第8話 少女ルナテミス
試着室のカーテンが、かすかな摩擦音を立てて横に滑った。
視線が、無意識に吸い寄せられる。
そこに立っていたのは、俺の知っている“勇者”ルナテミスのはずだった。けれど、マントも鎧もない彼女は、もう別の存在に見えた。
ベージュのショートコートは薄くて柔らかく、肩のラインをなぞるように落ちている。
中に着た白いブラウスは、胸元に細いリボンタイが垂れ、風に揺れると小さな羽のように見えた。
膝下までのプリーツスカートが歩くたびに微かに波打ち、足首までのレースアップブーツが控えめに光を反射する。
勇者としての記号をすべて剥ぎ取られても、彼女の内側にある芯の強さだけが形を変えずに残っているのが分かる。
俺はその瞬間、軽い眩暈のような感覚に襲われた。
──ああ、世界ってこんなにも違って見えるものなんだな。
「ど、どうだろうか、修一……?
やはり我には、このようなお召し物は似合わないものだな」
ルナテミスは、不安げに恥ずかしがりながら、俺に感想を要求する。
「……かわいいな」
口をついて咄嗟に出た言葉は、父親が娘の卒業式の晴れ姿を見たときのような響きになっていた。
そのことに気づいた途端、胸の奥に針のような違和感が走る。
俺は彼女を、勇者ルナテミスではなく、娘のような存在として見ているのか。
ルナテミスは一瞬、目を見開いた。
頬がみるみる紅潮し、口元がわずかに引きつる。
「……か、かわいい……だとっ!? ほ、本当かっ!?」
途端に顔を逸らし、耳まで真っ赤にしながら、妙に落ち着かない動作で服の裾を握り、もじもじする。
しかし、次の瞬間には胸を張り、無理やりいつもの威厳を取り戻そうとした。
「ふ、ふふん! や、やはり我にも――その、可愛げというものがあったのだな……! がははははっ!」
声は空回りし、どこか裏返っていた。
その笑いの中に、照れと嬉しさが滲んでいるのを、俺は見逃さなかった。
「かわいい娘がいるっていうのは、こういう気持ちになるものなんだな」
そう言い放った瞬間、ルナテミスが一瞬だけ笑って、しかしその笑顔の奥に薄い影が差すのが見えた。
──ひとりの女性としては見てくれないんだ、そう言われた気がした。
会計を済ませるとき、レジの数字を見て眉が上がる。
「うわ、高っ……」
心の中で小さくつぶやく。でも、すぐにその声はかき消える。
これまで仕事と寝ることにしか金を使わなかった俺にとって、ここでの出費はむしろ贅沢な供物のように思えた。
ルナテミスが少女でいられる時間を買えたのだから、安いものだ。
そんな感覚が胸の奥からじんわり広がる。
モールの通路を歩いていると、彼女がふと立ち止まった。
透明なガラスケースの向こうに、鮮やかなアイスが整列している。チョコチップ、クッキー、フルーツソース、カラースプレー……
彼女の瞳が、戦場で敵を見つけた時とはまったく違う光で輝いていた。
俺はその視線の先を見て、くすりと笑う。
「気になるのか」
「……少しだけだ、ほーんの少しだけだぞッ!」
「どうせなら、最大まで乗せろよ」
彼女は目を瞬かせて、困惑したように眉を寄せる。
でも、やがて小さくうなずき、店員に全部乗せを頼んだ。
俺はその横顔を見ながら、胸の奥に奇妙な暖かさが灯っていくのを感じた。
テーブルにつくと、目の前に夢のような高さのアイスが置かれた。
ジェラート三色の上に、生クリーム、ナッツ、キャラメルソース、さらに金色の星型スプリンクル。
勇者ルナテミスが両手で大事そうにカップを抱え、恐る恐るスプーンでひと口すくう。
その瞬間、彼女の表情がわずかに緩み、何かがほどけるように笑顔が浮かんだ。
「……この世界は不思議だ」
彼女がぽつりと呟く。
「見たこともない建物、魔力のない道具、食べ物……でも、ここにいる人々は、我の世界の民草と何ら変わらないように思える」
「ようやく分かってくれたか。創造主だなんて肩書きを背負ってはいるが、俺もお前らと変わんないただの人間なんだよ」
――俺はお前らが思うほど、そんなに凄いやつじゃない。だからあんまり崇め奉らないでくれ。
そういう思いを込めつつ、言葉を口にした。
そんなこんな他愛もない会話を続けていると、ふと、カップの中のアイスがゆっくりと形を失っていくことに気づく。
「おい、溶けてるぞ」
慌てて指差すと、彼女ははっとして、スプーンを置いて一気にかぶりついた。
そのせいで口の周りは汚いのなんの。
でも、あの戦場のときの様相とは違い、子どものように無邪気でかぶりついている姿はどこか滑稽で、見ていて飽きなかった。
◇ ◇ ◇
夕方、アパートに戻ると、部屋の空気が一気に現実に引き戻してきた。
外での喧噪とネオンの残像が、玄関を閉めた瞬間に音もなく剥がれ落ちる。
勇者ルナテミスは、買ったばかりの服の裾を指先でそっと名残惜しそうに撫でていた。
魔力はもう十分に回復したらしい。
「じゃあ、元の服に着替えてくる」
彼女はそう言って、俺の部屋の奥へとひとりで入っていった。
カーテン越しに聞こえる布擦れの音。
鎧の金具が小さく鳴る音。
俺はその音を聞きながら、窓の外のビル街をぼんやりと見ていた。
――楽しかったな。
「見ての通り、我は、着替えを済ませたぞ、修一」
彼女の声に振り返る。
そこには再び、あの世界の“勇者”が立っていた。
鎧は陽光を吸い込んだように鈍く光り、背中にかけたマントは深い赤に沈んでいる。
たったそれだけで、部屋の空気が戦場のように引き締まった気がした。
俺は机の上に置いた、自分の黒歴史漫画を手に取った。
インクの染みた紙が、指先にぬるりとした感触を残す。
この本を媒介にして、俺たちは再びあちらへ行く。
そのはずなのに、視界の端でルナテミスがほんのわずかに目を伏せたのが見えた。
「……どうした」
俺が声をかけると、彼女は慌てて顔を上げ、取ってつけたように話し始めた。
「べ、別に……。ただ、隣に彼奴──魔王ディアーナがいるのが嫌なだけだ」
ルナテミスは、勇者と共に漫画の表紙に描かれている、魔王が気がかりらしい。
勇者の宿敵として設定した、彼のことが。
俺は口の端をゆるめて言った。
「そういえば、あっちの世界に魔王がいるんだよな。いつか会えるといいな」
ルナテミスは、眉を寄せてほんの少し顔を背けた。
その仕草が、言葉以上に“嫌だ”という感情を物語っている。
俺はそれ以上突っ込まなかった。
勇者ルナテミスと魔王ディアーナにはただ、勇者と魔王だけではなく、また別の因縁があった。
それが彼女をここまで不快にさせているのだろう。
「……行こうか」
俺は黒歴史漫画を机の中央に置き、彼女と向かい合った。
「――アルケイディア・ペンナム」
ルナテミスが低く呪文を紡ぐ。
言葉のひとつひとつが空気を震わせ、ページの隙間から白い光が滲み出す。
光は次第に強くなり、部屋の輪郭を飲み込んでいく。
白い光の中、俺はふと現実のことを考えていた。
──仕事、どうしよう。
おそらく、長い間帰ってこられないだろう。
一応、課長にメールでも……と思いかけたが、指先が光に溶けかけていることに気づき、苦笑する。
帰ってきたら事情を全部説明しよう。そう心に決め、気持ちを入れ替える。
光が視界を塗りつぶし、耳の奥で自分の血流の音だけが響く。
現実の音も匂いも、すべてが遠ざかっていく。
そして俺は、再びあの物語に呑み込まれていった。
◇ ◇ ◇
白い光が収まり、視界が落ち着くと、そこは前に召喚されたあの地下施設だった。
冷たい石の匂い、湿った空気、低く響く自分の足音──
長い階段を前に立ち止まり、深く息を吸う。
来たのは二度目場所だというのに、やはり心臓は少し速く打っていた。
──この世界に来ると、どこか落ち着けない。
階段をルナテミスとともにゆっくりと登る。
手すりに触れ、足元の石畳の冷たさを感じながら、一段一段を確かめるように踏みしめる。
足音が石壁に反響し、松明が燃え盛っていながらもどこか薄暗い地下施設の空気を震わせる。
俺の胸の奥に、小さな高揚感と緊張が入り混じった。
この先で、またあの世界の人々と顔を合わせるのだ。
階段を登り切ると、視界がぱっと開けた。
城の大広間。
大広間の天井は高く、天窓から差し込む光が石の床を淡く照らしている。
空気は澄んでいるのに、どこか華やいだ緊張感が漂う。
そこには、給仕や料理人、女中、そして王族たち──整然と並ぶ顔ぶれが、こちらを待っているように立っていた。
俺、何か悪いことでもしたっけ。
思わずそう自問自答したくなる、何ともいえない圧が俺を襲う。
俺は思わず肩を正した。
中央階段の高いところに、ひときわ目立つ老人が立っていた。
彼は、もしや。
頭の中で彼の設定を思い出す。
グレイス・ヴァルム王国 第92代目国王アルヴァレイン・セリューヌ。
――勇者ルナテミス・セリューヌの父である。
白髪混じりの長い髭を軽く撫で、深い皺の刻まれた顔には、先代勇者としての重みが漂っている。
その目は時折虚ろになるものの、奥で光る瞳は鋭く、王としての威厳を失っていない。
淡い青色のローブに金糸で刺繍された紋章──王家の紋章が胸元に輝き、肩には簡素ながらも堂々たるマントが掛かっている。
杖を頼りに歩く姿は少しよろめくものの、長年の経験から培った威圧感は衰えていなかった。
「小生は、グレイス・ヴァルム王国 第92代目国王アルヴァレイン・セリューヌである!」
国王の声が大広間に響き、皆が一斉に目を向けた。
「挨拶が遅れてしまい、申し訳ない、創造主殿……!
本来であれば、創下がこの荒れ果てた世界へと降臨なされたその瞬間に、小生らは国を挙げて感謝と崇敬を捧げるべきでありました。
しかしながら、混乱と無力に苛まれ、然るべき機会を得ぬまま……この日まで、言葉をお届けできずにおりました。
どうか、この不敬――お許しいただきたく存じます。」
その声には、かすれた老齢の響きと、それ以上に深い感謝の念が混ざっていた。
国王アルヴァレインは、杖を軽く握り直し、深く頭を下げる。
「もう一度この世界に向き合っていただき、この国を、我らを、救ってくれたこと……その御恩は、言葉に尽くせぬほどに大きい。
長きに渡り、この世界は混迷に沈みかけていた。
だが、創下が現れ、希望をもたらしてくれたおかげで、民は再び未来を信じられるようになったのだ」
俺は顔をそむけ、少しだけ視線を床に落とした。
――こんなに感謝されるほどのことをした実感は、正直、まだない。
だって、この世界を終焉に導いてしまったのは、他ならぬ、俺自身なのだから。
それでも国王は真剣に、心からの礼を述べていた。
「そして……」
アルヴァレインの声は一層静かに、しかし確かに力強く響く。
「これからも、この世界を救おうとしてくれることに、心から感謝する!
創造主殿の手で、この国だけでなく、この世界の命が繋がれていくのだ……小生たちはその恩恵を受ける者として、創下に感謝する」
そして国王は、一息ついたのち。
「ありがとう」
そう短く、それでいて魂を震わせる言葉を、俺に遺した。
声を震わせながら放った声に呼応して、この場にいる誰もが頭を下げる。
――ルナテミスも。
国王は再び目を閉じ、少し肩を震わせた。
その動作は、統治者としての威厳だけでなく、民を思う老齢の体の震えでもあり、そして俺への信頼と期待の形でもあった。
俺は思わず、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。
――俺の存在が、彼らにとっての希望になれてるんだ。
アルヴァレイン国王の言葉は、ぎこちなくも真摯で、重みがあった。
その重みを受け止めながら、俺は静かに頷いた。
「……ありがとう。その感謝に応え、必ずや俺が、この世界を救おう」
口にした言葉は短くても、心の奥には、真っ赤に燃え盛る炎を辺りを焦がす。
――感動。
そう表す他ない状況だ。
だが感動も束の間、国王の足が踏み外したようで、階段を転がり、俺の前に倒れ込みそうに――
反射的に手を差し伸べ、ぎりぎりのところで支えた。
重量感と老齢の重さに、腕の筋肉が小さく悲鳴を上げる。
「あ……あの……大丈夫ですか!」
俺は思わず声を張った。反射的に手を伸ばし、転びかけた国王の身体を支える。
――だが。
「……男が、わしに触るでないッ!」
怒声が空気を裂いた。
俺は一瞬、何を言われたのか理解できずに固まる。
次の瞬間、国王は幼子のように両手をばたつかせ、癇癪を起こしはじめた。
周囲がどよめき、女中が慌てて間に入る。
「こ、こちらの御方は創造主さまであらせられます! 国王様、落ち着いてくださいませ!」
その言葉に、国王はぴたりと動きを止めた。
皺だらけの顔を引きつらせ、目をこれでもかというほど見開き――
「……あ、いや……! 申し訳ござらん、創造主殿! 近頃、少々ボケが進んでおるようでな!」
と、妙に張りのある声で弁解しながら、勢いよく頭を下げた。
だが、その拍子にまた足を滑らせる。
俺は反射的に抱きとめた――その瞬間。
「男が! わしに触るでないと申したじゃろうがァ!」
甲高い悲鳴とともに、国王の小さな拳が俺の胸をぽかぽかと叩く。
周囲の家臣たちは一斉に視線を逸らし、女中が必死に声を張り上げる。
「国王様、ですから!」
だが国王は、声を張り上げ、諫める女中に対してとんでもないことを口にする。
「このババアは誰じゃああ!」
――またか。
胸の奥で、俺は乾いた笑いをこらえながらため息をつく。
さっきも同じように、転んで支えたら癇癪を起こされた。
国王とはいえ、老人なのだ。仕方ない、そう思いながら腕を外そうとした。
だが、そのときだった。
国王の目が、ふと正気を取り戻したように細められた。
次の瞬間、彼の顔がぐっと俺の耳元に寄る。
息は老いの匂いと、どこか土のような湿りを帯びていた。
しわの奥から覗いた唇が、かすれた声で――それでも、はっきりと告げた。
「……誰も彼も、信用するでないぞ」
耳の奥に、針のように鋭い言葉が突き刺さる。
そして次の瞬間、国王は何事もなかったかのように俺の胸から離れ、今度は子どものようにしくしくと泣き始めた。
だが俺は動けなかった。
――いま、なんて言った?
俺の脳裏には、かつての国王の姿がよみがえる。
若き日のアルヴァレイン・セリューヌは、先代勇者として戦場を駆け、決して嘘や冗談を言う男ではなかった。
老いて子どもにも優しくなったいまでも、その芯の部分は変わっていない。
誰も彼も信用するな──あの言葉は、軽い冗談や老人の戯言ではない。
胸の奥に冷たいものが落ち、背筋がじわりと冷え 俺は深呼吸をし、胸の中でその言葉を箱にしまう。
俺は深呼吸をし、胸の中でその言葉を箱にしまう。
忘れることはしない。けれど、いまはまだ、記憶の奥に沈めておく。
◇
大広間の騒ぎを背に、俺とルナテミスは石畳の長い廊下を歩いていた。
背後では国王がまだ涙を拭い、家臣たちが慌ただしく取り繕っている。
「……父上は、あんな人ではなかったのにな」
ぽつりと漏らされた声は、今まで戦場で聞いてきた勇者ルナテミスとしての声音ではなく、ひとりの娘の声だった。
俺は足を緩め、彼女の横顔をうかがう。
「あの人は誰よりも先に剣を抜き、誰よりも先に敵陣へ駆ける人だった。
大地に雷を呼び、空に剣を掲げるその姿は……この国の民にとっても、我にとっても“英雄”だった。
だけど数年前から、まるで人が変わったように……癇癪を起こし、忘れっぽくなり、我を見ても娘だとわからない日もあるように」
唇を噛むルナテミスの目の奥に、淡い影が差す。
やがて俺たちは、重い扉の前に立った。
「ここは……談話室だ」
鉄に刻まれた紋章は剣と魔術陣。かつて先代勇者アルヴァレインが有事の際、使っていたものだ。
ルナテミスの声が少しだけ硬くなる。
扉が軋みを上げて開く。
中は冷たい空気に満ち、壁一面に地図が貼られ、終焉の穴の位置、各地の兵力配置が細かく記されている。
大きな円卓には水晶や巻物が並び、幾人かの兵士や書記官が低声で打ち合わせをしていたが、俺たちが入ると同時にすっと下がり、扉が閉じられる。
「この間は門番に襲われて……ゆっくり話すことは叶わなかったが、世界を救うための具体的な作戦を此方で用意している」
ルナテミスは椅子に腰を下ろし、指先で地図を押さえた。
「でも、その前にひとつ聞いておきたいんだが……」
俺はその手を見つめながら、ずっと喉の奥につかえていた疑問を口にする。
「あのとき、門番に襲われた時、お前、こう言ってただろ。
『門番!? なぜだ! 穴に近づかなければ出現しないはずのお前が、なぜだ!』
……って。あれ結局、なんで現れたんだ?」
ルナテミスの手が止まった。
「……それがの、未だにその一切が分かっておらんのだ。あれは本来、終焉の穴に近づかない限り姿を現さない存在。
第一、この国にあった穴は、空にあった。
民草には、如何なる理由があろうと近づくなと命じておったし、もし仮に誰かが近づこうものなら、此方で察知できていたはず……。
だが、そんな記録などなかった」
「じゃあ、なにか異次元な力が働いたとでも?」
「……やもしれん」
彼女から意外な答えが返ってくる。
「本当にそんな力を信じてるのか?」
「そんな訳なかろう。
ただ、異次元な力を信じてしまうほどに、この問題はあまりに未知数なのだ」
ルナテミスは自嘲気味に笑い、視線を落とす。
俺は手を上げ、言葉を挟んだ。
「悪い、話を遮ってしまったな。作戦のこと、聞かせてくれ」
彼女は顔を上げ、小さく首を振った。
「いや……その前に、同席させたい者がおる」
そう言うと、彼女は奥の扉に向かって声をかけた。
その瞬間、部屋の片隅で控えていた影がわずかに動く。
地図の上のランプがゆらぎ、壁に長い影が伸びる。
誰かが呼ばれる──。
鼓動が静かに、しかし確実に速まっていく。胸の奥で、あの“誰も信用するな”という声が再び響く。
俺は無意識に背筋を正し、指先の汗を拭った。
扉は開かれた。




