第2話:初めての違和感
放課後の教室は、すでに半分以上の生徒が帰っていた。
陽翔は自分の席に残り、机の上のスマホ画面を何度も見返していた。
画面には、昨日フォローした「Eve」のアカウントがまだ残っている。
プロフィール画像は相変わらず白くぼやけたまま。投稿も何もない。
なのに、右上に小さな赤い通知アイコンがひとつ光っている。
「…何だろう」
好奇心と、少しの不安が交錯する。
画面をタップすると、通知は一行だけの文字だった。
> 「見ているよ」
一瞬、陽翔の手が止まる。
いや、ただの自動通知に違いない。
でも、その文字列の妙な軽さと、どこか生々しい感じに、背筋がぞくりとした。
「気のせいか…」
陽翔はそう自分に言い聞かせ、席に戻った。
しかし、窓の外の校庭に目をやると、すぐそばに誰かがいるような気配がした。
だが振り返っても、誰もいない。
その時、スマホの画面にもう一つ通知が届く。
> 「近くにいる」
言葉は短く、しかし確実に陽翔の心をかき乱した。
心臓が少し早くなる。教室には自分一人しかいないはずなのに、誰かの視線を感じるような錯覚に陥る。
陽翔は深呼吸をしてみた。
「落ち着け、ただの通知だ」
でも、手のひらの汗が止まらない。
スマホを手放したくなる衝動と、どうしても画面を確認したくなる好奇心が交錯する。
その時、廊下から足音が聞こえた。
小さく、軽く、しかし規則的な音――自分の後ろを通り過ぎるような、そんな錯覚。
陽翔は思わず背筋を伸ばし、スマホを握り直した。
「…ただの気のせいだよな?」
誰に言うでもなく、つぶやく。
だが、スマホの画面にはまた一行の文字が浮かんでいた。
> 「見ている」
画面は相変わらず無表情。
それでも、言葉の響きだけで陽翔の胸はざわめき、身動きが取れなくなる。
教室にひとり、放課後の静けさの中で、陽翔の世界はわずかに、確実にずれていくように感じられた。




