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P計画  作者: 黒十二色
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第7話 ファファの憂鬱

ファファ視点

「それでは、今日からは、本格的に『P計画』についての説明をしていきます。大事な話なので、居眠り等をしないように」


 ワンダ先生の声が響く。


 私の気分は最悪だった。というのも、つい先程ラニとかいう奴が私の記憶を覗いたからだ。


 いつか必ず覗いてくると思って警戒していたら、案の定、誰かが私の精神(こころ)に触れた感覚があった。そこで、ラニを問い詰めると、ラニは私の記憶を覗いていたと自白した。ちょっとカマかけてみたら、大正解だったらしい。最悪だ。


 もしも、私が過去に研究されていたことが、先生のうちの誰かに知られたら、また、あの辛い日々が戻ってきてしまうかもしれない。そうなれば、今度こそ、皆殺しにするしかない。


「えー、『P計画』とはそもそも、『プロジェクトパンゲア』、つまり『パンゲア計画』という名称を略したもので、その目的はパンゲアを造る事。パンゲアを造ることで人間の居住できる陸地を増やそうというのが目的。ここまでは昨日教えたわよね? ファファ」


「え? あ、はいワンダ先生」


「ファファ、どうしたの? 気分悪そうだけど……」


「ううん。平気」


 首を振った。


「そう? ならいいけど……」


 ワンダ先生は、更に続けて説明する。


「今日からは、パンゲアの造り方の具体的な説明をします。皆さんも知っていると思いますが、選抜学級を卒業した生徒の多くが『P計画』と関わる仕事をすることになります。実は私も参加しているんだけどね……それで、パンゲアの設計図って知ってる人いるかしら?」


 教室を見渡す。手を挙げているのは、三人、マリア様とキリとソフィアだった。


「うん……まぁ、こんなところよね……でも、ハサンとユーナは見ているはずなんだけどな」


 ワンダ先生は呟くように言いながら、黒板の横の壁に大きな図を貼り付けた。


 その図の左上には、『パンゲア』という文字が書かれていて、それがパンゲアの設計図であることがわかる。青い背景にオレンジ色でタマゴのような楕円形をした図形が描かれていた。


「これが、パンゲアの設計図」


「シンプルですね」

 とサヨンは真剣な顔で図に注目した。


「ええ……シンプルなのには理由があるのよ。目標が無ければ計画は成功しない。特定の形を目指すというのが目標となれば、作業効率が上がるの。複雑な形にしてしまうと、頭の良くない人や、目の見えない人が同じものをイメージできない。そういう要素も加味して作られたのが、このパンゲアの設計図。大事なのは、共通したイメージを持つこと。特に超能力においては、それが大事なの。だから、想像力を鍛えるために美術や音楽の授業もしているわよね。全ては、同じモノをイメージするため。全ては『P計画』のためなのよ」


 確かに、共通したイメージを持つことで超能力者同士で相乗効果が得られることがあるって話をどこかで聞いた。教科書だったか、実験施設だったか忘れたkど、たしか共振とかいったっけ。


 つまり、人類全てが共通イメージを持つことで、実現のためのエネルギーとしようという目論みらしい。人の意識や思念波といったものが、大きなエネルギーを持つことは、私のような小娘にも既に知られていることだ。


「『P計画』は、とても多くの人が関わっている計画なのはわかるわよね。その為に大事なのが、連携だということも教えたはずよ。連携というのは、特殊な能力を持つ人々が協力して海底から土を掘り上げて、パンゲアの予定地まで運ぶこと。どういう連携があるか、わかる? ソフィア」


「えっと、例えば……そうだ、サヨンの千里眼を使って海底の様子を見てから、海底の土を掘って安全に作業を進める」


「ええ。それもあるわね。他には、私やキリが持っている催眠能力で、作業する人を強化した状態にすることも可能よ」


「――え……先生……私……催眠能力なんて……」

 キリが驚いたように言った。


「あちゃ、やっちゃった……口が滑った……」


 顔を上げると、白チョークを持った手で口を押さえているワンダ先生が見えた。


「ワンダ先生! どういうことですか?」


 立ち上がって、叫ぶように声を上げるキリ。


「うーん……キリ……ちょっと来てくれるかしら……『P計画』についてはまた今度にするから、残りの時間は自習ね……」


 ワンダ先生はそう言うと、キリの前に立った。そしてキリの手を引いて、無理矢理立たせると教室を出て行ってしまった。


「キリ姉ちゃん、催眠能力なの?」


 リンが私に話しかけてきた。


「みたいだね……あの様子だと」


 その後の教室の話題は、『P計画』なんかのことよりも、キリのことで持ち切りだった。


 だけど私は、そんなことよりも、自分の秘密がラニに知られてしまったことが、不安で不安で仕方なかった。


 放課後、部屋に戻っても、私は安心出来ずにいた。


 私は、常に演技をしていなければならない。デヴ姉やリンと一緒に部屋にいる時もそうだ。ふわふわ系の皆の妹で、リンの一番の仲良しである必要がある。


 ラニを脅しはしたものの、あの男は私に限らず、脅されればすぐに口を割るような軟弱者だ。だから私は不安で不安で仕方が無い。


 同じ学級(クラス)に、私のトップシークレットを知っている人間がいて、それがソフィアやサヨンであればいいものを、よりによってあのラニだ。この超不安状態がストレスで、折角リンが作ってくれた夕飯にも手を付けられなかった。


「ファファ……どうしたの? 今日様子変だよ?」


 部屋に戻って来たデヴ姉が元気の無い私を気にして話しかけてきた。私とリンとデヴ姉は三人同じ部屋で生活している。ちなみに、今夜の私の分の食事は、デヴ姉が無理して食べてくれた。


「ううん。何でもないよ」


 いつものように笑顔を作る私。


「嘘吐かないで。私には言いたい事全部言って良いんだよ?」


「何でもないってば」


「ファファ……どうして嘘を吐くの? 何でもないわけないでしょう?」


「デヴ姉……」


 私がそう呟くと、デヴ姉は私を抱きしめた。


 とても、とても安心する。温かくて、やわらかくて、甘い香りがして……。


 私はいつの間にか涙を流して、デヴ姉にしがみついていた。


  ★


 昔むかしの話、お母さんがいた。お父さんもいた。二人とも殺されてしまった。きっとお母さんが生きていたら、デヴみたいに、やわらかくて、温かくて、優しくて……ああ、本当に大好きだ。デヴは、もう、私のお母さんだ。


「私、デヴ姉のこと……好きだよ」


「うん。私もファファのこと好き……さぁ、何があったか、教えてくれる?」


「ううん。それは嫌……」


「むむむむ……」


 だって、きっとこわがるもん。私が、変な実験施設で研究されていて、そこを抜け出してきて、原子を自由に生成できる能力を持っていて、その上、その能力を使って人を殺したことがあるなんて……。「こんな時代だから仕方ない」なんて、口で言うのは簡単だ。


 だけど、本当にそう思える?


 きっと共感なんか出来ない。誰にも共通のイメージを持ってもらえない。残念な事に、共通のイメージを持てるのは、過去視を持つ人のみだ。つまり、ラニだけなんだ。最低だ。


「じゃあさ、言いたくなったら言ってね。私、待ってるから」


「……うん」


 もう、あんな怖いのは嫌だ。体中に針で穴を開けられて、身体もいじくりまわされて。時々殴られることもあった。バルザック先生の体罰なんて可愛いものだ。思い通りに力を引き出せないと、あの白衣の人たちは怒るんだ。


 お母さんもお父さんもいて、まだ幸せだった頃、家の倉庫に飾ってあった刀、とても大きな青龍刀を見るのが好きだった。人殺しの道具だということは知っていた。だけどそれでも好きだったから、目に焼き付けた。いつでも再現できる。絶対に折れない刀。全てを切り裂いてしまえる刀。


 私の心の拠り所。


 もう私の心は血を吸ってしまっている。それを知られるわけにはいかない。


 一瞬で終わってしまった幸せな日々。


 もう、両親は居ない。あの幸せな日には戻れない。


 だけど……私には、新しい家族がいる。それが、とても幸せに思えるんだ。だから、楽しい日々を壊さないために、私は、嘘を吐き通さなければならない。


 皆のことが好きだからこそ、嘘を……。



 私はファファ。ふわふわ系美少女。皆の妹でリンの親友。出席番号は、三番。




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