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《テール=エクリプス》~君が物語を描くことをやめた、その瞬間――世界は崩れはじめた。~  作者: たまごもんじろう
第4章 魔界『ヘルヴァナ=アスタロディア』

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第69話 行けるか、黄昏

 ――時は遡る。

 

 修一は、深海へ潜っていた。

 何度も、何度も。

 

 肺が焼けつき、骨が軋むたびに、それでも潜る。

 そこにいる生物を、ただ倒し続ける日々。


 ようやく海面へ戻った修一の身体は、血と海水に塗れ、今にも崩れ落ちそうだった。

 陸が足につき、一呼吸おいた瞬間、もう次の深海へ戻ろうとする。


「……創造主様ッ!!」


 砂浜に待ち構えていたリザードマン・スヴェイルドロスが、悲鳴に近い声で駆け寄ってきた。


「流石に、そろそろ休憩しましょうよ……!

 手前らはずっと陸地にいるので、海での時間感覚なんてわかんないですけど、かなりの年月潜り続けてるんじゃないんですか!?」


「……だめぽにゅ……」

 スライムのぽにゅが、涙を震わせながら修一の脚に縋りつく。

「創造主様、死んじゃうぽにゅ……」


 それでも修一は、千鳥足のまま,海へ向かう。

 止まる気配は一切なかった。


 その背へ、低く重い声が投げかけられる。


「創造主殿、ひとつだけ、聞いても宜しいですかな」


 振り返れば、月光に似た銀髪――ルナテミスの父。

 国王アルヴァレイン・セリューヌが、威厳を湛えた目で立っていた。


「どうして、そこまでの覚悟がおありなのでしょうか」


 修一は、ふらつく身体を支えながらも笑った。

 苦しげなのに、不思議と優しさの滲む笑みだった。


「この世界が……皆のことが、大好きなんだよ」


 血の味を滲ませたまま、それでも言葉を繋ぐ。


「見捨てたくせに、なんて思うだろうが……。


 ――俺はこの世界を救いたいんだッ!!」


 その気迫に、国王たちは言葉を失った。

 ただ、海へと戻っていく修一の背中を、誰も止められずに見送るしかなかった。


 ――修一は潜った。

 さらに深くへ。

 海水は重く、暗闇は濃く、圧力は骨を粉砕しようと襲いかかる。


 やがて、海の底へ辿り着いた。


 静寂。

 しかし、その静寂の裏に死の気配がある。

 背後で水が裂け、巨大な影が迫る。


 今までとは比べ物にならない。

 深海そのものが、この世の憎悪と死を凝縮させたような、巨体。


 修一は双剣の片割れ、白夜を握り締める。

 その白い光が、闇の底でかすかに揺れた。


 修一は迷わず斬りかかった。

 だが鱗は鉄壁。


 刃はかすりもしない。

 何度斬っても通らず、腕が悲鳴を上げる。


 それでも渾身の一撃を叩き込むと――

 刃はようやく沈んだ。

 だが、わずか数十センチ。


 そして刺さったまま抜けなくなった。


 修一は全力で引き抜かんとする。

 抜けた……だが、刃の根本がすっぽ抜けた。

 白夜の切っ先が、そのまま巨体に残ってしまったのだ。


 深海生物の顎が開いた。

 修一は反射的に後退し、代わりに極夜を構える。

 

 かつて魔王との戦いで砕かれた、粗末な刃。

 それ故、結局如何なる攻撃も与えられない。

 

 ――そして狼狽しているうちに、噛み砕かれた。


 幸いにも歯茎に挟まったため、即死は免れたが、全身の骨が粉砕される感覚が走る。

 次の瞬間、巨獣は修一を丸ごと飲み込んだ。


 胃袋。

 圧倒的な圧力、酸の熱。

 

 肉が溶け始める。

 皮膚が音もなく剥がれ落ちていく。


 修一は、何の抵抗もできずに、意識が遠のいていく。


 ====


 眼の裏に、仲間たちが浮かんだ。


 グレイス・ヴァルム王国の兵士や人々。

 エリザシュア。

 シャーリア。

 グラウス。

 没世界のモルフィーナたち。

氷結の月影林フロストムーン・ルミナの妖精たち。

 イグフェリエル、天界のシェラフィアス。

 そしてテフ=カ=ディレムの人々。


 ――そして最後に。

 ルナテミス。


 彼女の姿を思い出した瞬間。

 修一は息を吹き返した。


「……るな、てみす……ルナテミス……ルナテミスルナテミスルナテミスッ!!!!」


 振り絞った叫びが、深海の底で震えた。


 それは、愛か。

 はたまた憎しみか。


 その叫びに呼応するように――

 白夜と極夜が、胃袋の闇の中で眩い光を帯びた。


 砕けていた極夜が。

 刃を失った白夜が。


 修一の“右腕”があった場所へと、光の粒子となって集まり始める。


 深海生物の巨体が、胃袋の奥で不穏に脈打った。

 異物――いや、異変。

 何かが内部で膨れ上がっていくのを察し、生物は本能的に対処しようと身をよじる。


 だが遅い。


 穴という穴から、光が漏れ出した。

 血潮にも似た光が、全身の隙間から押し出され、そして――


 次の瞬間、巨体は内側から破裂した。


 破れた風船のように、肉片が水中へ散っていく。

 泡の轟音が深海を震わせ、白い光をまとった「人影」が破片の中から歩み出た。


 修一だった。


 その右肩に――かつて自ら切り落としたはずの場所に――

 ひと振りの刃が同化し、右腕として形を成していた。


 まるで神造。

 まるで呪詛。

 そのどちらともつかぬ異様な存在感を放ちながら、右腕の剣は脈打っている。


 「極夜」は、使い手の心が闇へ沈むほど切れ味を増す。

 「白夜」は、使い手の希望が昂るほど光を鋭くする。


 ――修一が携えていた双剣は、感情という“魂”を糧に進化する。

 それが、この二振りが持つ本来の性質。


 そして今、修一が為そうとする覚悟に共鳴し、二つの剣はひとつへと融合したのだ。


 穴を埋めるように、欠損を埋めるように。

 修一の右腕となったのだ。


 しかし、周囲には――

 先ほど倒した巨体と同じ種族の怪物が、数え切れぬほど蠢いている。


 深海の暗闇が生き物の影で満ちていく。

 それでも修一は、微塵も怯えずに左手で右腕を撫でた。


「行けるか、()()


 その一言とともに、右腕の剣は淡く、しかし鋭利に光を散らした。

 修一が己の右腕の刃に与えた、銘――『黄昏』。


 刃が、静かに応えるようにして光る。


 

 ◇ ◇ ◇


 

 ――そして時は、現在にまで戻る。


 修一は、『死』に辿り着いたことで無限に強化され続ける、ザルギエスの渾身の一撃を受け、廃墟の瓦礫に叩きつけられていた。

 全身が軋む。

 だが心は折れない。


 深海の奥底でそうしたように――

 右腕を撫でる。


「行けるか、黄昏」


 光が、刃の縁で生まれる。


 熾烈な戦いが再開した。


 =

 

 ザルギエスの拳は先ほどよりも、さらに重い。

 ――いや、重い、という言葉では到底足りなかった。

 

 振り下ろされる軌跡ごと空間がたわみ、拳圧が波紋になって押し寄せてくる。

 皮膚の上を焼けた鉄槌が通り過ぎるような、暴力そのものの質量。


 衝撃波だけで第三冥府を崩壊させるほどの威力だ。

 背後で地面が爆ぜ、冥府の黒岩が粉雪のように宙へ散った。

 

 あの拳をまともに喰らえば、骨どころか存在ごと砕ける。

 わかっている。わかっているからこそ――修一は目を逸らさない。


 修一は、すべてを見切る。

 

 ほんの刹那、ザルギエスの肩が沈む。

 その微細な重心移動を逃さず、修一の身体は自然に走り出す。

 

 避けられる攻撃は回避し、避けられないものは右腕――黄昏で受け流し、即座に反撃へと転じる。

 金属が軋むような音と共に、黄昏が拳の軌道をずらした。


 風の流れが変わる。

 重圧が逸れる。

 反撃の筋道が一瞬だけ開く。


 そしてついに、修一は狙いすました一瞬に身を投じた。

 呼吸が一段落深まり、世界の音が遠のく。

 筋肉が収束し、次の瞬間に放つ“究極奥義”のための体勢へ――修一は滑り込んだ。


 ――しかし。


 ザルギエスは圧倒的な暴力をもって、その企図を粉砕する。

 

 まるで修一の意図を最初から見ていたかのように、四本の腕が一斉に動いた。

 空気が悲鳴を上げ、冥府の闇そのものが巻き上がる。


 薄ら笑みを浮かべ、言った。


「修一先輩、さっきから何かをしようと必死っすね。

 でも、何もさせねぇっすから、安心して死んでくださいよ!」


 挑発ではない。

 確信。

 その声が耳の奥にへばりつく。


 ザルギエスの笑みが、獣じみた余裕に変わった刹那。


 来る。


 修一の直感が、警鐘を鳴らす。

 ザルギエスの膝が沈み、足首がひねられ、腰があまりにも滑らかに歪む。


 ――蹴りだ。


 ザルギエスが回転した。


 回転――回転――さらに回転。


 肉体が乱舞のようにしなり、空間をえぐる軌跡が螺旋を描く。


 修一は黄昏を構え、全神経を集中させた。


 「――ッ!!」


 防ぐ。

 受ける。

 逸らす。

 弾く。

 だが、すべてを捌ききれるわけではない。


 一蹴目。

 黄昏が軋み、火花が散る。


 ニ蹴目。

 足元が陥没する。


 三蹴目。

 視界の端で、第三冥府の大地が悲鳴を上げる。


 そして――。


 四蹴目が、修一の刃を通じて、衝撃を与える。


 黄昏が悲鳴を上げる。

 衝撃が腕を逆流し、肩、首、脳髄へと揺さぶりをかけた。


 「ッ――が……ッ!」


 修一は刃で受けたが、衝撃で脳が揺れ、視界が白く点滅する。

 

 受けた瞬間、右腕の刃が悲鳴を上げ、全身が後方へ跳ね飛ばされた。

 白い閃光が視界を覆い、世界がぐらりと回転する。

 空と地の境界が曖昧になり、耳鳴りが爆音のように響く。


 ――意識が一瞬、外れる。

 

 その一瞬を見逃すザルギエスではない。

 殺到する。

 すべてを、終わらせようと。


 ――だが、そこで不可解なことが起きる。


 大地から生えた蔦が一斉に伸び、ザルギエスを絡め取る。

 

 空からは光を宿した槍が降り注ぐ。


 その程度など、今のザルギエスには何の意味もない。

 

 だが。ほんの一瞬――

 ミリ秒の隙が生じた。


 修一にとっては、それで、それだけで十分だった。


 視界を定め、踏み込む。

 右腕の刃――黄昏から光粒子が溢れ出し、空気を焦がす。


 究極が生まれようとした、その刹那。


 ザルギエスが、敗北を悟ったかのようにして、小さく呟いた。


「……あとは色々、頼みますよ」


 その声には、不思議な別れの気配があった。


 修一は、「あぁ」、と答えるように息を吐き――

 刃を振り上げ、口ずさむ。


 「――|天命絶光交錯斬《リヴァース=アーク=オブリヴィオン》ッ!!」


 |天命絶光交錯斬《リヴァース=アーク=オブリヴィオン》

 ――勇者ルナテミスが誇る、究極奥義の名を。


 戦場に満ちる“損壊”と“絶望”を、そのまま攻撃力へと転換する究極奥義。

 建物の破壊、流れた血、折れた叫び――それらすべてが刃に宿り、

 周囲へ連鎖的に叩きつけられる希望の一撃。――


 次の瞬間――右腕の“刃”が、低く啼いた。

 呻きにも咆哮にも似た振動が、修一の骨格の奥まで突き上げる。


 そして。


 黄昏の刃が、光を噴いた。


 それはただの閃光ではない。

 世界の骨組みそのものを焼き切るような、理を逸した奔流だった。

 

 色も、形も、概念すらも持たない滅びの光。

 第三冥府の黒い大地に、音ではなく――断末魔のような歪みを走らせる。


 地平が震えた。

 冥府を覆う空が、バキリ、と硝子の天蓋のように亀裂した。

 縦に、横に、斜めに、無数の裂け目が走り、闇がその隙間から悲鳴のように漏れ出す。


 奔流が前方へ伸びる。

 地を抉り、空間を剥ぎ、重力すら巻き取りながら――

 ザルギエスを丸ごと呑み込んだ。


 四本の腕が咄嗟に交差し、全身の筋が膨れ上がる。

 だが、その防御は光の渦に触れた瞬間、紙片のように吹き飛んだ。

 拳の加速も、肉体の強度も、この滅びの奔流にはいささかの抵抗にもならない。


 ザルギエスの輪郭が、光の中で千切れ、

 伸び、

 溶け、

 また形を取り戻ろうとして――間に合わない。


 奔流は、ただ世界を削る。

 そこに触れたものを、因果ごと融解させる。


 冥府の地面が沈み、

 暗闇が巻き上がり、

 天空の裂け目がさらに広がり、

 全てが黄昏色に染まる。


 視界の端から端まで、世界が塗りつぶされていく。


 刃を握る修一の腕に、光が逆流しそうなほどの圧がかかる。

 骨が軋む音が、意識の奥に直接響く。

 

 それでも――彼は離さない。

 この滅びは、彼自身の“覚悟”なのだから。


 奔流は吠え、冥府は揺れ、

 そして世界は、一度、呼吸を止めた。


 その静止の中心に、修一と黄昏が立っていた。


 やがて光が収まると――

 削れた大地だけが残されていた。


 こうして修一は、

 断罪の四骸――ザルギエスに勝利した。


 ◇


 そして修一は荒く上下する呼吸を必死に整えながら、魔王城へと続く“地獄の扉”を探していた。


 湖の向こう、遠くに禍々しい黒い門が見える。

 視界の揺らぎを、押さえ込むようにして走り出したその瞬間――。


 ひび割れ、骨が露出し、削れ落ちた死神ネクロフィリア=シャリンハイムが、無言で行く手を塞いだ。

 修一は咄嗟に刃――右腕となった《黄昏》を構えようとしたが、影がふたつ、真上から降り立つ。


 大魔女エリザシュア・ルミナ。

 そして救星神イグフェリエル=テラ=オルディア。


 ――きっとザルギエスとの戦闘で起きた、不可解な魔術と槍の援助は、彼女らによるものだろう。


 落雷のように放たれた魔術と聖槍の閃光がネクロフィリアへと殺到し、死神は鎌でそれらを受け止め、火花を散らした。


「修一くん、早く魔王のもとへ向かってくださいッ!! 世界の終焉は近いのですから!」

 エリザシュアが悲鳴のように叫ぶ。


「ネクロフィリア=シャリンハイムは此方らに任せて、先に行くのだ! 修一様ッ!!」

 イグフェリエルの声が重なる。


 修一は一瞬だけ彼女らの横顔を見て、小さく、しかし確かな覚悟を込めて言う。

「任せた、エリ。……イグフェリエル!!」


 修一が駆け抜けていくのを見送るように、エリザシュアは鎌を構える死神に告げる。


「わてちしたちは、貴方たちに『勝利』しました。

 ならば、道を譲っていただいても宜しいのでは?」


 その宣告に、ネクロフィリアの骨の喉奥で、低い笑いが揺れた。


「あぁ……だから、創造主殿には道を譲るつもりであったのだぞ、吾輩は。

 だが、貴様らは、“勝利”していないであろう」


「貴様の言う通りなりや、断罪の四骸ネクロフィリア=シャリンハイム」

 イグフェリエルの声は透明なほど静かだった。

 

「今の修一様にとっては、此方らなど足枷に過ぎん。

 故に、この戦で花を咲かすとしよう」


 次の瞬間、三者がぶつかり合い、大地が悲鳴を上げる。

 エリザシュアとイグフェリエル、そしてネクロフィリアの死闘が始まった。


 ◇ ◇ ◇


 修一はその轟音を背中に受けながら、魔王城への地獄の扉へ辿り着き、それを押し開く。

 

 中は長い洞窟のような道で、彼は迷いなく駆け抜ける。

 やがて、先に一条の光が射した。


 光を抜けた先――巨大な断崖に寄り添うように、荘厳たる魔王城がそびえていた。

 黒い金属が脈動するように鳴き、まるで生きている建造物だ。


 正門の前で足を止めた瞬間、重い門が軋みもなく自動で開く。


 城内の幾つもの扉もまた修一の前で自然に開き、その奥へ奥へと彼を導いていく。

 やがて辿りついた場所――そこにある大きな扉を、修一は知っていた。


 覚悟を吸い込むように深く息を吸い、押し開く。


 そこは、玉座の間。

 初めて魔界に辿り着いたときのことを、思い出させる。

 

 その中央の奥、黒曜石の玉座に、魔王ディアーナが脚を組んで座っていた。


「おや、これはこれは、創造主様ではありませんか」

 

 ディアーナはゆっくりと笑みを浮かべ、逆撫でするような声音で続ける。

「まったく、遅いではありませんか。我は、待ち侘びておりましたよ」


 しかし修一は、なぜか俯いたまま言葉を発さない。

 ディアーナは眉をひそめる。


「おやおや、どうかなされたのですかな? すべての黒幕が目の前に居るというのに、そこまで冷静なのは興が乗りませんな。

 では我の、この忌まわしき計画の動機についてでも、語らおうと――」


 その口上を遮るように、修一が低く呟いた。


「……これで、いいんだな」


 魔王は修一の呟きを受け、ゆっくりと首を傾けた。

「――“これで”、というのは一体どういうことでしょうか。

 まさか、この期に及んで、我に情けでもかけようとお考えでしょうか?」


 玉座の間の冷気が、魔王の声に同調して震える。

「我が黒幕だと、未だ信じられないのも、無理などありますまい。なぜなら――」

 ディアーナは薄く笑い、胸に手を当てて続けた。


「我は()()()ですからな」


 その笑みがすっと消える。

 代わりに、闇の底から掬い上げたような静謐さが宿る。


「……ふっ。では最期に、ひとつだけ偽りない“真実”をお伝えいたしましょう」


 玉座の間がひと息に張り詰める。


「――田島修一。僕は、貴様が嫌いだ。

 

 あぁ、この世界で“二番目”にな」


 今までの軽薄な色は跡形もない。

 本心だけが刃となり、世界の中心で鳴り響いた。

 その言葉に修一の身体には、稲妻のような衝撃が走った。


 「……なら、一番目は誰なんだ」

 修一の問いは静かだが、覚悟が宿っていた。

 魔王ディアーナは笑みを取り戻し、当然のように答える。


「――僕自身だ」


 その瞬間、ふたりの間にあった空気が音を立てて裂けた。

 魔王が虚空から、ひと振りの剣――『極夜』を携える。

 

 構えるでもなく、宣言するでもなく――ただ、戦いは始まった。


 田島修一と魔王ディアーナ。

 世界の最終決戦が、静かに幕を開けた。

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