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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
6章 流刑島

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145 流刑島大爆発

 流刑島にある三カ所の冒険者ギルド、その内の二カ所が壊滅した。その話はまたたく間に広がり、街の人々は躍起になって犯人捜しを行なっていた。


 ――ズズズン


 人々の足に振動が伝わり、腹に響く低い音が聞こえてくる。


「おいっ!! 森の方だ!!」


 誰かの声で、街の人たちは一斉にそちらを向く。


 この場からは見えないが、ファーギ、アキラ、リーナの三人は、ダンジョンから出てくるフェッチ(ドッペルゲンガー)と熾烈な戦いを繰り広げている。遠く離れた街の人々が気付くほどに。


「おいおい、なんだありゃ……?」

「戦争でも始まったのかい?」


 森が燃えている。小高い丘で爆発が起きる。夜空に向かって、白い光線が幾十も伸びていく。その先には、鳥の形をした灰色の空艇が、空中戦闘機動を繰り返しながら回避している。


 住人たちはそれを見て直感で気付いた、冒険者ギルド壊滅の件と関係があると。


「お前ら! あそこにゃ多分アキラがいる!!」

「だな。助けに行くぞ!」

「武器を集めてくるわ!」


 世話になっているアキラを助けに行くため、街の住人が一斉に動き始める。


 勇みたつ人々で、街中が熱気を帯びていく。その片隅で、ボンヤリと座り込む四人組。密蜂(みつばち)のメリルと、テイマーズの三人だ。


 周りが慌ただしくなったことで、四人とも顔を上げる。虚ろな目は、光線が飛び交う森を見つけた。


「ダメ……」

「街の人があそこに行けば死んじゃう」

「クソッ! おいらたちじゃ、足手まといになるだけだ!」


 アイミー、ハスミン、ジェスが泣き言を洩らす。それを聞いたメリルが立ち上がった。


「街の人たちを止めますよ! あんなとこに行っても、無駄死にするだけだって教えてあげましょう!!」


「何言ってんの?」

「この人数をどうやって止めるの?」

「おいらたち四人しか居ないんだよ?」


 メリルの言葉に、すかさず反論するテイマーズ。


「これを使うのよ」


「は?」

「なんで?」

「どういうこと?」


 メリルの手に、スライムの指輪が三つ乗っていた。


「あなたたちが眠らされたあと、ファーギが抜き取ったの。これも訓練だと言ってたわ」


「クソがー!!」

「あのジジイ殺す!!」

「スライムの餌にしてやる!!」


 大声で叫んで立ち上がるテイマーズ。それを見た町の住人は、何事かと立ち止まる。


 そこには不敵な笑みを浮かべるちびっ子ドワーフの三人と、影のように佇むドワーフの女性が立っていた。


「来い」


 アイミーの言葉で、周囲を埋め尽くすスライムが現われた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 森での戦闘が街から見える少し前。


 ダンジョンから出てきたレンツたち五十人と、アキラ、ファーギ、リーナの三人が対峙していた。


 レンツたちは卑しい笑みを浮かべ、ダンジョン産の魔導ライフルを構えている。狙いはもちろんアキラたち。


 対するファーギは魔導ショットガンで彼らに狙いを付ける。アキラは魔剣ラース(憤怒)、リーナは魔弓銃(まきゅうじゅう)エンヴィー( 嫉妬 )を構えている。


「こりゃ、まずいな……」


 ボソリと呟くファーギ。レンツたちの持つ武器が、仮に正しく作動すれば、お互いにただでは済まない。ファーギの魔導ショットガンで、ひとりでも討ち漏らせば、こちらはすぐに全滅する。



 対してレンツたちは魔導銃(・・・)の威力を知っている。ファーギが(・・・・・)撃った(・・・)魔導ライフル(・・・・・・)の威力(・・・)も目の当たりにした。


 しかし、ファーギがいま持っている武器はまだ見たことがない。ダンジョンが複製できなかったものだ。


 故にレンツたちは、手に持つ魔導ライフルで攻撃することを躊躇(ちゅうちょ)していた。


(かしら)ぁ……、あのドワーフの武器、ヤバそうな気がしますぜ……」


「そうですね……。しかし、相手は三人だけ。奴らを囲んで一気に殲滅しますよ!」


 部下の声で決死の表情に変わったレンツ。彼らは腹をくくって移動していく。ファーギたちを取り囲んだところで攻撃を始めた。


「あれ? おかしいですね」


 レンツの魔導ライフルが動作しない。それどころか、レンツの手下たちが持つ魔導ライフルも、すべて動作不良となっていた。



 慌てふためくレンツたち。


 それを見たファーギは再び呟く。


「……Sランクダンジョンでも、神威結晶の模倣はできなかったみたいだな」


「神威結晶? ちょっとあんた! そんなもんどうやって手に入れたのよ!?」


 ファーギの呟きに耳聡く反応するリーナ。


「どうでもいい。ファーギの武器が模倣できないのなら、楽勝だな」


 そう言ったアキラが、魔剣ラース(憤怒)を振るった。剣から噴き出す炎は、とてつもない熱量を持って、ミリアーノ組の構成員を炭に変える。


 それを見たレンツは叫ぶ。


「くっ……。何なんですかこの武器は! 撤退しますよ!!」


 側近を連れて、ダンジョンの入り口へ向かうレンツ。


「逃すとでも思ってんのか?」


 いつの間に移動してきたのか、レンツのすぐ後ろにアキラが立っていた。


「アキラ!! 私とは長い付き合いじゃないですか!!」


「お前らミリアーノ組は俺との約束を破った。特にレンツ、テメエは子どもを誘拐し、俺たちに牙を剥いた。付き合いがあるからって、見逃すわけがないだろうが」


 レンツ、テメエはいつでも殺せるぞ、という気迫でアキラが睨み付けている。そんなレンツに、魔剣ラース(憤怒)をペチペチと首に当てるアキラ。


「降参です……」


 レンツが模倣品の魔導ライフルを投げ捨て、両手を上げる。それを見たレンツの手下たちも、投降の意を示した。


 レンツたちを集めて拘束していくアキラ。レンツを含め、ミリアーノ組の構成員は全員観念していた。


 ファーギとリーナは、周囲を警戒中である。もちろんフェッチ(ドッペルゲンガー)が地下ダンジョンから出てくるのを狙い撃ちするためにだ。


「お前らには聞きたいことが山ほどある。ちんたら喋ってる暇は無いが、レンツに聞きたい。ジルベルトが何で裏切ったのか教えてくれ」


 レンツは下を向く。その表情は見えず、何を考えているのか分からない。


「は?」


 アキラが驚きの声を上げるのも無理はない。レンツたちの足元に、突如ぽっかりと穴が空いたのだから。

 レンツたちは声をあげる間もなく、その穴に落ちていった。アキラが瞬きをすると、もとの地面だけが静かに広がっていた。




 そして次の瞬間、辺り一面にダンジョンの出口が現われた。


 そこからは、続々とフェッチ(ドッペルゲンガー)が出てくる。


 アキラたちは瞬時に戦闘態勢に移った。


 その間にもとめどなくファーギ(フェッチ)が出てくる。その数は既に百を超えていた。


 そんな中、ファーギはホッとしたような顔になっている。


 魔導ライフルが模倣されなかったからだ。


 しかしそれでも、ファーギが作った魔導銃の威力は凄まじい。模倣されたとはいえ、魔導銃の白光が空気を焼きながら着弾すると、何であれ炭になる、燃える、爆発する、その三択であった。


 その脅威に立ち向かう三人。彼らは魔導銃が街を狙わぬよう、山を背負いながら戦いを繰り広げてはじめた。


「ファーギ!! テメエ何てもん作ってやがんだ!! ミリアーノ組の魔導銃と段違いの威力じゃねえか!!」


「ほんと洒落になんないわ!! バカじゃん? ねえ、バカじゃん?」


「やかましいわ! 喋ってる暇があるなら、一体でも多く倒せ!! こいつらが街に行ったらどうなるのか分かってんだろ!!」


 少しは余裕がありそうだ。彼らは罵り合いながらも、ファーギ(フェッチ)を次々と葬っている。


 ファーギが持つ魔導ショットガンは、一発撃てば十のフェッチ(ドッペルゲンガー)を倒す。


 アキラの魔剣、ラース(憤怒)も負けていない。剣を振れば黒い炎が渦巻き、二十のファーギ(フェッチ)を倒している。


 彼らにもましてファーギ(フェッチ)を倒しているのは、ちびっ子エルフのリーナだ。彼女が持つ魔弓銃(まきゅうじゅう)エンヴィー( 嫉妬 )は、マシンガンのような勢いで矢を放つ。

 それだけでは無い。全ての矢が生き物のように動き、ファーギ(フェッチ)の額を正確に貫いていた。


 それでも微増していくファーギ(フェッチ)。数にものを言わせ、束になって襲来する魔導銃のエネルギー弾。やつらは少しでも隙を見せると、空のバンダースナッチを狙ってくる。


「おいファーギ! あの空艇はなんで離脱しねえんだ!? 邪魔くせえにもほどがあるだろうが!!」


「知るかボケ!! ワシは逃げろと言ったぞ!!」


 魔導銃のエネルギー弾を器用に避けながら、アキラとファーギは話していた。




『ファーギ!! 加圧魔石砲の準備できたっす!!』


 ファーギの魔導通信機から、リアムの声が届いた。


「は? ふざけんな!! そんなもん使ったら、ワシらまで死んでしまうだろうが!! というか、何で加圧魔石砲のこと知ってるんだ?」


『へっ、あんたが作ったって言ってたじゃないっすか。バンダースナッチに取り付けてる事もお見通しっす。とにかく、とっとと避難するっす。百からカウントダウンを開始。九十九、九十八――』


「うおおおっ、マジでやるのか!?」


 ファーギの声に返事をせず、リアムはカウントダウンを続ける。


 それを聞いていた、アキラとリーナが何ごとかと問いただす。魔導銃のエネルギー弾を避けながら。


 ファーギの説明を聞いた二人はキレた。


「お前マジでぶっ飛ばす!!」

「そんな威力の兵器を作るなんて、マジでバカじゃん? ねえ、マジでバカじゃん?」


「いいから全力で逃げるぞ!! これ、操縦できるよな?」


 ファーギは魔導バッグをまざくり、六本脚を三機取りだした。


 しかし、ファーギ(フェッチ)の魔導銃が白光を放ち、六本脚の一機を貫いてしまう。六本脚はあっという間に融解し、真っ赤な金属の塊が土を焼きながら広がっていく。


 それを見たファーギは、自動操縦状態の六本脚を十機取りだす。すぐに一機破壊されてしまったが、自動操縦の他の九機が反撃を始めた。


「クソッ! お前たち、さっさと逃げるぞ!!」


 アキラとリーナは既にニケツで、六本脚にまたがっている。リーナは、そもそも足がつかないので、ちょうど良かったのかもしれない。


「行くぞ!」

「おう!」


 ファーギとアキラは、フルスロットルでその場から離れていった。



 ファーギが落としていったのだろうか。


 地べたに転がる魔導通信機から、リアムのカウントダウンが続く。



 フェッチ(ドッペルゲンガー)がファーギたちを追いかけはじめた。


 ゾロゾロと移動するフェッチ(ドッペルゲンガー)


 地面に落ちた魔導通信機のカウントダウンは続いている。


『ゼロ』


 その声と共に、上空で大爆発が起きた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 住民たちが激怒して、メリルたちに罵声を浴びせている。

 それもそのはず、アイミー、ハスミン、ジェス、三人のちびっ子ドワーフが、おびただしい数のスライムを召喚し、森へ続く道を封鎖しているからだ。


 道だけでは無い。月明かりに照らされる穀物畑にもスライムたちが潜み、森へ行こうとする街の人々に体当たりをして追い返していた。


「何度も言います!! 行けば死ぬだけです!! ここは絶対に通しません!!」


 メリルは大声を出しすぎたせいで、(にわとり)の断末魔のような声になっている。彼女の背後では、未だ戦闘が続いており、森からいつフェッチ(ドッペルゲンガー)が出てきてもおかしくない。


「おっさんたちー、もう諦めなー」

「行けば絶対に死ぬー」

「アキラたちに任せとけー」


 テイマーズの三人は、指輪が戻ったからなのか、元気いっぱい走り回って忠告を繰り返している。まだインナー姿だが。


「おい、そこのクソガキ! アキラが森にいるってなんで知ってるんだ!!」


「そういえばお前たち、この街で見かけない顔だな? ドワーフ……。ひょっとして、ミリアーノ組長の血縁か?」


「あー、それなー。この街でドワーフ見かけないもんな!」


「おいおい、こいつら空艇で来たって言いふらしてた奴じゃねえか!」


 ちょこまか動き回ってスライムをけしかけるテイマーズに、なんやかんやと文句を言っている住人たち。


「おい、そういえばミリアーノ組の奴ら、誰も来てないな……?」


 その中の一人が、ふと思い出したように言い放つ。すると、スライムの壁に阻まれた街の住人たちが、周りにいる人々を互いに確認し始めた。


 確かにいないな、そんな言葉が集まった人々に伝播していく。


「おいっ!! あれ!!」


 その中の一人が大声を出して、森を指差す。


 次の瞬間、街の人々は真っ白な光を浴び、地震のような揺れを感じた。


 みながそっちを向くと、森の奥深くで光の塊が膨れ上がって行くところだった。


 軽い衝撃波が通り過ぎた直後、山が噴火したような轟音が鳴り響く。


 吹き飛ばされた森の土砂が、もうもうと巻き上がり、赤い炎をまとったキノコ雲に変わっていく。


 その光景は、まるで地獄。バンダースナッチから加圧魔石砲が放たれ、上空百メートルあたりで砲弾が爆発した瞬間だった。森の木々は、既に衝撃波でなぎ倒されている。急速に上昇していくキノコ雲。その中に稲光が見えていた。


 世の終わりのような風景を見た流刑島の住人たちは、(おどろ)(おのの)き膝を震わせた。


 彼らを森に行かせまいと、獅子奮迅の働きを見せていた四人のドワーフも、これは想定外。街の住人と同じ反応となった。


「ね、行かなくてよかったでしょ……?」


 何とか声を絞り出したメリル。その身体は少し震えていた。

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