成年の儀⑤
中で出迎えてくれた柊斗さんに一礼する。
「光宮柾葵と申します。各部隊長及び副隊長へ成年のご挨拶に参りました。」
「光宮家ご当主、光宮柾葵殿、お待ち申し上げておりました。ご案内致しますのでどうぞお上がりください。」
「ありがとうございます。失礼致します。」
父と揃って頭を下げると靴を脱ぎ大太刀を背から手に持ち替えて屋敷に上がると、柊斗さんが立ち上がり大広間まで先導してくれた。
大広間の襖が開けられると、入って右側に東部当主瑠璃咲 杏里咲、隣に時期当主瑠璃咲 杏香。左側に南部当主緋河 実蓮、隣に次期当主緋河 蓮蒔。最奥に北部当主墨谷 柊斗が座っており、最後に北部次期当主墨谷 柊斗が隣に座った。
総統括の対面に用意された席の左側に父、隣にわたしが座り背筋を正す。
わたしは畳に手を付き頭を下げた。
「本日、成年を迎え西部を守護してくださっております白龍様より次期当主を拝命致しました。
皇國を皇國民の為に身命を賭して精進して参りますのでご指導ご鞭撻の程よろしくお願い申し上げます。」
少し間を置きわたしが頭をあげると今度は墨谷総統括が畳に手を付き、
「光宮家ご当主殿、光宮柾葵殿、ご成年お慶び申し上げます。今後は同じ使命を持つ同志として皇國のため皇國民のために共に最善を尽くして参りましょう」
墨谷家、瑠璃咲家、緋河家が揃って頭を下げた。
「ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。」
再度わたしも頭を下げると全員が揃って頭を上げた。
しばらくの沈黙の後、墨谷総統括が目尻を緩め口を開いた。
「堅苦しい挨拶はこの辺りで終わりにしよう。
杏香や蓮蒔の時もそうだったが柾葵が成年を迎えたとは月日が経つのは早いもんだな…これで後継者が全員成年を迎えたことになるのか…」
墨谷総統括は足を崩し腕を組んで感傷に浸っている。
「次集まる時は柊斗の婚姻の時か?」
「お、なんだやっと腹括ったのか?」
そんな総統括を無視して緋河隊長と父が笑顔で口を開く。
「うるせぇ首突っ込んでくるんじゃねぇよ」
柊斗さんも脚を崩しながら言葉を返す。
鳳皇國に住むわたし達当主、次期当主は帝により四家の中から許嫁が決められる。
副隊長の中で最年長の柊斗さんは瑠璃咲家の次女であり、墨谷部隊の祈祷師である瑠璃咲 杏和と既に婚約しており別邸で共に暮らしているそうだ。
「色々タイミングとかがあるんだよ」
「はっきりしない男は捨てられるぞ?」
隊長達に詰められてタジタジになっている柊斗さんを見ていると頬が緩む。
「今日は俺じゃなくて柾葵が主役の日だろ?ったく……龍神の試練はどうだった?」
自分から話を逸らすようにわたしの方を向き問いかけてきた。
「白龍様からの質問があることは聞いてたけど杯の液体を飲み干せって言われることは知らなかったから結構怖かったよ…あれ確かに液体なのに液体っぽくなかったし味ないし苦しかったし」
「あれ天井と地面どっちがどっちかわからなくなるし胃の中がひっくり返ったみたいに吐き気が来るけどなにも出ないしめちゃくちゃ苦しいよね」
杏香ちゃんがニコニコと笑いかけてくる。
「でも今はなんかちょっといつもと違うというか身体が軽いというか……?」
わたしが腕を組んで首を傾げると、杏里咲さんもニコニコ笑って、
「光宮の力は雷だからな、これから慣れるまでは面白いことになるぞ?なぁ、柾行?」
「そういう杏里咲だって儀式の後は制御できないと泣いていたではないか。」
ふん、と腕を組み鼻で笑っている父の後に実蓮さんがわたしに「みんな最初は同じ道を辿るんだよ」と笑いかけた。
「そろそろ帝都に向かわんとな。柾葵、」
「はい。それでは失礼致します。」
父と共に再度姿勢を正し頭を下げると、大広間を出て玄関へ向かう。
総統括と柊斗さんが揃って見送りに来てくれた。
「じゃあまた明日、総本部で会おう。」
「大変なのはこれからだぞ?沢山可愛がられてこい」
いたずらっぽい笑顔を浮かべる柊斗さんに「お前はまたそんな怖がらせるようなことを言って…」と総統括が顔をしかめる
「大丈夫、柾行も一緒にいるんだ。なんとかなるよ、」
「……頑張ります。」
これから何が待っているのかと不安な気持ちを抱えてわたしは新田さんが待っていた車に乗り込む。
「では総統括、副隊長、失礼致します」
「発進いたします。」
2人に頭を下げると車は帝都へ向けて走り出した。




