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4話:●●にとっての運命の日

現実で小休憩、のちに再ログイン。

ゲーム内ではちょうど朝日が昇り始めたころだった。ちょっと早すぎたか?だがまぁ町の外に冒険をしに行く前に色々と物を買い漁りたい。たぶんどっかの店はやってるだろう。


昨日手に入れた軍資金と初めから持っている金で、なんとかいい感じの防具と武器を買いたいところ。実用性より見た目重視。誰かと一緒にやってない、迷惑をかけないソロだからこそできることだ。ある程度の性能は考慮しないといけないが、やっぱりRPにあう服を着たい。攻略ページをそんな真剣に見ていない時点で、バリバリ攻略なんて初めから諦めている。


結果



オシャレな白い刺繡が入った黒いローブに、金色の鎖のチェーンを巻く。さよならボロ服、これからよろしく美麗服!さよならとか言いつつ、簡単に手に入らないものかもしれないので、初期装備は売れていない。ゲーマーあるある。


閑話休題。この新しいローブは土産屋で売っていた『ラスド村の工芸衣装』、腰に巻いているチェーンは露店で買った『見捨てられた貴縁の鎖』というものらしい。どっちも特にステータスが上がるものではないおしゃれ装備のようだったが、見目に惚れてつい、値は張ったが買ってしまった。や、だってこんなキレイなの、現実じゃ場所もとるし着ないしでそう買えない……俺は誰にも迷惑はかけていないっ!!


武器は色々迷った。だって、暗器系も夢がある。こんなクールイケメンが暗器をさっと投げたりするのは、我ながらカッコいい気がする。がしかし、ここは本を選択した。ただの長杖や短杖も迷ったが、やはりあの時も思ったように、待ち時間には本を読むような眼鏡美人になりたい。


で、肝心の本は自分の髪色と全く同じ色の表紙だったという理由で、武器屋じゃなくてチェーンを買った露店で一緒に買った。衝動買いというやつだ。きちんと、武器として使えるものかは確認したので、理性はまだ残っていた方だった。

あ、本には武器として使えるものと使えないものがあるらしい。武器として使えるものは表紙に魔石と呼ばれる石があしらわれ、本自体に魔力を通せるように加工されているものだけなのだとか。俺が買ったこの本もそうだ。青い魔石が輝いている。


本を買うついでに2SPを使って武器スキル【本】も習得しこれでよし、としたかったのだが問題が一つ。

この本──中身が一切読めない。というか題名すら読めない。

これでは本をペラペラしているのに何も読んでないという、この上なく頭の悪いRPになってしまう。このゲーム世界の普通の言語は問題なく読めるのに、これが読めないのはどうして!そこまでの作りこみはしていないのだとしても普通、題名くらいは読めるだろう。


だから本を売ってくれた糸目の露天商にこの言語は何なのかと聞いたら、どっかの国(どこの国なのかはもう忘れた)の古代言語なんだと教えてくれた。どうにも、特殊なスキルをもっている人間にしか読めない代物らしい。

そこでどうにかそのスキルを獲得するか、それか古代言語を自力で習得する方法はないかと聞いたら、しばらく考え込んだ後に兄さんは色々買ってくれたし特別よぉ?と、とある本屋を紹介してもらえた。

どうにも朝にだけ店を開ける変わった本屋なのだが、そこの店主なら知っているだろうとのこと。今から行けばちょうどいいくらいだというので、今後ともご贔屓にとへらりと笑う彼に礼を言って教えてもらった場所に急いだ。




その本屋がある場所は住宅街の奥深いところのようで、迷いそうな細い道を昨日と同様にひたすら行く。のだが……


「……」



俺の目の前には壁に背を預け、地面に座り込む一人の青年……いや、少年か?

深くローブを被っているので、あまり年齢の特定はできない。背格好から男だと思ったが、女かもしれない。いや、今はそんなことどうでもいい。問題は目の前の暫定彼が腹を押さえており、その腹からは血があふれ出ているということだ。臓物が見えないのはゲームだからだろう、本来なら見えていてもおかしくない傷だろうと察するものはある。

確実に厄介ごとである匂いがするんだが、この目の前をまったく反応せずにスルーして行けるほどの根性もない。


──よって妥協策。


俺は、黙って彼の前を通り過ぎる。そして彼?を通り越すちょうどその時に、初期配布で持っていた回復薬(ランクC)を近くに落として、このまま俺は立ち去るのだ。

俺は支給品だった回復薬を落としたことに、間抜けにも気付かないだけ。これで彼がそれを使おうと使わなかろうと、それは知ったことじゃないのだ。

でもHP60%回復できるらしいこの薬、もし高級品だったらちょっと惜しいことしたかもしれないな……






なんて小狡いことを考えていたカルが立ち去って、しばらくして。

地面に座り込んでいた彼は恐る恐る、血のべったり付いた手をのばし、それを確かめる。慎重に観察し、瓶の蓋を開けたあとは匂いを嗅ぎ……覚悟を決めたかのようにごくりと飲み干した。

カルは別に悪意があってソレを落としたわけじゃないから、もちろん効果はてきめん。傷を全て防ぐには足りなかったが、男が動けるようになるには十分だった。


ほうと溜めた息を吐きだし、まるで初めて天啓を受けた聖人のように体を打ち震わせ、そっと空になった瓶を、宝物を扱うかのごとく丁寧に懐にしまい込む。

フードを深くかぶりなおし、


彼はその場を立ち去った。



後に残るは、血の跡だけ。

それもまもなく、消え去った。





有名ゲーム配信者の発言より抜粋

初期配布品の回復薬(ランクC)は、間違っても気軽に使わないで!

このランクの薬が買えるのは、初期国のブリア王国では王都の薬師ギルドだけだから、簡単に手に入るものじゃないんだ。

高級品だから、序盤の金策として売るのは結構オススメだよ。

不定期で更新していきます。

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