第4話 ジュヒ
ジュヒ視点
嫌い、嫌い嫌いキライキライきらいきらい!
低俗低級低品質。どいつもこいつも使えない。
あたしは、ジュヒ。
今日もあたしは、イライラさせられていた。
中庭にあたしたち選抜学級十三人の生徒が立ち、対面するようにワンダ先生が立っていた。
「それでは今日も、いつものように、サイコキネシスコントロールの訓練を始めます」
と、ワンダ先生が言った。
毎日の午後の最初の授業はサイコキネシスコントロール、つまり念動力調整だ。
あたしたち超能力学校選抜学級の生徒に定期的な休日など無いから、毎日が訓練である。多くの生徒の中から選ばれたのだから、当然のことだ。
「それでは出席番号順に一人ずつ、あの石を動かしてみてください」
ワンダ先生は、そう言った。
十センチほどの石の塊が、中庭に並べて置かれている。数は十三個。人数分だ。更に中庭には、四角く細長い白線の枠が描かれていて、これからその枠からはみ出さないように、石を長い距離移動させる。一度も線をはみ出さずに石を動かせれば、上手く念動力をコントロールすることができているということだ。そして、長い距離を移動させるということは、それだけ、念動力の効果範囲が大きい、つまり遠くまで念動力を飛ばせるということになる。
超能力には二種類あり、透視やテレパシー等を知覚系超能力。現実世界に何らかの影響を与える全ての超能力を物理系超能力と呼んでいた。そして、全ての物理系超能力の基本となるのが、この念動力調整である。
「それじゃあ、出席番号一番の、デヴから」
「はーい」
デヴが目を閉じて念じると、石が宙に浮いて、動き出した。ちなみにこの石は、手で持ち上げてみても絶対に持ち上がらない。それほどに重いものなのだ。超能力にしか反応しない仕組みになっているのかもしれない。
――デヴ。
この女は、特にあたしに害を及ぼす存在じゃない。太ってるのは問題だし、大した実力が無いから、選抜学級に居る理由がわからないけど……。
石は、枠をはみ出すことなく、デヴから十五メートルのところで止まって、地面に落ちた。落ちた石は、そのまま残される。
「デヴ、また距離伸びたわね。その調子よ!」
「はい!」
デヴは退き、続いて指名されたのは、有名なバカ男だった。
「じゃあ、次、二番はハサン」
ワンダ先生が呼んで、
「へーい」
ハサンが不真面目に応える。
失礼な奴。最低だ。
ハサンが念じると、石は浮き上がりもせずに転がり、二十センチくらいのところで、枠をはみ出し、そして、二メートルほど、グラグラしながら移動して止まった。
「ハサン……真面目にやりなさい」
ワンダ先生も呆れている。
「俺はいつだって真面目だよ!」
――ハサン。
バカな男。それ以上でもなくそれ以下でもない。
不良生徒で、今日も校内放送で先生から呼び出しをくらってたし、どうして選抜学級にいるのかわからない。長所といったら、少し背が高いくらいだ。
「はぁ……ハサン……あなた、いつになったら、ちゃんと石動かせるようになるのよ……空飛べるんだから、このくらいの石を動かすなんて簡単なはずなのに」
「できないもんはできないんだよ」
「……もういいわ、次、三番はファファ」
今度は、髪が両側からぴょこんと跳ねた子供が歩み出た。
「はい」
返事したファファが念じると、石はふわふわと宙に浮いて、動き出した。
――ファファ。
この女は、油断できない女だ。皆にいい顔を見せているが、心の中では何を思ってるか知れたものじゃない。
皆から可愛がられているファファは演技。「可愛い皆の妹」を演じているんだ。でも可愛いのは左右にぴょこんと撥ねた髪型くらいのもの。リンと同じくらいの子供のくせに計算高い。油断できない。
ファファが移動させた石は、十五メートルに届くかというあたりで進路を直角に変え、線からはみ出して、地に落ちた。
「あー、はみ出しちゃった」
「そうね……でも、ファファ、あなたの年齢であそこまで運べるのは充分すごいわ」
ワンダ先生に頭を撫でられながらえへへと笑うファファ。
演技だ。まったく、可愛げの無いガキだ。
ファファが皆の所に戻って座り、今度はあたしの番がきた。
「次、四番は、ジュヒ」
「はい」
返事をして、ワンダ先生に一礼した。
石に思念を送ると、石は宙に浮き上がり、枠をはみ出さず五十メートルほど進んだ後、落ちた。
「ふむ……五十一メートルか……うーん……ジュヒ、最近調子悪いわね。何か嫌なことでもあるの?」
確かに、あたしは以前はもっと良い記録を出していた。最近はずっとイライラしていて、力を発揮できていない。周りの奴らが愚か者ばかりだからだ。
「いえ、訓練が足りない結果です。すいません」
あたしはワンダ先生に向かってそう言った。
「そう……。いい? ジュヒ、超能力、特に、この訓練は精神力が充実していないと実力を発揮できないから、そちらの方もしっかり訓練しておくのよ」
何よそれ。まるであたしの精神力が不足しているみたいな言い方じゃないか。でも、認めたくないけど精神がグラグラしているのは事実かもしれない。ワンダ先生の言う事はいつも正しい。
「はい」
素直に返事した。
あたしが皆から少し離れた場所に座ると、今度はキリが歩み出た。
「次は、五番、キリ」
「はい」
キリが念を込めると、とてもゆっくりした動きで石は浮き上がり、とてもゆっくりした動きで枠の中をフラフラしながら進み出した。
――キリ。
彼女は、教室で椅子に座って行う授業では、いつも隣の席だ。
今の石の動きのように、地味で慎重で優柔不断。枠の中をはみ出したりせず、あまり人と深く関わりを持とうとしない人間。いつも一人で本を読んだりしているおとなしい女。成績はそこそこだけど、目立った特技もない。どうして彼女が選抜されたのかわからない。
そんなことを思っている暇があるほど、彼女の動かす石はゆっくりと動く。物体は動いているから安定する。逆にこれほどゆっくりと動かせるのは大きなエネルギーを要するのかもしれない。
結局、キリの念を込めた石は、フラフラとしながらも、一度も枠をはみ出すことなく、五十メートルの少し手前で落ちた。
「ジュヒと同じくらいだ、よかった」
キリが安堵しながらそう言った。
一緒にしないでほしい。あたしは調子が悪くてあの位置なんだ。キリはいつもより良い結果であの距離なんだ。あたしとキリの実力には差があるわ。
「ええ、そうね」
笑顔を作ってそう応えるあたし。
「キリは、もっと出来るはずなのに、どうしてそう本番に弱いの?」
ワンダ先生は、そう言ってキリを見た。
「え、でも……あれが私の限界で……」
「そんなことないわ。いつもちゃんとルネの面倒見ているんだから、もっともっとできるはずよ」
「は、はい……がんばります……」
泣きそうになりながら、キリはあたしの横に座った。
「キリ、大丈夫?」
と、あたしは訊く。
「平気、いつものことだから」
溜まった涙を拭って、前を見た。ワンダ先生はキリに対しては他の人に対するより何故か厳しい。
ワンダ先生は、次に長身の女に視線を送ると、前に出るように促した。
「次は……六番、マリアね」
あろうことか、マリアは返事をしなかった。ひどい態度だ。だけど、そんな冷たく張りつめた態度が嘘のように石は滑らかに動き出す。先生のお手本のような、いやそれ以上に綺麗なぶれのない動きで、二百五十メートルは動いた後に、未だ余力を残しているとでもいうように、ふわりと地面に着地した。
――マリア。
本当にいけ好かない女。校長の娘だからか、こんなに態度悪いのに皆から好かれている。わけがわからない。バカばっかりだ。
確かに容姿は美しいかもしれないけど、あんな憎たらしい氷の女。少し念動力調整が上手いからって、調子に乗るんじゃないわよ。
「マリアは、いつも通りね」
またマリアは無言を返した。
先生の言葉も全部無視だし、最低な女だ。
人間ができているワンダ先生は、無視されたことを気にもせず、次の生徒を呼ぶ。
「よぅし、次は七番、ミキト!」
「はい!」
ミキトがいい返事をして念を込め出すと、石は、反対方向に動き出す。
――ミキト。
彼は、未来を見るというとても貴重で特殊な力を持っている。それが、大した実力が無くても選抜学級にいる理由。そんなに素敵でもないし、カンニングをしたとかいう噂もあるし、あたしは、彼のような正しくない人間は嫌いなはずなのに、なのに彼を見ると胸が高鳴ったりしてしまう。度重なる否定の果てに肯定したこの感情。
あたしは……彼が好きだ。
ミキトの石は、枠内に一度も入ることなく、十メートルほど離れた場所に着地した。
「ミキト、真面目にやりなさい」
ワンダ先生は怒りの口調。
「真面目ですよ」
そう。真面目なのにできない。だけどそんなところも好きだ。
「ソフィア! ミキトとハサンにイチからやり方教えてあげて!」
ソフィアがうらやましい。その役代わって欲しいわ。あたしがミキトに石の動かし方を手取り足取り教えたい。ハサンはいらないけど。
中庭の隅にミキトとハサンを連れて行き、ソフィアが二人に大袈裟な身振り手振りで説明し出した。そちらも気になるけど、今は訓練を見守ることにする。
「八番目は……ラニね」
「はい」
ラニが念を込めると、石は無難に浮き上がり、無難に移動した。
――ラニ。
こいつは最低な男だ。まず性格が破綻しているし、真偽はわからないが、噂によると過去を見る目を持ち、皆の過去を覗き見ているらしい。しかも自分で公言していたが、ロリコンだ。
ロリコンとは、幼女を偏愛する性癖のことであるのは言うまでもない。だから皆は、リンとファファを守るために、ラニを二人に近付けさせないようにしている。二人もできる限り近付かないようにしている。容姿はそれなりに素敵なのに、総合的に見るとかなり気持ち悪い男だ。
石は無難に着地した。距離は、四十メートルほどだった。超能力学校の、選抜されていない生徒達の平均が六メートルほどなので、そう考えると、やはり選抜学級と呼ばれるだけのことはあるのかもしれない。
「ラニも、記録を伸ばしてるわね。いいことあった?」
ワンダ先生の問いに、ラニは答える。
「昼休みに、リンとファファの寝顔が見れたんで」
うわ、気持ち悪い。ラニが言うとすごい気持ち悪い。
「そう、よかったわね……」先生もかなり引いてる。
「はい、天使でした」
いやだ、鳥肌立つくらい気持ち悪い。
次の生徒は、呼ばれる前にすでにスタンバイしていて、ただの授業の訓練なのに、わくわくした表情をしている。いつも楽しそうで、見ているこちらも嬉しくなってしまうような、そんな娘だ。
「さ、次、九番は……リン……か」
「はい!」
リンという名の女の子はとても良い返事をした。
――リン。
彼女はとても良い子だ。
あたしのことも慕ってくれているみたいだし、おおよそ欠点というものも見当たらない。短いおかっぱ気味の髪で、大きな目。子供らしい可愛らしさがある。少し悪戯が過ぎるところを除けば、あたしの理想の子供だ。
「皆、下がってー!」
ワンダ先生が皆にそう指示する。あたしも含めた皆が下がると、リンに、どうぞという合図をして、その合図を受けて、リンが目を閉じ、石に思念を込める。
ドスン、ドスン。
石はゴムボールのように跳ね回り、ワンダ先生が逃げ惑う。これは毎日の光景。リンは念動力自体の力はあるのだがコントロールが全然できていないということだ。
ぜえぜえと息を切らせているワンダ先生。数十秒後にようやく予測不能に跳ね回る石と先生の鬼ごっこが終わった時には、中庭は穴だらけになっている。ところで、毎回思うのだが、いつも誰がこの穴を埋めているのだろう。超能力学校七不思議のひとつと言っていい謎だ。
「リン、だいぶマシになったわね」
ワンダ先生は苦しそうにゼェゼェと息をしながらそう言った。そう、これでもマシになったのだ。
「うん、僕ね、昨日ね、デヴお姉ちゃんとファファにコツを教えてもらったの」
「そう……もう少しよ! 頑張って」
「うん!」
次の生徒は、ひどい問題児だった。
「さ、次は十番目のルネ――って……また寝てるわね」
――ルネ。
またこの女は寝ていた。今日は気温が春のようで、良い陽気なので、眠りたくなってしまうのはわからないでもないが、訓練の時くらい起きているべきだと強く思う。最低だ。本当に失礼な女。
「ルネ、ルネ!」
あたしは、立ち上がり、眠るルネを起こそうとする。肩を揺すってみるが全く起きない。この間は呼びかけただけで起きたのに、どうやら今日はよほど眠りが深いらしい。
「ジュヒ、そんなんじゃ起きないわ」
隣にいたキリはそう言うと、ルネのおでこを、ばちんと叩いた。激しい音がした。
「わ!」
驚きながら覚醒するルネ。
「いい? ジュヒ。角度と力加減にコツがあるの。きっちり斜め三十度の角度で打ち込まないと絶対に目覚めないし、叩く力を間違えても目覚めないわ。強すぎても弱すぎてもダメなのよ」
「それは……あたしには無理ね」
降参だ。さすがキリは、いつもルネの面倒を見ているだけのことはある。
「そうかもね……」キリは頷き、ルネの背中を押す。「さ、ルネ、ルネの番だよ、訓練」
「ん、わかった」
不満そうな口調で言ったルネはあたしの方に、怒りの表情を向けている。
何故あたしなのか。起こしたのはキリよ。
「ルネ、いきます」
寝ぼけた目のまま彼女が念を込めると、あの大きな石がいきなり上空高く舞い上がり、
そして…………そしてぇ!?
「きゃあああああああ!」
あたしは思わずそんな声を上げてしまった。上空から石があたしめがけて降ってきたのだ。
死ぬ、と思った。
「危ない! ジュヒ!」
サヨンがあたしに飛びかかったと思ったら、ドスン、と音がして、中庭にまた一つ、ひときわ大きな穴ができた。つい数秒前まで、あたしがいた場所だった。
「ちょ……ちょっとルネっ!」
あたしはサヨンを突き飛ばすと、ルネに掴みかかった。
「あ、ジュヒ、ごっめーん。寝ぼけててぇ……」
この女、絶対あたしを狙った。たしかに、ルネが念動力をコントロールし切れないのはいつものことだけど、さっきあたしに憎しみを向けるような目で見ていた。この女、最低だ。あたしはルネを引っ叩こうと手を振り上げるが、
「ジュヒ、やめなよ、ルネもわざとやったんじゃないんだからさ」
キリがあたしの方を責めてくる。いつもいつもそうだ。あたしのほうがルネよりも悪いことになる。皆みんな、こんな居眠り娘の肩を持つんだ。最悪だ。人間のレベルが低すぎる。
「うゅ……おやすみ」
そう言うと、またルネはかくんと頭を垂れて、眠りに落ちてしまった。
「ちょっと、待ちなさいよ、ルネ!」
襟首を掴んで前後に強く揺すってみても起きない。ばしんばしんと頬を叩いてみても起きない。
「こら! ジュヒ! もう許してあげなさい。無事だったんだから、それでいいじゃない」
ワンダ先生の声がした。
「だって、こいつ……」
「ジュヒ、ダメよ。ルネが起きたら、もう一度話しなさい。もう眠っちゃった相手に暴力はダメよ」
何であたしが怒られるんだ。理解できない。
「はい……ごめんなさい」
それでも、ワンダ先生に怒られてしまっては、謝るしかない。
あたしが尊敬する先生だからだ。
「うん……さあ、気を取り直して次の人、えーと、十一番、サヨン」
「はい」
いい返事をして、前に進み出たサヨンが思念を込めると、石は白い枠の中を真っ直ぐ進んでいく。そして、ちょうど百メートル進んで、地に落ちる。
――サヨン。
彼はあたしにとって害のない存在だ。
存在感がなくて目立たないけど実力者で、正しい人で、素敵な人だ。容姿も悪くないというか、二枚目だ。他の場所で起きていることを見ることができる所謂千里眼の持ち主だけど、その力を悪用することもないだろう。そういえばサヨンは、ソフィアとマリアとハサンの幼馴染らしい。
「サヨンも安定してるわね。あんなルネの念動力を見た後なのに」
「はい、ありがとうございますワンダ先生。まぁルネの力が危険なのは、いつものことですし……」
「でも、もっと先を目指しても良いのよ? 百メートルくらいで満足してちゃダメ」
「はい。精進します」
コメントもいちいち格好良い。
「次は……十二番目、ソフィアか……ソフィアー!」
中庭の隅っこでミキトとハサンに念動力の使い方、その初歩の初歩を教えていたソフィアを、ワンダ先生が大きな声で呼んだ。
「はーい!」
ソフィアは駆け足でやって来た。
「ソフィア、あなたの出番よ」
「はい!」
綺麗な声で返事すると、ソフィアは石を動かし始めた。ソフィアの石は、浮き上がり、中庭の終点、つまり、白線の枠が途切れている場所で止まると、
とすん。と、地面に落ちた。中庭の白線の長さは、五百メートルほどあった。
――ソフィア。
ソフィアは何でもほぼ完璧にこなすことができて、あたしの理想の女性だ。ただ、偉そうでむかつくことを除けば、だけど。
「相変わらず、素晴らしいわね。キリもこれくらいできるはずなんだけどね……」
ワンダ先生は呟いた。それはキリを過大評価しているように思う。
「最後は、十三番目……ユーナね」
「はーい」
だらしない返事をした女が念を込めると、石は浮き上がり、グラグラと蛇行しながら、進んで行く。
――ユーナ。
この女は救いようがない。男に媚びる習性があって、きっと選抜学級にも色仕掛けとか使って入ったんだ。スカートを短くしたり、いつも露出の多い制服の着こなし方をしていて、男の気を引くことしか考えていないらしい。確かに憎たらしいくらい可愛いけど……。全く、気に入らない。
石は、白い枠の外、推定三百メートルの場所に落ちた。
「ユーナも、もう少し安定するといいんだけどね…………」
「はーい、ごめんなさーい」
不真面目な口調でユーナは言った。
どうしてこんな女が三百メートル先まで石を運べるのかが謎で謎で仕方ない。
「さて……今回良くなかった人は、次回がんばるように。今回しっかり出来た人は、その力をいつでもどこでもどんな時にでも発揮できるように、訓練を怠らないこと」
ワンダ先生がいつもの言葉で授業を終える。
この授業で、あたしを取り巻く環境が、どれだけ厳しいものかわかってもらえたと思う。
デヴは太っているから嫌い。
ハサンはとんでもないバカだから嫌い。飛んでるけど。
ファファは腹黒いから嫌い。
私だけが正しい。
キリは暗いから嫌い。
マリアはとにかくむかつく。大嫌い。
ミキトは……好きだけど。
ラニは性格が破綻しているから大嫌い。
リンはあたしのことも好きでいてくれているから嫌いにはなれない。
ルネはいつも寝てるから嫌い。
サヨンは冷静で正しくて、あたしも彼のことを頼りにしているから嫌いじゃない。
ソフィアは偉そうでむかつくから嫌い。
ユーナの男好きには呆れるほどで、大嫌い。
クラスメイトは十二人も居るのに、あたしの味方はリンとサヨンとミキトだけ。嫌いな奴ばっかり。こんな環境で、力を発揮しろなんて不可能だわ。
あたしはジュヒ。あたしは、誰よりも正しい。出席番号は、四番目。




