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俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-1節:ブリア王国編-始まりの町アインツ
17/25

15話:新しい名前、新しい生き方

気付いてしまったことがある。

王子の興味が回復薬すら超え、薬を詰めてるガラスの小瓶にまで移った時のことであった。流石に解説できる領域を超えているため、今度こそソーリャにバトンタッチ。

……そんなものまで解説できる、ソーリャの知識はどうなってるんだ。さすが1000年生きてる本好きエルフ。知識もチート級ってか。仲良く話し合って、後で本を貸してあげるよだなんて約束してる。微笑ましい。


ウカはウカで、いつまでも俺を見ていなくていいんだけどなぁ?今なんて俺は、ただ鍋の中の熱をパタパタ扇いで冷ましているだけなのに。……カッコ悪いし【風式】とか取得するべきかも。こんなザマを、傾国クラスの顔面で見つめられ続けるのはもはや人生の恥だ。

「……つまらんだろ」

「ううん、そんなことないよ。カルさんのことを見飽きるなんてないからね」


何でも知りたいんだ、なんてうっとりと目を細め、頬は紅潮させながら俺の手を取る。君、ちょっとストーカー気質だね。あと今まであまり人と関わってこれなかったせいか、最初のラスボス仕草然り距離感の取り方がちょっと下手くそ。……俺の心臓にも、ズキンと刺さる言葉だな。

とりあえず本人もよく分かってるだろうが、誰彼構わずその顔面で迫らないこと、とだけ忠告しておく。痴情のもつれだけは勘弁してくれよ。



で、だ。

俺は魔法使いである。クールインテリ系なかっこいい奴。

だが、なんということだろう。俺のスキルはこんなことになっている。


スキル(8SP)

●魔法

 【幻式Lv.4】

●本

 【本Lv.3】

●才能系

 【集中】【薬師の才】

●生産

 【調合Lv.5】


【調合】が!!一番、レベルが高いっ!!!

おかしい。俺は魔法使いだというのに、このままじゃクールインテリ系薬師になってしまう。どうしてこんなことに。内心、頭を抱えてしまう。


ついでにまだ困ったことがある。

いつのまにか、称号欄に増えていた謎の称号。


称号

●終末への刻

【悲劇の序章】【邪神の視線】


なに!?!?

このゲーム、邪神なんてのも存在すんの??今まで誰の口からも聞いたことがなかったし、やっぱタブー的な存在なのだろう。

だがアナウンスすらなしに増えてるんだから、実は隠し特典か何かなのか?なんてさ。現実逃避の僅かな期待をして、説明欄を開いたらまぁ酷いもんだった。


【邪神の視線】

邪神の興味を引いた者が獲得する称号。

効果:最大HPの減少・最大MPの減少・ー未開放ー・ー未開放ー


おいっ!!!!

俺の【幻式】は、めちゃくちゃMPを使うスキルだってのに、なんてことをっ!!

あまりに非道、さすが邪神。未開放の効果もあり、今から震えてしまう。


神様の恩恵が欲しい……なんて、思い上がっていたからだろうか。さっきのあの少女が獲得していた炎神の加護。あれは取得すれば、逆に得しかない。確か炎神は力の基礎ステータス系にプラス補正が入る。他にも炎系統の魔法スキルを使うのや、単純に火を使う作業の全般に僅かだがボーナスが入るはずだ。

魔法使いの俺の本命は炎神ではない。だがこのゲームを始めたての頃は、とにかく神殿に通え!はどの攻略にも載っていたことである。だから欲しかったんだけど、


だというのに……まさかの、真逆の補正を手に入れてしまったというオチ。こんな酷いことがあるだろうか。ちょっとした期待への罰が重すぎる。

せめてもの悪足掻きで部屋を抜け出して、祭壇に一人向かい祈りを捧げてみたが、まぁ当然【加護】なんて授けられなかったし。

いったい何で注目を浴びてしまったんだ。【悲劇の序章】、黒い翼のウカ、救国クエストだった王子──色々と浮かぶが決定打はない。




とにかく、くさくさしながら今日のアルバイトは終了。

できあがった回復薬の山を見る。俺が作れたのは回復薬(ランクG)、最低ランクよりギリギリ一つ上のものだ。初日にしては頑張った方だろう。

なお、解毒薬や栄養剤は作れてない。【調合】においての全ての基礎になる回復薬が、もう1ランク上で作れるようになったらかな。と、涼しい顔でランクDを量産していたソーリャは笑っていた。

流石である。



完成した薬を神官に納めると、俺たちは荷物を纏めて神殿を後にしようと門を出た。西陽がレンズ越しに強烈に突き刺さり、思わず描画距離を下げるべく設定を開きかけた時

のことである。

「……あ、カルお兄さん!」

突然、声をかけられた。


声の方角を向けば、思った通り。

丸い頭に沿ったありふれた茶髪に、子供らしく大きな鳶色の瞳と、どこにでもいそうなありふれた容姿をしている子供。

今朝、出会ったばかりの魔法オタク少年レメだ。朝とは違い、手には古びた日記帳ではなく、買い物袋を抱えている。中からは色んな根菜類がのぞいていた。


「レメか……おつかい帰りか?」

「うん、そうだよ。カルお兄さんに、こんなところでも会えるなんてうれしいなぁ!いっしょにいるのは、お友だち?」

こてん、と頭をかしげながら聞いてくる。とも、だち……?彼らとどんな関係かなんて考えてなかったな。王子、訳ありの鳥人、ショタ詐欺エルフ──面子が濃すぎる。ついでに俺は彼らの、一時的な自称保護者で、忠誠を捧げられちまったたぶんパーティーメンバーで、公認の居候兼アルバイターで──なんか複雑だな。


「友達、かは分からないが……良くさせてもらってる」

ちょっと逃げを打ってしまった。正直に説明するのもという思いもあるが、彼らが俺をどう認識してるかも分からないのに言葉にするのは……という思いも。げっふん!!


「ふーん?あ、ぼくね。レメって言うんだ!みんなの名前は?」

コミュ力が高いな。凡庸でありながらも妙に愛らしい顔立ちをしている彼に、明るい笑顔で話しかけられたら、うん……つい誰でも優しくなっちゃうね。

ウカやソーリャが自己紹介をしていき、最後に王子の番──となってはたと気づく。さっそく、名前を聞かれるシチュエーションが来てしまったじゃないか!!

焦る俺をよそに、勝手に会話は進む。


「ね、君の名前は?」

「あ、余……の名前は……」

「よ?よってなぁに?」

しまった、とでもいうかのように王子が俺のローブの裾を強く掴んだ。本当に顔に出ないだけで、他の部分には感情がよく出てくるなこの子。感情も壊死とかじゃなくて、まだよかった。こういうのに俺は弱いんだ。


と、現実逃避をしても状況は変わらない。名前だけじゃなく、王子の一人称も問題だ。幸い、レメはそれが余、という特殊な一人称だとは気付いてない。なんとか……誤魔化せないか。くるくる焦り頭は空回る。

余──余、よ……


「……こ、こいつの名前が、ヨー……ヨーリアっていうからな。自分のことを、ヨーって言うんだ」

「へ〜!ヨ―リアって言うんだ。よろしくね!!ヨ―リアが、ヨーならぼくのあだ名は、レレ……とかかな?」


ふぅ……なんとか誤魔化せたようだ。王子がちらちらと見上げてくるが、すまん勝手に決めて。ミドルネームかなんか、ということにでもしておいて欲しい。混乱中の今の俺の精一杯だったんだ!気に入らないなら、後で謝罪はいくらでもするから。

あとレメなら最悪、名前を変えたとか言っても納得してくれそう。頼み込めばなんとか、たぶん流されてくれ……てくれ!流石にダメか??


しゃがんで、王子の背中を軽く押す。

大丈夫、この子なら悪いようにしない。その意を込めて見上げてくる顔へ軽く頷けば、王子の手から少し力が抜けた。キラキラと無垢な瞳を向けてくるレメ。彼を前にして王子も観念したのか、ぎこちなく再びしゃべり始めた。

「そう、であるかも……しれない、な。余……は、ヨーリアだ。よろしく……頼む、レレ」

「うん!ぼくもあだ名で……ヨーって、呼んでいーい?」

「あ、う、……うむ、構わない。余………ヨー、も……レレと呼ぶ」

「わーい、ありがとう!」


お友達の握手ね、手をにぎにぎされ、固まりながらも小さく頷く王子。「ぼくね、まほうが大好きなんだ!」と語り始めたレメに、巻き込まれてしまったよう。だが、なんだかんだ興味深げに話を聞いてるし、微笑ましいものだ。

俺の表情が内心と連動する状態だったら、今頃にっこり口角が上がりすぎて、大変気持ち悪いことになっていただろう。ほのぼのとしている子供は可愛い。



「きさ……レレは、召喚士になりたいのだな」

「うん、そうなの!すっごい【召喚術】だって使えるようになってみせるんだ。だって、カルお兄さんも応えんしてくれたんだもん」

突然振られてびっくりしたが、ねっ!とという言葉に頷く。無責任かもしれないが、応援したのは事実だ。


「【召喚】かぁ……」

それまで黙って様子を伺ってたソーリャが、ポツリと呟いた。ぼんやりと、何かを思い出すように頬に手を当て、茜色の空を見上げている。

「何か知っているのか?」

「懐かしいなぁって。昔、ちょ〜っとだけかじってたんだよね」

なんと!生き字引がこんなところにまで。流石すぎる。意味が理解ずに首を傾げてるレメに王子が、【召喚】を知ってることだよと教えてあげてる。すると子供はぴょんとその場で飛び上がり、ソーリャへと頭を下げた。


「なんっでもするから、ぼくに【召喚】のこと教えてください!!」

この時、本当に勢いよく90度直角に腰を折るものだから、買い物袋から中身が飛び出して辺りを転がる。

「……わ、わぁっ!!」


この後は騒がしいものだった。慌てて5人で転がる野菜を回収して(馬車に潰されかけたのもあった。かギリギリセーフ)、集めきったと思ったら町の中心から鐘の音が鳴る。


どうやらこの鐘が鳴るまでに帰る、と母親と約束していたらしいレメは大慌て。今度、ぜったい聞かせてください!と涙目で告げると、慌てて走り去って行った。どうやら、今朝すぐに帰らなかったことで一悶着があったようで、今日ばかりは門限を破れないのだそう。親子仲は良さそうで何より。




「──何か、教えてやるのはできそうか?」

すっかり姿が見えなくなったあの子を見送り、傍らのソーリャへと問いかける。すると彼は目を細め、戯けたように笑う。

「えー、ボクの蓄えた大事な知識ちゃんをタダで教えてあげろって?」

確かに、かなり失礼なことを言ったな。いくら俺が個人的に好感を持ってる子相手だからといって、他人にまでその善意を強制させるのはよろしくない。


「すまない、失言だっ……」

「なんてね。ボクってばカルくんのお友達だし?なら、そのお友達にも親切にするのが筋だよね」

違う?と、ツンツン小さな両手で腹をつつかれる。さっき俺が逃げを打ったことへの仕返しだな??

「──あ、でもお友達か分からないんだったっけ?」

「……いや、私とお前たちは友達だ」

「うんうん、だよね!ならボク本当にちょっと使えるってレベルだけど、あの子にも教えてあげるよ」

タネはまいておかないと芽吹かないもんね、なんてどこぞの戦闘狂のようなことを言いながらも、にっこりと了承してくれた少年に頭を下げる。RPは重視してるが、謝罪と感謝はしっかりやれるのだ。


だから俺は地面へと膝をつき、もう一人の子供の、その鮮やかな赤色の瞳をしっかり見つめた。

「……お前も悪かった、勝手に名前を決めてしまって。ミドルネームみたいな、そんなものだということにしてくれないか?」

少年はゆったりと首を振る。


「──余は、ヨーリアで良い」

「それは……こんないきなりつけてしまったもので、本当にいいのか?」

「前のものはと似つきもしない名だ。その方が良い」

それに、と彼は続ける。


「前の己はレレとも──貴様らとも、関わることなんてなかったであろうからな。新しい余も、この名前も……悪くない」

きっと、心の底からそう思ってるわけではないのだろう。実際、彼は目を少し逸らしている。だがそれでも細い足で一歩、彼は路面へ足を踏み出すと俺たちを振り返る。

「だから……ヨーは今日はもう帰ろうと思うのだが、貴様らの意見はどうだ」


日が落ちて月が昇り、空には星が僅かに輝き始める。澄んだ空気に晒された空の遠景は、遠くに見える山々や森林と共にとても美しい。


「新しい生き方かぁ……」

ウカが、暗くなり始めた空を見上げ呟いた。彼の背の黒羽は、今日もケープで隠されている。

彼も、あの時たまたま自分が通り掛からなかったら、どうなっていたのだろう。簡単に傷が治らない身の上で、あの大怪我だ。生き残れたかは、かなり怪しいろう。きっとゲーム的にはプレイヤーの助けがなければ死ぬ、そんな役目を背負わされたNPCだったに違いない。


会って早々の俺にカルさん!と心酔し、一緒に行動するためだけにレベル1になるというのに転職もした。それだけ聞くと少し考えなしで、ちょっと極端に思える子供の行動も。決して、そうではないのだろうな。

俺より一回りも小柄な背を見つめ、小さくため息をつく。


さて俺は戻ったら、またお勉強の時間だ。

忙しくなく行き交う人々の中、王子──ヨーリアに続いて俺たちも、月が昇りきる前にと帰路につき始めた。





ゲーム攻略まとめページより抜粋

【召喚式】

獲得方法:召喚石を獲得する/魔物図鑑を1ページ完成させる/プレイヤーのレベルが18を超える

消費SP:消費SP10

取得おすすめ度:☆☆☆☆★(玄人向け)

※種族:ヴァンパイアの取得おすすめ度:☆★★★★(そこそこに推奨)

【召喚術】・【召喚法】の下位スキル。召喚石を使うことで、特定の魔物などを召喚し使役ができるスキルだが、ヴァンパイア以外の種族が使用するには魔物への深い知識が要求される。

序盤のうちは召喚石の獲得方法も限られ、かつ要求される知識量もかなりのものとなるため、序盤に獲得することはオススメしない。中盤以降になって知識を深めた後の挑戦を推奨。評価は五段階中、最低の星一つ。

ただし転生しヴァンパイアになった場合、魔物への理解がなくても使役ができる。また召喚石のドロップ率が上がっているため、取得は強い選択肢のうちの一つとなり、評価は五段階中、高評価の星四つ。

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