成年の儀④
自室の襖を開けると衣類掛けには黒地に金色の刺繍が入った真新しい隊服が掛かっている。
身にまとっている着物を脱いで衣類掛けから制服を手に取ると、袖を通し着替えを済ませる。鏡で制服を身にまとった自身を見て少し頬が緩むとともに少しの緊張感で背筋が伸びる。
大太刀を背中に担ぐと、自室を出て玄関に向かう。
父と母、彰柾がわたしを待っていた。
わたしを目にした父は少し目尻を緩ませ、母は
「うん、似合ってるじゃない」
と笑顔で声をかけてくれる。
「身が引き締まる思いだよ…」
苦笑いを浮かべて母に答えると、父が
「迎えが来ている。行くぞ。」
と顔を引き締めわたしに声をかけると玄関の扉を開けて外へ出た。
外に出ると門の前には車が停められており、光宮部隊に所属する新田さんが待っていた。
「隊長、副隊長、おはようございます!」
「ああ、おはよう。」
父が立ち止まり挨拶を返す。
わたしも立ち止まり挨拶を返す。
「新田さん、おはようございます!本日はよろしくお願いします!」
「副隊長、ご成年おめでとうございます!本日の送迎を担当させていただきます。1日よろしくお願いします!」
「帝に任命されるまではまだ副隊長では無い。あまり早るな。」
「んも〜そんなこと言っちゃって隊長も嬉しいくせに〜数時間後には副隊長になるんですからいいじゃないですか!ね!」
そんなことを言いながら新田さんは後部座席のドアを開けてくれる。まったく…と言いながら父が乗り込む
とわたしも続いて乗り込んだ。
新田さんはドアを閉めると運転席に乗り込みエンジンを掛ける。
「では、行ってまいります!」
窓を開けて母と彰柾に声をかけると、車が動き出した。
軍用車が走るために舗装された道を進みながら新田さんが運転しながら口を開く。
「今から向かう北部はもう雪降ってるんですごい寒いですよ〜」
「北部は黒龍様が守護しておられる地ですよね、あそこはいつも涼しい場所ですけどもう雪が降ってるんですか…」
「そうです!それから北部当主である墨谷様はは獅子吼戦闘部隊の総責任者も務めておられます!副隊長である柊斗様は既に隊長格に勝らずとも劣らない実力の持ち主で副隊長達の中でリーダーのように慕われていらっしゃいます!」
わたしは養成学校卒業後昨日までの半年間、見習いとして光宮部隊に所属しており、その間副隊長としての務めなどを柊斗さんに師事してもらっていた。
厳しくも優しく、時期当主に相応しい器量を持ち合わせておりわたしの憧れでもある。
「柊斗は父である柊成の若かりし頃にそっくりな男だ。里の住人達からの信頼も厚く次期当主としての務めを立派に果たしている。これからも様々なことをあいつから学ぶといい。」
「隊長がここまでべた褒めするなんて珍しいですね!柊斗副隊長に直接仰ればいいのに!」
「こんなことあいつに言えば調子に乗らせるだけだろう。それに次期当主として立派だとは言ったが当主としてはまだまだ未熟だ。」
そんな父の方を見ると新田さんに茶化されて恥ずかしいのか窓の外を見ながら悪態をついている。
父と新田さんが話してくれたおかげで緊張がほぐれてきた。
「もうそろそろ到着しますよ!」
車がだんだん墨谷家に近づくにつれて側道に積もる雪が増えていく。舗装された道に沿って角を曲がると、大きく構えられた門が姿を現した。重々しい雰囲気を醸し出す門を目に再び自然と背筋が伸びる。
「そう構える必要は無い。自然にしていれば大丈夫だ。」
わたしの緊張を感じ取った父が前を見ながら小さく呟く。
はい、と短く返事を返すと車が門の前に停まる。
大きな門がゆっくりと内側に開いていき、中の大きなお屋敷が現れた。
門が開き切るとまた動き出しお屋敷の玄関前で再び停車し、新田さんが運転席から降り後部座席のドアを開けてくれる。
「すぅーーはぁーー………よし!」
軽く深呼吸をして気合を入れると車から降りる。
父も降りたことを確認した墨谷家使用人が戸を開けると、隊服に身を包んだ柊斗副隊長が出迎えてくれた。




