大空の狂宴:決死の空中戦
『疾風の騎手』のコックピットに、警報音がけたたましく鳴り響いた。
『マスター!敵戦闘機隊、間もなく射程圏内に入ります。彼らは「スカイホーク」級。最高速度は本機の三倍です!』コッコが船内システムを掌握し、緊急警告を繰り返す。
窓の外の鉛色の点が、巨大な影となって迫る。それは洗練された流線型の戦闘機で、武装は強力なパルスレーザー砲だ。
リナは操縦桿を強く握りしめた。「ちくしょう、多すぎるわ!回避行動に入る!カイ、絶対に操縦室から離れないで!」
「わかってる!頼むぞ、リナ!」
リナは凄まじいGのかかる急降下、急上昇を繰り返した。機体が悲鳴を上げ、古いリベットが飛び散る。
ドォン!ドォン!
パルスレーザーが機体をかすめ、船壁を焼いた。
『被弾!船体左側フレームに損傷!マスター、直ちにソウル・スパークで防御してください!』
「うおおお!」
カイはソウル・スパークを両手のひらに集中させ、火花を散らす船壁の亀裂に押し付けた。熱いエーテル粒子が亀裂を覆い、一時的に船体を補強する。
しかし、敵の集中攻撃は止まらない。数機のスカイホークが編隊を組み、正確な狙いで翼を狙ってきた。
「このままじゃダメだ!集中砲火を食らっちまう!」カイは歯噛みする。
『マスター、分析結果。敵は隊列による一点集中砲火を試みています。この隊列を崩壊させれば、残りの敵は戦意を喪失する可能性**45%**です』
「45%か…十分だ!」カイは即座に決断した。「リナ!少しだけ機体を安定させろ!俺が外に出る!」
「バカ!死ぬ気!?この高度で、その鈍重な剣じゃ…!」
「黙ってろ!これが俺の腹時計の逆襲だ!」
リナは一瞬躊躇したが、カイの目にある狂気と熱意を見て、意を決した。彼女は機体をわずかに水平にし、外部ハッチを開放した。
ガシュッ!
カイは機内に溜まっていた空気を勢いよく噴出させながら、大剣「鉄クズ」を背中に装着し、大空へ身を投げ出した。
高高度の冷たい風と薄い空気がカイの体を叩く。彼はソウル・スパークを体全体に巡らせ、自身の周囲に小さなエーテルの膜を作り出した。
『マスター、戦闘開始!目標は、隊列の右端の機体です!』
「来いよ、スピード狂どもめ!」
カイは、背中のジェットエンジンを真後ろに向けて全開にした。
VROOOOOOOM!!!
ジェット噴射による圧倒的な推進力が、薄い空気を切り裂き、カイは鉛色の戦闘機へと猛スピードで接近した。
スカイホークのパイロットは、まさか人間が空を飛んで突っ込んでくるとは予想しておらず、パニックに陥った。
「馬鹿な!奴は戦闘機じゃない!人間だ!」
カイは、一瞬で敵機の真上に出た。彼の剣は、もはや斬撃の武器ではない。全エネルギーを注ぎ込んだ、巨大なロケット付きの鉄塊だ。
「炭酸!反動スラッシュ!」
ジェットエンジンを逆噴射し、その反動で剣の威力をさらに増幅させ、敵機に叩きつける!
ドゴォン!
一撃でスカイホークの翼はへし折られ、機体は爆発せずに回転しながら雲の下へと落ちていった。
コッコが即座に情報を更新する。『目標撃破!次のターゲットは、動揺した左端の機体です!エーテル流が乱れています!』
カイは次々と目標を定め、加速と急停止を繰り返し、ジェット剣の重さと反動力を最大限に活かした一撃を叩き込んでいく。一つ、また一つと、スカイホークの隊列が崩壊していった。
空中を飛び交う人間と戦闘機の、常識外れの空中戦。
五機を撃墜し、二機に大破を与えた時点で、残りのパイロットたちは恐慌状態に陥った。彼らは統一された命令を失い、一斉に戦場から離脱し始めた。
「ちくしょう!怪物め!撤退だ!」
勝利だ。カイはジェット剣を噴射させ、ボロボロになった『疾風の騎手』のハッチへと滑り込む。
「やったわね、カイ!」リナは涙目で彼を迎えた。
カイは荒い息を吐きながら、コックピットに倒れ込んだ。彼の体は極限まで疲弊しているが、その眼差しは、さらなる高みへと向かっていた。
『マスター。戦闘完了。船体の損傷率は75%。しかし、我々は雲上の覇者の防衛ラインを突破しました。このまま航行を続けます』コッコが淡々と告げた。
空は青く澄み渡り、彼らの眼前に、伝説の「クラウド・シティ」が、その壮麗な全貌を現し始めていた。




