第14話:裂け目の兆候
放課後、陽翔は再び教室に残った。
窓から差し込む夕日の光は、いつもより長く机や椅子の影を伸ばしている。
空気は静かだが、胸の奥のざわめきが日増しに大きくなっていた。
スマホで録画した昨日までの映像を見返す。
光や影の揺れ、机やノートの微細な動き――
しかし、映像を注意深く見ていると、昨日まで気づかなかった“パターン”に目が留まった。
光の揺れやノートの動きが、一定の間隔で繰り返されているように見える。
人の手や風では説明できない、不自然なリズムが確かに存在していた。
「…これって、意図的に起きている?」
つぶやき、スマホの画面を指でなぞる。
胸の奥に不安と好奇心が入り混じる。
日常に侵食する影は、単なる偶然ではなく、何か“意思”を持っている――
陽翔はそう直感した。
そのとき、教室の奥で微かに物音がした。
ノートがページをめくる音。椅子のわずかな軋み。
振り向くと誰もいない。
だが、空気の微妙な動きが、存在している何かを確かに示していた。
陽翔は机の上に置いたノートにメモを取り始める。
光や影、音、微細な動き――すべてを整理し、規則性を見つけ出す。
それが、この異常を理解するための唯一の手がかりだと感じたからだ。
スマホの画面には、今日も「Eve」の存在がある。
文字はない。通知もない。
しかし、存在感だけで、世界の微細な裂け目をさらに意識させる。
「…やっぱり、ただの偶然じゃない」
陽翔は深呼吸を一つして、決意を固める。
胸の奥のざわめきは恐怖ではなく、行動への衝動になった。
日常の裂け目――
光と影、音と物の動きの中に、静かに、しかし確実に広がっている。
陽翔はその手がかりを、これから一つずつ確かめ、解き明かす覚悟を胸に抱いた。




