃなくて、王家はみんな同じだ間違えんなカス


875 名前:名無しの異世界人

我らが王万歳!!我らが王万歳!!

戴冠はよ


876 名前:名無しの異世界人

>>875

はえーよホセ。稼働してからまだ半日も経ってねぇんだわ、貴縁シリーズすらほぼ誰も持ってねぇよ

いい感じのペースで投稿していけたらと思っております

本日もよろしくお願いします

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