成年の儀①
鳳皇國は鳳凰と四柱の龍に護られている。
鳳凰に選ばれた者が帝として、龍に選ばれた者が一族の当主として育てられ、この皇國を護る要となっていく。
わたし光宮 柾葵は、鳳皇國 西部に住まう白龍に選ばれし一族、光宮家の長女として「赤茶色の髪に山吹色の瞳」という白龍に寵愛を受ける者の特徴を持って産まれ、光宮家の跡取りとして育てられた。
今日わたしは20歳の誕生日を迎え、成年の儀を執り行うこととなっている。
毎朝太陽が昇るのと同時に目を覚まし、座禅、走り込みや素振りなどの鍛錬を行った後、朝拝で用いる供物を畑から収穫、白龍が清めている湖で洗い、一族の当主とその後継者のみが足を踏み入れることの許されている白龍が住む山の麓に建てられた神殿に付された小屋に運び入れる。
全て終えると沐浴し、神殿で現当主と共に朝拝で祝詞を捧げ、全てが終わると皇國内で取れた食材で作られた朝餉を家族で食べる。
誕生日の今日もやることは何も変わらず、目を覚まし鍛錬を行い、朝拝用の作物の準備を終えると湖で一糸まとわぬ姿となり沐浴を行う。
――チャポン
沐浴のため足首からふくらはぎ、太ももとゆっくり湖の奥に足を進め腹、肩、頭と順に身体を沈めていく。
白龍季 神無月、黒龍季に近づき始めている今の季節、早朝の水温はかなり低い。
水中で精神統一を行い身体を清め終えると白い長襦袢を身に纏い、朝拝を行う神殿の横にある小屋に入る。
中で白い浄衣を纏い、御敷の上に朝収穫した作物を乗せた三方を持ちあげ小屋を出ると、同じように右側の小屋で浄衣に着替え川で釣り、締めた魚を乗せた三方を持った光宮家現当主であり帝直属の退魔戦闘部隊―獅子吼―光宮部隊隊長の光宮 柾行が神殿の前に立っていた。
「父上、おはようございます」
「ああ、おはよう」
わたしとおなじ髪色、瞳の父に挨拶の言葉をかけると凛とした声で挨拶が返ってくる。
隣に並ぶと揃って一礼し引き戸を開け中に入り、神棚に三方を乗せ、白龍が住まう山の正面に座る父の後ろにわたしが座り、祝詞を上げる。
清らかな静寂の中、父とわたしの声だけが響く
「「―――畏み畏みも申す」」
数秒間頭を下げ祈りを捧げると、神殿の周りを静寂を切り裂くかのような風が吹き木々を揺らす。
毎朝必ず祝詞を上げ終わった後に吹く風は今日も白龍がこの里をお護りくださるという合図なのだ、と父から教わった。
この風が朝拝終了の合図であり、父、わたしの順に立ち上がり神殿を後にするが今日は立ち上がることなくわたしの方に身体を向けた。
「柾葵。宝珠は持っているな?」
「はい、持っております。」
わたし達、皇國を守護する龍から寵愛を受けた者は産後必ず各一族の当主がこの神殿に連れて行き顔見せを行う。
そこで龍より宝珠を賜ることとなるのだが、これは龍の魂の一部であり、この皇國を護るための武器となる。故に自身が死を迎えるまで必ず肌身離さず持っていないといけないため、わたしは首飾りとして身につけている。
そして成年を迎えた時、龍が宝珠を自身に合った武器に変形させるのだ。
「今日はこのまま山に入りなさい。中に入ると一本道が続いていて奥に進むと巨石がある。そこで宝珠をお供えし白龍様に成年の御挨拶賜りなさい。わたしはここでお前の帰りを待つ。」
そう言った父に対し、わたしは
「わかりました。行ってまいります。」
と返すと手を付き頭を下げて返事をすると立ち上がり神殿を後に山へと足を向けた。




