表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-1節:ブリア王国編-始まりの町アインツ
23/25

21話:運命変革(レメ・ゲトン)

ソーリャに泊めてもらっている家の一階にて。

まだ誰も降りてきておらず、伽藍堂になった空間でただ一人。俺はカウンター奥の小さな椅子へと腰掛け、小さなランプをぽつりとつける。


時刻は朝の四時。

現実なら迷わず、二度寝を決め込む時間帯である。だが今日は別。というか現実にはそんな時間じゃないし。


開けた窓の外をチラリと見やる。太陽も登らず、辺りはまだまだ真っ暗。とても静かだ。通りを吹き抜ける風の音だけが耳へと届く。殆どの住人はきっとまだ眠っており、人の気配もまるでしない。

"彼"も、まだ現れないようだ。別にその人とは約束したわけじゃないけれど。たぶん来ると思ったんだけどな。


暇に飽かして数日前、エルフの商人から買うだけ買って読めていなかった新聞を取り出した。だって未だ、『廻る知恵嗤う蛇』は読めないもの。なんだ、あの原トワイ文字って。いたる所で文字を読む向きが変わるなんて、誰かに読ませる気があるのかっ!!

なおソーリャが俺に教える合間にスラスラと全て読み終えていたため、反証はすでに成立しない。……頑張ろう。


さて、カウンター上に広げた新聞はぺら紙たった一枚。だから内容もさ程多くはない。メガネをフチを手でそっと押し上げ、中身を覗きこむ。


始まりはこうだ。

『特集 嘘か誠か!? 〜王城の深層より鳴り響く、増税召喚の鐘の音よ〜 』

うん、相変わらずの文面。エルフなのに、どこか蛇のような青年を思い浮かべる。あの細められた目でニコリと笑う様が、容易く想像つくもんだ。胡散臭い。

だがこれでいて、情報はかなり信憑性が高いのだから凄いってもの。アインツの町の新聞、全部を買い漁った俺の言葉だ。間違いない。


『我々は今、世にも恐ろしい強大な「徴税エーテル」の渦の中にいる。


小麦の穂も稔る昨今、私はさる情報筋から恐ろしい話を耳にした。


そう、夢の中としよう。その夢の中で、我ら人民に豪奢な服を着た男共が近寄り、赤い筆が走るのだ。

筆は人頭税、地代、通行税、嗜好税、保護税と、この身を分けてゆくのだという。そして、その「彼ら」はゆったりと一度頷く。


「まだ、こんなにもあるじゃないか」


王城の地下、存在しないはずの地下墓地で男らは笑う。そこでは毎年この時期、深夜の月が頂点を越え沈み始める刻限になると何者かが現れ、不毛の大地には古い紋章が浮かび上がるのだと言う。


紋章が輝くと、赤く引かれた線からインキが垂れ落ち、まるで血のように滲むのだ。そうして文字を形作る。すると彼らは王城すら突き抜かんとするほどの、下卑た笑い声をあげるというのだ。


最近、流出したとされる内部文書にはこう記されているという。

「この一連の流れのキッカケは、第二王妃マリーン様のお怒りである。ご子息たる第八王子メロウ・』


あ、まずい。紙面を咄嗟に手で隠す。

あの子の前の名前は知りたくない。彼はもうヨーリアなのだから。それで良いのだ。


ふと、ランプの火が立ち消える。窓から差し込む僅かな明かりも遮られた。ああ、丁度よかった。

「──お前を待っていたよ」

きっと窓の辺りにいるのであろう"彼"を見上げ、


「そうなんですか?それは、お待たせしてしまってすいません」

いつの間にか窓辺に座り、ふわりと笑う子供を前に──少し俺は固まった。

いつかのように、茶色のスカーフを首に巻いてるのはいい。金糸が風に揺れる。問題なのは、光のなかった灰白色の瞳を覆い隠すように彼がつけた


「……なんだ。今からカーニバルにでも行くのか?」

黒地に金の装飾がされた、派手なカーニバルマスクにあった。浮かれた狂乱的な雰囲気は、あまりに少年に似合わない。口元を覆う代わりに今度は目元ってか?こんなマスクをされてちゃ、確かに顔の印象なんてすっ飛ぶってもの。


お祭りみたいなものですよ、なにせ……と語りながら、彼は窓枠から床へと降り立つ。

「──弟、今はヨーリアと言うのですよね?あの子が、新しい身分を手に入れたんですよ。こんな素晴らしいことがあるでしょうか?」

いいえ、ありませんっ……!と首を振り、己で反語まで語り破顔した少年は──名前を知らぬあの子の兄。

約束したわけでは決してない。だけどきっと彼は今日訪れると、俺は夜半に寝床を抜け出していたのだ。

そうして彼は、現れた。



「本当に、あの子に新しい身分をありがとうございます」

兄が深々と頭を下げるのに、俺はゆるく首を振る。

俺が数日前にやったことだった。


レメの本来の力を誤魔化すための【幻式】は、結論としては上手くいったのだ。写真はただ見たままを映し出し、そこには水晶玉へ手を伸ばすレメの姿が写る。【召喚式】の素質欄にはCの文字。もちろん成り代わった、俺のものである。異世界人は全てのスキルに最低Cの素質を持つから(初期の四種族でないところへ転生すると、実はその限りでもないらしい)上手くいった悪用だ。


だけどその代わり。異世界人の俺が協力する代わり、この秘密を守る代わりに、俺は一つ。あの子の父親にお願いをしたのだ。


兄が、手を覆っていた黒皮の手袋を外す。

顕になった白い肌。それをそうっと月へと翳した。きらりと光るものが中指にある。

遠目から見ても分かるほど、浮かび上がるようにソレは刻まれていた。


「王国の紋章付きの指輪を、一生どうしても外せないなんて……お前たちも大変だな」

「誤魔化すための装飾一つ、スキル一つ許されず……すべて弾かれてしまいますからね。私もいつも苦労しています」

王家の証。それはヨーリアの指にも輝いていた、小さな金の指輪であった。名前はそのまま、ブリア王家の指輪。外すことも何故かできなかったそれは、王家の身分を保証するマジックアイテムであるよう。だが、反面その重みから逃れたいものには大変厳しい。


数日前までのヨーリアには、身分がなかった。強いてあげるなら、俺たちの連れ。だがそれでは何かと生きていくのに大変だ。町の門一つ通るのにも面倒な検査を受け、莫大なお金を支払い──そのうち、指輪もバレてしまうかもしれない。

そもそも、メンタルとしても安定しないだろう。公的にお前は存在しないだなんて。


あの子が冒険者ギルドに登録するための身分なら、ランクE以上が保証人になることで証明できる。恥ずかしながら俺はまだできないが、ウカやソーリャにお願いすればできなくはない。お金も、まぁ払えない金額ではなかった。


だが問題はあの指輪だ。

冒険者ギルドには、古くから続く規則がある。冒険者登録をするときは、素手を晒すというものだ。

ソーリャ曰く、昔は盗賊ギルドなど裏のギルドは登録時に、表と決別する意味を込めて手の甲に刺青を彫る風習があったのだとか。だからキミはそこと関わりがありませんよね?という確認のために素手を晒して登録する方式になったらしい。

現代においては、盗賊ギルドなどでもこの風習は薄れ、形骸化したこの規則のみが、冒険者ギルドに残る。


……やめて??今それが、王家が登録したい時の最大の障害になってる──ってことだ。

指輪を外そうとしたらまず無理。なんかポップアップが浮かんできて、『このアイテムは、外せません。』なんて出てきた。


じゃあ隠す方は?試しに【幻式】を指輪に使おうとすると、ポンと弾かれた。スキルによる誤魔化しも受け付けない、高仕様のもののようである。

因みにヨーリアの姿を見えないようにする方向でスキルを使おうとしても、指輪だけが浮かび上がるように残ったりした。うん、ちょっと面白いけどお手上げ!!

だからこそ


つまり、そういうことである。

「レメの検査に協力する代わり、ヨーリアが手袋をしたまま登録するのを黙認させる。父親にとっても、悪い話ではなかったろうな」

「ええ、今サクス帝国に行くのは大変危険ですから。それと引き換えならそんな黙認いくらでもしたでしょう。──あの少年にとって貴方は、本当に命の恩人……かもしれませんね」

そこまでなのか。どうやら想定していたより、情勢はぐんと悪いらしい。巻き込まれなきゃいいんだけど、ゲームだからそうはいかないかしら。


兄が俺に一歩近づく。椅子に腰掛ける俺を、彼は見下ろしていた。残月が窓から彼を照らし、逆光となって彼の表情を隠した。カーニバルマスクの時点で、そもそもよく分からないけど。

「ああ……でも本当に良かったです。これであの子は、本当に王家から逃れられるでしょう。本当にありがとうございます」

「こちらこそ。──お前だろう?レメとヨーリアの登録時の細工をしたのは」


昨日の夜。いつものように、神殿に行きアルバイトをして。その後レメを送り届けた時、家に帰ってきていた父親が教えてくれたことだ。いつの間にかヨーリアの登録時に、ギルド職員が書く必要がある報告書とやらが書き換えられていたと。父親が細工をしようと試みた時には、既に終わっていたのだと語っていた。


わざわざ普通とは違う場所──適性検査をやるような部屋のことだ──で受けた。しかもわざわざ同じ時間にだなんて、いかにも気になる記載ではなく。父親が通常の受付で、別日に受け付けたかのように。何一つ不自然さを感じられない捏造だったのだと。


「貴方、何者なんですか?」と嫌疑をかけられた俺、可哀想。もちろん俺じゃない。俺は神殿で大人しく、最後のアルバイトをしていたもの。

だが一つ、心当たりがあった。

ある子供の生き死にすら誤魔化してみせた、恐ろしい少年。つまりは──


「ええ、はい。決して後から誰かが見ても、何一つ嫌疑がかからないように書き換えさせて頂きました。レメさんのことも、合わせて少し細工を」

他にも、レメの登録証の写真に微かに写っていた、レメの服の裾も消したのだとか。よくいる町の子供の格好だし、そこまで気にする必要はないかもしれないけれど、可能性は全て潰すということで。おお、写真加工の技術なんてこのゲームにもあるのか。

それにしても本当に助かる。この"誰か"の影を見て、俺は思ったのだ。あの兄はきっと、訪ねてくると。


「……感謝する」

「いいえ、いいえっ……!!本当に、貴方のおかげでっ……私は……」

感極まり、全身を打ち震わせている少年は俺の手をゆっくり取った。顔は分からなくても、でもしっかりと伝わるものがある。

「貴方に、感謝します──」

消えかけた月明かりが子供を照らす。


ー友好NPC●●●●●●・●●●●●・●●●●●●を手に入れましたー


「……名前、」

うん、何一つ名前がわからないがクソ長い。これが王家仕様ってことかもしれぬ。

だが彼から友好に値すると認めてもらえたことは、とても嬉しいことだ。あとは気持ちを裏切らないよう、俺としても頑張る所存。名前も分からぬ相手だとしても、この子の意思に反したくない。名前だって、知る必要もないだろう。なんでもない、と口にして俺は鷹揚に頷く。


それを受け、少年が俺から一歩離れた。

窓枠へと再び腰掛け、きゅっと両手を胸の前で握り、小さく微笑む。今にも消えそうな儚い月の光が、俺たちを照らした。


「またいつか、きっときっと約束通り。弟を迎えに参ります。それまで──あの子をどうぞ、よろしくお願いいたします」

ふわりと、一瞬の風が彼の背後から吹き抜ける。空気中の粒子がちらっと辺りを漂うと。

瞬きの間に、彼の姿は消えていた。

窓辺に浮かれた黒のカーニバルマスクと、


──どうか貴方は私のことを、アルとお呼びください。


名前だけを残して。







日が登り、世界は明るい光に包まれる。

いつも通りの日常の訪れ──に見せかけて、今日はある特別な日であったのだ。


起きてきた三人を階下で出迎え、ソーリャの"元"本屋を跡にした。一人、大家の元へ向かう"元"家主の少年を見送った俺たちは、あの少年の家へと向かう。ヨーリアの歩みに合わせながら狭い路地裏を抜け、奥へ奥へと進み。やがて目的の家が見えてきた。


玄関先には父親と母親、それに大きなリュックサックを背負った、少年の姿。母親は目元を赤く泣き腫らし、子供をぎゅっと抱きしめる。大切な大切な宝物を、ぎゅうと大切に大切に。同じく目元の赤い父親は俺たちに気がつき、45度腰を折って頭を下げている。

彼らの前にわざと少しゆっくりと辿り着き、俺は口を開いた。


「──レメを、旅仲間に迎えにきた」

「はい……どうぞ、この子をお願いします」

深々と、また男は頭を下げたのだった。



というのも簡単だ。

いくらレメの件とヨーリアの件は誤魔化したとはいえ、万が一の可能性がある。いつかのもし。露見する時、俺たちはここにいない方がいいだろう。


レメの件はまず悪質性が高い。明確に騙す意思がある一件だ。共犯者である父親だって、タダでは済まな い。

だが"俺"が勝手に始めから【幻式】を使っていたとしたら、どうだろう。父親は騙されたとはいえ、被害者になれる。俺はここにいない方がいい。


そしてその時、レメにも魔の手は伸びる。ならば彼もということだ。それに、この子も前から旅をしたがっていた。様々な所を見て周り、魔法をたくさん知るのだと。

だからこそ、彼らは俺に愛しい息子を預けたのだ。仮に発覚したとして、私たち家族より貴方の方がこの子を守れるでしょう……とのこと。実際そうだろうな、父親はただの一般人だし、母親だって勿論そう。

なので文字通り、死んでも守る気概だ。だってプレイヤーだもの、死んだって問題ないのだから死ぬ気でやるさ。子供を不幸になんてさせやしない。


ヨーリアの方は、置いて行った方が良かったのかもしれない。一つの町に留まるのと、広く浅く渡り歩くのでは、どちらの方が良いかは意見が分かれるところ。どちらを選ぶか、選んでもらうか。つまりソーリャに預けていくか、一緒に旅立つか迷っていたところ──


細い路地の向こうから、小柄な人影が現れる。水色の髪を揺らすエルフの少年、ソーリャだ。手には見慣れない、大きな捻れた木の杖を抱えている。

「お待たせ!ボクももう旅立ちの準備は大丈夫だよ」

手を挙げて応える。

そう。なんか、こういうことなのだ。


ヨーリアに提案する前に、まず彼の了解を得なければ。急な話で申し訳ないななんて思っていたら、本屋に戻るといきなり、数多の本を仕舞いだすのだもの。驚いた。よくよく話を聞いてみると、そろそろこの家の更新日だし、転居しようかな〜とのお話。さらにびっくらこいた。

しかもキミも心配だし、ボクも一緒に着いて行こうかな?なんて。まだキミに原トワイ文字をマスターしてもらってないしね!と。ふふ、まだ覚えられてなくて気まずい。

で、選択肢は急に一つになったな。


そんなわけで宛てはまだないが、さらに他の人に預けることも含め、念のためヨーリアに話を聞いてみる。すると、全くそんなことは考えてなかったようで。大きな目をさらに見開いて、呆然としていた。

「余は、また捨てられるのか──」と闇落ちしかけたので、慌てて止める。おまえも自由な一個人なのだから、確認しないわけにはいかないから、と。

納得はしてくれたようだが、彼の心臓も現実の俺の心臓と同様、バッコンバッコンしただろう。軽率だったので、猛反省。


と、まぁ。つまりはそんなわけである。


ちなみにウカは、もう聞く前からだった。

ソーリャの家で、実は共同で使わせてもらってる客室に戻ると、就寝の支度をしていた彼から先に出た言葉。

「──勿論、俺も一緒に行かせてもらうからね?」って。回答が早いな!?でも悪いけど、彼には初めからついてきてもらうつもりだった。


就寝前。俺しかいないこの場においても、頑なに羽は晒さない少年を見て改めて誓う。

こんな彼を一人にしないようにしよう、なんて。傍にいて何かができるわけではないけれど、まだまだ彼にはきっと傍に誰かが必要だと。




回想終了。

こうして、俺たちは揃って旅立つことになったのである。

「──レメ」

母親と抱き合っていた子供が、俺の声に視線を上げた。

「もう行くの?」

ああ、と俺は一つ頷く。酷なことだろう、彼はまだ9歳。いくら旅に憧れたとはいえ、じゃあすぐ旅立ちですとなるなんて、想像もしていなかったに違いない。


少年はもう一度、母親にぎゅっと抱きつく。ついで父親にも。そうしてゆっくり離れていった。

子供が笑顔を作るから、親も必死に笑う。この旅は祝福だけされたものじゃない。必要に迫られたものだもの、せめてにっこり笑顔で別れよう。


「──行ってきます!!」

「「……いってらっしゃい!!」」







大通りを歩きしばらくすれば、あの日レメに出会った広場を通り過ぎる。次はウカに出会った裏路地に続く道、その更に先には勿論ソーリャの元本屋がある。

もう暫く門の方へと進めば、ヨーリアとアルという二人の王子を見つけたスラムに続く薄汚れた道も見えた。この町で、たくさんの人々に出会ったものだ。

こうして皆と旅立つとなると、感慨深いものだなぁ。



五人で門を潜り抜ける。

あのヨーリアだって、もちろん止められやしない。門番はギルド証を確認すると、あっさり子供を外へと通した。だって、もう彼はヨーリアだから。

俺たちは一歩、町の外── アンファン草原へと旅立つ。


目前に広がるのは広大な草原、視界を遮るもののない蒼い空を風が吹き抜ける。鳥や翼が生えた人々はこの空を渡り、どこか遠くへと飛んでいく。その先、遠くの方には森や山々、湖らしきものがうっすらとのぞき、さらに先にはまだ見ぬ街があるに違いない。そこへ向けて整備された街道が続いており、何人もの人や馬車がその上を行き交っていた。


陽光が、俺たちを祝福するように暖かく包み込む。



―クエスト≪天才召喚士の誕生≫をクリアしました。

 クリア報酬:1,000M、【召喚式】の獲得、【運命変革 (レメ・ゲトン)】―



さらっと【召喚式】を獲得っ!!こりゃ、レメに恨まれかねない──とか置いておいて、なんだ運命変革って??

歩きながら、画面をぽちぽちタップする。行儀悪いとかは今は無視で。

ふむふむ、なになに。


【運命変革】

友好以上のNPCの運命を、プレイヤーの介入によって変えることができた場合に獲得可能。


そっか。本当に俺は、レメを助けることができたんだ。ゲームに認められ、実感が湧いてくる。なんだか、目の前がボヤけてしまいそう。表情は切ってるから、そんなこと起こらないのだけど。


頑張った──ことなんて、まだまだ殆ど無いが良かった。だけど面倒だからとか、動いたせいで逆に何かあったらとかなんて無視して、愚直に子供を助けたいと行動をすること。やっぱりこれは、間違っちゃいなかったんだ。

ゲームに認められなくたって諦めるつもりはなかったが、称されるのは素直に嬉しい。

けど。


共に歩む皆を見回す。

ソーリャは、まぁそうだろうとして。ヨーリアはまだ友好NPCじゃないので、そこもまだ良い。今この場にいないこの子の兄のアルも、友好だけれどまだまだ彼を救えたわけがない。

だが──と、俺たちに先行するように歩みを進める、真っ黒な後ろ姿を見やる。命はおそらく助けた。だというのに【運命変革】のアナウンスなんてないウカは、まだまだ何かを抱えてるのだろうか。

子供たちは皆こんなに小さいのに、大きな宿命を…………



ん???




なんとなく、嫌な予感がして、ちょっと背後を窺ってみる。

畑や放牧に向かう、多くの大人やご老人の姿があった。ご苦労様です!

少し街道から離れた場所で、後ろ向きに歩く不審者を観察してみる。ビビットピンクの髪が目立つた彼女はたぶん配信者。周りにはフワフワした雰囲気を身に纏う、可愛らしくデザインされたNPCっぽい女性が複数いる。


もう一度、俺と一緒に旅するメンバーを確認。

レメ──9歳の人間の子供NPC。

ウカ──おそらく中学生くらいの年齢の獣人のNPC。

ソーリャ──実年齢は1000歳らしいが、見た目だけはショタエルフのNPC。

ヨーリア──レメと同じか、少し若いくらいの人間の子供NPC。

旅メンバーにはいないが、友好にまでなったアルだって、ウカと年齢はそう変わらないだろう。



あれ??

な、なんかちょっと、気付きたくはなかったけれど…………。

内心の滝のような汗が止まらない。別に誰も俺を糾弾なんてしちゃいないのに。それでも俺は内心、大きな声で叫んでしまった。


お、俺はショタコンとかじゃ、断じてないからな!?!?










PR記事より抜粋

『筆者がこのゲームにおいて、最も魅力的に感じたのは【運命変革】システムである。


なにせこのゲームではプレイヤーが介入することで、そのNPCが運命を変えられる。しかもそのことが、しっかりと分かるのだ。

それは必ずしも世界や国家の趨勢や、命の危機に関わるような話だけではない。例えばプレイヤーの介入で、引きこもりをやめて外に出られるようになった。誤解による母親との喧嘩の仲直りができた。冒険者に登録できた。のような小さなものも沢山ある。


だがこれらは全てプレイヤーの介入がなければ、そのNPCは辿り着けなかった未来だとしたらどうだろう。

先ほどの例で言うなら、引きこもり続けた末に周囲から完全に孤立、母親と仲直りできないまま死別、スラムで盗みを働き続ける。そんな運命だったとしたら。それをプレイヤーの手で変えられるのだとしたら。


こんなにも心を掴まれることはないだろう。お気に入りのNPCだけでなく、ただたまたま知り合っただけのNPCにだって、幸せになる道を歩んでほしいと願いたくなるものだ。


このゲームにはたくさんの魅力がある。美麗なグラフィック、派手な戦闘、広大なオープンフィールド、高度なAIを使ったNPCの自立化──挙げていけばキリがない。

だが筆者はこのNPCの行末をプレイヤーの介入で変えられる、これこそが最大の魅力であり、多くのプレイヤーを魅了して離さない要素だと考える。


実際、筆者がこのゲームに触れたのはPR依頼を頂いたからだが、今後も個人的にこのゲームを進めていきたい。そう思わせた最大の決定打であった。』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ