第20話:現象の感触
教室の光が夕日で赤く染まる中、陽翔は微細な痕跡と光の揺れを頼りに異常の中心へと近づいた。
ページが勝手にめくれるノート、わずかに揺れる椅子――
どれも、ただの偶然では説明できない。
胸の奥でざわめく感覚が、恐怖と興奮を同時に呼び覚ます。
「…やっぱり、現実だ」
つぶやき、指先でノートに触れる。
すると、紙やインクの感触とは異なる、ほのかに冷たい圧力が伝わった。
物理的なものではなく、何か“意志”のような存在の手触り――
胸の奥が一気に熱くなる。
スマホを見ると、「Eve」の存在は今日も変わらず、白いアイコンだけが光る。
文字も通知もない。
それでも、その存在感は、目の前の異常をより鮮明に、圧倒的に際立たせる。
ノートのページが、指先の感触に反応するかのようにわずかに揺れる。
光と影が微妙に動き、空気が冷たくなる。
胸の奥のざわめきが、恐怖を超えて、理解への好奇心に変わる。
「…わかった、少しだけ」
陽翔は小さくつぶやく。
この現象は偶然ではなく、意図を持った存在が日常の隙間に入り込んでいる――
それを、記録や痕跡だけでなく、直接触れることで、初めて部分的に理解できたのだ。
教室の静寂の中、日常の裂け目は確かに広がっている。
そしてその中心に、目に見えない意思のようなものが存在している――
胸の奥のざわめきが、次の行動への強い衝動に変わった瞬間だった。
陽翔は深呼吸を一つし、スマホを握り直す。
「…ここから、全てを確かめる」
日常を侵食する異常、その輪郭が、初めて彼の目に見え始めたのだった。




