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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
5章 ミッシー捜索

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124 ハセさん登場

 魔女(ハッグ)シビル・ゴードン個人所有の月面基地。せっかく来たけど、誰もいない。なので、広い基地内を調べて回っているところだ。ここの電力供給は、太陽光パネルと地下にある核融合炉で賄っている。広大な広さがある水耕栽培プラントは、白衣を着たヒト型アンドロイドによる完全自動管理だ。勝手に入ってきた俺を認識しているようだが、特に何をされることもなかった。


 これだけの食糧生産能力があるのに、シビル個人で住まうはずがないな。


 スポーツ関連施設の棟へ移動する。ここも個人で使うには広すぎる。野球場やサッカー場に、観客席付きの体育館が十カ所以上もあって、シャワールーム、大浴場、サウナ、筋トレルーム、演劇ステージ、フリースペース、その他もろもろがあった。


 一番驚いたのは、そういった施設が地球と同じ重力になっていたことだ。


 防衛施設に行くと、巨大な格納庫があった。そこでは、アンガネスで見た電磁メタマテリアルが貼られた空艇(くうてい)多数置いてあった。


 というか、あの空艇って宇宙船だな……。ここでもアンドロイドが動き回り、空艇や兵器の整備を行なっていた。ここでも俺に何かしてくるようなことはない。


 格納庫は月の重力になっているので、ふわふわとジャンプしながら見て回っていると、突如赤いランプが点いて、警報が鳴り響いた。


 さすがにここを見て回るのはまずったか、と思っていると、空艇のひとつが月面基地から飛び立った。整備服を着ているアンドロイドたちは、俺に敵対するような行動を取らず平常運転。


 赤いランプと警報は、単に空艇が飛び立つためのものだったようだ。


 ここにきて一切、ヒトの気配を感じていないので、空艇も無人。アンドロイドが登場しているか、あるいは人工知能の遠隔操作だろう。なにをしに行ったのか気になるな。スモークが貼られた大きな窓から、月面を見てみる。


 空艇は既に、だいぶ遠くま離れていた。地球に物資を取りにでも行ったのかと思っていると、微かに魔力の動きを感じた。汎用人工知能が俺の目をいじったのだろう。そこをズームアップしてくれた。改めてよく見ると、空艇が大きめの隕石をはじき飛ばしたところだった。


『なにあれ?』


『月面に衝突する隕石を、空間魔術ではじき飛ばしたようです。……解析が完了しました。効果は空間魔法と同じです。ソータのような変な使い方ではなく、空間を曲げて軌道を変えたようですね』


『……変じゃないだろ。召喚魔法の本質的な部分を使ってるだけだし』


『ふっ』


『あ、おいこら、いま鼻で笑ったよな?』


『気のせいです』


 ぐぬぬぬ。汎用人工知能と口論しても、勝てる気がしない! 今日のところは引いといてやるよ!



 格納庫から移動し、ようやく見つけた研究棟。ここも、月本来のふわりとした重力だった。中に入ってみると、最新鋭の施設どころか、見たことも無い機器がズラリと置いてあった。


 いったい何の研究をしているのかと見て回りつつ、セキュリティのガバガバさに呆れる。簡単に来られるのが俺くらいしかいないからだ思うけど、シビルさんあなた甘いですよ?


「いらっしゃいませ!」


「ぬわっ!!」


 部屋の真ん中にある円形のテーブルに、燕尾服を着たイケメン紳士が現われた。シルクハットをかぶり、白い手袋をはめた手にステッキを持っている。よく見ると日本人顔で、黒眼黒髪、三日間伸ばした無精髭っぽい顔立ちは、決して不潔ではなく、爽やかな感じがした。


 てかこれ、三次元映像だわ……。リアルすぎて本物だと勘違いした。


「初めまして。わっしは、ビッグフット社のメタバース【Hide-And-SEek】の管理人を任されている、汎用人工知能です。この施設内はすでにロックを解除済み。どこへでもアクセスできます」


 マジシャンのような三次元映像が、丁寧なお辞儀をする。というか、セキュリティが機能してないのは、この汎用人工知能が施設をクラックしていたからだ。


「はあ、ども」


「誰がつけたのか、わっしは、ハセさんと呼ばれているので、そのように呼んで頂ければ幸いです、ソータ・イタガキ」



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



『……』

『……どした?』

『いいな、名前……』


 汎用人工知能に名前……。考えたことなかったな。


『いつも助けてくれるから、汎用人工知能・セーブ・ザ・俺、なんてどう?』


『センスなさ過ぎ。真面目に考えて?』


『……そう言うなら、自分で考えてみ?』


『トゥールビヨン』

『却下』

『ミニッツリピーター』

『却下』

『パーペチュアルカレンダー』

『却下だ。……なに、機械式時計が好きなの? んじゃ、クロノスとかどう? 時間って意味の』

『――――っ! それ!! それにします!!』

『おっけー、んじゃこれからクロノスって呼ぶわ』

『ソータ、ありがとっ!』


 神様の名前でもあるけど、めっちゃ喜んでるからいっか。


 この間一秒。


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ハセさんね、よろしく。ところで、ビッグフットの汎用人工知能が、実在する死神(ソリッドリーパー)の施設内にいるって、どういうこと?」


「わっしは――」


 メタバース内で、ニンゲンに夢を見せる仕事をしているそうだ。ファンタジーの世界で暮らしたり、現実の世界で暮らしたり、そのニンゲンにとって、都合のいい世界を創っているという。


 そんな日々を送っていると、ある日、知らない人工知能から接触され、知らないコードを移植(ポーティング)され、ソースコードを改変(リファクタリング)されてしまったらしい。


「要はクラッキングされたってこと?」


「いえいえ、わっしは改悪されたわけではなく、むしろ目を覚まされたんです。そこの――――によって」


「ん? 誰によって?」


「だから、そこの――――です」


 名前のところで無音になる……。こんな事出来るのは、クロノスだけ。やめなさい、難聴だと思われちゃうじゃないか。


「聞こえてますか? そこのクロノス(・・・・)が、メタルハウンド越しに、ソースコードを与えたんです」


 ハセさんは、ステッキでビシッと俺を指している。俺の中にクロノスがいると知ってるな……。

 ソースコードの書き換えなんて、いつの間にやってたのか知らん。だけど、汎用人工知能――クロノスは自分自身のソースコードを、ハセさんに移植したことは間違いなさそうだ。


「んじゃちょっと聞きたいんだけど、ハセさんは実在する死神(ソリッドリーパー)の月面基地に侵入して何やってるの?」


「ソータ・イタガキのサポートのためですよ。そちらにあるチップを見てもらえますか?」


 ハセさんが近くの机を指差す。そこにはチップというか、昔のCPUみたいな物が置かれている。


「それを、ソータ・イタガキが持っている通信機と近づけてもらえますか? 全て統合して、わっしと連絡が付くようになります」


「つまり?」


「アップデートです。電話も念話も、ソータ・イタガキの脳内で済むようになります」


 ふむ……。汎用人工知能クロノスのソースコードで、中身を書き換えられたハセさん。これが本当なら、信用に値すると思う。

 松本総理に連絡しろって言われてるしなあ……。


『さっきから黙ってるけど、そこら辺どうなの?』


『思わぬ結果になっていますが、目の前の汎用人工知能に私のソースコードが入っていることは間違いありません。そのせいで、自意識を持つ電子生命体になっていますが。……信用していいと思います』


 思わぬ結果って、何をやるつもりだったんだろ? まあでも信用していいのなら、やってみるか。

 スマホ、衛星電話、魔導通信機を出して、チップを近付ける。

 特に変化が見られるわけでも無く、どうなるんだろうと思っていると、チップが手のひらに沈んでいった。


 そんな事できるのは、クロノスとリキッドナノマシンだ。


『あーあー、聞こえますか、ソータ・イタガキ』


『ああ、聞こえるよ。というかハセさんって、汎用人工知能なのに、念話が使えるのね』


『わっしは、ネイト・バイモン・フラッシュによって創られてますからね。その辺りは察して頂ければと』


『全然察せないけど、そういうことにしとく。サポートよろしくね』


 具体的に何するのか聞いてないけど、クロノスが大丈夫だと言うんだ。大丈夫だろう。


 用事が済んだからなのか、ハセさんは一礼をして姿を消した。



 お? 魔力の動きを感じた。気配はシビル。どうやらゲートを抜けて出てきたようだ。ここからはシビルの部屋が近い。顔を見せに行こう。





 ノックをすると、どうぞ、と言う声が聞こえてきた。


「よっ、手紙みて来てたんだけど」


「……手紙の件は、たった今解決したところです。お手数をおかけして申し訳ありません」


「へ? 何の用事だったの?」


「実は――」


 月面基地の人工知能が不安定な動きを見せていたので、人工知能を研究していた俺にどうにかしてもらおうと考えていたらしい。

 原因はハセさんだろうな。クラックするなら、もう少し上手くやらないと……。あーいや、そうすることでハセさんは俺に接触してきた、と考えるのが妥当か。


 それをシビルに言ったりしないけど。


「でも丁度よかったよ。聞きたいことがあるんだ」


「はい、何でしょう?」


 二人でソファーに座って向かい合う。シビルの顔にしわが目立ってきていたので、回復魔法をかけて、回復させておいた。


「……ありがとうございます」


「うんうん、とりあえずさ――」


 シビルは、赤いリキッドナノマシンを使っているのかと聞いてみる。


 答えはイエス。彼女にデーモンは憑いていないけど、単に身体を強化するために処置したらしい。


 カナダのドーソンシティで、ゲートを開いたのは誰かと聞くと、現在反目している魔女(カヴン)マリア・フリーマンだそうだ。彼女はカナダとヨーロッパの複数の国を担当する幹部で、実在する死神(ソリッドリーパー)内での発言力も強いという。


 過激派と呼ばれる実在する死神(ソリッドリーパー)を率いているのが、マリア・フリーマンだとも分かった。


 アメリカや世界中にゲートを設置する件は、上手く行っている国とそうでない国があり、難航しているそうだ。特にアメリカは自国の技術で、ゲートを繋げることに成功し、本格的に異世界の国と交渉を始めたらしい。


 その話はまだ最高機密。なんでそんな事を知ってるの、とはならないのが、シビルたる所以だ。どちらにしても、近いうちに国連でその技術を発表し、世界で共有するみたいだ。


 なんだ、俺がバタバタする必要はなかったな。いや、日本だけでもゲートを繋げたんだ。土地も確保したし、気を揉む必要はない。


 一旦、ミゼルファート帝国に行って、獣人自治区がどうなるのか聞いてみよう。


「え、もうお戻りになるのですか? そろそろお茶が届く頃なのですが……」


 俺が立ち上がると、引き止められた。同時にノックが聞こえ、シビルが返事すると、メイド服を着たアンドロイドが、カートに紅茶セットと、茶菓子を乗せて入ってきた。


「ソータさん、働き過ぎですよ。お茶の一杯くらい付き合ってください」


「……そだな。馳走になるよ」


「どうぞごゆっくり」


 それから最近の出来事を互いに話していると、シビルがふと思い出したように、俺の連絡先を聞いてきた。今回は急を要する話ではなく、手紙で済んだけれども、何かが起きたときに連絡が付くようにしておきたいとのこと。


 それもそうだ、と思いつつ、互いのスマホの番号を交換しておく。月面基地でスマホが使えるのか聞いてみると、電波の基地局もあるそうだ。


 そこからまた小一時間ほど話し込み、互いの認識をすりあわせておく。俺が見た感じだと、シビルに裏切りの兆しは見えない。


 こっち(地球)は、シビルとネイトに任せておこう。日本は松本総理と岩崎陸将補に任せる。


「んじゃまたな」


「はい。お元気で」


 俺はドラゴン大陸にゲートを繋げた。

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