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あとがき

 最後まで読んでくださり、ありがとうございました! 作者の華霧むまです。

 

 アエラスとルースを中心に巻き起こる話をお楽しみいただけたでしょうか。



 アエラスは、彼岸花のような人というイメージです。彼岸花の花言葉に「悲しき思い出」というものがあります。言わずもがな、エリーとのお話ですね。そしてアエラスは「死」を連想させる話を何度もしていました。彼の儚くみえるのも彼岸花っぽい。彼岸花が毒を持つという点も、アエラスの逆鱗に触れたときの毒と似ている。そして自然に一目を引いてしまう。それも彼岸花のイメージです。(あくまでイメージですが)


 アエラスは「失恋をした男」でしかありません。負けヒーロー、という言葉があるかは分かりませんが、あくまで恋が叶わなかった側。アエラスとエリー。この2人は歯車が上手くかみ合っていれば両思いとなった可能性もあった2人でしたが、それはifのお話です。実際は2人の道が交わることはなかった。


 恋が叶えば、幸せな未来は想定できるでしょう。恋が叶わなかった男が、それを引きずり続けるとして。その男に救いはあるのでしょうか。アエラスの場合はルースが救いだった。空っぽだった人生に光がさしたような。フィニスが55話で言っていたように「人間らしく」なったんです。そもそも、失恋という苦しい思い出を抱きしめ続けて、正気でいられるわけがない。自分で自分につけた呪いを緩めさせたのがルースの存在でした。


 そしてタイトルに「かつて天才と呼ばれた」とあります。あくまで「呼ばれた」であり、タイトルでは現在のアエラスについては言及されていませんが……。ここまで読んでくださっている方にはお分かりでしょう。アエラスは間違いなく「天才」です。

 アエラス自身は魔力が半減したこと以外は変わっていない。それなのに、アエラスが「魔法を公のために使わない」宣言をした途端、過去のように話す。天才は彼自身を表す名ではなく、彼の周りからの評判を表した呼び名でしかない。そういうお話です。アエラスも、57話でシレンテに言っていました。人形にさせられる、と。アエラスを縛るものはなかったけれど、天才と呼ばれたアエラスだからこそ、知っていました。


 そして「アエラスの嘘」がありました。剣が苦手じゃないです。アエラスは剣も勉学も目立たないように努めていたからこそ、魔法がどんどん目立って天才と呼ばれてしまうという誤算がありました。王になれと言ってくる父親との関係もあり、わざと隠してたところはあります。


 アエラスとマラキア。2人は対極的でした。恋を引きずるアエラスと、すぐに再婚したマラキア。自分の子じゃなくても命をかけて大切にするアエラスと、自分の子かどうかすら疑うマラキア。時を経て丁寧な口調になったアエラスと乱雑な口調になったマラキア。見事に正反対ですね。


 そしてルース。書くの楽しかったです。特に無邪気な時は微笑ましかった! 彼が記憶を取り戻してからも、アエラスの前ではちょっと子どもらしいのが可愛かったです。


 ルースは間違いなく魔法の才があります。学校を卒業する頃にはアエラスに匹敵するかもしれません。ルースも「天才にならされそう」な危うさがあります。ルースは優しい子ですから、特に心配です。しかし、アエラスが親であるため、雁字搦めになることはないでしょう。仮にマラキアの元で育っていれば、天才にならされていそうですが。アエラスをみて育ってきているので、若干「力で解決できる」という思考に走っていますが大丈夫でしょう。ルースの魔法もシレンテと同様、攻撃型ではないので。


 ちなみにルースの花のイメージはかすみ草です。かすみ草の花言葉は「無邪気」「幸福」です。根が無邪気であり、アエラスに幸福を運んだルースにぴったりですね。


 ルースがコスモ国との交渉に乗り込むことはありませんでした。「無理矢理大人にならさせたら駄目だ」「大人びているとしても、それを理由に大人扱いしてはいけない」と考えていたアエラスがルースにそんな危ないことをさせるわけがないです。あくまでアエラスは親。かわいい子に旅をさせるのはもう少し大人になってからです。

 アエラスとルースは親子であり、アエラスがルースを庇護する関係。少なくとも今のところ対等ではないのです。もし未来編があれば肩を並べる姿もあるかも……。



 エリーのお話は少なかったと思います。それは、エリーがもうこの世にはいないから。彼女視点のお話を本作ではあまりしていません。あくまでアエラスやフィニス、マラキアの記憶の中の存在でしかありませんでした。その分、謎めいた存在になっていたかもしれません。それでも彼女の影響はアエラスたちに色濃く残っていました。

 そして最後に明かされる彼女の秘密。28話でシレンテが盾と矛の話をしていましたが。これはエリーが「矛盾」という言葉を過去に使い、意味を説明したから彼らも「盾と矛」の話を知っているというのがオマケの情報です。



 またご縁がありましたら、お会いしましょう。



 最後になりましたが、この話をお読みくださりありがとうございました。

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