第18話 疑惑 -4- 再びユーナ視点
ユーナ視点
ガラ、と音がして、職員室の扉が開いた。
ワンダ先生とラニが出てきた。
「ラニ!」
私はラニの姿を確認すると、さっきサヨンにしたように、ラニに掴みかかった。
「な、何だよ。ユーナの過去はそんなに覗いてないぞ……」
そんなことはどうでも良い。別に見られて嫌な過去ではないもの。
「ワンダ先生の過去を覗いて! 今すぐ!」
「本人の前で堂々と何言ってんのよ」
溜息混じりにそう言ったワンダを、私は睨みつける。
「ユーナ……それは、無理なんだ」
「何で! 理由を説明して。十秒以内!」
無茶な要求をしたと思ったけど、ラニは即答した。
「それは、僕の力が足りないから、ワンダ先生が覗かせてくれないんだ」
「何っ、それ……使えないわね」
「いつか必ず覗くから……」
「いつかっていつよ! いつまで待てばワンダ先生が人殺してないってわかるの?」
「ユーナ……ダメよ、私みたいな悪い女を信じちゃ」
ワンダが悪い女なはずがない。
本当にワンダが悪い女なら、今までワンダを信じてきた私が馬鹿みたいじゃない!
「べ、別に信じてなんかいないわよ! ただ……親を殺してしまった人が先生やってるなんて、そんなの許せないだけだわ! だから『私はやってない』って言ってよ! 信じてないけど!」
「ユーナ、言ってる事おかしいぞ……落ち着け」とサヨン。
「落ち着いてるわよ! ワンダが一言、『嘘でした』って言えば済むことなのよ!」
「だから、まだわかんないってば」ラニが言ったので、
「うっさいラニ! 空気読め! 会話に入ってくるな」
おこってやった。
「ユーナ。私、殺したわ。確かに。殺したの」
「嘘」
「嘘じゃない」
「嘘よ!」
「私、意味の無い嘘は吐かないわ」
「……もう知らない! バカっ! 先生のバカっ!」
「懐かしいわね、それ」
本当に子供に戻ってしまったみたいだった。子供のときに、何回もワンダに言ったその言葉。そんな自分が許せなくて、泣いた。
「ユーナ、大丈夫……? また泣いてるの?」
デヴが、優しく問いかけてくる。
「うっさいわね! 泣いてないわよ!」
ひねくれた最低の私は、優しいデヴに厳しい口調で言う。ああ、最低だ。
この展開だと、先生は絶対に口を割らない。昔からそうなんだ。ワンダが頑固なこと、私はよく知ってるんだ。だから私は教室に戻る。これ以上、誰にも涙を見られないように先頭に立って早歩き。
「ラニ!」
私の声に反応して、ラニはびしっと姿勢を正した。
「はい! 何ですか、ユーナさん!」
「先生の過去。見えたら絶対私に言いなさいよ」
私は信じてる。先生は、誰かを傷つけたりするような先生じゃないって。




