第15話:不可解な痕跡
放課後、陽翔は再び教室に残った。
スマホの録画映像を見返しながら、昨日まで気づかなかった細部を丹念にチェックする。
光の揺れ、机やノートの微細な動き、影のわずかな歪み――
すべてを見返すことで、世界の微妙な裂け目が浮かび上がる気がした。
ふと、画面の隅に小さな異変を見つける。
黒板の端に映った光の影が、普段とは異なる形で揺れている。
誰かの姿のようにも見える微かな痕跡――
だが、画面をよく見ると、人間の輪郭ではない。
それでも確かに、教室の空間の中に存在していることがわかる。
胸の奥がざわめき、心臓が早く打つ。
「…これは…」
声に出さず、つぶやく。
日常に侵食する影は、ただの偶然ではなく、確実に何か“意思”を持って動いている――
陽翔はそう直感した。
机の上のノートに、再びメモを取り始める。
光と影、音、微細な動きのタイミング――
すべてを整理し、パターンを探る。
昨日までの違和感が、映像という形で確実な証拠となった瞬間だった。
スマホの画面には、今日も「Eve」の存在がある。
文字も通知もない。
しかし、存在しているだけで、教室全体の不自然さを増幅させる。
「…やっぱり、偶然じゃない」
深呼吸を一つして、陽翔は決意を固める。
胸の奥のざわめきは恐怖ではなく、行動への衝動に変わった。
教室の空気は静かだ。
しかし、光と影、音と物の動き――
微細な裂け目は確実に広がり、陽翔の目にはその輪郭がわずかに見え始めていた。
この異常を解き明かすため、陽翔はさらに調べる決意を固めた。
世界の日常に潜む影――
その正体を、自分の目で確かめる覚悟が、胸の奥で静かに燃えていた。




