成年の儀⑥
次は帝都にある久遠邸にて戦闘部隊を支えている裏方をまとめる帝の分家の方々へ挨拶に向かうため、墨谷邸を背に乗り込んだ車が動き出した。
「副隊長!総統括、隊長、副隊長へのご挨拶お疲れ様でした!」
「いやぁ、緊張しました……」
「昨日までは見習いでしたもんね!今日は副隊長が主役の日ですし、各部隊長と副隊長が一同に会されるなんてほとんどないですから。僕だったら頭真っ白になって固まってしまいます、」
「わたしも頭真っ白で話してましたよ、記憶もほとんどないです」
はぁ、と柾葵がため息を着くと新田はニコニコ笑いながら話を続ける。
「次向かうのは獅子吼 祈祷師総統括、久遠様の御邸宅です。我々のパートナーである祈祷師をまとめる統括の久遠家、我々が戦うための武器や祈祷師が扱う神具を作る職人花山院家、我々獅子吼の人間や一般市民まで幅広く診察を行う帝都一の病院の医師一条家の当主様がお待ちです。」
「花山院の方は龍神様のお力を宿した武器を作られているんですよね?わたし達はどういった形で関わるのですか?」
柾葵や柾行たち寵愛を受けたものは龍神の力そのものを身体に宿し、龍神の身体の一部で作られた武器を与えられているが、直接寵愛を受けていない他の隊員達は花山院家が作り、各隊長が力を宿した武器を使っている。
柾葵の問いに柾行が口を開いた。
「我々が使用する大太刀も龍神様の身体の一部と言えど戦闘の中で刃こぼれやヒビが入ることもある。そんな時は花山院に修繕を頼むんだ。」
「なるほど、全く無関係という訳ではないですね。」
2人の会話に新田が続けて口を開く。
「御三家の当主様方は先帝のご子息・ご息女であり、帝のご兄妹であられます。そして御三家は世襲制ではなく帝の御子が後継となられる決まりですので、東宮以外の御子は御三家へ養子に出されることになるのです。」
「淡黄色の髪に翡翠色の目を持って生まれた御子が東宮になる決まりでしたよね?」
「はい。龍神様より寵愛を受けた四家の方々同様に皇族の方は鳳凰の寵愛を受けていらっしゃり、見た目に特徴が現れます。しかし分家の当主様方は寵愛を受けていらっしゃらない先帝のご兄妹なので身体的特徴はありません。どの分家に臣籍降下されるかは御生まれになった時、帝が判断されるのです。東宮のご兄妹である次期当主様方も既に降下されておられ日々修行をされておられます。」
「次期当主様方は今回いらっしゃるのですか?」
「いいえ、今回はご当主様のみで他の方は参加なさらないと伺っております。」
車の窓から見える景色が木々から煌びやかな擬洋風建築の建物へと変わりだし、自動車が走りやすいように整備された道は等間隔に並んだ街灯により車道と歩道が分けられており、歩道には洋装を身にまとった男女が歩いている。
帝都へはあまり来たことがない柾葵は窓の外を眺めながら声を漏らす。
「これが父上達が守ってきた皇國の中心部なのですね…」
「…………わたし達が守ってきたもの…か…。」
柾行が嘲笑を浮かべ呟く。
「父上?」
「いや、なんでもない。帝都には獅子吼の総本部もある。勤務時間中は基本的に本部にいることになるからな。道と場所は覚えているだろうが、我々が動く時間は基本的に夜だ。見習いで来ていた時期は昼間だったからわかりやすかっただろうが暗くなればまた景色も変わる。しっかり街の特徴を覚えておきなさい。」
柾葵は柾行の表情に疑問を持ちながらも、それ以上深入りすることは出来ず、「はい…」と頷いた。
車はしばらく大通りを走っていたが途中で少し細い道に入る。道をぬけた先には大きな鳥居がそびえ立っており、奥には荘厳な佇まいの大社が見えた。
各里に鎮座する龍神を祀る別宮があり、皇國で鳳凰を祀っている神社の総本宮である、天弓神宮だ。
まずは天弓神宮の本殿に参拝した後、斎主である久遠家の邸宅に向かうことになる。
車が鳥居をくぐり、駐車場に車を停めると新田が後部座席を開ける。
「んっーーーっはぁ、、」
柾葵は車から降りると両腕を上にあげて固まった身体を伸ばす。
「では僕はここで待っておりますので。」
「行ってらっしゃいませ。」と手を振る新田に軽く頷き、柾葵と柾行は本殿に向かった。




