演劇部
演劇部での出来事。
私−佐伯ひかるの複雑な気持ち。
みんなの密やかな息づかい。
制服の生地がこすれる音。
ピンと張り詰めた静かな空間。
今、決まろうとしている。
伊藤みつきに手を挙げたのは、9人。
わたし、佐伯ひかるに手を挙げたのは、1、2、…15人。
決まった。
今年度の舞台の演出は、みつき。
私は、落選したのだ。
拍手とおめでとうの中、私は白々しく拍手をしながら足の指先をぎゅっとした。
「ひかるがいいなと思ったんだけどな。」
咲が声をかけてくれた。
でも、今はいい。
ぐっと唇をかみしめてから、咲に笑顔を見せた。
「やっぱりみつきだと思ってたよ。私ちょっと不安だったし。」
「そうか。ひかるは真面目に取り組んでるし、きっとコツコツ頑張ってくれると思ったんだけど。」
だから、そういうのはいい。
私の惨めな気持ちを触らないで。
心の中で叫んだ。




