成年の儀②
この山に入ることが許されているのは、
・自身が成年を迎えた誕生日に、宝珠へ力を与えていただくとき
・当主が逝去した時、当主が賜った宝珠の武器を返納し代替わりのご報告に上がるとき
・3人目の龍の寵愛を受けた子が成年を迎える前日に龍に自身が賜った宝珠の武器を返納し隠居する許可 を頂戴するとき
・3人目の龍の寵愛を受けた子が成年を迎える前日に先代と共に、代替わりのご報告にあがるとき
だけだ。わたしの祖父はわたしが9歳の時殉職しており、父が返納と代替わりの御挨拶を賜っている。
わたしは山の入口にある鳥居の前で一礼すると中に足を進める。森の中は青々とした緑が茂り、小鳥がさえずっている。父に言われた通りけもの道のような一本道を歩き続けると奥に注連縄が巻かれた巨大な台座のような岩が見える。
「これが父上が言っておられた巨石…」
ただの岩ではない、神聖な決して汚してはいけない、本能的にそう思わせる様な巨石を前に膝まづくと首から白色の宝珠を外し神棚を模した平らな石に乗せ、手を付き頭を下げ祈りを捧げる。
「光宮家次期当主、光宮柾葵が成年の御挨拶賜りたく存じます。白龍様のお力添え賜り無病息災で本日まで過ごすことができました。誠にありがとうございました。
また、本日より皇國を守護する任を帝より賜ることと相成りました。この皇國を死力を尽くし庇護して参る所存でございます。」
言葉を捧げ終わると頭を上げると巨石の上に巨大な白い龍が鎮座していた。光を放つ白い鱗に金色の紋様が美しく目を奪われる。
《光宮柾葵…お前の宝はなんだ…》
白龍から問いを投げかけられた。
以前父から白龍様と相対した際に必ず護るよう言われた言葉がある…
『白龍様とお目見えした際、必ず何か問われる。その時は絶対に嘘や見栄をはってはいけない。心のままに返答しなさい。邪な心を抱いた時白龍様はお前を見限ってしまわれる。必ず、必ずだ、わかったな?』
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「わたしの宝は…」
家族だ…と言葉を紡ごうとしたところで言葉が喉に詰まる。本当にわたしは家族が宝だと思っているのだろうか?だが嘘かと聞かれれば嘘では無い。ここまで大切に育てて貰ったという思いもある。しかし宝かと聞かれれば言葉に詰まってしまう自分がいる。
「わたしの宝は、、、、今はまだありません。ですがこの里、皇國が宝だと胸を張って言えるように精進してまいります。」
自分の胸に問いかけながら言葉を紡ぎ、真っ直ぐ白龍様の目を見て答える。
すると白龍様は
《………お前の真意を受け取った…次期当主として認め、我の力を与えよう。》
と告げ、額で首飾りに触れると宝珠が浮かびあがった。そして宝珠共に天空高く飛びあがると空に雷雲が立ち込め雷が鳴り出した。
大きな雷が何度も辺りに響き渡り、空を見ると雷雲が大きく動いている。
しばらくすると白龍様が再び降りてこられ、先程まで宝珠が置かれていた神棚を模した平らな石の上に真っ黒な液体が入った盃が置かれた。
《……この杯を飲み干せ》
液体の正体は全くわからない。父にも聞いていないものだ。しかし白龍様の命である以上拒否することはできない。震える手で盃を手に取り液体を全て口内に入れゆっくり嚥下する。
「あ”あ”あ”あ”っっっっ」
盃を落とすと胸を押え地面に蹲った。雷に打たれたかのような痛みが全身に駆け巡り、心臓が握りつぶされるかのような感覚に襲われ、視界が歪み意識が朦朧とする。
《それが身体に馴染んだ時、お前は我の力を扱えるようになる……》
「はぁっ…はぁっ…はぁっ…」
数時間…数十時間耐えていたような気がする…だんだん痛みが治まってくると視界もクリアになってきた。顔を上げると白龍様の姿はもう無く、白龍様が鎮座していたところに大太刀が置かれていた。
「はぁっ……っっ……これが…わたしの…」
大太刀を手に取ると初めて触ったとは思えないほどよく手に馴染んでいる…。
試練を乗り越えたわたしに拍手を送るかのように大きな風が吹き木々を揺らした。




