一撃の沈黙:宇宙の目への抵抗
清掃部隊の到着まで、残り15日。
天空都市のシールド圏内を、銀色の流線型をした偵察ドローン「ゲイザー1」が滑るように飛行していた。その動きは機械的で無駄がなく、人類の予測を許さない異質な軌道を描く。
コマンドルームのリナは、そのドローンのデータ収集能力に恐れを抱いていた。「ダメよ、カイ!あのドローンは単なる攻撃機じゃない!私たちのシールド構成、エーテル発電所の出力、そしてあなたのソウル・スパークの波長を記録し、本隊に送信しようとしている!」
『もしデータが送られれば、本隊は即座に攻撃戦術を最適化します。我々の唯一の切り札である「超圧縮防御フィールド」の構築を待たずに、致命的な一撃を受けるでしょう』コッコが警告した。
カイは、エーテル装甲を纏いながら、静かに空中に浮遊していた。彼の周囲には、新たな力、魂の超圧縮によって安定した青いエーテルが満ちている。
「なるほどな。うるさい奴らには混沌をぶつけるのが一番だが、こいつには沈黙が必要ってわけか」
カイは、大剣をしまう。大剣を振るうたびに発生する激しいエーテル・フレアは、敵に彼の居場所と力を教えてしまう。
彼は右腕のエーテル・レールガンを構え、全身の力を、一点に凝縮させた。目指すは、ドローンの中心コアへのピンポイントな一撃だ。
ドローンは都市の外周を回り込み、シールドの歪みを正確にスキャンしていた。その動きはあまりにも速く、彼の肉眼では追いきれない。
カイは目をつぶった。「熱の残響…いや、違う。この敵は熱を出さねぇ。**意図**を読め!」
彼は「魂の共鳴」をドローンの思考回路へと向けた。そこには感情も意思もない。あるのはただ、「収集」と「送信」という単純な指令のみ。カイは、その冷徹な指令が次にたどる物理的な軌道を予測した。
**『あと5秒でスキャン完了。送信を開始します』**コッコが叫んだ!
「遅い!」
カイは叫ぶことなく、無音でエーテル・レールガンを発射した。
シュッ。
それは、轟音も熱も伴わない、純粋な青い光の点だった。魂の超圧縮によって研ぎ澄まされたエーテルが、光速でドローンの予測軌道の一点を射抜いた。
ドローンは爆発しなかった。まるで砂が風に舞うように、一瞬にして銀色の粒子となり、音もなく天空に散逸した。
「やった…か?」
『成功!ドローン、完全に破壊!コア情報、すべて消失!』コッコが安堵の声を上げる。
リナは、コマンドルームで深く息を吐いた。「ありがとう、カイ!間に合った…」
しかし、コッコがすぐに冷静な声に戻った。『リナ。残念ながら、破壊される直前、ドローンは低容量のデータパケットを送信していました。都市の正確な位置、そしてマスターのソウル・スパーク波長の存在が、本隊に伝わりました』
「くそっ!」
「どれだけの情報を知られたんだ?」カイが尋ねる。
『彼らは、この都市が「抵抗勢力」であること、そして「エーテルを増幅する個人」がいることは知りましたが、**マスターの実際の戦闘能力、および超圧縮防御フィールドの存在は把握していません。**まだ、時間があります。しかし、彼らは警戒を強めるでしょう』
カイは、天空に消えた銀色の残滓を見た。リヒター艦隊のような感情的な敵ではない。この敵は、ただプログラムを実行する、冷徹な宇宙の管理者だ。
「エーテルを増幅する個人、か。上等だ」
カイは、エーテル装甲を解除し、コマンドルームへと戻った。彼の顔には、新たな決意が刻まれていた。
「リナ。超圧縮防御フィールドの構築を急げ。そして、俺の装甲のエーテル・レールガンを、太陽フレア蓄電池に直結させろ。奴らが来た時、この美味いシチューを守るために、俺は都市の力全てをぶつけてやる!」
天空都市の運命は、残り15日の準備期間に託された。




