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天弓の羽根が望むもの  作者: 櫻井 結
第1章 獅子吼 光宮部隊 副隊長就任
7/7

成年の儀⑦



柾葵と柾行が足を進めると、本殿の前に格衣(かくえ)を身にまとった初老の男が待っていた。


「お久しゅうございます」

柾之介(まさのすけ)、息災だったか?」

「はい。つつがなく過ごしております。柾葵も大きくなったな、ついこの間産まれたばかりだと思っていたがもう成年の儀を迎えることになろうとは」

「お久しぶりです。叔父上もお変わりないようで。」


男の名は久遠柾之介、祈祷師を統括する久遠家に婿入りした柾行の弟であり、柾葵の叔父である。

以前は光宮部隊に所属していたが、先帝の命により許嫁とされていた現久遠家当主である千晶(ちあき)との結婚を機に脱隊し、現在は天弓神宮にて祈祷師統括補佐をしている。


「まずは本殿にて鳳凰様に、次は別宮にて龍神様にご挨拶賜りなさい。その後久遠邸にて御三家当主方とご挨拶だ。」

「かしこまりました。」


「うむ、」と柾之介が頷くと揃って本殿の中に入る。

この神宮では皇族の婚姻の儀などを初めとした様々な儀式などにも使用されており畳張りの床に木造の殿の中は広々としている。

畳と板張りの床の境に木でできた柵が設置してあり、柵の前には座布団が均等に並べられており、そして最奥には木でできた神棚の上に金箔であしらわれた鳳凰像が安置されている。


左端の鰐口の横に柾之介が座り、最前に柾葵が、その後ろに柾行が座った。

柾之介が3回鰐口を叩くと静寂の中に大きな音だけが響き渡る。

音が鎮まったと同時に柾葵は3回頭を下げ、祓串を手に取り左右に振る。

そしてまた再度3回頭を下げ、次は神楽鈴を右手に取りシャンシャンシャンと音を鳴らす。

その後祝詞を捧げ、終わると柾之介が再度3回鰐口を叩きご挨拶が終了した。


本殿でのご挨拶を終えると左側にある別宮にて4柱の龍神にご挨拶を賜る。

最初は自身が寵愛を受けている龍神に3礼4拍手1礼を行い、その後は黒龍、赤龍、青龍の順に同様のご挨拶を行う。

全てを終えて別宮を出ると柾之介が口を開く。


「一人で神事を行うことができるようになるとは、成長したな、柾葵。」

「次期当主として当然のことです!」

「はは、光宮は安泰だな。兄上も安心でしょう?」

「まだまだ未熟だ。調子に乗るな。」


柾葵は褒められると嬉しそうにニコニコしていたが、柾行に釘を刺され「申し訳ありません…」と小さくなっている。


「姪の成長を実感できて私は嬉しいのです。今日ぐらい褒めてあげても良いではないですか。」

「たまにではなく、お前は会う度に甘やかしているだろう?」

「今日は更に特別でも良いではないですか、柾葵が生まれた日なのですから」


柾之介は柾葵の頭をガジガジ撫でて笑う。

嬉しそうに笑う柾葵を見て「全く、」と諦めたように呟くと軽く笑った。


「ご挨拶も終わったことですし、次は久遠邸へご案内致します」


柾之介が神宮の傍にある大きな屋敷を指す。

2人は案内に従って屋敷へと足を進めた。










柾之介より、平屋建ての大きな屋敷の戸を開け中に入り、大広間へと案内される。

襖を開けると真ん中に久遠家当主、千晶、左側に花山院家当主、凛士郎、右側に一条家当主、玲人が座って待っていた。

千晶の対面に柾葵が座り、隣に柾行が座る。

そして畳に手を付き頭を下げる。


「本日、成年を迎え西部を守護してくださっております白龍様より次期当主を拝命致しました。

皇國を皇國民の為に身命を賭して精進して参りますのでご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。」


柾葵が言い終え、柾行と共に頭をあげると次は御三家当主3名が畳に手を付き頭を下げる千晶が口を開く。


「柾葵殿、光宮隊長殿、御成年誠にお慶び申し上げます。皇國の刃であるあなたがたと共に戦う盾として、お支えして参る所存でございます。」


当主達が頭をあげると、柾葵と柾行は「よろしくお願い申し上げます」と再度頭を下げた。


「形式的な挨拶はこれで終わりでいいでしょう、柾葵、成年おめでとう。」


千晶がニコッと笑いかける。


「ありがとうございます、叔母上。今後は任務を共にすることができるのですね!」

「そうだね、私たちと連絡を主に取るのは副隊長だしね、」


部隊の中で一般隊員は戦闘員と祈祷師が別れているが、隊長と副隊長は隊員と祈祷師を兼任しており、副隊長は祈祷師のリーダーとして久遠と連携を取っている。


「柾葵くん、白龍様から賜った大太刀を見せてごらんなさい。」


凛士郎はワクワクした目を柾葵に向ける。

大太刀を手渡すと、凛士郎は鞘から刀身を抜いた。


「ほぉ…白銀の刀身に山吹色の線が2本…柾行殿の大太刀とはまた違った紋様ですなぁ…賜ってから数刻経っているが、何か違和感や不便な所は無いか?」

「ありません、それどころか初めて手にしたはずなのによく馴染んでいます。」

「そうかそうか、何かあればすぐに言いなさい。戦場では小さな違和感が生死に繋がる。」

「わかりました。」


凛士郎は刀身を鞘に収め、柾葵に渡す。

その様子を見ながら玲人が話しかける。


「この後は帝による成年の儀だね、緊張してる?」

「今はまだわかりません…ですが式が近づいたら自覚するのかもしれません」

「他の子たちはすごい緊張して僕らの挨拶からガチガチになってたけど柾葵ちゃんはそんな事ないみたいだね、この様子なら心配する必要はないかな?」

「今日はまだ知っている方々とお話しているだけなので実感がないだけかもしれません。皇居に行けばまた変わるのかもしれません。」


苦笑いを浮かべる柾葵に対し、千晶が笑いかける。


「なんとかなるよ、そんな重々しい儀式でもないし、自分が思っているより早く時間も過ぎる。その場を楽しめばいい。」

「わかりました…頑張ります…!」


小さく決意を固めると、柾行が「そろそろだ、」と声をかける。

改めて一同が座り直すと互いに頭を下げる。


「本日はお時間を頂き誠にありがとうございました。失礼します。」


「気をつけて、行ってらっしゃい。」


柾葵と柾行は立ち上がると襖をあけ玄関に向かう。

玄関では柾之介が待っており、靴を履いて外に出ると屋敷の前に停められた車まで見送りをしてくれた。


「柾葵、改めて成年おめでとう。これからの活躍を期待しているよ。」

「ありがとうございます。」

「兄上、ご健勝をお祈り申し上げております。」

「ああ。」



軽く言葉を交わすと2人は車に乗りこみ、柾之介に見送られながら皇居へと走り出した。







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