表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
4章 魔大陸

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

117/341

117 召喚魔法

「無理無理ムリ無理いいぃ!!」


 頼みの綱だったスキルが使えなくなり、空にでっかい目ん玉が出来た。そこから凄い力で引っぱられ始めたので、俺は木にしがみ付いているところだ。


『……解析と改良、改善が完了。冥導(めいどう)を使った固有魔法の解析をしたことで、冥導魔法の使用効率が百パーセントに到達。そのため、阻害されていた魔法の使用が可能。空に浮かぶ冥導魔法イビルアイを消しますか?』


『あのでっかい目ん玉、イビルアイって名前なんだ。そんな知識をどこから、いや、消すのはまだ待って。魔法が使えるようになったってバレちゃう。それより、冥導も素粒子ってこと?』


『そうです。イビルアイは冥導以外では使えない特性を持っていますので、今回の解析が捗りました。というか、それどころでは――』


「ぬわあああああああっ!!」


 汎用人工知能と悠長に話している場合じゃなかった。しがみ付いている木が、根っこから引っこ抜けて空を舞う。あの巨大な猫の目に吸い込まれたら、絶対ヤバい。


 そう思っている間に、暗い闇の世界へ吸い込まれてしまった。


 上も下も分からない暗闇だ。真空状態なのか、息もできない。


 吸い込まれた猫の目がどんどん小さくなっていく。


 それは、この空間に距離があることを示している。


 冥導の使用効率が百パーセントになったし、もう使っても大丈夫だろう。


 万が一、もしかしたら、ひょっとして、デーモンになってしまうかも、なんて思ってたけど、もう大丈夫。


 属性魔法を蒼天(アイテール)で使ってもいいけど、加減を間違えば世界を滅ぼしてしまうのでパス。これはまだ実戦で使う気にはなれない。


 魔力はまだ回復してないし、神威が使えないし、選択肢は冥導だけだ。


 イビルアイの中で冥導を使った空間圧縮魔法を使用。その直後、冥導を使った転移魔法で脱出した。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 バイモンに猛然とまくし立てるドリーとブレナ。二人ともヨボヨボの年寄りになってしまっている。身体の主導権を操作できるのは契約者本人なので、ルミリオとキーノは何も言えない状態である。


「ちゃんと忠告しましたよね? 赤いリキッドナノマシンは生命力を使うと。あんな大魔法を使えば、宿主(しゅくしゅ)のお二人がそうなるのは当然です」


 ピシャリと言い放つバイモンに、ハッとするドリーとブレナ。バイモンは確かに「獣人の生命力は強いと聞きましたが、加減を間違えぬようお気をつけ下さい」と言った。


 あの時身体の主導権を持っていたのは、ルミリオとキーノ。


 デーモン二人の思考に引っぱられ、ドリーとブレナは宿主(しゅくしゅ)の生命力を使うことを失念していた。


「そんなにションボリしないでください。我々地球の悪魔(デーモン)は、元々天使(エンジェル)だった者も多くいます。老化を回復させることも出来ますので、ご安心下さい」


「宿主が老化で死ねば、我らデーモンは冥界へ帰るのみ。バイモンよ、我らレブラン十二柱をなめるなよ?」

「そそ、天使だか悪魔だか知らないけど、バイモン、あんたの策略には飽きたわ」


 どういう事だろう。ドリーとブレナの声音が、ルミリオとキーノに変わった。

 それを見て、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をするバイモン。契約者との血の契りを覆すことは不可能。まさかそんなことが起きうるのか、と考えたバイモンは、動揺がありありと顔に出ていた。


 こんな事になったのは召喚師、悪魔を支配するもの(デーモンルーラー)となったエリスのせいだ。彼女は手順を簡素化し、大量のデーモンを召喚して憑依させている。虫のデーモンがいい例だ。その虫に自由意志は存在しない。


「宿主を老化で死なせるまで赤いリキッドナノマシンを使い、あなた方の冥界へ帰るつもりですか? ああ、その前に、イビルアイは解除した方がいいですよ」


 何とか持ち直したバイモン。こんな状況になったのは初めてである。彼は赤いリキッドナノマシンの新たなステージを見たいと興味を持ち始めていた。


「……そうだな」


 ルミリオはオカマ口調をやめている。それだけ余裕がないのだ。


「ソータさんはイビルアイに飲み込まれましたよね?」


「バイモン、あんたも見てたでしょ? 白々しい」


 キーノは突っかかっていくような口調になっている。


「キーノ、イビルアイを解除したのか?」

「いえ、あたいはなにも。あれ?」


 ルミリオの声でキーノが振り向く。視線の先には、空に浮かぶイビルアイがあるはず。しかし、それはいつの間にか消えてなくなっていた。


「えっ?」

「は?」

「何これ?」


 バイモン、ルミリオ(ドリー)キーノ(ブレナ)の順で、困惑した声が上がる。三人とも突然障壁に閉じ込められたからだ。


 次の瞬間、バイモンが入った障壁の中で、黒い炎が荒れ狂う。


「手応えなし、逃したか……」


 素知らぬ顔で宙に姿を現すソータ。彼は冥導を使った障壁で三人を閉じ込めたのだ。そして真っ先にバイモンを滅ぼすために、獄舎の炎(プリズンフレイム)を使った。しかし、バイモンが使った転移魔法の方が早かった。


「貴様、なぜ生きている!」

「あんた、イビルアイに吸い込まれたよね? 魔法もスキルも使えない場所なのに、どうやって出てきたの?」


 ルミリオとキーノは障壁に閉じ込められ、目を白黒させながら文句を言う。


「えっ? あそこ魔法が使えない空間なの? それって誰が証明したの?」


「誰も出てこられないからに決まっているでしょ!!」


「それどうやって確認したの? 脱出して姿をくらました可能性はないの?」


「……」


 押し黙るキーノ。


「てかさ、二人とも何なんでそんな年寄りになってんの? 今喋ってるのはデーモンの方だろ? とりあえず、ドリーとブレナと話させろ。ドリーの目が治ってるのも気になるし」


 獄舎の炎(プリズンフレイム)を見たからなのか、ルミリオとキーノは障壁の中でおとなしく従う。


「聖人殿……、獣人代表として、なんとお礼を申し上げたらいいのか……」

「ソータ……、あたい、色々しくじってたみたい」


 しおらしい声と態度。それを見たソータは汎用人工知能に相談した。


『何? 俺が助けたとでも思ってんのか? どう思う?』

『めちゃくちゃ反省してますね、……片方だけ』

『だよな……片方だよな』


 ソータは冥導を使い、ゲートを開いた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 ベナマオ大森林にある草原。かつて(いくさ)があった場所だ。キーノが降らせた大雨で洪水になったが、あれはドワーフ陸軍に対しての攻撃。ベナマオ大森林は、その水で森が豊かになっていた。


「うへぇ、草原と言っても限度があるんじゃね?」


 以前はくるぶしくらいまでの背の低い草が生えていた。しかし、いまはソータの背丈ほどある草で覆われている。そのせいなのか、スニーカー、デニム、半袖シャツ姿のソータに虫がたかっている。

 ドリー(ルミリオ)ブレナ(キーノ)は、冥導の障壁に捕らわれたまま連れてこられていた。共にスーツ姿だが、障壁のおかげで虫の被害はない。


「大洪水のせいで虫が大発生か。んー、ここで話をするつもりだったんだけど……」


 ソータの魔力はまだ回復していない。ベナマオ大森林で冥導を使うことに躊躇(ちゅうちょ)し、神威に切り替えて土魔法を使う。

 ドリー(ルミリオ)ブレナ(キーノ)が息を飲む。あっという間に、こぢんまりとしたガゼボ(西洋風あずまや)が出来上がったからだ。


 障壁を解除し、ドリーとブレナを手招きするソータ。ガゼボに備え付けの椅子とテーブルは、大理石でできている。三人でテーブルを挟んで向かい合ったところで、ガゼボ(西洋風あずまや)を囲む神威障壁が張られる。虫対策なのか、あるいは獣人二人を逃さないためか。


 ソータはもう一つ保険をかける。テーブルに向けて、こっそり魔法陣を飛ばしたのだ。


「さて、色々聞きたいことがあるんだけど、……多すぎて困るわ。とりあえずさ、何でそんなに年取っちゃったのか聞かせて?」


 二人はこれまでの経緯を話し、赤いリキッドナノマシンのおかげで、ドリーの目が治り、冥導を使いすぎたせいで生命力を奪われ、こうなってしまったと話す。そして、ソータを殺さねば、獣人百五十万人を皆殺しにすると脅されていたという。地球の悪魔(デーモン)、ネイト・バイモン・フラッシュによって。


 頷きながら話を聞くソータ。話しているのはルミリオ(ドリー)である。

 ブレナ(キーノ)が口を挟もうとすると、ルミリオ(ドリー)がそれとなく話を遮り、作り話を進めていく。


「直近の状況は分かった。二人とも、俺に協力する気はあるか?」


 ソータは「どうでもいいけど」みたいな態度である。

 それを見て、ブレナは頷き、ドリーは牙を剥く。


「なんだドリー、テメエさっきから出てこねえな。憑いてるデーモンに身体奪われちまったのか? しゃべり方は同じだけど、声音が変わるからな、明らかに違うやつが喋ってるって分かるんだよ。おいコラ、デーモン、テメエはすっこんでろ」


 ルミリオはレブラン十二柱の序列六位。冥界を支配する一柱である。

 故に、煽り口調には慣れていなかった。彼は平静を保つことができず、スキル、超加速(アクセラレーション)剛力(ストレングス)加熱(ボルケニゼーション)を使い、ソータに殴りかかった。


「どうした? 殴りたいんじゃねえのか?」


 赤い(こぶし)は、ソータの目の前で止まり、ルミリオ(ドリー)はぴくりとも動けなくなっていた。ソータの念動力(サイコキネシス)が、全身を包むように押さえ付けたからだ。


 怒りを抑えられないルミリオ(ドリー)が冥導魔法を使おうとすると、ソータが念動力(サイコキネシス)でぶん殴って気絶させてしまった。そのまま神威障壁に閉じ込め、ソータはブレナに向き直る。


「そっちのデーモンはおとなしく引っ込んでるみたいだな。ブレナ、そいつを滅ぼせてブレナが生き延びれるかも、と言ったらどうする?」


『あたいとは仲がいいと言いなさい。魔法使って老化を早めることも出来るのよ?』

「き、キーノとは仲がいいの。離れたくない。さっきちょっと身体の主導権を奪われたけど、ごめんなさいって言ってるし……」


 ソータは気付いたようだ。ブレナがしわしわの老婆になっているのは、デーモンのせいだと。


「そっか。そりゃ言わされてる(・・・・・・)んじゃなくて、ブレナの言葉か?」


『そうだと言いなさい』

「……そ、そうよ。あたしの言葉よ」


「ふうん……。姿は見たことないけど、目の前にいるから平気かな? 直接聞いてみるか」


 ソータは気を失ったドリーに向き直り、空間魔法を使う。すると、ドリーが二人に増えた。ただ、片方のドリーは素肌が灰色でくすんでいる。灰色のドリーも意識を失ったままなので、ソータは脚のつま先で蹴っ飛ばして目を覚まさせた。


「……」


 目を覚ました灰色ドリーは、さっきまでの怒りは何処へやら、手のひらを見つめて動きが止まる。


「ドリーとそっくりだな、名も知らぬデーモンよ」


 ソータはドリーに憑いていたデーモンを、空間魔法で目の前に召喚したのだ。竜神オルズでさえ召喚できたのだ。ニンゲンと一体化したデーモンを空間魔法で剥がして召喚するくらい容易いのだろう。


「ちょ!? 何してくれてんの!! まずいわっ!!」


「あんたもオカマ?」


「そうだけど、いや、違う! 早く使役魔法使って!!」


「あー、なるほど?」


 ソータは以前、識別魔法陣の判定が正しいものなのか実験をしている。そのとき呼び出したデーモンは、敵判定を下したスチールゴーレムが滅ぼした。しかし、次に呼び出したデーモンに使役魔法を使うと、スチールゴーレムは攻撃をしなかった。


 識別魔法陣を通じて敵味方を判断しているのは、魔法陣の神クロウリー。


 ソータの前にいるルミリオは、デーモン。このままだと、神から敵判定を下されるのだ。使役魔法を使え、と懇願するルミリオは必死の表情を浮かべる。


 放置したら、神々はどう判断するのか、そんなことを考えつつ、ソータはまた神界に呼び出されるのもごめんだ、という結論を出して、使役魔法を使った。


 その間、ブレナは口をパクパクさせているだけだった。


 そんなブレナにソータは無言で空間魔法を使い、憑依しているキーノを引っ剥がす。すかさず使役魔法を使い、支配下に置く。


「これで少しは、まともに会話が出来るかな。話し合いは大事だ」


 まだ意識を失っているドリーを蹴っ飛ばしながら、ソータはそう呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ