鉄壁の防衛線:錆びた都市の目覚め
クラウド・シティの外周メンテナンスプラットフォーム。そこは、今やカイと、飢えたハイエナたちとの血みどろの戦場となっていた。
「てめぇらなんかに、俺のビーフシチューは渡さねぇ!」
カイは怒号と共にジェット大剣を振り回した。ギル率いる錆喰い鳥の飛行艇は、計十数機。彼らは容赦なく、旧式の機銃掃射を浴びせてくる。
カイは、以前より研ぎ澄まされたソウル・スパークをプラットフォームの合金に叩きつけ、防御壁を作り出した。彼はもはや、ただの攻撃手ではない。この都市の盾となっていた。
「くそっ、キリがねぇ!」
飛行艇がレーザーを放つ。カイはそれを避けつつ、そのエンジンを狙って鉄クズの先端を噴射させた。爆発音と共に飛行艇が一機、制御を失い墜落する。
しかし、その隙を狙って、リーダーのギルが飛行艇から飛び出し、巨大なチェーンソーを振り上げて襲いかかった。「一人でこの群れを止められると思うなよ、スクラップ坊主!」
ギルとの肉弾戦は苛烈を極める。チェーンソーがプラットフォームの合金を削り、火花が散る。
その頃、中央タワーのコア・ルームでは、リナが必死に古代のシステムと格闘していた。
「ジジイの言う通り、これだわ!『審判の砲台』の制御ユニット!」
目の前にある操作盤は、埃と錆に覆われ、スイッチは固く、ほとんど機能していない。
『リナ。入力キーシーケンス、残り20秒です。この時間内にロックを解除できなければ、砲台は過負荷で爆発します!』コッコが警告する。
「黙ってて!こんなアナログなシステム、見たこともないわ!」
リナは、手動で錆びついたレバーを引き、埃まみれの回路をデバイスで無理やり繋ぐ。彼女の天才的なメカニックの腕が、ここで試されていた。
カチッ…ガチッ!
「よし!ロック解除!コッコ、座標入力は!?」
『自動システムはダウン。手動で入力してください!ターゲットは、プラットフォーム前方を飛行する第三編隊!』
リナは震える手で、旧式のダイヤルを操作し、ターゲット座標を設定した。
「…放てえええ!」
クラウド・シティの外周、巨大な砲台が轟音と共に火を噴いた。それは、旧時代の戦艦に搭載されていたような、巨大な**「審判の光線」**だった。
ドオオオオオオン!
光線は一瞬で空を切り裂き、ギルの第三編隊を直撃。一瞬にして数機の飛行艇が蒸発し、残りの敵も爆風でバランスを失った。
その衝撃は、カイとギルの戦闘にも影響を及ぼした。
「な、なんだ、あのバケモノ砲台は!?」ギルは怯んだ。
「お前の相手は…俺だ!」
砲台の轟音に勇気づけられたカイは、最後の力を振り絞り、ギルに噴射式大剣の全力の一撃を叩き込んだ。ギルは防御するが、大剣の勢いは凄まじく、彼は装甲を割りながら、制御不能に陥った飛行艇に衝突し、撤退を余儀なくされた。
「覚えてろよ、スクラップ野郎!この借りは必ず返す!」ギルの声が遠ざかる。
カイは勝利を確信したが、その勝利は束の間だった。
『マスター。敵の第一波は撤退。しかし、リナの砲台操作により、シティのローカル動力源が完全に枯渇しました』コッコが報告した。
リナの悲鳴がトランシーバー越しに響く。「ダメよ、カイ!このままじゃ、審判の砲台はもう動かせない!他のシステムも、全部停止寸前だわ!」
雲の遥か上空では、まだ何百ものスカベンジャーの飛行艇が、クラウド・シティを目指して上昇を続けていた。彼らは、最初の抵抗が単発だと知れば、再び襲いかかかるだろう。
「くそっ…」
カイは、その場に大剣を突き立てた。守るべきものは手に入れたが、その防御はあまりにも脆い。彼らが本当にこの都市を守るためには、一時的な防御ではなく、都市の主要エネルギーグリッドを完全に復旧させる必要があった。
その主要エネルギー源は、都市の深部、かつてヘリックス博士が完全に隔離していた**「エーテル発電所」**にある。
「リナ!その発電所とやらに、案内しろ!」
カイの目は、再び新たな戦いへの決意を宿していた。今度は食料のためではない。自分の手で掴んだ居場所を守るために。




