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《テール=エクリプス》~君が物語を描くことをやめた、その瞬間――世界は崩れはじめた。~  作者: たまごもんじろう
第4章 魔界『ヘルヴァナ=アスタロディア』

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第76話 大好きな創造物たちの、願いに応えるために

 『物語歪曲者』の上空――その闇の彼方に、再び幾億という魔術式が輝き、無数の聖槍が形を成しはじめていた。

 

 大気が震え、世界そのものが悲鳴を上げるような光景に、俺の胸は凍りつく。


 (……連戦に継ぐ連戦で、俺たちはもう満身創痍だっていうのに。

 これ以上どう戦えって言うんだ……)


 絶望が、『物語歪曲者』の影と共に頭上へ降りてくる。


 そして――光雨のように、魔術と聖槍が降り注ぎはじめた。


 その刹那、ザルギエスが俺たちの前に躍り出る。

 一本しか残っていない腕が風を裂き、迫り来る魔術を叩き落としながら叫んだ。


 「ここはボクちゃんに任せてくださいッす!!

 ……あ、別に死ぬつもりなんて、ありませんよ」


 軽口とは裏腹に、その瞳は覚悟と緊張で研ぎ澄まされている。

 続けて、鬼気迫る怒号――


 「だからッ! 早く逃げるんだッ!!!」


 その声が引き金となり、エリザシュアが、俺とイグフェリエルの腕を掴む。

 傷だらけのエリが、ふらつきながらも呪文を唱える。


 「ザルギエスッ!!」

 

 俺は叫び、足を踏み出す。

 共に戦うために。仲間を置いて逃げるわけにはいかない――


 だがエリザシュアとイグフェリエルの力が、それを強引に押し留める。


 「修一くんっ、今は……! 今は撤退が最優先です!!」


 転移魔術の眩い光を放つその直前――俺の視界に、ザルギエスの身体が幾つもの聖槍に貫かれていく姿が焼きつく。

 鮮血が散り、光に呑まれ、仲間の姿が遠ざかる。


 次の瞬間、世界が反転した。


 眩しさが消えたとき、そこは海に囲まれた小島だった。

 波の音だけが、やけに静かに響く。


 エリザシュアが膝をつき、血を吐きながら苦しく咳き込んだ。


 「エリ!! 大丈夫か!?」


 俺が抱きかかえるように支えると、彼女はかすれた声で答えた。


 「……申し訳ございません……本当は北の森の、わてちしの館まで転移したかったのですが……

 少々、疲労が積もっているようで……」


 イグフェリエルが背をさすりながら寄り添う。


 だが――


 ――バチコォォォオオンッッッ!!!

 世界そのものが割れるような轟音が、海の下から這い上がってきた。


 振り向くと、海面に巨大な大穴が空いていた。

 まるで魔界という大地すべてを食い尽くすような、崩壊の孔。


 その中心から、小さな影が浮かび上がる。


 『物語歪曲者』だ。

 あの黒髪の女が、再び姿を現した。


 きっと彼女は、先程までは、俺がいたから本領を発揮していなかっただけで、

 本来は世界を簡単に滅ぼせるんだ……そうに違いないと確信した。


 俺たちの顔から、希望の色が消えていく。

 これはもう、抗えない、終わりだと悟ってしまうほどの絶望。


 だが、エリザシュアとイグフェリエルは互いに顔を見合わせ――

 

 強く、覚悟を決めたように頷き合った。

 そして俺の方を向く。


 エリザシュアが涙をこぼしながら微笑んだ。


 「修一くん……色々とひと悶着はありましたが、わてちしは……貴方と出逢えてよかったです。

 そして貴方の想い人でもあったエリさんの意思を、わてちしに継がせ……オサムくんという最高の伴侶を恵んでくれて……

 

 ――ありがとうございましたっ!」


 俺の頬を、自然と涙が伝う。


 続いて、イグフェリエルが、子どものように泣きじゃくりながら言う。


 「修一様……貴殿に言っていただいた、あのときの台詞を、つい先ほど言われたかのように、覚えております。

 此方らを、絶望の沼から救っていただき……ほんとうに、本当に……ありがとうございましたっ!」


 その言葉に、俺は喉を震わせながら叫ぶ。


 「……おい、なんだよ、それ。今生の別れみたいな言い方すんなよ……。

 俺も最後まで戦うから――泣くんじゃ――」


 言い終える前に、イグフェリエルが祈るように呟く。


 「シェラフィアス……修一様のことを、どうか……!」


 直後、俺の身体を、巨大な力がつかみ上げた。


 世界が反転し、足元が遠ざかる。

 エリザシュアとイグフェリエルの姿が、豆粒のように小さくなる。


 俺は何に掴まれたのかを確認し、目を見開く。


 天界の大天使――

 シェラフィアス=エル=ヴァルハイルの巨大な手が、俺を掴んでいた。


 「……シェラフィアス!? 

 いや、それよりも!! 早くエリたちのところに戻してくれ!!

 俺は最期まであいつらと一緒に――ッ!!」


 俺の叫びを遮るように、大天使は厳しい声で叩きつける。


 「――なりません……ッ!」


 シェラフィアスの翼が、破れた旗のように風を裂いた。

 その瞳には涙が滲み、けれど声だけは揺るぎなく、俺へと向けられる。


「先程……救星神イグフェリエル様より、天界の民へと思念が伝達されました。

 

 ――創造主様を、何としてでも元の世界へ返還せよ。この世が滅ぶ前に、と。

 

 妾たちは……その覚悟に報いなければならないのですッ!」


 彼女の声が裂ける。涙が頬を滑り落ちる。

 それは天使の涙というより、ひとりの少女の祈りに近かった。


 ◇


 ――そして、一方その頃。


 迫りくる『物語歪曲者』を前に、エリザシュアは震える指先を必死に押しとどめていた。

 

 死がすぐ隣まで迫っている。

 それでも視線だけは決して逸らさない。

 

 そんな中、ふっと表情を和らげた。


「……最後に、背中を預け合うのが貴方で良かったです、イグフェリエル様」


 言葉はかすかに震え、しかし優しさが滲む。

 イグフェリエルは一瞬きょとんとして、それから俯くような声を漏らした。


「……じょ、冗談言わないでくださいよ……。

 本当は、オサムくんっていう恋人さんと、一緒にいたかったんじゃないんですか?」


 その声音には、救星神の威厳も神としての気高さもなかった。

 ただ――幸福を祈る少女の声だった。


 エリザシュアは、その言葉に一度だけ表情を陰らせる。

 けれどすぐに微笑みを作り直す。


 イグフェリエルは小さく息を吸い、意を決したように囁く。


「……ひとつ、お願いがあるんですけど」


「なんですか?」


 震える声に、エリザシュアは優しく返す。


「……もし、また出逢えたら、そのときは……。

 此方の友達になっていただけませんか。魔女と救星神としてじゃなくて……少女として。

 あ、その……此方、友達とかいないんで……」


 その告白に、エリザシュアは小さく微笑んだ。


「もし、そのようなことがあれば。友達になりましょう――イグフェリエル」


 名前を呼ばれた瞬間、イグフェリエルの瞳から涙が溢れた。

 だが彼女は首を振り、涙を振り払う。

 

 次の瞬間には、凛とした視線で『物語歪曲者』を見据えていた。


「……よろしくお願いしますね、エリザシュア」


 ◇


 俺の耳に、世界の終わりを告げる轟音が届いた。

 

 振り返る。

 そこには、地平を裂くほどの大爆発の光があった。


 胸の奥が焼け焦げるように熱くなり、声が漏れる。


「……エリ……イグフェリエル……」


 涙がひと筋、頬を伝い落ちた。

 

 そして、確信した。

 エリザシュア・ルミナとイグフェリエル=テラ=オルディアは、死んだ、のだと。


 前方には北の森――氷結の月影林フロストムーン・ルミナが見える。

 しかし背後から、翼を広げた『物語歪曲者』がゆっくりと浮かび上がり近づいてくる。


「修一?

 あの被創造物(モブキャラ)の、足止めは無駄だったよ。

 今なら許してあげるから、さぁ、こっちにおいで」


 媚びるような囁き声。

 魂の奥に触れるような誘惑。

 だが――


 天から、無数の光。

 幾百の天使たちが降下し、『物語歪曲者』に向けて弓や槍を構えた。


「やめろッ! お前らが敵う相手なんかじゃ――!」


 俺の叫びは、間に合わなかった。

 天使たちの身体は、まるで紙細工のように、いや――豆腐のように柔らかく破裂し、血と光だけを残して崩れ落ちる。


 『物語歪曲者』は、ついに俺の眼前まで来た。


 その瞬間――


「――創造主様、御達者で」


 シェラフィアスが微笑み、そしてそのまま、俺を北の森目掛けて、投げ放つ。

 

 俺が拒絶の言葉を叫ぶ間にも、シェラフィアスは天界に手を伸ばし、

 幾億もの聖槍を引きずり出すように空へ展開した。


 口から血を噴き、目からも赤い涙を零しながら。

 身を破滅させる勢いで、『物語歪曲者』へと飛びかかる。


 ◇


 俺は地面に叩きつけられ、視界がぐにゃりと揺らいだ。

 頭を押さえながら身を起こすと――


「ほんとーに、お父ちゃんが来た!!」


「わーいわーい、創造主様だー!」


「お久しぶりです、創造主様」


 聞き慣れた声が、半ば泣きかけの俺の耳に飛び込んだ。


 顔を上げると、そこには――

 没世界で出会った人形の少女・モルフィーナ。

 北の森の妖精。

 そしてエリザシュアの恋人である兵士、オサムが立っていた。


 オサムは姿勢を正し、礼儀正しく頭を下げた。

 その声は極限の状況とは思えないほど澄んでいた。


「エリザから、事のあらましを聞き及んでおります。

 さっ、早く元の世界へ、お帰りになってください!」


 そう言うや否や、彼は俺の手を強く引いた。

 現実世界へ繋がる魔術陣――魔女の館、二階の私室へ向かうために。


 だが俺は足を踏ん張り、必死に抵抗する。


「……だ、だめだ! お前たちを置いてなんか行けるか!

 俺もあいつと、たたか――」


 叫び終えるより早く、乾いた音が響いた。


 ――ぱっちん。


 頬を叩いたのは、人形の少女モルフィーナだった。

 陶磁器に似たその手が震え、瞳の奥には苦痛が渦巻いている。


「お父ちゃん……それは、戦ってるみんなのことを思って言ってるんだろうけど……全然嬉しくないよ」


 声がひび割れ、涙が溢れる。


「だって、みんな……お父ちゃんに生きていて、欲しいんだから。

 あたいたちを生んでくれた、大好きな創造主様に――」


 そして、彼女は今にも壊れそうな笑みを浮かべた。


「……大丈夫。

 あたいたちは、お父ちゃんの心の中で生きられるだけで……幸せだよっ!!」


 きっと本当は死ぬのが怖くて仕方がないに違いない、そんな表情を彼女はしている。

 そしてそんな彼女を見ていると、自分がどうにもなく情けなくなった。


 そして――決意を押し殺すように、俺たちはエリの私室へ向かう階段を上がった。


 大好きな自分の創造物たちの、その願いに応えるために。


 ◇


 エリの私室の扉を開いた瞬間、俺は息を呑んだ。


 室内は血の絵画のようだった。

 壁も床も、紅色が滴り、濃密な鉄臭さが空気に張り付いている。


 その中心に――『物語歪曲者』がいた。


 白い指先でぶら下げているのは、シェラフィアスの生首。

 血管と髪が絡まったそれを、まるで玩具のように揺らしていた。


 あの一瞬の間に、すべての天使を殺し、先回りしたのだろう。


 俺はたじろぎ、一歩後ずさる。

 しかしオサムとモルフィーナは逆に一歩前へ出た。


 全身が震えている。

 死を悟っている。

 それでも二人は背筋を伸ばし、剣と小さな腕で『物語歪曲者』を迎え撃とうとしていた。


「妖精くん!! ここはもうだめだ!

 もうひとつの返還地点へと、転移させるんだ!!」


 オサムが叫び、背後の妖精が頷く。

 すぐに魔術の呪文が紡がれ、俺の周囲の空気が震え始めた。


 その時、扉の入り口や、テラスから這い上るようにして、奔流のように人々が駆けつけてきた。

 没世界の住民たち――かつて俺を殺そうとしていた者たちが、今は創造主を守るために『物語歪曲者』へと挑んでいく。


 だが、次々に崩れ落ちていく。

 それでも、向かっていく。


 一瞬。

 ほんの一瞬でもいいから、時間をつくるために。


 転移が完了する直前、俺の視界に映ったのは――

 

 オサムが胸を貫かれ、倒れ、

 モルフィーナが小さな手を伸ばしたまま崩れていく姿。


 その瞬間、世界が霧散し――


 ◇


 ――俺は目を開けた。


 そこはグレイス・ヴァルム王国。

 俺が初めて、この世界に足を踏み入れた、人間の国。


 背後には巨大な城が聳え立ち、見上げるだけで胸が締めつけられるほどの威容を放っている。


 しかし城下町の方に目を向けた瞬間、俺の血の気が引いた。


 ――奥の方から、『物語歪曲者』がやって来る。


 歩くだけで、人が、町が、世界が消えていく。

 横切ったものの存在を、溶かすようにして、こちらへ向かってきている。


 俺は急いで城の中へ駆け込み、大広間の隅にある階段を下りる。

 

 薄暗い螺旋階段。

 松明の影が揺れ、息を切らしながら深部へと向かう。


 やがて――懐かしい、あの地下施設に辿り着いた。

 初めて俺と、勇者ルナテミスが相まみえた、あの場所に。


 石畳に囲まれた薄暗い空間。

 現実世界と繋がる赤い魔術陣が、沈黙した心臓のようにそこにあった。


 そしてその前に、ひとりの蒼髪の少女が立っていた。


「あーあ。負けちまったか……」


 そんなことを小さく呟いたのは、断罪の四骸――ヴァルティーア=シャリンハイム。

 いや正確には、その中に入っている、月からの侵略者。

 

 その瞳は悔しさと、どこか諦念の入り混じった色をしていた。


 俺は何か言おうと、彼女へ一歩近づいた。

 だが蒼髪の少女――ヴァルティーア=シャリンハイムは、手をひらりと上げ、俺の言葉を封じた。


「いいか、創造主様。一回しか言わねぇから、ちゃんと聞けよ」


 その声音は、どこか湿り気を帯びた決意の響きだった。


「『――アルケイディア・ペンナム』っつぅ、呪文を唱えて、早くお前の世界へ戻れ。

 そんだら、何よりもまず、名無しちゃんたちの世界を燃やして灰にしろ。


 ――それから先は、もうこの世界のことなんか忘れて、幸せに生きろ」


 その一言一言が、まるで俺の胸の中心へ杭として打ち込まれるようだった。

 だからこそ、俺は思わず喉が裂けるほど声を張り上げた。


「……燃やすっつったって、この世界はどうなんだよ!」


 叫びは虚空に響き散り、返答は得られなかった。

 代わりに――。


 階段の上から、ひたひたと、粘りつくような足音が下ってくる。

 闇を剥ぐような少女の声がした。


「……修一、ここにいるんでしょ~?」


 声だけで肺の奥が凍りつく。

 紛れもなく “あいつ” だ。


「……もう目の前まで来てんぞっ! 何秒の時間を稼げるか分かんねぇ――だから早く行けッ!!」


 焦りで震えながらも、ヴァルティーアは俺の背中を押し飛ばすように怒鳴った。

 その気迫に、俺は反射的に魔術陣の中心へ膝をつく。


 赤い陣の紋様が、鼓動のように明滅する。


 そして――階段の足音が静止した。


 目の前。

 闇の手前。

 遂に、『物語歪曲者』と名乗る少女が姿を現した。


 黄昏の瞳。

 狂気を煮詰めた笑み。存在だけで空気が歪む。


「あぁ、やっぱ、お前だったんだ。

 裏で、魔王様とこそこそやっていたのは。ヴァルティーア=シャリンハイム。

 ……いいや、“月からの侵略者”」


 刹那、ヴァルティーアは迷いなく、その声の方へ鋭い視線を向けた。


 「お前が、あんまりにも被創造物(モブキャラ)だから、忘れちまっていたよ」

 『物語歪曲者』は、そんあ嘲笑も交えた言葉を発する。

 

 俺は喉の奥で息を呑み、震える唇で呪文を結ぶ。


「――アルケイディア・ペンナム」


 世界が爆ぜる。

 俺の身体が白い光に包まれ、視界が溶けていく。


 その刹那。

 振り向きもせず、彼女――月からの侵略者は言った。


「……もし、何か困ったことがあったら、()()戻ってこい」


 その言葉の真意を理解する前に、俺の世界は白に塗り潰された。


 

 ◇ ◇ ◇


 

 ――そして白が静かに晴れる。


 そこにあったのは、見慣れた……いや、久方ぶりに嗅ぐ現実の匂い。

 俺の自室であった。


 床には一冊の漫画が落ちていた。

 『天魔双極~幻影幻想曲第14番 <Phantom Fable>』


 かつて俺が描いた、漫画のタイトル。

 そして、先程までいた世界の名。


 俺は震える手でその紙束を掴むと、キッチンへと足を引きずる。

 ライターを探し、親指をかけ――火を点けかけたところで、胸の奥をかき乱す葛藤が襲いかかった。


 ……これを燃やせば、あの世界はなくなる。


 頭の中に、あの世界の仲間たちの顔が、一人ずつ浮かんでは消える。

 そのひとりひとりが、炎に呑まれ、灰になっていく幻が見えた。


 迷いの中、俺の手の中の漫画が――白く光る。


「……ッ!?」


 紙束の中心から、手が伸びてきた。

 そして、狂気に歪んだあの『物語歪曲者』の少女の顔が、現実世界へと覗き出す。


「修一……修一っ!!」


 声は飢えた獣のよう。

 世界を喰らい尽くす侵略者が、この現実へ侵入しようとしている。


 俺は歯を食いしばり、覚悟を押し込むように火をつける。

 だが――『物語歪曲者』の手が火を払った。


「……ッ!」


 ライターだけでは押し切れない。

 俺は台所へ手を伸ばし、サラダ油を掴み、紙束へ思いきりぶちまける。


 そして――火花。


 紙は瞬く間に爆ぜるように燃え上がり、炎の舌が『物語歪曲者』の影を舐め殺していく。

 少女の手が引き裂かれ、狂気の声が遠ざかり、気配が霧散していった。


 ゆっくりと。

 確実に。

 

 紙束は灰に変わった。


 俺は燃え尽きた真っ黒な灰を見つめながら、静かに涙を零した。

 膝から力が抜け、大の大人が子供のように崩れ落ちる。


 そして――心がひび割れる音を聞いた気がしながら、俺はただ泣き続けた。

 もう会えることのない、仲間の顔を思い浮かべながら。

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