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P計画  作者: 黒十二色
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第34話 学校探検に行こう ハサン視点

ハサン視点

 夜、女子寮の廊下を歩いていた(ハサン)は、マリアの部屋の前に辿り着いたところで、捕らえられた。


「ハサン……何してたの?」


 ソフィアの強力念動力が俺を緊縛していた。俺はピカピカに磨かれた床に体の前面と頬を押し付けられる格好になった。少々無理のある姿勢なので首が痛い。


「ちょっと、マリアを誘いに来たんだけど……」


「何に?」


「散歩」


「どこに行くために?」


「学校」


「何で?」


「何となく」


「マリアは部屋にはいないわよ?」


「え? まさか……能力が使えなくなったから追い出されたのか?」


「馬鹿、違うわよ。今日はデヴの部屋で女子皆でお泊り会なの」


「じゃあ何でソフィアがここにいるんだよ」


「あんたの気配がしたからに決まってるでしょう」


「……そんなこともわかるの?」


「何となく感じるわね。私にもサヨンの千里眼のような力があるのかも、目覚めていないだけで」


「そうか、じゃあ俺はそろそろ帰るから、この手かせ足かせみたいな力を解いてくれ」


「ハサン。女子寮に忍び込んで無事に帰れるとでも?」


「違う! 俺は堂々とマリアの部屋を訪問しただけだ! たまたまそこに誰もいなくて、結果的に誰にも知られずにここに着いたというだけであって、決してマリアをどうこうしようという目的じゃないし、マリアの所有物をどうこうしようという目的でもない」


「妙に舌が回るところが逆に怪しいわ」


 いいわけしちゃダメなのか……?


「というか、夜の学校は立ち入り禁止だし、女子寮も立ち入り禁止よ? 勇気あるわね」


「だろ?」


「馬鹿なだけだと思うけどね……」


「俺もそう思うぜ!」


 と、そこへ、別の声が聴こえてきた。


「ハサン……? 何してるの……? こんな所で……」マリアだった。


「よお、マリア。ちょっと夜の散歩に誘いに来たんだが、この通り捕らえられてしまってね」


「女子寮は――」


「わかってるわかってる。それでも、マリアに会いたかったんだ……」


「ハサン……」彼女は目を輝かせた。


「こら、ときめく場面じゃないよ、マリアー」


 とソフィアが優等生発言するが、俺はそれを無視する。


「どうだ? マリア? 夜の学校を探検。興味ないか?」


「……面白そうね」


「マリア?」


「ソフィア、ハサンを解放して」


「え」


「解放してって言ったの。聞こえなかった?」


「あ、うん」


 ソフィアがそう言ってすぐに、俺を縛り付ける力はフッと消えた。


 マリアの部屋の前で正座に座りなおした俺の前に、マリアが同じように正座した。


「学校のどこに忍び込むの?」とマリア。


「実は昔、地下への入口みたいなものを発見したんだよ。空からじゃないと気付きにくい場所にあったからあまりにも怪しくて、いつか忍び込みたいと思ってたんだ」


「行くわ! 今から?」


「ああ、今から。また昔みたいに、皆で探検しようぜ!」


「うん! いいよね……ソフィア……」


「あのねぇ……私、委員長なのよ……?」


「ダメ……?」


「私が監督として付いて行くわ。何もおかしなことしないように」


「当り前だ」と俺は言う。「もちろんソフィアも連れて行くつもりだったさ」


「じゃあ何でまず私のところに来ないでマリアの所に来たのよ?」


「最初にマリア味方につけないと、ソフィア絶対反対するもん」

 そう、これはバカなりに考えて行動した結果なのだ。


 ソフィアは返す言葉が無いようだ。俺の計画に敗北したのがショックらしくて、しかめ面をしている。


「昔みたいってことは……サヨンも来るの?」とマリア。


「サヨンも最近ノリが悪いからなぁ……まぁサヨンの部屋に置手紙だけ残してきたけど……」


「……ミキトは?」と、ソフィア。


「ミキト? ミキトは誘ってないけど……」


「ラニは?」


「え? ラニまで……?」


「この際、私が全ての責任を持つわ。選抜学級全員で行きましょう」


「ソフィア。本気か……?」


「だって……もう皆集まって来てしまっているもの……」


 そう言ったソフィアの後ろの方の壁から、ぴょこんとはみ出す髪の毛が見えた。あの髪型はファファだ。ファファがいるということは……。


「皆、隠れてないで出てきなさい」


 とソフィアが言うと、まずはリンが飛び出してきた。


「マリア様ぁ、探検とか聴こえたけどー」


 その後にゾロゾロと列になって出てきたのは、残りの女子全員だった。


 ファファ、デヴ、ルネ、キリ、ジュヒ、ユーナの順。


 俺は正座しながら大勢の女子に取り囲まれて見下ろされるような形になって、その圧迫感で泣きそうだ。まるで忍び込んだのがバレて、これから皆から足蹴にされまくるんじゃないかと恐怖しそうな光景。


「ええ。探検よ。夜の学校を探検するの」

 マリアが立ち上がって言った。


「本当?」

 リンがぱっちりとした瞳を輝かせて俺を見た。


 俺は深く頷く。


「ああ、本当だ」


「行こう行こう! すぐ行こう! 空飛んで行こう!」


「まぁ、焦るなよ、リン。ちょっと、俺は一回戻って、ミキトとサヨンとラニを呼んでこないといけないから……」


「それじゃあ、十五分後に、猫岩の前で」ソフィアのその言葉に俺は頷く。


「ああ、わかった」


 猫岩とは、女子寮と男子寮の間にある猫の形をした岩のことだ。男子寮からは比較的遠く、女子寮からは比較的近い。生徒同士の待ち合わせは、この場所が使われることが多い。


「じゃあ、十五分後に」


 そう言って、俺は廊下の小さな窓から、暗い空に向かって飛び立った。




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