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俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-1節:ブリア王国編-始まりの町アインツ
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19話:天才であるということ

ヨーリアだって天才では??という疑問をゲーム側に呈しつつも。作りかけのサラダも放り出し、俺たちは今皆でギルドまでやってきているところであった。


いつもなら受付前の机でレメを迎えたり、ボードの前で何か良い感じの依頼を探していたりするのだが。今日ばかりは、状況が変わっていた。


俺たちは今ギルド内の2階にあった、小さな別室へ揃って案内されている。内心そわそわして、とりあえずレメの隣でソファに座るしかない俺とは異なり、扉の外でテキパキ職員さんたちとやり取りをしてるらしいソーリャへ尊敬の念。

いや、決してサボってるわけじゃないよ!?ただキミは隣で座ってあげててって指示された、だけで……。


ゴトリ、ゴトリ。次から次へ室内にはよく分からないものが持ち込まれ、ある準備がされているようであった。ウカも先ほどから、やけに重たそうな器材の設置に一役買ってる。偉い、俺なんかと全然違う。

さて、このように進められてるこれは何か?


「検査の準備、もうそろそろ終わるって」

ソーリャが、職員から受け取った紅茶を片手にやってくる。ティーセットを机上に静かに置いていくと、少し離れた椅子へそっとと腰掛けた。

「……ぼく、だいじょぶかな」

せっかく念願のスキルを使えたというのに、不安げに膝の上で手をきゅっと握る少年。だが、仕方ないことだろう。


部屋の外から、彼の父親が分厚い本を抱え、神妙な顔をしてやってきた。他の職員は部屋から出て行き、小さな小部屋には俺たち5人だけとなる。

男はちょうど向かいのソファに座り、俺たちを見やった。俺の反対側では、ヨーリアが足を慣れた様子で組んでみせながらも、何度もチラチラとコチラを見上げてきて落ち着きがない。分かるよ。この場所は酷く緊張する。


「……ああ、きっと」

彼らの肩をポンと叩く。 二人へ気休めの言葉しか送れない俺も、本当は不安でたまらないんだけど。


「……これより、適性検査を始めさせて頂きます」

机の中央に、藍色の水晶玉がゴトリと置かれる。

──なにせ、このゲームの子どもへの扱いは信用できないので。





どうしてこんなことになってるのか。

順を追って話そう。


突如、出てきたツキサシバニー。

あれはもちろん、この子の召喚で出てきたものだった。レメは一瞬で【召喚式】を獲得し、使ってみせたのだ。

信じられない……と尻餅をつき固まる子供の姿。ふわふわな姿でぴょん、ぴょんと床の上を飛び跳ねる魔物は、子供の腹の上に乗っかった。プゥプゥ鼻を鳴らし、落ち着いた様子。ご主人様が分かっているのだろう。

NPCって獲得しにくいんじゃなかったっけ?立て続けにスキルを手に入れる様に頭を傾げながら、俺は3人へと近づいていく。


そこでソーリャまでもが口元を手で覆い、固まっていることに気がついたのだ。隣を歩いていたウカも、眉を顰めどこか厳しい表情。なにか、あるのか?

「ねぇ、ウカくんはどう思う?」

「ふふ……それは貴方の方が詳しいんじゃないかな?なにせ【召喚式】だものね。──だけど僭越ながら私見を語らせてもらうなら……十分、義務に引っかかると思うよ」


義務?

納税とかの話じゃないだろうし、いきなりなんの話だ?頭の上で疑問符を飛ばしていると、こちらの様子に気がついた二人がまた顔を見合わせる。


喜びに包まれていた幼子の二人も、俺たちの空気に飲まれる。レメは守るように体の上のきゅっと魔物を抱え、ヨーリアがスッと視線を遮るように彼らの前に腕を広げて立つ。小さすぎて全く隠せてないけど。

まだこんなに幼いのに。自国の国民であり、友人でもある少年を守るという気概を感じ、目頭が熱くなりそうだ。今はそんな場合じゃなさそうだけど。


「……どういうことだ?」

彼らを代表して、俺は二人に疑問を投げかける。さっき発現する瞬間まで、ソーリャもウカも、何も俺に言ってこなかったのが気になるところ。もし何かあるなら、先に言ってくれそうなものを。


「んー……カルくんたちも冒険者ギルドに入る時に、説明されたと思うんだけど、」

おっと、チュートリアルスキップ勢の俺には都合が悪い言葉がっ!!そうだったか?としらを切ってみせると、最初の頃はまぁ気にしないお話かと、カウンター奥の黒板の前まで案内された。



俺やウカに続き、レメとヨーリアも集合し、決して広くないカウンター奥は満員だ。ツキサシバニーも少年の手の中で、ブーブー鳴き声で不満を表明する。

「……精神が乱れても影響なしか」と不穏に呟くソーリャは、チョークを手に取り何かを描き始めた。

「少し、歴史のお勉強の時間だよ」


「冒険者ギルドって何で生まれたと思う?」

はい、レメくんと強制的に指された少年は、動揺しながらも回答。

「えっと、ぼうけんをしやすくするため……?」

「うん、ありがと。それもあるけど、副次的な効果かな!本筋じゃない」


町の門をすんなりとくぐれるのは、身分を証明されてる人たちだけ。例えばその町の住人、農民なんかは顔パスくらすかな。逆に外から来た人たちは危ないかもしれないし、簡単には通れないんだ。だけどそれを冒険者ギルドとか、商人ギルドとかが身分を証明してあげるてるのは事実。

そうじゃなきゃ、面倒な検査を受けた後に、たか〜い保証金を払って入るか。それかよほど高位の貴族の後ろ盾を得て、とかしなきゃいけなくて、とてもじゃないけど旅なんてできないね。


とのこと。ほーん、まぁそりゃそうか。不審者かもしれない人を拒むのは、当たり前の話である。何か起こされてからじゃ、遅いもの。

「ちなみに俺たちの保証金は、各ギルドがそれぞれの町と取り決めをして、まとめて定額を支払ってくれてるんだ」

「うんうん!町としては、毎月一定の安定した収入がほしい。ギルドとしては、冒険者を確保する手段の一つってやつだね。あと創設時の理念に基づいて?とかだったかな」


普通に門の外と行き来していたが、裏にはこんな設定があったのだなぁ。おもしろい。

関心してたら、元王子が小さく手を上げる。目はまだ据わっているものの、とりあえず敵認定は解けたらしい。

「……依頼を、えんかつに受けるシステムを作るためか?」

「それは一つの正解だね。習ってたのかな?」


チラッと空色の目に見つめられた彼は、ふんと鼻を鳴らした。どこか得意げ。兄に教えてもらっていたのかもしれないな。


「普通の人には誰がどれくらい強いとかも分からないし、どれくらいの強さが必要で、お金があるのかも分からない。そもそもマッチングも大変。だから、一括して管理してる組織があるってことだね」

まぁ、そりゃそうだ。むしろ冒険者側だってわかってない。俺が例えばその例だ。ランク適正とか必要スキルとか、依頼に載ってないと困ってしまうだろう。

ゲーム的に言うなら、適正ランクの依頼を受けていこうねってことだ。


さて、順番的に俺の番になってしまった。だけど全く分からない。チュートリアルのページをこっそり見に行ってるのだが、全くそれっぽい記載なんてなかった。ヨーリアの言ったことくらいしか、俺の頭じゃ出てこないぞ??分からない──なんて、一生懸命に答えを考えだした2人の後では、もちろん言えないし。

ええい、やぶれかぶれだ!


「……強い個人を把握するためか?」


ぱちくり、二人が同時に目を瞬かせる。しかも揃って拍手付き。実は仲良いね、キミら?

「正解だよ。なんだ、ちゃんと覚えたの?」

ふるりと首を横に振ると、この世界の歴史も知らないだろうによくやるねぇ、と感心された。やっぱ魔法とかある世界だ。突出した個人は、あまりに恐ろしい脅威にもなるだろうて。



ソーリャは語る。

はーるか昔、平和になった世界に魔王が誕生しました。それは元々ただのヒトだったのに、精神を病み、壊れ、狂ったのだと。それを倒した人々を、今では十英雄と呼んでいるらしい。

だがなんとか倒しても倒しても、次の誰かが何故か魔王へ堕ちていってしまうことが判明する。その数は増えていき、現代は何人もの魔王が闊歩する時代だ。


で、その魔王になるとだいたい今まで持っていなかった力を使うようになるのだが、元が強ければ強いほどより危険道が上がっていく。それはまだスキルが未覚醒であったとしても、まだ子供だとかも関係なしに。元々の素質さえ強ければ強いほど、より凶悪になるのだとか。

「だから人類は考えた。なら、初めから把握しておけば、まだマシになるじゃないって。これが、ギルド設立の最初の理由だよ」



「つまり……ギルドの所属者は、強くなりそうな個人を見つけたら、殺すような義務があると?」

ゾクリと、冷たい汗が背筋を垂れた。レメがピシリと固まり、ヨーリアはひゅっと息を呑んだ。彼が抱えるウサギだけは、呑気に鼻を動かして勢いよくブッ!と鼻音を立てる。

今後こそ俺も、震えそうになる足を叱咤して、幼子らを庇うように立ち塞がる。


彼らの発言、ギルドの理念は間違ってはいないだろう。最大多数の幸福のために、少数派が犠牲になるなんて、現実でもよくある話だ。ゲームでだって、よく見かける話。主人公がここからどう逆転していくのか、ワクワクするためのカタルシスの前触れ。

でもそのプレイヤーが俺じゃあダメだ。糸口なんてなんも見つけられない。だってそうじゃないっ!俺は一般人だもの。



だが、だからといって見逃せない。そんなことを許すことなんて、どうしてもできない。まだほんの数年しか生きてない、こんな幼い子供を犠牲にするなんて。

それだけはどうしても、許せなくて。


だから【幻式】を使おうと口を開いた瞬間、




「──カルくん……ちょっと早計ぇ〜!」


ビシッと、ソーリャは腰に手を当て指を突き出し決めポーズ。ウカも顔を青くして、首を左右へ大きく振る。

……おっと、流れ変わったな??


「そんなこと、俺たちさ全く考えてないよ。カルさんが嫌がるだろうなってことは、出会ったばかりの俺だってわかるからね」

動転してか、そもそも主様の嫌なことなんて……何一つしたくないんだ、と何度も何度も繰り返すので、いったん主様呼びはやめてもらった。なんだろう。流石の俺でも分かる。たぶん、そこまでの話じゃないんだ。


一旦、小さな丸椅子の席へと戻る。俺の様子を見て、背後にいた2人も同じようなことを考えたらしい。椅子を引いて、それぞれ着席した音がする。何やら背中が二つ分暖かいが、そら仕方のないことだろう。


「も〜、キミが優しい子なのはよく分かってるけどさ!よく考えてみてよ。もしそんな気があったら、わざわざ解説なんてしてあげないって!」

なるほど、たしかに。言われてみれば当たり前だ。いくら俺が弱いからって、意味もなく無駄に警戒なんてされることはない。


ボクそんなに意地悪じゃないよぉ!!って抗議に、「悪い」と謝罪。あの商人の言葉もあって、どこか疑ってかかってしまっていたようだ。まだ青い顔をしてるウカにも頭を下げて、ずれたメガネを治す。

クール男子は、謝るべき時は謝れるのだ。まずそもそも勘違いなんてしてるんじゃないよとか、優しい子認定をされてしまったこの事態には、当に頭を抱えてる。軌道修正できるか……?


「それにそんなことをしていたら、魔王を倒せる人もいなくなってしまうからね。この世界が滅んでしまうよ」

なるほど、たしかに(2回目)。ゲームを始める前にPVで見た、美麗かつ大規模な戦闘が脳裏で甦る。月ごと切り裂くような派手な剣技に、山一つに匹敵しそうな火焔球、それと対峙する大きなドラゴンなんてのも見た。

ありゃあ、数で押してなんとかなる領域じゃあないだろう。現代のような科学の力、兵器なんてものはたぶんないだろうし。


……あれ?そんな力をレベルを上げていけば、いずれ使えるようになるような設計がされてるプレイヤーって。

「──だから、異世界人は歓迎されるってわけだね。キミたちから、魔王が生まれたこともないし……ついでに魔王退治なんてのも、お祭り事として大好きときた」

はっ……と少年は軽く鼻で笑う。彼が数日前に話してくれた、異世界人が歓迎される理由がなんとなく実感を持って理解できた。


「俺たちにあるのは報告義務なんだ。強そうな素質を持つ人を見つけたら、ギルドに報告して、適正検査を受けてもらう必要があるんだよね」

う、頭が。その言葉には、ちょっと拒否反応。過去の苦い思い出には、溢れる前に蓋をして。


「といっても、やることは冒険者ギルドへの登録とそう変わらないよ。準備は見る適正ごとにもう色々あるんだけど、レメくんがやることは、素手を翳すことだけ!」

やるのが簡単なのはいい。問題は……ちらりと背後を見やる。ごくりと、少年は固唾を飲んでいた。背を掴む指に強く力が入る。

そんな俺たちを見て、エルフは笑った。

「大丈夫。それこそ、あの十英雄の子孫クラスの素質でもなきゃ、定期的な居場所報告と、ストレスチェックさえ受ければいいからさ」






ソーリャがそう語った時、なんだか嫌な予感がしたんだ。彼が語ったのと似たような話を、規則として語る父親の姿を見ながら、ずっと考えていた。


だって、このクエスト名は──




男に案内されるがままに。レメがぎゅっと握っていた手を緩め、机上に置かれた古ぼけた水晶玉へと手を伸ばす。


虫の知らせがした。

いや、これは確信だ。だってこの世界はゲームなのだ。ならこれだけお膳立てをされた状況。一見、いくら平凡にしか見えない、どこにいそうな子供だからといって。


「まっ──」

だが、遅かったのだ。そもそも、あの瞬間にギルドから逃げる選択をしなかった時点で。逃げ切れるかなんて、もちろん知らないけどさ。


翳された手のひらに反応して、水晶玉が淡く光り始める。

咄嗟にそのか細い腕を掴んで引いてしまった俺の目の前で、その光はあっという間に強くなって。

一瞬、部屋全てを焼いた。

……はぁ、デジャブってやつだ。それもつい先ほどの。


モロに眩い光を見てしまい眩む視界の中、誰かが震える声で呆然と呟いた。


「……まさか、素質S超え……?」


やっぱり、ゲームらしく。


レメは天賦の才能を持った、天才だったのだ。

きっとそれも、最上級の。


そうして困ったことに。おれは据え置き機のゲームの主人公とかでは、全くないのである。






掲示板より抜粋

154 名無しどんぶら

ついに2鯖でプレイヤーから素質S出たらしいぞ


155 名無しどんぶら

>>154

鮫丼か?


156 名無しどんぶら

ようやくか。どんだけ転生する必要あんだ


157 名無しどんぶら

自己満の世界でようやるよ


158 名無しどんぶら

十英雄の子孫とこれでようやく並んだってことか

ってことは、SS設定の十英雄どれだけ強かったんだよ


159 名無しどんぶら

>>158

そら皆さんの憧れになるほどよ。


160 名無しどんぶら

>>157

>>158

8鯖最強NPC素質SSSケリーさんを知らんな??

まじバケモンだぞ??????


161 名無しどんぶら

>>160

そいや素質SSSって、NPC内じゃゲームで過去未来含めて1人しか設定する気ないってマジ?


162 名無しのどんぶら

>>160

薬師って地味な職業だと思ってたけど、あのNPCで一気に評価変わったよな。人気職にあっという間になって、オレたちプレイヤーって分かりやすすぎw


163 名無しのどんぶら

鮫丼さんじゃないやないかいっ!!

なんで誰も教えてくれんのや!!


164 名無しのどんぶら

>>163

あっという間に続いて鮫丼もSなったし、まぁ同じやろて

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