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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
3章 ゲート設置

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097 統合情報部

 近付いてくる気配は十名。デーモンの気配はないが、うっすらと魔力に似た力を感じる。気配を隠す気は無いが、謎の力を隠そうと努力している印象を受ける。

 彼らは何も言わずドアを開けて入ってきた。都内にある国立研究所なのに迷彩服。警察だと思っていたけど自衛隊じゃないか。彼らは、全員SFP9(ハンドガン)構えていた。


「ありゃ? デーモンのしちゃってるね……。とどめ刺しちゃうよ?」


 最初に入ってきた自衛隊員が間の抜けた声を出す。彼は無表情のまま、倒れているデーモン憑き警備員の頭を九ミリ弾で撃ち抜いた。このタイプは完全に一体化しているデーモンなので、本体が死ねばデーモンも死ぬ。黒い粘体が起き上がってくることもない。


 デーモン憑きの警備員は、完全に息の根を止められた。


陸上(りくじょう)幕僚(ばくりょう)監部(かんぶ)所属、三等陸曹(りくそう)門田(かどた)為助(ためすけ)です。お怪我はありませんか?」


 デーモンを撃ち殺した陸自の青年――俺と変らないくらいの年齢――は、敬礼をして俺たちの顔を見ていく。ファーギと、エレノアで一瞬視線が止まったが、特に何も言わなかった。


「警備員さんは、そろそろ来る警察の方の対処お願いします。僕たちは彼らと少し話がありますので」


 門田が仕切るみたいだ。他の陸自隊員は、部屋の隅に立って直立不動。威圧感すごいな……。警備員は死者が出たことや、自衛隊の乱入でパニック。腰を抜かしたような屁っ放り腰で、部屋を出ていった。


「さてと。板垣颯太さん、ようやく会えましたね」

「自己紹介してないんだけど?」

「そりゃ、ニュースで顔と名前が出ましたし、自衛隊としてもあなた達(・・・・)の行方を追っていましたので」


 カウチに座っている俺たちの前で、門田はつらつらと喋っていく。凄く自信満々で、それを裏付けるだけの身のこなしや気配を放っている。

 自己紹介の時、陸幕って言ってたな……。あれはたしか大きな括りになるはず。細かい所属まで言わないのは、何か理由があるのだろうか。


「それなら、何か話があるってことかな?」

「そりゃもう、山のように……。よろしければ場所を移して事情聴取をしたいのですが、よろしいですか?」

「ここの設備でないと解析できない物質があるんだ。それが終わってからなら大丈夫だよ」

「物質……? それが何か気になりますが、いいでしょう。警察の方はこちらで対処します。ご友人のエルフさんとドワーフさんにもお話を聞きたいですし」


 門田はエレノアとファーギを向いて、異世界の言葉で話しかけた。


 部屋の中の自衛隊員は誰も驚いていない。彼らはエルフもドワーフも、異世界の言語まで知っているようだな。

 対して、エレノア、ファーギ、マイアの三人は、驚きが表情に出た。


 やられた……。門田はこの三人が異世界人なのかはっきりさせるため、カマを掛けたのだ。そのせいだろう。門田は満面の笑みを浮かべた。


 これで言葉が通じない作戦はダメになり、コッソリ動いて魔石電子励起(れいき)爆薬を調べることが出来なくなった。

 それなら予定を変えなければ。

 自衛隊が()味方(・・)か、見極めなければいけない。


「門田」

「何だ板垣」

「お前何歳だ?」

「二十五歳だ」

「俺の一個下だな」

「だから何だ?」

「俺が先輩だ。礼儀正しくしろ。もっと言えば敬語で喋れ」

「はっ、僕は自衛隊員で、小隊長。組織が違えば、年齢も敬語も関係ないだろ? あんたに逮捕状が出てるって知らないのか?」


 そう言った門田は指先に炎を灯し、俺に向けてそれを飛ばしてきた。

 魔力に似た力を惜しげもなく見せてくるとは。煽り耐性は弱いと見た。


 俺が水球を飛ばして、門田の炎を消火すると、室内の自衛隊員から緊張する気配が伝わってくる。


「大丈夫。こんなところで、魔法戦なんてしないって」


 室内にいる全員に向けて宣言しておく。

 欧州(おうしゅう)原子核(げんしかく)研究機構(けんきゅうきこう)、通称セルンが異世界へのゲートを開いて以来、世界中で魔法を使う人が続出した。俺が使っても不思議ではないはずだ。


「さすがだな、魔術師。こっちの情報だと板垣、あんたかなりの有名人だぜ?」


 口調が砕けたな……。門田の()はこっちなのだろう。というか有名人?


「板垣……、何でそんなに驚いている。アラスカやスウェーデンの件で、外務省、自衛隊、警察庁、警視庁に問い合わせが来てるんだぞ? おかげで僕たちも張り込みの任務なんてやらされてたわけだし」


 俺が立ち寄りそうな国立研究所で、門田の小隊は張り込みをしていたと……?

 捕まえる気満々じゃね? というか、アラスカは分かるけど、スウェーデンはなんでバレたし。まあ、現代の科学捜査を甘く見ない方がいいって事か。


「魔石」

「魔石が何だ」

「へえ、門田は魔石を知ってるんだな」

「当たり前だろ! 伊賀では忍術を使う触媒として、昔から魔石を使ってきたからな!! あっ!?」


 アホだこいつ。忍者の家系だとバラしやがった。……となると、ここにいる自衛隊員も忍者の可能性がある。妙な魔力は全員から感じるし。


「いまはもう、忍者だと隠さなきゃいけないって時じゃないだろ? 実在する死神(ソリッドリーパー)たちが暗躍しているのは知ってるよな?」

「お、おう……。魔術師団とか魔術結社なんて呼ばれてるな」

「そいつらが、新型の爆薬を作ったんだ」

「新型爆薬?」

「そうだ」


 魔石電子励起(れいき)爆薬を取りだして、指で摘まんで門田によく見せる。


「分かってないみたいだから一応説明するけど、これはハッグって魔女が作った爆薬だ。スウェーデンの件を調べてみれば分かる。このビー玉ひとつで、TNT1キロトン分の爆発力がある。魔石電子励起(れいき)爆薬って呼んでるやつだ」


「レイキ? ちょ、ちょっと意味が……。いや、TNT1キロトン分の爆発力てのは分かった。それがマジなら、世界の軍事バランスが壊れる」


「そうだ。だから今回、これの製法を解明して、こっちも作れるようにすることが一つ目。この魔石電子励起(れいき)爆薬を作っているやつらを、製法もろともこの世から消す事が二つ目。三つ目は、魔石電子励起(れいき)爆薬を、誰に託すか。この三つをやりに来た。信じられないなら、このビー玉を空に投げて爆発させてみるか?」


「いやいや、ちょっと待て。僕はいち小隊長で、ただの忍者だ。板垣が言っていることは本当なら、僕の手に余る」


「そっか……。それなら、一つ目の目的、製法解明の邪魔にならないよう、国立研究所に人が入らないように警備してもらっていい?」


「そ、それなら上司に相談しないと」


「ああ、さっさとやってくれ。こっちはこっちで始めるから、邪魔だけはするな」


 自衛隊に忍者がいたのには驚いたけど、さもありなん。

 魔素の存在が隠されていたって報道されていたけれど、昔から忍者は魔素を魔力という形で知っていたのだ。


 小隊長、門田の命令で、研究所周囲の警備が始まった。今のところ俺たちと敵対する雰囲気では無い。


「やっと実験できる……」


「お疲れさん!」


「すまんなファーギ、地球の言葉は解らなくて退屈だっただろ?」


「いや、不便だから言語魔法覚えたぞ?」


 聞くと、マイアもエレノアも言語魔法が使えるみたいで、これまでの会話は全て理解していたそうだ。それなら話が早いって事で、魔石電子励起(れいき)爆薬の解析に、三人とも手伝ってもらうことにした。

 専門的なところはもちろん俺がやるけど。


 魔導バッグから、放射線照射装置を取り出す。これにはまっている物質がなんなのか分からないと話にならない。


 走査電子顕微鏡、発光分光分析装置、核磁気共鳴装置、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析、液体クロマト質量分析、ガスクロマト質量分析。


 様々な方法で、放射線を発生させている物質が何か調べて行くも、全てエラー。


 既存の元素なら一発で分かるのに、おかしい。新元素、あるいは異世界特有の元素の可能性もある。


『オリハルコンです』

『え?』


 創作物の金属だ。ミスリルに続き、オリハルコンまであるのか。俺が知っている創作物の知識と言えば、伝説の剣だったり、神の鎧だったり、そんな仰々しいものだ。しかも希少性が高く、世に一つしか無いなんて設定もよくあるくらいだ。


『仮称ですが』

『仮称かーい!』


 でも、前に精霊の誤訳があったからな。汎用人工知能はあくまで地球で学習した知識を元に話しているから、仕方がない。もちろん異世界での出来事も学習しているけれど。


「ファーギ、マイア、エレノアさん、集まって」


 声をかけて、俺たち四人を神威障壁三重張りで包む。これで声が外に漏れることはない。


「どうやらこいつ、オリハルコンを使っているみたいで……」


「オリハルコンか……」

「うむう……」

「オリハルコンがどうしました……?」


 ファーギとエレノアは何か知ってそうだけど、マイアは知らなさそう。


「ベナマオ大森林の南東に、アルトン帝国がある。そこにオリハルコンの剣と鎧があってな、厳重に保管されている」


 ファーギが簡単に説明すると、エレノアが少し補足してきた。


「オリハルコンは、神々の金属と言われ、地上で発見することは出来ない。アルトン帝国がオリハルコンの剣と鎧を所有しているのは、大昔、勇者と呼ばれた人物が神より賜わったからだ。もちろん唯一無二の物でもある……いや、剣だけなら他にあるな」


 ファーギとエレノアは「放射線照射装置にはまっている金属はオリハルコンではない」と言いたげだ。


『どうなの? そこんとこ』


 汎用人工知能に聞いてみる。


『オリハルコンです』


『根拠は?』


『ソータはアイテールとしっかり向き合ってますか?』


『向き合うというか、なんも変化無しで気にしてない、かな?』


『以前、神威を使ったことで、私たちは神の末席に加えられたと言われました。今は、第五の元素、神々の空間であるアイテールと混じり合いました。ソータは人間ではなく、限りなく神に近い存在になっているのですよ? 念じれば叶います』


 汎用人工知能は、俺にオリハルコンを生み出せと言いたいのか。


 神威障壁の中に、カツンと音を立てて落ちた金色の粒。

 意識しただけなのに、もしかしてオリハルコンを創造しちゃったのか……?

 あー、でもそんなに気にしなくていいかな? 水魔法や土魔法は、実際に物質を創り出してるからな。魔素と反魔素の対生成で生まれているのだ。いつか暇があれば、神威、冥導、アイテール、この三つの素粒子も思考実験してみよう。


 ファーギがしゃがんで金色の粒を拾い上げる。ごま粒程度の大きさだけど、落ちた音からすると、随分比重が高そうな金属だ。

 それを手のひらに乗せて、エレノアとマイアに見せている。

 三人とも時間が止まったように動かなくなった……。もしかしてほんとに時間が止まってる?


「おいおい、マジかこれ……」

「ソ、ソータ……このオリハルコンはどうしたんだ?」

「ソータさん……」


 ファーギ、エレノアが超驚いている。マイアは膝をついて両手を組んでしまった。つまりこれはオリハルコンで間違いないのだろう。


「あははー、何となくできたみたい」


 三人ともマジ顔なので、笑って誤魔化す。ほんとに何となくできたんだけど。


 そうなると、放射線発生装置の物質は何だ?


『手を加えて、合金化されたものです。魔石を励起させるため、最適な配合になっているはずです』


『配合されてる金属は?』


『ミスリルです』


『ほーん。オリハルコンかミスリル、どっちか片方で励起できるかな?』


『魔石を励起させることは不可能です』


『となると、この形が関係するのかな?』


 放射線照射装置は、金属製の箱になっている。

 小さな引出しがあり、金平糖みたいなオリハルコンがはめ込まれ、ビー玉大の凹みがある。ここに整形した魔石を入れて励起させる仕組みだ。


 これで爆薬を作る場合、ここから取りだした瞬間、時間遅延魔法陣と爆裂魔法陣を彫らなければならない。

 一瞬で基底状態になるから、時間との闘いだな、これで爆薬を作るのは。


 ん? そういえば魔石に魔法陣を彫った跡は無かったな。

 俺みたいに風魔法で、魔法陣を飛ばしているのか。


「でも、だいたい分かった。この装置自体が凄く稀少な物で、魔石電子励起(れいき)爆薬は量産できない。大元を見つけて叩き潰しに行こう」


「どうやって探すんですか?」


「マイアの言うことはもっとも。だから、外にいる忍者を使わせてもらう」


「やつらこの国の軍ではないのか?」


「エレノアさん、あいつらは軍ですけど、一般的に知られていない秘密の部隊なんです。万が一協力を拒んだら、国民にバラすって脅せば一発で落ちます」


「そ、そうか……? あたしは最近、ソータが悪いやつに見えてくるときがあるんだが?」


「気のせいですよ!」


 神威障壁を解除し、俺たちは建物の外へ向かった。

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