第12話:異常の記録
放課後、教室に残った陽翔は、慎重に机の上の物を整えた。
スマホを手に取り、画面を録画モードに切り替える。
昨日の異常、椅子やノートの微細な動き、光と影の揺れ――
そのすべてを、自分の目で確認するだけではなく、記録として残す必要があると感じたからだ。
静かな教室の中、息をひそめ、陽翔は椅子にカメラを向ける。
微かに揺れる光、かすかな影の動き――
録画ボタンを押した瞬間、世界の端で何かがわずかに動いた。
ノートのページが、誰も触れていないのに、ゆっくりめくれる。
目を凝らす陽翔の手元で、ペンが微かに震えた。
スマホの画面には、その一部始終が静かに映し出される。
「…やっぱり、偶然じゃない」
小さくつぶやき、指先で再生ボタンを押す。
映像には、確かに物理的にはありえない動きが映っていた。
机の端がわずかに揺れ、ノートのページが勝手にめくれる。
光の角度が、ほんの一瞬だけ不自然に変化する。
胸の奥に、恐怖と好奇心が交錯する。
誰かに相談すべきか、それとも自分で確かめるべきか――
迷いながらも、陽翔は決意した。
この異常を、まずは自分の目で、そして自分の手で確かめる。
スマホで録画した映像を見返すたび、教室の空気がわずかに重く感じられる。
光と影、音と物の動き――
それらが日常の中で、確実に、しかし静かに狂っていることを、陽翔は改めて実感した。
「…手がかりは、ここにある」
つぶやくと、胸の奥のざわめきが、決意へと変わった。
世界の微細な異常を、自分で確認し、記録する――
それが、次に進むための唯一の方法だと、陽翔は理解したのだった。




