表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
5章 ミッシー捜索

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

127/341

127 ミッシー捜索依頼

 ファーギと久々の再会を果たす。テイマーズが訓練している場所まで歩いて行くその間、何故か訓練中の兵士たちから敬礼されている。気になって尋ねると、グレイス・バーンズ捕獲、イオナ・ニコラスの捕獲、修道騎士団クインテットの救出、等で大活躍をした人物として噂になっているそうだ。


 俺が黒眼黒髪アジア人顔だから、ドワーフたちの中で一際目立っていたってことか。


「ところで、あの大障壁を張ったのは、ソータさんっすよね?」


「お、リアム久し振りだね。大障壁? なにそれ知らないなあ」


 軍を辞めたと言ってた、リアム・ニコラスが話しかけてきた。大障壁の件は、シビルが魔石電子励起(れいき)爆薬を投げ込んだときの話だ。障壁を張ったのは俺だけど、明かすと一層注目を浴びてしまう。なので、しらばっくれよう。


「ホントっすか?」


「ホントホント。てか軍の練兵場で何やってるの?」


「ファーギと一緒に訓練してるっす。冒険者ランクもBに上がったっす!」


「おお、おめでと! んじゃなに、いまはファーギとパーティー組んでるの?」


「そっす」


 ふふん、と誇らしげなリアム。そこにスライムが飛んできて、リアムの顔面に直撃する。衝撃で意識を失い、カクンと膝を折って崩れ落ちた。

 訓練中に抜け出して、俺とくっちゃべっていたので、罰を与えられたのか? というか、テイマーズの十八名が、俺たちを囲んでいるって気付けよ、とも思う。


 リーダーのアイミー、副リーダーの、ハスミンとジェス。この三人がスライムをけしかけたみたいだ。年齢は十八とか十七くらいだったので、血気盛んなお年頃でもある。


「久し振りだな、おっさん」

「中々素早いな、おっさん」

「避けられるとは思ってなかったよ、おっさん」


「相変わらずだね、アイミー、ハスミン、ジェス。ところで、何をしているのかな?」


 体当たりをしてくるスライムは、リアムだけを狙ったものでは無い。当たり前のように、俺にもぶつかろうとしてくる。もちろん全部避けているけど。


「その足捌きを教えてくれよ、おっさん」

「ハスミン、もう少ししゃべり方を何とかしろ。かわいい顔しているのに、荒くれ者のようなしゃべり方はどうかと思うよ? てか、いきなり攻撃するってなんなの?」


 そう言うと、ハスミンの顔がボフンと音を上げ、湯気を立ちのぼらせながら顔が真っ赤になってしまった。そこでどうして照れるのか分からんけど、スライムの動きが乱れた。


「ファーギに挨拶してこいって言われたでしゅ」


 惜しい。最後に噛んだ。けど、そんなハスミンを見て、毒気を抜かれたのか、テイマーズのみなは、特訓へと戻っていった。

 ぶっ倒れているリアムに、治療魔法を使い、ファーギの横に立つ。


「やっと帰って(・・・)きたな、ソータ」

「ああ、久々に戻って(・・・)、随分と復興が進んでて驚いたよ」


 テイマーズとリアムが訓練を始めたのを見つつ、ファーギと近況報告に花を咲かせる。


 スクー・グスローたち精霊が戻り、帝都ラビントン周囲の森を再生しているそうだ。住処は以前与えられた屋敷で暮らしているらしい。

 リアムと、テイマーズでパーティーを組ませ、帝都の下水道の掃除を再開し、目覚ましい成果を出しているという。具体的には、地下で水を浄化しているスライムたちに認められ、テイマーズとリアムに、スライム召喚の指輪を与えられたそうだ。


 おかげで帝都ラビントンの下水道は、汚水ではなく清らかな水が流れるようになっているという。


「知らない子たちが増えてるんだけど……? あの子たちもテイマーズ?」


「新たに迎え入れたテイマーズの子供たちだ。今回の戦やテロで、親を亡くした子どもがたくさんいるからな。ワシは親代わりにはなれないけど、生きていく術は教えることが出来る……」


 物質的な復興が進んでいても、ニンゲンの心の復興はまだまだだという事か。

 やっぱり戦争ってのは、よくないな……。


 戦災孤児たちは、ファーギに預けられた百名くらいでは全然追い付かず、万単位の人数がいるらしい。孤児となった彼らは、ドワーフがやっている大規模農家で仕事をしつつ、学校に通わされているようだ。もちろんここにいるテイマーズも全員学校に通っている。


 ミゼルファート帝国の、戦災孤児への対応は手厚く、成人するまでは無償で教育を受けることが出来るみたいだ。

 身内の死というものは、きついもんな……。俺は勘違いだったけど、じーちゃんが生きていると分かるまでは、必死で周りが見えて無く、心には一つの余裕も無かった。



「あ、ソータ、ヒュギエイアの杯で作った水が、デーモンに効くって知ってるか?」


「ああ」


「それでな、お前から預かってる神威結晶で、大型のヒュギエイアの杯を作って、帝国中に流れる水を、浄化してるんだけど、よかったか?」


「軍事利用しなければいいぞ。あと俺とファーギ以外が神威結晶に触ると、効力が無くなるから気を付けてな」


「そんな事だろうと思って、誰にも触れないような装置にしているから大丈夫だ」


「ん? ……でもさ、その水が下水道に流れ込んだら、生き残りの火ネズミとか、魔物が回復しちゃって、退治できなくなるんじゃ?」


「それな! もちろんその懸念はあったが、それ以上にスライムが強くなってよ、下水道の掃除も楽になって、冒険者ギルドからも感謝されてんだ」


「へぇ……。あ、冒険者ギルド」


「どした?」


「いや、俺に指名依頼があるらしい。ちょっと行ってくる」


「ああ、皇帝陛下がそんな事言ってたな。ワシも同じ依頼が出るはずだから、付き合うぞ。おーい!! 今日の訓練は終了だ。各自帰って明日に備えておけ!!」


 同じ依頼? ファーギにもミッシー捜索に出るのか。Sランク冒険者二名に指名依頼って、かなりの難易度になるはず。ある程度ミッシーの状況が分かってないと、こんな依頼は出ないはずだ。


 冒険者ギルドに行けば分かるか。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「お、丁度よかった。ファーギとソータ、ワシの部屋にちょっと来い」


 冒険者ギルドに到着早々、俺とファーギは、オギルビーの執務室に呼ばれた。


 カウンターの横から入り、執務室を見回す。年季の入った木製張りの内装で、大きなカウチと、オギルビー用のデスクがある。本棚と資料棚が両脇の壁に置いてあり、飾りっ気のない部屋だった。


 すぐに入ってきたオギルビーが、俺とファーギをカウチに座らせる。オギルビーは、手に持った資料を自分のデスクに広げて座った。


「早速だが、ファーギとソータに、指名依頼が入っている。依頼人はエグバート・バン・スミス陛下。依頼内容は、ルンドストロム王国に入国している、ミッシー・デシルバ・エリオットの捜索だ。ここまでいいか?」


 俺とファーギが頷くと、詳細の説明があった。


 ミッシーの母親、エレノアが現在探しているのはベナマオ大森林。エルフの部隊はもちろん、ゴヤたちゴブリンもミッシーの捜索に協力しているみたいだ。


 だが、冒険者ギルドが入手した情報だと、ミッシーの居場所はサンルカル王国内だという。その情報は合っているのか聞くと、世界を股にかける冒険者ギルドの情報網を甘く見るなと言われてしまった。


「エレノアさんに教えてあげないんですか?」


「ダメだ。冒険者で無いものが、サンルカル王国に行くのは、時期的によろしくない。知らせたら何が何でも行こうとするから、冒険者ギルドとして秘密にする。この件は他言無用でな」


 エルフのルンドストロム王国、ドワーフのミゼルファート帝国、ヒト族のサンルカル王国、この三国は強固な同盟関係があった。そのおかげで、サンルカル王国の代理戦争とも言える、獣人自治区への攻撃が可能になったのだ。


 ただ、グレイス・バーンズの裏切りにより、その関係にヒビが入った。


 あれ? 俺が聞いた話だと、バーンズ公爵家は関係なく、一人娘のグレイスの暴走だとして話は収まったはずだ。


 だが、話を聞いていくとそうでは無いみたいだ。


 サンルカル王国、第二王子デッド・サンルカルが奴隷落ちしていたのは、グレイスの家、バーンズ公爵家が仕組んでいたと発覚。そのせいで、御家取り潰しの大騒動に発展しているらしい。けれども、バーンズ家は公爵という大貴族のため、配下の貴族も数多く、サンルカル王家に与する貴族たちと睨み合いが続いているそうだ。


「内乱が起きそうなのに、ミッシーは何でそんなとこに……?」


「おそらく、スリオン・カトミエルを探している」


 俺の問いにファーギが答えた。誰それ、と聞くと、エルフ伝説の戦士だと返ってきた。これまでのスリオン・カトミエルは、ベナマオ大森林で一人、自身を高めるための修行をやっていたそうだ。数年に一度、帝都ラビントンに来て買い物をするので、割と知られているらしい。


 しかし、今回の戦争でベナマオ大森林が荒らされたことで、修行の場を移してしまった可能性が高いという。行き先はおそらく、サンルカル王国の西側にある、無人の漁村ベルサ。


 そう推測されるのは、冒険者から寄せられるミッシー目撃情報を繋げていくと、見事に無人漁村ベルサを目指しているからだという。

 スリオン・カトミエルは以前、その無人漁村ベルサで修行をしていたそうだ。



「皇帝陛下からの要望は、サンルカル王国を刺激しないように、ミッシーを連れ帰って欲しい、というものだ。引き受けてくれるか?」


「皇帝陛下の指名依頼を断れると思ってんのか! 実質これは冒険者への命令だぞ!」


 オギルビーの確認に、ファーギが噛み付く。


「いや、そうだけど、報酬はこれだぞ……。今回の依頼でかかった経費は、別途支払うそうだ」


「よし、その話乗った!!」


 オギルビーが出した依頼書には、成功報酬一億ゴールド( 一億円 )と記載されていた。ミッシーを連れて帰れば、俺とファーギ、合わせて二億ゴールドもの報酬が得られる。

 おかげでファーギの態度は軟化し、というか、めちゃやる気になった。


 俺的にはミッシーが無事で見つかれば、それでいい。


「ソータ、えらく機嫌が良さそうだけど、…………ほーん。やっとミッシーに会えるもんな。……分かる。その気持ち、よーく分かるぞ!!」


 向かいのカウチから、俺の横に移動してくるファーギ。肩を組んで、うんうんと頷き始める。


「機嫌が良さそう? 俺が?」


「お前、ラビントンに帰ってきてから、ずっとムスッとしてたのに、今はやっと恋人に会いに行けるって顔してるぞ?」


「こ、恋人じゃねえし! ミッシーはSランク冒険者で、自立した女性で――」


「はいはい、いつか聞いた気がするし、その先は言わなくて結構。お前がミッシーに惚れてるのは、ワシから見て明らかだ!!」


 ファーギといい、皇帝といい、何を血迷っているのだろうか。



 ……でも、ミッシーに会いたいのは事実だ。


「よし、それじゃあ、二人とも依頼を受けるって事でいいな。それと、経費が別途払いって、どういう意味か解るな? 支払先が明確な領収書を無くさないように」


 俺とファーギは頷く。


「それと、ソータ・イタガキ」


「はい」


「皇帝陛下から下賜(かし)された軍艦、バンダースナッチの受け取りに行ってこい。ドワーフ軍の格納庫で整備してあるそうだ」


「分かりました」


 俺の返事を確認したオギルビーは「準備が整い次第ミッシーの捜索に発つように」と言いながら席を立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ