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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
4章 魔大陸

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118 情勢判明まであと一歩

「順を追って聞いていくから、ちゃんと答えろ」


 俺はまず名前を聞いた。

 ドリーに憑いていたデーモンは、ルミリオと名乗り、ブレナに憑いていたのは、キーノと名乗った。


 宿主(しゅくしゅ)とそっくりな姿になっているのは、憑依して一体化したからだそうだ。


 デーモン二人はしわしわの年寄りになっていない。そこを突っ込むと、赤いリキッドナノマシンのせいだという。


 赤いリキッドナノマシンは地球の悪魔(デーモン)、ネイト・バイモン・フラッシュが持ってきたものらしい。その効果は、身体の超回復、超加速、保有魔力の増大。


 対価は生命力。


 いかにも悪魔っぽい仕様で笑えない。


 悪魔本体の名はバイモンらしい。


 使役魔法って凄いな。何でもペラペラ喋ってくれる。


 ただし、万能ではなかった。ルミリオとブレナにレブラン十二柱の事を聞くと、顔を歪め舌を噛み切ったのだ。


 そこまですんの? なんて思っていると、噛み切った舌が勝手に再生したようだ。そういえばデーモンって、黒い粘体だったな。どうやって回復しているのかと聞くと、また舌を噛み切った。


 絶対に言えない一線があるっぽい。


 別件の話を聞こうとすると、デーモン二体の様子がおかしい。使役魔法の効果が切れたみたいだ。


 ルミリオの魔力が動き、キーノの冥導が動いた。


 彼らの魔法が発動する前に、使役魔法を使うと阻まれた(レジスト)感覚がした。


「おー?」


 また時間が引き延ばされる。このスキルの名前は分からないけど、有り難いことに変わりはない。

 それに、このスキルは、俺の命に関わるような場面でしか発動しない。


 ゆっくり考えて、結論を出す。つまり、このデーモン二体は、俺が死んでしまうような魔法を使いそうになったんだと。


 俺はデーモン二人を十枚重ねの神威障壁に閉じ込めた。


 すると途端に時間の流れが戻り、神威障壁に閉じ込められたデーモンは、自ら放った魔法で身体を焼かれていった。


『なっ?』


『何のことですか?』


『いや、この時間を遅延させるスキルのことさ。一度は時間が止まるまでの効果があったし、そんなの、スキルって言葉で片付けられないんだよね』


『地球の冥界、第五層で逃げ回っているとき、そんな事言ってましたね』


 思えば異世界にきたその場で、このスキルは発動していた。あのヘラジカみたいな魔物と戦ったときだ。首チョンパされたけど、そうなったのは、まだ慣れてなかったとか、そんな理由かもしれない。


 帝都ラビントンの下水道でもグレイスに首チョンパされたが、あのときも発動しなかった。


 死なないと分かっていたからなのか?


 でもなあ、シビルの雷撃で一回死んだし? おかげでアイテールという、神の力の元が使えるようになったけど。


 アラスカに行ったとき、レーザーで穴だらけされたけど、気を失ってただけ。

 身体は汎用人工知能が動かしてくれていたからノーカン。


『……』

『なに?』

『いえ、何でもないです』


 分からないのは、月面基地にいたのに、コロンビアの件でスキルの発動。あれは完全に時間が止まっていた。魔石電子励起(れいき)爆薬があそこで爆発したとしても、月に影響があるとは思えない。ファーギ、マイア、エレノアが助かったから、微塵も文句はないんだけど。


 このスキル、アクティブ(能動的)でもパッシブ(受動的)でもなく、一貫性がない。正直言って、第三者の介入がなければ成り立たないのだ。


『……』

『……なに? 君は第三者じゃないでしょ?』


 スキルは鍛練の先にあり。神に認められた者が会得する。エリスはそんな事を言っていた。


 だけどさ、俺は鍛錬してないからね。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「ソータ……」


 ブレナの声で我に返る。スキルを検証するタイミングじゃなかったな。


 神威障壁の中にいるデーモン二体は、まだ死んでない。黒焦げで瀕死の状態になってはいるが。

 とりあえず獄舎の炎(プリズンフレイム)で、二体ともこの世から消し去った。


「ひっ!!」


 声を上げたのはドリー。オカマキャラ健在なので、まだ余裕がありそうだ。対して、ブレナは真っ青な顔になって、ガチガチと歯を鳴らしている。次は自分たちの番、とでも思ったのだろう。


「ブレナ、ドリー、二人に憑いていたデーモンは滅んだ。老化の原因は地球の悪魔(デーモン)が持ってきた、赤いリキッドナノマシンのせいだったな。いまはどんな具合なの? 気分が悪かったり痛みがあったりする?」


 憑いていたデーモンを引っ剥がした辺りから、獣人二人はより一層老け込んだ。ガゼボ(西洋風あずまや)から逃げ出す力も無く、このまま老衰で死んでしまいそうなくらい弱っている。


「具合は……、あまりよくないです。聖人殿、私たちをどうするつもりですか?」


「ドリー・ディクソン、ぶっちゃけ聞きたいんだけどさ、あんたは区長として獣人を率いているよな? 仮に獣人の国が出来たとして、国王にでもなるつもりなのか?」


「い、いえ、とんでもありません。女王キャスパリーグが復活したので、彼女が女王になるべきです」


「キャスパリーグ?」


 大昔、この世界を征服すると言って、戦争を引き起こしたやつだ。デーモンを引き連れて。


「エリス・バークワースは、女王キャスパリーグの転生体です。彼女が悪魔を支配するもの(デーモンルーラー)に到ったのも、そのおかげかと……」


 転生なんて出来るのか……? キャスパリーグが討たれたのは、千年もまえの話なのに。


「となると、ドリー、あんたは宰相的な立場で獣人を取り纏めているのか?」


「そうです……」


「それなら、円形ドームで獣人たちが暴れ出したとき、上手いことデーモン憑きの獣人が誘導していたのも、あんたの指示か?」


「いえ、あれはリリスが誘導していたと思います」


 リリスって、ダーラが電話してたやつだ。


「思います? てことはドリーの指示ではない、そういう事か」


「そうで――」


 あ、気絶した……。というか寝た? 隣にいるブレナも眠っている。

 体力の限界っぽいので、とりあえず回復魔法を使ってみる。デーモンは滅ぼしたので大丈夫だと思ったが、予想外の反応が出た。


 二人とも若返ったのだ。


 理由はおそらく、彼らの体内にある、赤いリキッドナノマシンに回復魔法の効果が及んだため。つまり、体力を回復する魔法が、生命力をも回復したという事になる。

 バイモンって悪魔は、何のためにこれを作ったんだ?


 ドリーを小突くと、飛び上がって起きた。


「若返ってるっ!! ――聖人様!!」


 狭いガゼボ(西洋風あずまや)で膝をついて手を組むドリー。視線はガッチリ俺に固定されている。


 ドリーが騒いだことで、ブレナも目を覚ました。元の若さに戻って、身体の動きを確認し始めた。一通り動き終わると、ドリーと同じく俺に向かって膝をついた。


「ありがとう、ソータ……様」


「様はやめろ」


 ブレナは涙を流しながら首を横に振る。


「背中が痒くなるから、マジでやめろ。このままじゃ話も出来ないし、とにかく座ってくれ」


 そう言うと、渋々ながら二人とも席についた。


「言っておくけど、回復魔法を使っただけだ。それで体調はどう?」


 二人は何も問題ないといい、また手を組んで祈り始めた。

 面倒なので、強めに注意すると、背筋をシャキッと伸ばして、ようやく話せる体勢になった。


『どう思う?』

『二人ともソータに服従しています』

『そこまで変わるとは……』


 ドリーは正直、信用できなかった。あくまで獣人優先の考えが見え隠れしていたからだ。でも、それは変化した。獣人優先に変わりはないだろうが。


 ドリーは元々区長をやっていたので、これを機に利用させてもらおう。


 獣人、デーモン、実在する死神(ソリッドリーパー)悪魔(デーモン)のバイモン、これらの関係を聞いてみると、ドリーはすらすら答え始めた。使役魔法の効果はなくなっているのにもかかわらず。


 獣人はデーモンを憑依させ、デーモンの力を借りる。

 デーモンは獣人に憑依することで、神に見つかることが無くなる。

 互いに協力し、獣人の国(ビーストキングダム)を復権させる。

 そのあと、デーモンの野望である、世界征服に乗り出す。


 ドリーは随分前から実在する死神(ソリッドリーパー)と接触しており、独立戦争の準備をやってきたという。

 シビル・ゴードンとは、もう十年来の付き合いになるらしい。


 その(かん)接触したソリッドリーパーの幹部は、追放された種族である魔女(カヴン)マリア・フリーマン、地球の吸血鬼(バンパイア)であるリリス・アップルビー、そして、悪魔(デーモン)、ネイト・バイモン・フラッシュだそうだ。


 彼らソリッドリーパーは獣人を援助する代わりに、移住するための土地を求めてきた。


 ブライトン大陸の西端にあるマラフ共和国。そこから海を渡ると、ハマン大陸がある。ドリーはその地でどうかと打診する。魔術結社実在する死神(ソリッドリーパー)からの返事は、地球の人類が住めるのかどうか調査したのち、結果を報告しろというものだった。


 後日、ドリーが住めると報告すると、ソリッドリーパーは、ハマン大陸へ移住することを伝えてきた。


 そこから細々とした入植が始まったらしい。


「ハマン大陸って、どんなとこなの?」


 ハマン大陸には小さな国が無数あり、常にどこかの国が戦争中らしい。

 というか、ドラゴン大陸の東側にハマン大陸があるってことだ。万が一を考えて、スチールゴーレムを増強させておくかな。


「だいたい分かった。んでさ、エリス・バークワースは、どこで何やってんの?」


「その前に聖人様! 私たちの処遇はどうされるおつもりですか?」


「俺のために働いてもらうつもりだ。給料はなし」


「――――っ!?」

「ええっ!?」


 ドリーとブレナは、驚いて固まってしまった。


「給料なしで文句ある?」


「いえ、滅相もございません。まさか仲間になれと言われるとは……」

「あ、あたい、ビックリしちゃって」


 仲間? 仲間なの? 仲間じゃないな。お前たちは馬車馬になって働いてもらうつもりだ。


「そう。しっかり働いてもらうからな。……話がそれた。続けてくれ。エリスはどこだ」


 エリスは現在、冥界にいるそうだ。そこでレブラン十二柱に匹敵する強さのデーモンを探しているらしい。俺に復讐するために。


 ブレナが言うには、エリスは母親と父親を亡くし、心のより所だったアリスが滅ぼされたことで、一度壊れた。

 だけど、すぐに立ち直り、そのときには人格が変わっていたそうだ。自らをキャスパリーグと名乗り、悪魔を支配するもの(デーモンルーラー)として覚醒。次々と強力なデーモンを召喚していった。


 そのとき、レブラン十二柱の序列一位、ラコーダがエリスに憑依したという。


「……」


 責任の一端は俺にある。アリスを滅ぼしたことで、張り詰めたエリスの心を壊したのなら。


 今回、獣人自治区が負けたことで、ビーストキングダム復権の夢は潰えた。しかし、獣人の動きを見て、諦めて無さそうだとは感じていた。バイモンが用意した、アラスカのアンガネス。そこは獣人が定住するためでは無さそうだな。


 円形ドームでの出来事を見れば明らかだ。インスタントでデーモン憑き獣人を作っていたくらいだし。


「バイモンはビッグフットのCEOで、実在する死神(ソリッドリーパー)の幹部って言ったよな。あいつはアンガネスって巨大な街を作ったり、赤いリキッドナノマシンを作ったり、何をやりたいんだ?」


 ドリーもブレナも沈黙する。少し考えて「分からない」と答えた。


 んー。実在する死神(ソリッドリーパー)の目的は、温暖化から逃れ、異世界へ移住すること。これは多分正解だ。

 魔女(ハッグ)シビル・ゴードンは、俺との話で折り合いをつけた。魔石電子励起(れいき)爆薬の作成を諦め、巨大ゲート作成に協力する事になっている。おそらく裏切らないだろう。裏切ったら俺に見る目がなかったと言うことだ。


 ダーラの話だと、実在する死神(ソリッドリーパー)は組織が大きすぎると言っていた。世界中に支部があるみたいで、シビルの(げん)が鶴の一声とはならない可能性も考慮しなければならない。


 過激派、穏健派もあるからね。


 そうなると、さっき名前が出た実在する死神(ソリッドリーパー)の幹部に直接話を聞きたいな……。リリスって吸血鬼(バンパイア)と、マリアって魔女(カヴン)、奴らはニンゲンの範疇に入るのか?


 悪魔(デーモン)は、明らかにニンゲンじゃないんだよな。


 空間魔法で召喚できるし。


「えっ?」


 驚きの声を上げるバイモン。俺はバイモンを召喚し、全身を念動力(サイコキネシス)で拘束した。


「地球産デーモンも、引っ剥がすとニンゲンと同じ姿で灰色になるんだな……。よっ! 聞きたいことがあるんだ、バイモン!」


 念の為、神威障壁を二枚重ねで張っておく。三枚になると声が聞こえなくなるし。


「どっ、どういう事ですか、これはっ!!」


 バイモンの怒り狂った声は、そんなに響かなかった。

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