第17話:影の輪郭
放課後、教室に残る陽翔の視界は、夕日の光で長く伸びる机と椅子に囲まれていた。
胸の奥のざわめきは、昨日までとは比べ物にならないほど大きくなっている。
録画映像で確認した異常の痕跡――微細な光と影の揺れ、ノートの勝手なページめくれ――
その輪郭を、今、自分の目で確かめようとしていた。
黒板の端の影に歩み寄ると、光の揺れが一瞬だけ強くなる。
ノートがひらりとページをめくる。
椅子が微かに揺れる。
その動きは、偶然では説明できない。
それぞれが、何か“意思”を持って動いているかのように見える。
「…やっぱり、ただの偶然じゃない」
陽翔は息を整え、スマホで映像を再生しながら、目の前の異常と照合する。
録画の中の微細な揺れは、今この瞬間の動きと完全に一致する。
つまり、この異常は現実に起きており、繰り返されているのだ。
胸の奥に恐怖と興奮が入り混じる。
誰もいない教室に、目に見えない力が確かに存在している――
その輪郭が、ようやく陽翔の目に見え始めた。
スマホの画面に目を戻すと、「Eve」の存在が今日も静かにある。
文字も通知もない。
それでも、その存在だけで教室の異常さが増幅される。
さらに、光の揺れが小さな形を描くように変化した瞬間、陽翔は息をのむ。
影は人の形ではない。
だが、輪郭として確実に存在している。
教室の端にある空間――
微細な異常が、確かな形を持って浮かび上がっているのだ。
「…なるほど、これが異常の正体の一部か」
胸の奥のざわめきは、行動への衝動に変わる。
光、影、音、物の動き――
すべてが紡ぎ出す異常のパターンを、陽翔は理解しようとしていた。
教室の空気は静かだ。
しかし、日常の裂け目は確実に広がり、目の前の影は、静かに、だが確実に存在感を増している。
陽翔はスマホを握り直し、影の輪郭を追いながら、次の行動を決意した。




