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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
13章 デモネクトス

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265 メリル死す

 ハインリヒは剣を受け止められ、咄嗟に後方へ跳んだ。


 フリードリヒ卿の影から浮かび上がった真っ黒なヒト型は、速やかにドワーフの女性――メリル・レンドール――へと変わる。


「フリードリヒ卿、お下がりください。それと、兵士の皆さん、手を出さないで! 二次被害を出したくありません!」


 デーモンの強襲で立ちすくむフリードリヒ卿は、メリルの言葉でハッとなり下がっていった。追撃をかけようとしていた兵士たちも、メリルの言葉で留まった。


 ハインリヒはフリードリヒ卿を逃さぬよう回り込んで行くも、素早く動いたメリルが立ち塞がる。


「貴様っ、僕のかたき討ちの邪魔をするな!!」


 彼はまだデーモンの身体になれていないのか、ゴロゴロする声で叫んだ。


「かたき討ち? デーモンの分際で、ふざけたことを」


「デーモンじゃない! 僕はハインリヒ・フォン・ヴァイセンブルクだ!」


 その言葉を聞いて、メリルはフリードリヒ卿へ鋭い眼差しを向けた。その真偽を確かめるかのように。


 フリードリヒ卿は迷いながら頷く。


「メリルさん、あそこにハインリヒの抜け殻がある。彼はデーモンに乗っ取られたまま、意識を保っている……かもしれない」


 フリードリヒ卿は、ハインリヒが囮にした抜け殻を見つめる。兵士たちが掲げて見せているのだ。ペラペラになったハインリヒの皮を。


「だから何だ。僕はハインリヒだと言っているだろう!」


 そう言った灰色のデーモンは、フリードリヒ卿めがけて目にも留まらぬ速さで移動してゆく。


 しかしそこに割って入るメリル。


 ――――――――ギィン


 再びハインリヒの剣が、メリルのシヴ(神威の短剣)によってはじき返される。


 ハインリヒはメリルから距離を取り、苦々しい表情を浮かべる。


 しかしメリルもまた、苦々しい表情となっていた。


シヴ(神威の短剣)が欠けている……」


 ハインリヒの持つ剣は一般的な物で、特殊な効果はない。それなのにファーギ特製の短剣が耐えられなかったのだ。その事に違和感を持ち、メリルはさらに集中して動いてゆく。頭を低くして駆けだし、ハインリヒへ迫る。


 しかしながら、ハインリヒの動きはメリルを上回った。


 ぐっとしゃがみ込んで、バネのように飛んでくるハインリヒ。その剣がメリルに迫る。


 彼女は驚きつつも、ギリギリで反応する。斬られる直前にシヴ(神威の短剣)を構えた。


 ――――――――ガキィン


 ハインリヒの剣は、シヴ(神威の短剣)をたたき折り、メリルの肩口から腹部までザックリと斬った。


 笑みを浮かべるハインリヒ。その目に、赤い血を流して膝をつくメリルが映っている。


 しかしメリルも負けてはいない。すかさずヒュギエイアの水を取りだし、傷口に振りかける。


「えっ?」


 ヒュギエイアの水が入った小瓶が、メリルの腕ごと斬り落とされる。回復させないよう、ハインリヒが剣を振るったのだ。


 彼は憑いたデーモンを従え、デーモンの力を余すことなく発揮していた。


 形勢を不利だとみたフリードリヒ卿は号令を放つ。


「全員で討ち取れ!」


 ハインリヒはすでに、大勢の兵に囲まれている。フリードリヒ卿の命に従い、彼らはハインリヒへ攻撃を仕掛ける。しかし彼はあり得ない速さで移動して、兵士の輪から逃れる。


「はは……。デーモンの力、何となく使い方が分かってきたよ。僕は知らないうちに冥導(めいどう)を使っていたみたいだ」


 ハインリヒは四方八方からの攻撃を、一本の剣ではじく。その剣が冥導(めいどう)に浸食され、黒く染まってゆく。そして彼は反撃に転じた。


 襲いかかってくる兵の武器ごと、身体を真っ二つに斬り割く。彼は攻撃の手を緩めない。次から次に兵士たちを叩き斬っていく。素早く動き回るハインリヒを、目で追える兵士はいなかった。


 怒号や叫び声がその空間を支配し終わる頃、生き残りはフリードリヒ卿とメリル・レンドール、ふたりだけとなっていた。


 ハインリヒは、息も切らさず穏やかな声で話しかける。


「フリードリヒ卿と、そこのドワーフに聞く。どっちが僕の妹、ソフィアを殺した」


 ニンゲンのフリードリヒ卿では、デーモンに憑かれたソフィアを殺害することは難しい。ハインリヒは、フリードリヒ卿の影に隠れていたメリルも怪しいと踏んでいた。至極当然な推論であろう。


「ソフィアとは、フリードリヒ卿の執務室に入ってきたデーモンの名でしょうか? あれを殺したのは私ですが、何か問題でも?」


 メリルは答えながらも煽る。彼女はヒュギエイアの水で治療出来なかった。切り落とされた左腕が生え替わるようなことはない。斬られた身体から赤い血が溢れて、立っているのもやっとの状態。


 圧倒的に不利な状況だ。それを打破するため、メリルは少しでもいいから、ハインリヒに精神的なダメージを負わせて反撃しようとしている。


「黙ってないで何かいったら?」


 メリルの煽る言葉に苛つきながらハインリッヒが応じた。


「……お前がソフィアを――――――――」


 ハインリヒは、声さえも置き去りにする速さで駆け抜けた。


「――――――――殺したのか」


 次に聞こえたのは、フリードリヒ卿の背後から。


「えっ――」


 その声はメリルのもの。


 声を聞いたフリードリヒ卿がメリルの方を向く。


「お……おいっ!」


 大丈夫なのか。その言葉を、フリードリヒ卿は続けることができない。


 メリルの首に一筋の赤い線。それはハインリヒの剣で斬られた証し。


 メリルは自分の首が落ちないように、両手で支えていたのだ。


「フリードリヒ卿、申し訳ありません。よろしければ仲間に伝えていただきたいのですが――――」


 メリルの言葉はそこで途切れた。


 ハインリヒが彼女の背中を蹴ったからだ。


 その勢いで手がぶれて、支えていた首が転がり落ちる。


 首が無くなったメリルの身体から、真っ赤な血が噴き出した。


「さあて、ソフィアのかたきを討たせてもらおうか。テメエは簡単に死ねると思うなよ? フリードリヒ・フォン・ローゼンバッハ辺境伯」


 灰色のデーモン、ハインリヒは、流暢に喋り(・・・・・)ながら醜悪な笑みを浮かべていた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 テイマーズの三人は、地上のメタルハウンドと四本脚を掃討し終え、満足げな表情を見せる。


「ダンピール嫌だったけど、悪くないかもね」


 アイミーは屋根の上で呟いた。周りは瓦礫の山で、建築物はほとんど破壊されている。しかし破壊されながらも、形を留めている建物もある。彼女たち三人はそこからマールアの街を眺めていた。


「けど、スライム召喚しすぎよね。いったん帰しておこうよ」

「だね。ちょっと休憩っと」


 ハスミンとジェスはそう言って、召喚したスライムを元の場所――帝都ラビントンへ帰す。アイミーもそれに続き、三人とも屋根に腰掛ける。


 彼女たちは腰のポーチからヒュギエイアの水の小瓶を取り出して、一気に飲み干す。


「さーてっ! 城壁のデーモンを滅ぼそう!」


 アイミーが伸びをしながら立ち上がると、ハスミンとジェスも軽やかに身を起こした。


「魔力と闇脈(あんみゃく)が全快したわ! 体中に力がみなぎる感じ」

「疲れも吹っ飛んだ。ヒュギエイアの水様々だねっ!」」


 アイミーはハスミンとジェスが頷いたことを確認すると、さらに説明を続けた。


「さっきさ、スライムに擬態してもらったでしょ。あんな感じであたしたちの身体に張り付いてもらおうよ」


「はあ? スライムかわいいけどさ、けっこう冷たいよ? オレ冷え性!」


 ハスミンは女の子なのに相変わらずの口調だ。


「んー、でもいい考えかも?」


 しかしジェスは乗り気のようだ。


「なんで? ジェス寒くないの?」


 すかさずハスミンがツッコむ。


「いや、通常のスライムで回復、ダイヤモンドスライムで防御、オパールスライムで素早く動く。スライムにお願いすれば、やってくれると思うよ」


 そういったジェスにアイミーは相づちを打つ。


「寒いのはどうするの?」


 ハスミンは両肩を抱きしめて、寒い素振りを見せる。


「ルビースライムに暖めてもらえばいいさ」

「あ、それいいかもっ!」


 ジェスの言葉に食い気味に反応するハスミン。


 どうやら話はまとまったようだ。テイマーズ三人は再びスライムを呼び出し、自身の身体に纏っていく。それはさながら、様々な色合いの着ぐるみ。身長の低いテイマーズだから、一般的なヒト族と変わらないくらいの大きさとなった。


『あら、呼吸ができるわ』

『あったけー』

『五感も正常。いや、より強化されている感じがする』


 アイミー、ハスミン、ジェスと、念話で各々の感想を述べて城壁を見る。茶色い石造りの壁にはドアがあり、三人はそこをじっと見つめた。


「うわぁ……。デーモンあんなにいたの?」


 ドアから溢れ出すデーモンの数に、アイミーが引いている。


「もう一度スライムを呼ぶよ」

「そうしよう」


 ハスミンとジェスの言葉に、アイミーが頷く。


 その時だった。


『――ごめんなさい』


 メリルの心が砕けるような念話が届いた。その言葉には、絶望と悲しみと後悔が混じっていた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 その一方、ヴァルター卿率いる民間人は、安全な場所に到着していた。いまだ地下道には変わりないが、城壁から遠く離れた場所にあり、魔導砲の轟音が遠くから聞こえるだけで、その牙はここまで届いていない。


「この階段を上がれば、フリードリヒ・フォン・ローゼンバッハ辺境伯の別邸がある。すでに避難している人びとがいると思うが、驚かないように落ち着いて行動してくれ」


 彼は階段の脇に立って、先に住人たちを上がらせる。感謝の声を度々かけられながら、ヴァルター卿は住人たちがひとりも居なくなるまで待ち、最後に階段を上がっていった。


「……おや? フリードリヒ卿はどこだ」


 ヴァルター卿には、たくさんの人びとが目に入っているが、肝心の人物がいない。


 そこはエントランスホール。湖に面した広大な屋敷である。築年数は数百年を経ており、決してきれいな建物ではないが、隅々まで掃除されていて清潔感が漂っていた。


 ホールには大勢の人びとが休んでいる。フリードリヒ卿の城から来たメイドたちが走り回っており、避難してきた人びとに軽食を振る舞っていた。


「遅かったな」


 ミッシーがあたりを見渡しているヴァルター卿に声をかける。隣にはマイアとニーナがいる。彼女たち三人はすでに、路頭に迷う住人たちを避難させていた。


「遅れてすまない。それと、フリードリヒ卿は来ていないのか」


 ヴァルター卿の問いに、ミッシーは小さく頭を振る。フリードリヒ卿の不在は、彼らにとって大きな損失だ。


「フリードリヒ卿はもう出撃している。私たちは彼の指示に従い、この屋敷を避難所として開放した。そして、城のメイドたちと共に、避難民に食事と医療を提供している」


 ヴァルター卿は眉間に深い皺を寄せながら頷いた。フリードリヒ卿の不在は心配だが、今はこの屋敷の避難民を守ることが最優先事項だと心に決めた。


「それは良かった。住民の安全が確保されているなら、フリードリヒ卿が戻るまで、私がこの屋敷を守る」


 ヴァルター卿の言葉に、ミッシーは力強く頷いた。マイアとニーナも意気込んでいる。


 ミッシーたち三人は、緊迫した面持ちでフリードリヒ・フォン・ローゼンバッハ辺境伯との合流に向けて準備を開始した。しかしその時、屋敷の入り口から領兵の大声が聞こえてきた。


「ヴァルター卿、急いでこちらへ! この屋敷に向かってくるデーモンを多数確認しました!」


 ヴァルター卿とミッシーたち三人は急いで声の方へと向かう。その表情は険しく、彼らは迫り来る脅威に立ち向かう覚悟を固めていた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ミッシーたちが屋敷の外に出ると、先ほどまで大量にいたスライムたちの姿が跡形もなく消えていた。


 その代わり、別邸を囲む門の先に、灰色のデーモンが見えている。統率する者が居ないからなのか、個々で動き回り、家屋を荒らし回っているようだ。遙か遠くに見える城壁のトーチカは、すでに砲撃をやめていた。


 その不気味な光景を眺め、マイアとニーナは息を呑んで呟いた。


「あたしたちが見てきたデーモンと違いますね。テイマーズの三人は、何やってるのかな……?」

「あのデーモン、ヴェネノルンの血を飲んで親和性が高まってる? 冥導(めいどう)を感じないわ」


「何だ、そのヴェネノルンの血とは」


 ヴァルター卿は知らなかったようだ。それでミッシーが丁寧に説明していく。彼が納得する頃には、デーモンが屋敷に迫っていた。


「私たち三人で対処する。ヴァルター卿は屋敷に避難しろ」


 ミッシーの口調と表情は厳しい。


 ヴァルター卿はいちおう子爵だ。しかし今は、ミッシーの物言いに文句を言っている場合ではない。


「わ、分かった。屋敷にいる兵士で守りを固める」


「ああ、頼む」


 ミッシーはヴァルター卿をチラリと見て、マイアとニーナへ視線を移す。そして彼女たち三人は頷き、唐突に姿が消えた。


 転移魔法を使ったのだ。それを見て、ヴァルター卿は唖然とする。


「……え、詠唱も無しで、そんな高度な魔法を使えるのか。ソータ・イタガキのパーティーは、いったいどんな奴らがいるんだ」


 ヴァルター卿は驚いたまま屋敷の中へ戻り、号令を発した。


「領兵に命ず! 屋敷の防御魔法陣を最大出力で稼働させろ! 魔導銃、弓、攻撃魔法使いは、出入り口および窓の防御に努めよ!!」


 兵士たちは大声で返事して素早く動き始めた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ミッシーたち三人は、マールアの街へ出てデーモンの動きを確認する。彼女たち三人は、対デーモンの専門家と言っても過言ではない。


「一体一体が尋常ではない強さを持っている。これは予想以上に厄介だな……」


 開口一番ミッシーの弱音が飛び出す。


 灰色のデーモンの醜悪な姿に変わりはない。魔力も冥導(めいどう)も漲れていないので、ヴェネノルンの血を飲んでいることは確定。


 そして、使っている魔法が非常に強力なものだった。


「影魔法か。非常に厄介な代物だな。マイア、ニーナ、障壁を張るタイミングを絶対に外すな。一瞬の隙も与えるわけにはいかない」


 ふたりがミッシーの忠告に力強く頷いたところで、メリルからの念話が届いた。


『――ごめんなさい』


 それと同時に、別邸の外に大量のスライムが現れた。スライムたちは、デーモンをまたたく間に滅ぼしていく。


 そんな様子を見て、ミッシーたち三人は困惑の色を隠せない。


「今のは、メリルの念話か」

「そうみたい」

「何か深刻な事態が起きたに違いないよ」


 ミッシー、マイア、ニーナと、門の外から目を離さず会話する。


 するとそこに、ソータから念話が入った。


『これから冥導(めいどう)の固有魔法、イビルアイを使う。デーモンが巻き上げられて、でっかい目ん玉に吸い込まれるから、巻き込まれないように注意してくれ』


『おっさん、戻ってたのかよ!』


 アイミーが念話に参加した。


ルイーズ(ユハ・トルバネン)確保を聞いて、今バンダースナッチに戻ったところだ。地上に、というか城壁と壊されてない家屋にデーモンが潜んでるんだ。そいつらをまとめて魔法で滅ぼす』


『そっか。こっちもスライム呼びすぎてしんどかったし助かる。けどさ、メリルの念話は、いったいなに?』


『分からんから、デーモンを一掃してメリルを探すんだよ』


 ミッシーたちはそれを聞きながら、門の先でスライムとデーモンの戦いへ視線を移す。


『その魔法は何だ?』


 思わずミッシーも聞いてしまった。門の先にいるデーモンに、特に変化は無いからだ。スライムたちに一方的にやられてはいるが。


『あれっ? これも制限されてる。……くっそ、またエンペドクレスの仕業か!』


 ソータから戸惑いと焦りの混じった念話が届く。それを聞いたミッシーたち三人は、互いに顔を見合わせ、無言のうちに状況の重大さを確認し合った。


『ソータ、何の魔法か知らないが、メリルに何かあったのは間違いない。彼女はいま、この街の地下道にいる。反乱軍を指揮する、フリードリヒ・フォン・ローゼンバッハ辺境伯と一緒だ』


『わかった。ファーギからある程度事情は聞いていたけど、メリルが地下にいるとは知らなかった。各自持ち場を離れないで、デーモンに対処してくれ』


 そこでソータの念話が途絶えた。


「何があったのか分かんないね」

「メリルのあんな悲しげな念話聞いたことない」


 マイアとニーナが話していると、ミッシーの鋭い声が響いてきた。


「一体異常に強いデーモンがいるぞ!」


 そのデーモンは、門のすぐ先にいた。スライムたちの攻撃をものともせず、黒い剣で斬り飛ばしていた。絶望と怒りの混じる負の感情が物理的な圧力を伴ってミッシーたちに押し寄せる。


「な、なんてこと……あのデーモン、尋常だわ」


 マイアは剣を抜いて構えたが、その声には明らかな動揺が混じっていた。一切冥導(めいどう)を感じないのに、その迫力に押されているのだ。


「レブラン十二柱クラス……いや、それ以上かもしれない」


 ニーナも同じく、声が震えていた。両手に持つ短剣の先に、身体の震えまで伝わっていた。


「私たち三人で叩くしかない。油断するな」


 ミッシーの口調は鋭く、その眼差しには凛とした決意が宿っていた。その声が届いたのか、灰色のデーモンが門の防御魔法陣をぶち破って入ってきた。


「そこにヴァルター卿がいるだろ? 連れてくれば殺さないでやる。どっちか選べ」


 そう言った灰色のデーモン――ハインリヒ――は、おぞましい笑みを浮かべ、真っ黒な剣を構えた。

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