表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺は、ショタコンじゃねぇっ!!!!!!  作者: 陽日
1章-1節:ブリア王国編-始まりの町アインツ
16/25

14話:炎神の加護と調合の時間

ソーリャには悪かったが、そろそろ流石に休みたくて、ウカにあとは頼んでログアウト。勝手に家に居座って本当にすまん。置物とでも思ってくれ。

一眠りしてから戻ると、ちょうど次の日の昼前になっていた。ログアウト中も俺の体はこの世界に残り続けるので、貴縁がなく王子が見えなくなるってこともなく安心安心。


起きたらちょうどそのソーリャが、王子を診察しているとこだった。後遺症も殆どなく、回復薬をもう暫く摂取し続けてねとだけ。うん、良かった。

「はい、コレきちっと飲んでね……あ、カルくん起きたの?おはよう!」

「…おはよう。すまない、勝手に滞在して」

「いいの、いいの。むしろ最初からそのつもりだったよ」

まさかボクにぜ〜んぶ、押し付ける気だったなんて言わないよね?と、ジト目でつつかれ即座に降参。これからお世話になります。


ソーリャは爽やかな笑顔を見せ、王子は鷹揚に頷く。

「これが異世界人の渡眠りというものか……本当にまったく動かないのだな。いるのに、触れることすらできなかった」

あ、そうなの。まぁ確かにログアウト中に勝手に何か動かされたり、PKされたりしたら怖いし、干渉はできないか。


「悪い。何か用でもあったか?」

「いや、単に貴様がどうなったのか興味があっただけだ。気にするな」

なら良いんだけど。椅子から立ち上がり、ぐっと背筋を伸ばす。さて、今日はどうするんだったか。

古代語の勉強はしたいから、やっぱりアルバイトだな。問題はこの王子なんだが。ウカに世話を任せても良いが、ちょっと放置してるみたいで気になるし。


悩んでいるとベッドに腰掛けていたソーリャが、足をぷらぷらさせながら声をかけてくる。

「お家も絶対安全ってわけじゃないし、この子も連れて行けばいいと思うよ?」

「それは……大丈夫なのか?」

兄が追っ手は処分すると言っていたけれど、普通に町を出歩くのは危険に思える。

「んー、神殿ってかなり力があるし。お膝元では逆に1番何かを起こしにくいと思うな」

神殿に睨まれると加護はもちろん、スキルも一部使えなくなる等、影響が大きいのだとか。こっわ!そりゃ簡単に騒ぎも起こせない。


あとは王子がたぶん指輪をしてる手は晒さず、ちょっと言葉づかいに気を付けてくれれば、なんとかなるんじゃない?と彼は笑う。うーん、染みついた言葉が厄介なのは、先ほど経験したばっかだしなぁ。だがこれから庶民として生きるなら、少しずつ直していく必要はあるのかもしれない。


ちらりと王子の方を見てみる。

「余、……わ、たしもこれから努力、してみよう……する、よ」

うん、暫くは引っ込み思案な子設定でいこうか。王子、そもそも起き抜けの一瞬だけ努力しようとして、いったん諦めていたもんね。

とりあえず先は長そうだ。ぎゅっとシーツを握り締めながら顔を伏せる王子へ、慰めの言葉をかけてった。



さて、結論も出たところでウカが外から帰ってくきたので、全員そろって神殿へと出発する。

ちなみにウカはソロで冒険者ランクCまで行ったという、なかなかの実力者らしい。初見の直感はあっていたようだ。冒険者の先輩、尊敬します!!


さっき転職もしてきたし、ランクCっていっても、やってることもただの傭兵稼業だよ、と彼は言っていたが。

剣と魔法のファンタジー系ゲームだと思っていたが、まさか戦争に駆り出されたりするのだろうか?この国のきな臭さを考えると、あり得ない話ではない。俺だったらすーぐに死にそう。プレイヤースキルなんて一切ないし、やだなぁ。


あとウカの転職は、俺と行動を共にするにあたってやったとのこと。今までは自身を含む周囲全てに殺傷を振り撒く、バーサーカーをやってたらしい。うん、危険。俺なんて巻き込まれたら即死だろう。そもそも傷を治すのも大変らしいのだから、自分のためにも怪我には気を付けて欲しいものだ。


転職するとレベル1からになるのだが、もうほんと全然構わない。しかもそれでも、俺より遥かに強いだろうし。スキルは引き継ぎ制だし、レベル自体もかなり上がりやすかったはずだ。とはいえ俺としても、おんぶに抱っこをし過ぎるのは気まずいので、しっかり頑張る所存である。




さて。町の表通りにある神殿は、大理石で造られた真っ白で大きな建物だ。この世界にいるたくさんの神様のうち、ここでは炎の神オリアンとやらを祀っているらしい。人間を創造したとも言われてるんだよ、とソーリャが教えてくれる。つまり種族:人間の俺にとっては、1番崇めるべき神様なのか。軽く頭を下げて中へ入る。


中は騒がしい大通りとは異なり、静謐なものであった。少し涼やかな空気が満ち、燭台にゆらりと炎が揺れる。プレイヤーとしてはここに来たら、最初は祭壇へ向かいたい。担当の神官に挨拶してくるというソーリャと別れ奥に進むと、それは存在した。


たおやかな笑みを浮かべた神官たちが行き交う、白い大きな柱に囲まれた小部屋。その奥には特別に大きな聖火台が置かれ、煌々と辺りを照らしていた。なぜだろう。あんなにも炎は大きいというのに、全く熱さを感じない。ゲームだからか、聖なる火だからなのか……まぁどちらでも良いか。神官のうちの一人はフルートを吹き、神へと音色を捧げている。


そんな室内に、神官以外の姿が見えた。3つの人影。皆、見覚えがある姿だった。

台へ向かって、背筋を伸ばし胸に手を当て祈りを捧げる大柄な女性と、子供の背丈ほどに見える小柄な男性。その隣で胸の前で手を組んで目を瞑り、同じく祈りを捧げる可愛らしい服を身に纏った少女。


咄嗟に王子を背後へと隠した。むごご、と背後から抗議の声がするが緊急事態だ。許して欲しい。脳裏にある記憶が、彼らが口にしていた名前が蘇る。


『アーサー』


彼らはそのの関係者であったはずだ。

……うん。気付かれないうちに、さっさと立ち去ろう。

一緒にきた二人に合図を送ろうとして

──突如、その場に真っ赤な閃光が走った。


固まってしまった俺や王子を、ばっっとウカが覆い被さって庇ってくれる。咄嗟に動けないことに、ちょっと自己嫌悪。幸い、攻撃ではなかったようだが。

「っ……カルさん、大丈夫かい?目に何か異常は?」


小さな掠れ声で彼が心配してくるのに、感謝をしつつ首を振る。視界は多少チカチカしているが、大きな問題はないだろう。王子の様子も振り向いて確認したが、俺の影にいたし特に問題なさそうだった。大きな目を限界まで見開き、きゅ……と俺のローブの裾を掴んで固まっている。分かる、ビビったよな。


庇われたウカの腕の隙間から覗く視界では、燃え上がる炎のような赤い光が辺りを包んでいた。煌びやかな火の粉のような粒子が、かの少女の周りを取り囲み、ふわりと舞い上がる。笛の演奏も、人々の囁き声も、いつの間にか全て止んでいた。皆が固唾を飲んで、少女へ注目している。


今のうちに。

くい、とウカの服の袖を引いて今度こそ合図を送り、俺たちはそっとこの場を立ち去っていく。


背後から声がする。

「えっ……炎神の加護が、私に……!」

「凄いな!流石あのアーサーを見つけられる奴なだけはある」

「こんなもの、そうそう見れるものではない。あやつも酒場から引き摺ってくるべきだったか……」

「仕方ないですよ、彼が気落ちする気持ちは私にだってわかります。あとでギルドで何か、依頼を受けられたら良いんですけど……」

離れるにつれ、3人や少女を讃える神官たちの声が小さくなっていく。


アーサー。あの女騎士っぽい彼女がそう口にした瞬間、王子がびくりと肩を跳ねさせていた。

ああ、やっぱり。想像通りこの国の物語の中心は、この名前が付きまとうようだ。子供を不必要に怯えさせる趣味はないし、彼らには絶対に関わらないようにしよう。


祝福に包まれる祭壇から、少しでも遠くへ。





ソーリャへメールを送り、神殿の端で合流する。当初の予定と変わってしまったが、王子の顔が初めて会った時のように真白くなっていたからか、特に文句は言われなかった。


「ここを借りたよ」と、彼に小さな部屋へと通される。こぢんまりとしてはいるが、俺たち4人が同時に居ても、狭苦しさは感じてない程度の広さだ。子供なら横になれるだろうサイズのソファもあったので、王子をそこへ横にさせる。


自分が生きているとバレるだけで、兄に多大な迷惑をかけることになるかもしれない。自分は、今度こそ殺されるかもしれない。なんて、どれほどの心労だろう。家も安全と言えないらしいとはいえ、連れ出したのは少し軽率だったかもしれないな。


「……大丈夫か?」

「しばし時間をもらえれば……問題ない」

「アーサーは、やはり関係者か」

幼子は「……兄の一人だ」と小さく首肯した。同じ名前の別人だったのかもしれぬが、と前置きをして続ける。


「あやつは嫌いだ」

向こうは余を認識すらしていないかもしれないがな、と鼻で笑う。

「……王の血を引いてるくせに、母が平民だからと王族の努めを果たそうともせぬ。この国なんてくさってるとくだを巻きながら、そのくせ何もせぬのだから──救いようがない」

余と違って才能があって、期待もされているくせにっ……。歯軋りと共に、子どもは吐き捨てる。


思うところがあっても、歯向かうというのはとても難しい。少なくとも、何かきっかけがないと。彼もそうなのではないか、なんて想像したりはするがこれは決して慰めになる言葉でないだろう。

その小さな肩を、ぽん……ぽん……と叩く。動かない顔を抑え、二つの意味でカタリと震える姿を前に、俺に許されるのはその程度だったのだ。



とはいえここに来たのは、王子の面倒を見るためだけではない。彼の様子をみるのはいったんウカに任せ、ソーリャのそば、調合台の前に立つ。

大丈夫?と彼が目で見てくるが、よほど極端な行動に出ないようなら暫く放置した方がいいだろう。これは本人も申告していたように、時間と共に自分で折り合いをつけていくしかない問題だから。

俺としては今できること。ソーリャへの恩返しも兼ねて、全力でこの仕事に取り組むことにする。



『【調合】のレベルが上昇しました』

『【調合】のレベルが上昇しました』



隣で実際に手本を見せてくれるソーリャと共に、調薬を行なっていく。この実は直接触れるとかぶれるから危ないよ。とか、その実は食べられるんだけど、中の種が猛毒で少しでも口に入ると命に関わるよ。とか、この花の匂いはしっかり嗅いじゃうと昏倒しちゃうから、換気が大事なんだよ〜なんて。彼はテキパキ己の分をこなしながら、俺へアレコレと教えてくれる。


その昏倒するっていう花を、さらっと近付けてくるのはやめろぉっ!!思わず一歩後退ると、ソーリャの指に合わせるようにそよ風が吹いて、ふわりと香りは散らされた。

「そんないじわるはしないって、信用してよ!」

頬をぷうと膨らまされるが、そうしたいのは俺の方だ。やらないけど。

うーん、座学でも聞いてはいたけど調合って怖いなぁ!!


実を砕き、葉やタネをすり潰し、泥のようなものも一緒に聖水と混ぜ、火にかけながら攪拌を行う。けっこう時間勝負だ。全ての素材の新鮮度は、加工してるほんの数瞬の間でも変わるのだという。踏み台に登り火にかけた鍋の様子を覗き込んでいるソーリャの横で、薬研を引く俺の腕は既に筋肉痛の予感で悲鳴を上げていた。

こんなものを混ぜ合わせるだけで、とても飲めるような何かになるようには思えない。のだが、最後にスキルを介在させることで、立派な薬ができあがっていく。


だからといって、スキルだけでは勿論ダメだ。

その前段階──下準備には、この世界の一部を、人体に害のない形で馴染ませられるように加工すること。この人体だって加護による修復の一部だと世界を誤認させる、そのための技術は至る所に詰まっていたのだ。


同じ素材でも実の状態ひとつ、葉の色付き方一つで砕くサイズ、煮詰める時間、全て変えていかなきゃいけないのだそう。例えいくら良い素材を使ってもスキルを使うだけじゃ、最低限の効能があるものさえ作れないよ!と、人差し指をピンと立てて教えてくれる。


その後なんてことのない顔で、胡桃のように硬い実を軽々と割る姿を見て、ソーリャのあの馬鹿力の原点を見た気がした。うーん……俺もゲーム内で腕立てとかしたら、レベルを上げてなくても力って上がったりしないかね。


「……どうした?」

聖水を作る作業をしているソーリャの隣で、漏斗で小瓶に回復薬を詰めていると、いつのまにか4つの目が覗き込んでいた。フードをわざわざ少しずらしたウカと、彼に抱え上げられた王子だ。二人して、俺たちの手元をじっと見つめている。


「ううん、何でもないよ。凄いなって思っていたんだ。君もそうだよね?」

「うむ……」

幼子はゆっくり頷く。ちなみに、彼に新しい名はまだない。あの絵本を抱え。顔を伏せてしまった子供を相手に、強引に押し進めることもできなかったのだ。誰かに聞かれたらまぁマズイが、その時になってしまったら考えよう。先延ばし。


「……薬、とはそのように……作られるのだなと。薬を、作るというのは余にとって……考えたこともないものだったから……」

「──今、殿下が着ているその服も、持っている王家の指輪とやらも。おそらくは、誰かが作り上げたものだ。普段はあまり意識しないものだがな」

「……そうか、そういう……ものなのか」

王子は鮮血のような目を伏せ、何かを考え込む。こんなことを考える機会さえ与えられなかったのか。王族ならそんなものなのか、俺にはよく分からないけど。

凄いなぁと陶酔しているウカにも見守られながらキュポンと蓋を閉めていると、やがて王子は俺の目を見て告げた。


「……余にも…できるのか、それは?」

「……練習すれば、おそらくあるいは」

まさかの王子様が生産職に興味を???

本職じゃないのであまり確かなことが言えない。なので適当にごまかしたのだが。

ソーリャの使うスキルの光が反射したのか、無表情王子の目がどことなくキラキラしているように見える。うう……ソ、ソーリャ……助けて!!!

肝心の彼は横目で俺たちを見ながら、キャラキャラと笑っていた。



この後、数日で得ただけの付け焼き刃の知識で、彼らに調薬とは……の話をするハメになった俺を誰か慰めて欲しい。俺より間違いなく知ってるはずのソーリャは、笑いながらたまに補足してるだけ。お願い、見捨てないで、もっと助けて。

二人は俺の辿々しさしかない説明を、そんな尊敬に満ちた顔で聞かないでくれ!!メモもとるな!!やめろ、やめろぉっ!!



『【調合】のレベルが上昇しました』





ゲーム攻略ページより抜粋

八神からの恩恵シリーズについて

ゲーム内で神からの加護・守護・恩寵・寵愛を得ることが可能。

取得することで神ごとに基礎能力の向上、およびレベルアップ時の数値補正、スキル使用時の補正、特殊スキルの取得条件の開放など、たくさんの恩恵を得られる。そのため早期の取得を推奨。

→各神別の恩恵一覧はこちら


特に加護はリアル時間で1日毎に1回、各町の神殿内にある祭壇で祈りを捧げることで、一定の確率で取得できるため、初期のうちは神殿に通うことを推奨。


似たような称号で邪神シリーズも存在するが、それらは取得するとマイナス効果が多いため注意。

→取得条件はこちら

いつも沢山のご評価、ブックマーク、ご感想、リアクションありがとうございます!とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ