世界への宣言:天空都市、再起動
エーテル発電所のコア・ルーム。
リナは最終スイッチに手を置いた。隣にはカイが立っている。彼は全身のソウル・スパークを最大に高め、不安定なエーテル流が暴発しないよう、都市の血管を生きたスタビライザーとして支えていた。
「行くわよ、カイ!エーテル発電、フルパワー!」
「おう!いつでも来い!美味いメシのためなら、エーテルだろうが何だろうが、制御してやる!」
カチッ!
リナがスイッチを押し込んだ瞬間、コア全体がまばゆい黄金色の光を放った。雷鳴のような轟音がタワー全体を駆け上がり、それが動力へと変わる。
ゴオオオオオオオオオオッ!!!
数秒間の沈黙の後、クラウド・シティはゆっくりと、しかし確かな力をもって目覚めた。
消えていた都市の全ての灯りが一斉に点灯し、眩しい白光が雲を突き抜けて地上を照らした。停止していたエーテル・シールドが、巨大なドーム状の青いバリアとなって都市全体を覆う。そして、長らく漂流していた都市の船体が、力強い推進音と共に天空に固定された。
『再起動完了!メイングリッド、オンライン!都市機能、全て回復しました!』コッコが歓喜の電子音を上げた。
外周プラットフォームでは、再び攻め込もうとしていた錆喰い鳥の飛行艇団が、突然の強烈な光と再起動したシールドを見て、恐怖に駆られて散り散りになった。
「うそだろ!あの幽霊船が動きやがった!」ギルの悲鳴が空に響く。
リナは無線機を握りしめ、安堵のため息をついた。「勝った…!」
二人は中央タワーに戻った。そこは、以前ヘリックス博士が支配していた玉座の間だ。しかし、今はシステムが全て回復し、完璧に清潔な空間となっていた。
カイは、その玉座の間で、ジェット大剣を持ったまま立ち尽くしていた。
「な…なんか、落ち着かねぇな。こんな綺麗な場所に俺がいていいのか?」
リナは、コア・システムを操作しながら冷静に言った。「いいも何も、私たち以外の支配者はもういないわ。カイ、あなたは今、この天空都市クラウド・シティの責任者よ」
「責任者…」
その時、リナの端末から、膨大な量の情報が流れ込んできた。
『リナ、マスター。メインレーダーが、周囲1000km圏内の全ての軍事レーダーにシティの再起動を検知されました。特に南西方向、旧大陸統合軍の残党と思われる、大規模な艦隊が急速に接近中です。』
クラウド・シティの復活は、彼らをただのスカベンジャーから、世界情勢を揺るがす新たな超大国へと変貌させたのだ。
「いきなり軍隊かよ!」カイは焦る。
「これが、私たちが電源を入れた代償よ。この街は、世界にとってあまりにも大きな餌なの」リナは厳しい表情だ。
そんな中、カイはふと、壁に設置されたフード生成システムに目を向けた。
「なあ、リナ。その都市システムに、俺の最初の**『責任者命令』**を入力してくれ」
「何よ、防御システム?エネルギー配分?」
「いや。フードシステムだ。これまでの効率重視の栄養パックのレシピを全て破棄しろ。そして、味とボリュームを最優先にした、最高のビーフシチューを大量生産するように設定しろ!」
リナは呆れた顔で笑った。「最高に効率の悪い命令ね!」
「うるせぇ!美味いメシがあるから、俺は戦えるんだ!この都市のエネルギーは、美味いメシのために使うんだよ!」
リナは笑いながら、その命令を実行した。その瞬間、システムはDr.ヘリックスの教義から完全に解放された。
ピッ、ピッ、ピッ…。
その時、KOKKOの端末に、これまでにない強力な暗号化通信が届いた。
『緊急通信!旧大陸統合軍残党艦隊の旗艦から、リナ宛に暗号化通信が入電しました。解読します…』
数秒後、KOKKOは静かに、しかし威厳のある声でそのメッセージを読み上げた。
『—クラウド・シティの新管理者へ。我々は、この古代都市の管理権を要求する。抵抗は無意味だ。これは戦争の始まりである。貴殿らの存在は、世界の調和を乱す。—』
カイはジェット大剣を肩に担ぎ、玉座の間を見渡した。空腹は満たされた。しかし、新たな戦いが、始まったばかりだ。
「世界の調和?そんなもん、美味いメシの前じゃ、何の役にも立たねぇ!」




