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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
14章 デーモンの国王

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276 裏切りの覇道

 ドアを背にしたアルベルトに、近衛騎士団が一斉に襲いかかった。


 しかし彼らは、アルベルトとの地力が違いすぎた。


 デモネクトスを飲み、一時的にデーモンを従えた強者。


 それに対するは、屈強であろうとも、ただのニンゲン。


 四方八方から迫り来る刃を、アルベルトの剣が一閃する。近衛騎士団の剣が、まるで紙を切るかのように、あっけなく斬られて(・・・・)しまった。


 騎士団の剣が床に落ち、金属音が冷たく響き渡る。


 その光景を目の当たりにした五人の騎士は、恐怖に顔を歪めながら慌てて後退した。


 状況を見ていた近衛騎士団長エドガーが声をかける。


「おいおいアルベルト、お前、強すぎだろ」


 アルベルトはその声で、目前に剣が迫っていることに気付いた。


「チッ――」


 舌打ちをしたアルベルトは、ニンゲンではあり得ない速さでエドガーの剣を避けた。


「――相変わらずの腕前だな、エドガー」


 次にアルベルトの声が聞こえてきたのは、騎士団の背後。彼はついさっき降りてきた階段に立っていた。


「もう一度聞く。ルドルフ陛下に毒を盛ったのはアルベルト、お前で間違いないかっ!」


 エドガーは問う。剣を正眼に構え、剣先をアルベルトへ向けて。


 他の騎士たちも抜いた剣をアルベルトへ向けている。


「色々言い訳して、マリーのスキル〝真偽判定(ヴァリダティオ)〟を逃れてきたけど、そろそろ無理っぽいな。そうだよ、俺がルドルフ・フォン・スタインに毒を盛った」


 アルベルトは階段の上から騎士たちを見下しながら笑みを浮かべる。その顔は元のアルベルトの顔と、取り憑いたデーモンの顔が交互に入れ替わっていた。


「騎士団に告ぐ! アルベルト・フォン・ベルクは、国王暗殺未遂の大罪を犯した。もはや問答は無用! 討ち取れええっ!!」


 エドガー・フォン・ラインバッハの号令と共に、騎士団がアルベルトに襲いかかる。全身甲冑ながらも、彼ら騎士団の動きは素早かった。


 楯を構えた騎士が五名、幅の広い階段を横列陣形で駆け上がっていく。その背後にも同じく五人の騎士がついていき、隙間から剣を突き出している。


 対人戦でこのような陣形を使うことなど無い。本来ならば。


 しかし騎士たちは、先ほど五人分の剣がまとめて斬られたことを警戒しているのだ。そのため楯を使った防御重視の陣形を採用していた。


「楯があっても、斬られちゃ意味がないだろ――――」


 アルベルトは階段の上から、たかをくくっている。俺にはデーモンの力がある。防御陣形など意味は無い。そう言いたげに。


 しかし彼の背後に、突然三人の騎士が現われた。騎士たちは間を置かず、抜き身の剣で斬りかかった。


 これにはアルベルトも驚いたようだ。


「――――転移スキルかっ!?」


 当然だが、近衛騎士団は精鋭の集まり。ニンゲンとはいえ、取得の難しい転移スキルを使える者もいる。当然ながら重要なスキルを持つ者は、対策されないように口外することを禁じられている。


 そんな彼ら三人の騎士は、躊躇うこと無くアルベルトを斬り割いた。


「……」


 笑みを浮かべるアルベルト。両腕は落ち、脳天からへその辺りまで剣で斬られているというのに。


 ひじから先が無くなり、本来なら血が噴き出すはず。しかしその断面は、真っ黒なタール状のものが見えているだけ。


 その上彼は、頭部から垂直に斬られて、左右に裂けている。断面はもちろん、赤ではなく黒。


 ニンゲン足りうるものは微塵も残っていない。


 これだけの状態になれば、いくらデーモンでも死ぬ。しかしアルベルトは死ななかった。


 その事に危機感を覚えたエドガーは、屋内での攻撃魔法の使用に踏み切った。ここは王の居城で、攻撃魔法の使用は禁止されている。しかし今はそれどころでは無い。


「魔法を放てっ!!」


 エドガーの号令で、後ろに控えていた騎士から魔法が放たれる。土火風水、様々な属性魔法が、アルベルトへ迫る。

 近くにいた騎士たちは素早く後ろへ下がる。


 それと同時に魔法が着弾。アルベルトの身体を、ロックバレットが穿ち、ファイアボールが炸裂する。ウインドカッターが彼を切り裂き、ウォーターボールが吹き飛ばした。


 大きな爆音と共に階段は崩れ、その先の壁に穴が空いた。おまけに辺りは水浸し。上品な内装だった城内は、一瞬にして戦場のような光景へ成り果てた。


 エドガーがここまでやるのには訳がある。この場を突破されれば、前国王のルドルフ・フォン・スタインへ刃が届く。

 それは絶対に阻止しなければならない。エドガーたち近衛騎士団は、その一心で部屋の入り口を守っていた。


 ――――バチン


 大きな音が響いた。それは左右に切り裂かれたアルベルトが、元の姿へ戻った音。切り落とされた両腕も、元に戻っていた。魔法で受けたダーメージは、着衣以外ひとつも残っていない。


「さすが近衛騎士団。デーモンの力に頼りっきりだと、やられてしまいそうだ」


 言葉面には危機感がこもっている。しかし、その口調には余裕と嘲りが含まれていた。


 エドガーはさらに危機感を強め、再度号令を発した。


「障壁を張れ! 全員防御態勢!!」


 その声で、騎士たちは一カ所に集まり、楯を構えて障壁を張る。エドガーはその中心で、騎士団全員を守るための大きな障壁を張った。


 ――――ズッ


 アルベルトが手をかざすと黒線が放たれ、障壁は瞬時に貫かれた。それは、ふたりの騎士も同時に貫通した。ひとりは胸部、もうひとりは腹部。


「ぐあっ!?」

「がはっ!?」


 全身甲冑の中から、くぐもったうめき声がする。ふたりの騎士はそのまま膝をつき、前のめりに倒れてゆく。仲間の騎士は彼らを助けるため、すぐに回復魔法と治療魔法を使った。


「おいっ、やめろっ!!」


 エドガーが魔法を使ったふたりに注意をするも、遅かった。


 合計四人分の障壁が消えたことを、アルベルトは見逃さない。すぐに追加の黒線が放たれ、またしても障壁を貫通。強度が落ちた障壁は、黒線の前にはもはや紙のようで、瞬く間に十名の騎士が胴体を輪切りにされた。


「くそっ!!」


 黒線に斬られた騎士たちは、べちゃりと崩れ落ちた。床には血の池がどんどん広がっていく。十二人の騎士が一瞬のうちに命を落とした。障壁も盾も鎧も、黒線で簡単に穿たれ切り刻まれた。


 圧倒的な力の差に、近衛騎士たちが怯む。この黒線は、ルイーズ(ユハ・トルバネン)の使っていたものと同じだった。


「俺はな、十歳のとき、レオンと共にスタイン王国を大きくすると決めたんだ。これから始まるんだよ、俺とレオンの覇道が」


 アルベルトは、極めて冷静でかつ、優しげな口調で話す。彼の前で怯える騎士団に対して。


 先ほどと同じで、アルベルトはデーモンの顔が見えたり隠れたりを繰り返している。いや、どちらかというと、デーモンへ変わる比率が高くなっていた。


 彼も時期、デーモンへと成り代わるのだろう。


 この場の誰もがそう感じた。


「アルベルトは、斬っても魔法でも死なない。私たち騎士団は、やつの攻撃が防げない。……このままでは」


 窮地に陥ったエドガーは、何か打開策がないかと考える。五十人近い騎士がひとりの敵相手に戦える広さはあれど、あくまでここは城内で、動ける範囲も使える魔法も限られている。背後の前国王のルドルフ・フォン・スタインを守るためには、どうすればいい。


 エドガーが頭をフル回転させていると、彼らの背後からドアの開く音が響いた。


「アル……」


 その声は悲しみに満ち、悲しげな顔で、レオンハルト・フォン・スタインがそこに立っていた。彼の手には神威(かむい)結晶つきの黒い杖が握られている。


 ドアはすぐに閉じられ、再び防御魔法陣が多重展開された。


「レオン、その杖は一体何なんだ……。それに、お前のデーモンはどうした?」


 階段にいるアルベルトは、騎士団の後ろ――ドアから出てきたレオンハルトを見つめている。


 騎士団長、エドガー・フォン・ラインバッハは、この事態を好機と捉えた。


「アルベルトを挟撃する」


 団員に小声で伝えると、彼ら騎士団は障壁を解除して左右に分けていく。


 アルベルトに問われたレオンハルトは、だらりと力を抜き、悲しげな表情で下を向いていた。


「この杖もデーモンも、今はどうでもいい」


 レオンハルトは深く息を吐いた。


「聞かせてくれ、盟友アルベルト・フォン・ベルク。父上、ルドルフ・フォン・スタインに毒を盛ったのは本当にお前なのか……?」


「盟友レオンハルト」


 アルベルトは一瞬目を閉じ、再び開いた。


「俺はお前との約束を実現するため、最善を尽くしたんだ。俺たちが覇道を進むのなら、前国王のルドルフは障害でしかない。それは、お前だってわかっているはずだ」


「質問に答えろ。俺の父、ルドルフ・フォン・スタインに毒を盛ったのはお前か」


「ああ、そうだよ。それがどうしたっていうんだ――――」


 アルベルトが喋っていると、レオンハルトは杖を構え、悲しい表情のまま呪文を唱えた。


浄化聖術(プルガティオ)


 キラリと光る神威(かむい)結晶。同時にデーモンはアルフレッドの体内から引き剥がされ、彼の背後に黒いタールがべしゃりと張り付く。そして、階段の赤い絨毯に黒いシミが広がってゆく。


「……お、おい。いま何をした」


 アルベルトは困惑し、階段の上にぶちまけられた黒いタールと、レオンハルトを見比べる。


「見ての通りだ。お前に憑いているデーモンを分離させた。そこの黒いやつは、まだ生きている。アル、お前が滅ぼすんだ」


「デ、デーモンを分離させる? そんな事が出来るはずが無い!!」


「出来るんだよ。この杖で……」


「……」


 アルベルトは、レオンハルトの杖を無言で凝視する。


「デーモン化しようとも、この杖を使えばニンゲンに戻せるんだ。一人ずつ、どれだけの時間がかかろうとも、全てのデーモンを滅ぼす。これが俺たちふたりの贖罪だ」


 レオンハルトはそう言って、もう一度杖を掲げた。


 杖の神威(かむい)結晶がキラリと輝く。


 それは単なる光属性魔法だが、杖の神威(かむい)結晶のおかげで効果が強くなっていた。アルベルトの背後で蠢く黒いタールは、光を浴びて即死。蠢いていた黒い粘体は、ただの黒い水たまりと化した。


 アルベルトは足元で息絶えたデーモンを見つめ、ため息をつきながら顔を上げた。そして諦めにも似た顔で呟く。


「しょうがねぇな……」


 それを聞いてレオンハルトは笑顔で応じた。


「分かってくれたか……。よかった……、本当によかった」


 レオンハルトは構えた杖を下ろし、アルベルトへ向かって歩む。階段を上がり、両手を広げてアルベルトをハグした。


「アル……、残念だが、俺たちの覇道は潰えた」


 レオンハルトは静かに腰の短剣を抜き、素早くアルベルトの胸を貫く。心臓を一突きだ。


「ごふっ――」


 アルベルトは大量に吐血する。レオンハルトとハグをしたままで。刺さった短剣は、彼の肺を傷つけたのだろう。


「済まない、アルベルト。……もう、こうするしかないんだ」


 レオンハルトは涙を流しながら、アルベルトの肩を掴んで向かい合う。


 吐血したアルベルトもまた、涙を流していた。


 それは盟友同士の決別の涙。


 ――――ではなかった。


 アルベルトの眼が赤く染まり、レオンハルトの肩を掴み返す。逃さぬように。そして彼は笑みを浮かべた。その口からは茶色い乱ぐい歯が見えていた。


「アルッ!? お前っ!!」


 レオンハルトの声は途中で途絶えた。


 アルベルトは大きく口を開けて、レオンハルトの喉元に食らいついたのだ。


 あっという間の出来事だった。


 近衛騎士団は、信じられない光景に、呆然とする。しかし、騎士団長のエドガー・フォン・ラインバッハだけは状況を把握していた。


 アルベルトからデーモンが剥がれたのは確かだ。しかし、彼はそれだけではなく、バンパイアでもあったのだ。


「バンパイアだ! アルベルト・フォン・ベルクは、デーモンを宿したバンパイアだ! レオンハルト陛下を救出するぞ!」


 そう叫びながら剣を抜いて、エドガーは階段を駆け上がってゆく。



 ――――ドッ


 その音はレオンハルト(・・・・・・)が、エドガーの腹部を蹴った音。


 エドガーは身体をくの字に折り曲げ、直線で飛んで行く。振りかぶった剣はへし折れ、鎧の腹部は足の形の凹みが出来ていた。


 防御魔法陣の張られた壁にぶつかり、エドガーは力なくくずれ落ちる。


「邪魔をするな」


 そう言ったのはレオンハルト。彼の目はすでに赤く染まり、口元から牙がのぞいていた。血の契約(ブラッド・コンタクト)により、レオンハルトは上位者のアルベルトを守ったのだ。


 それは主従関係が逆転したことを意味する。


「がはっ――。ひ、怯むな。訓練を思い出し、冷静に対処しろ」


 エドガーは吐血して、息も絶え絶え。それでも何とか騎士団へ指示を出した。


 騎士団はその言葉で我に返り、レオンハルトとアルベルトに襲いかかる。


 三名の騎士は転移スキルを使用し、ふたりの視線をかく乱。


 別の騎士は、魔法を放ちながら剣を振るう。


 レオンハルトとアルベルトへ、全方位からの攻撃が届こうとしたその時、彼らの近くにいた騎士たちの動きが止まった。


 異変を感じた騎士たちは慌てて後ろに下がる。


 ――――ベシャ


 十名の騎士は、サイコロ大に斬り刻まれて床に落ちる。


 その中心にいるアルベルトとレオンハルトは、長い爪に滴る血を舐め取っていた。恍惚とした表情で。


「女神アスクレピウスの像を壊したのは、正体を隠すためだったか……。アルベルト・フォン・ベルク」


 騎士団長エドガーは、息も絶え絶えで呟く。内臓破裂で呼吸することもままならない。部下たちは半分以上死に、自身を回復することも出来ない。

 彼は絶望の淵に立ち、諦め掛けたその時、背後の防御魔法陣が消えた。


 ドアが開くと、前国王のルドルフ・フォン・スタインが現われた。


 料理長のマリーに肩を借り、ようやく立っている状態だ。


 しかし、その窪んだ瞳からは、強い意志が見て取れた。


「レオンハルト。……情けない姿になりおって」


 そう言ったルドルフから、神威(かむい)が吹き出した。それは目に見えるほど濃く、辺りを白く染め上げてゆく。


 それは無詠唱で使用された、神威(かむい)魔法。ルドルフは、騎士団を回復させ、それと共にバンパイアのふたりへダメージを与えた。


 ルドルフを支えるマリーは、ポケットから小瓶を取りだし、バンパイアのふたりへ投げ付ける。


「ふん。老害が出てきて、何の用だ」


 アルベルトはそう言ってあごをしゃくる。


 ()へと成り下がったレオンハルトは、長く伸びた爪で小瓶を真っ二つに斬る。そして彼女へ問いかけた。


「マリー、それがヒュギエイアの水だということは俺にもわかる。無駄な抵抗は止めろ」


 斬られた小瓶は飛び散らず、ふたりの左右を飛んでいった。


 ヒュギエイアの水は、穴の空いた壁からむなしく落ちてゆく。


「甘いわね、新米バンパイア」


 マリーは冷ややかな笑みを浮かべた。


「デモネクトスを飲んだあなたたちには、ヒュギエイアの水なんて効かないのよ?」


「……は?」


 マリーの声に、レオンハルトは呆気に取られる。


「というのは……嘘よ!」


 マリーは高らかに笑った。


「あははっ!」


「くそっ!! 料理長風情が……!!」


 アルベルトの顔が怒りで歪み、レオンハルトを押しのけ、階段を降り始めた。


 騎士団長エドガーは、その隙を見逃さなかった。


「こいつは返してもらうぜ」


 転移スキルでレオンハルトの側に現われ、エドガーは黒い杖を掴む。それと同時に、彼は爆裂火球(エクスプロージョン)を放った。


 エドガーはもう一度転移し、呆気に取られたアルベルトにも、至近距離で爆裂火球(エクスプロージョン)を放つ。


 屋内で使う魔法ではない。


 爆裂火球(エクスプロージョン)は一瞬で二つの爆発を起こす。レオンハルトとアルベルト、騎士団長エドガーは、別方向へ吹き飛ばされた。


 エドガーの鎧はひしゃげ、身体は大やけど。衝撃により、彼は意識を失いかけていた。しかし、その手にはしっかり杖が握られている。


 アルベルトとレオンハルトは、壁の穴から外へ飛び出し、城外へ落ちていった。


 そうなることを予測していたのか。ルドルフはすかさず神威(かむい)魔法を使う。すると、またしても白い霧のようなものに包まれ、エドガーの火傷や傷が回復し、かろうじて残る意識を保てた。


「ありがとうございます陛下」


 エドガーはルドルフの元へ駆け寄り、膝をつく。掲げた両手には、レオンハルトから取り返した杖が乗っていた。生き残りの騎士たちも集まってくる。


 前国王、ルドルフ・フォン・スタインのまえに、二十名ほどの忠臣が集まった。


「戦を思い出すな、エドガー」


「はっ! あのときの連携が役に立ちました!」


 杖を取り返すまでの一連の動きは、似たような状況が過去にあったから為し得たのだろう。


「さて、これからどうするか、話し合おう。私の部屋は頑丈に作られていて、デーモンだろうがバンパイアだろうが入っては来られぬ。感謝しなければな……、この部屋を作ったレオンハルトに」


 ルドルフは近衛騎士団とマリーを部屋に招き入れるためにドアを開けた。


 するとそこに別人の声が聞こえてきた。


「すいませーん、いったい何が起きたんですか?」


 ルドルフたちは驚きの表情で振り返る。声が聞こえるまで全く気配を感じなかったのだ。


 騎士団長エドガー・フォン・ラインバッハはすかさず前に出る。


「何者だ……どうやって城内へ侵入してきた」


「あ、はじめまして。冒険者のソータ・イタガキです。ここに来れたのは衛兵さんに聞いたからです。デーモン化してましたけど」


「……ほう。そんな中、デーモンの攻撃を避けて、何をしに来たというのだ」


「あ、いや、衛兵さんのデーモン化は全員治療済みです。隊長さんたちに集まってもらい、城の門を全て閉じるようにお願い(・・・)してきました。ここに来たのはレオンハルト国王に面会しに来たんですが……、まるで戦場ですね、ここ」


「――――レオンハルトに会いに来ただと? 貴様もバンパイアかっ!」


 エドガーは転移スキルを使い、ソータに斬りかかった。

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