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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
3章 ゲート設置

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110 設置完了と取り引き

 ゲートの設置が終わったので、ここにはもうすぐ担当の警察と自衛隊がやって来るだろう。俺とシビルは、彼らに見つからないよう、天井に昇って屋根の上に出た。


「取引って何だ?」


 シビルは動きやすさ優先で、紺色のジャージ姿。金色の髪の毛は降ろしていて、出来るだけミイラのような顔を見せないように工夫している。ハッグは長命種だと聞いていたが、シビルが何歳なのかは知らない。もしかすると、年齢のせいでこうなったのかもしれないが、やっぱ聞けないな……。


「せっかちですねえ……。こんなに心地良い曇った空なのに。……先にそちらの要求を聞きましょうか」


 まだお昼前なので明るいけど、曇ってはいる。直射日光だとヤバいくらい暑くなるからな。シビルの地球人に対するイヤミは理解できなくもない。


「二回も俺を殺したのに、俺が死なない。それで方針転換か? ……お前ら、異世界へ渡りたいんだろ?」


 こいつは獣人自治区の城壁を爆破した張本人だ。異世界に帰ろうと思えば帰れるはず。それなのに地球に戻って、魔石電子励起(れいき)爆薬なんて物騒なものを作っている。もちろん、神々へ復讐するための武器、……なのかもしれない。


 あるいは神々に見つかれば、また罰が与えられるとか、命を奪われるとか、そんな話をされている可能性もある。明治政府と接触したシビルが、異世界のゲートから距離を取ったとも聞いているし。


 どちらにしても、ソリッドリーパーは自力で異世界へ渡れるのに、それをしない。

 地球での優雅な生活を諦めたくないだけだ。


「そうです。その件は先日お伝えした通り」


「神を討つって話な。原因はお前ら聖なる魔女が、カヴンにはめられ、巻き添えになったから、って他からも聞いた。んでさ、どうしても分からないんだけど、そのカヴンと共に行動しているのは何故だ?」


「利害の一致ですね。我らハッグもカヴンも異世界へ帰りたい、その一心で過去の諍いを乗り越えて協力し合っています」


 はっ、つい今し方、過激派のスナイパーを殺害してるじゃねえか。


「こっちの要求は二つ。一つ目は、カヴンとカヴンに与する過激派との戦いに、お前らハッグが参入してくるな」


「……」


「その対価ではないけど、俺はこの前ハッグと神の(いさか)いには首を突っ込まないと言った。それを撤回する。俺の方から神々に、カヴンの策略でハッグが異世界から追放されてるって話してみるさ。四柱しか知らんけど、説得に成功すれば、お前たちハッグは大手を振って異世界に帰還できるだろ?」


「――――ありがとうございます」


「二つ目、俺と同じ魔法ではなく、地球の魔術(・・・・・)で異世界へ繋げるゲートの作成を手伝ってくれ。二人しか通れないやつではなく、大勢通れるでかいやつだ」


「えっ?」


「俺がさっきやってたやつだよ。どうせ知ってんだろ?」


「ええ、それは知っていますが、我らソリッドリーパーにその任を託すのですか? 異世界への帰還が叶ったとしても、我らハッグが神々に復讐を企てているとご存じですよね?」


「神々への復讐は、勝手にやってくれ。巨大ゲートの作成は、ソリッドリーパーでは無く、ハッグに頼みたい。人員の選定はシビルに任せる」


「どうして……信用なさったのですか? わたくしを」


「アホか……、シビルはこれまで俺に対して、信用するに足る行動を取ってきたか? 違うだろ? これから先を見越して、信頼したいんだよ。お前らは地球の裏社会を牛耳る、組織力があるんだ。世界各国の首脳を説得して、ゲートを設置して回る。それくらいやって見せろ」


 いやあ、厳しい言い訳だな……。

 俺はこの三十日で気付いた。今のペースで巨大ゲートを作り続けても、残り三年間で世界中の人々を異世界へ逃すことが出来ないと。


 日本だけで三十日かかったんだ。これからアメリカに設置することになっているけれど、もっと時間が掛かるのは分かりきっている。

 アメリカの国土面積は、日本の約二十六倍もある。

 しかも、アメリカはデモや暴動が半端なく激しい。それで長引いてしまえば、半年や一年、それ以上の時間が掛かるかもしれない。


 残された三年という時間で、俺一人でどう頑張っても、世界中に巨大ゲートを作るのは不可能だ。


 岩崎が日本(・・)に拘っていたのは、こうなることが想定内だったからだろう。


 日本人だから日本人を優先する、という考えは分かるけど、それを言い出したら、どの国の人だって同じだ。

 自分が住む国の人々、街の人々、近所の人々、友人たち、一緒に住んでる親きょうだい。知っている人と一緒に助かりたいと考えるのは当然だ。


 だから俺は日本人ではなく、人類を救いたい。


 過去の人類がなめた真似をして、温暖化が加速。その結果、人類は滅びに瀕している。

 だから人類なんて、万死に値する。

 そう考えるヒトもいるだろう。異世界なんて行きたくないというヒトもいるだろう。生れ故郷で死にたいという人もいるだろう。


 そんな人々に、異世界へ行けと強制はできない。


 残念だけど、一定数は地球に残る事になるはずだ。


 俺が神々の末席に加えられたと言われても、現在の俺では出来ることが限られている。いっそのこと俺の分身が作れないかな。そうすれば、パパッとゲートを作って、ササッと異世界へ入植する環境が出来るのに。


 そもそもの話だけど、この温暖化はほんとに止められないのか?


 あ。


 そういえば、蒼天(アイテール)


 光速以上の速度で撃ち出すロックバレット、五兆度以上の熱を発するファイアボール、核融合するウインドカッター、マイナス六百六十六度の液体にできるウォルターボール。


 蒼天(アイテール)を使えば、四属性の魔法で世界どころか、宇宙が無くなりそうな話だったな。


『はい、事実です』


『それならば、神々の住む空間である蒼天(アイテール)を魔力に見立てて、何か出来るはず、だよね?』


冥導(めいどう)の実験もまだですし、データが少なすぎて何が起きるか分かりません』


『シビルいるけど、ちょっとやってみるか』


 ……地球の再生をイメージしてみたけど、何も起きない。

 大雑把すぎたかな。さすがに魔法で簡単にってわけにもいかないか。


 蒼天(アイテール)を使い、世界中の気温が少し下がるようにイメージするも変化無し。

 なんだこれ? 魔法的な遣い方は出来ないのかな?


 とりあえず順を追っていこう。

 魔力、神威、冥導(めいどう)蒼天(アイテール)の順番で、無害そうな魔封陣を飛ばす。


 神威で魔封陣を飛ばしたとき、何かが滅んだ手応えを感じたけど、今は置いておく。


 とりあえず、魔力、神威、冥導、この三つは封魔陣を上手く飛ばせたが、蒼天(アイテール)だけ上手くいかない。


 蒼天(アイテール)を使い、地球温暖化を止めるイメージをする。


 ……だめか。何の手応えも無い。

 でも、練習しておこう、蒼天(アイテール)を。

 大事なのは、蒼天(アイテール)の感覚を掴むことだと分かってきたので問題ない。


「いつまでわたくしを放置するおつもりですか?」


「いやあ、すまん。ちょっと考え事を。んでどうする? 一つ、俺と過激派との戦いに魔女(ハッグ)シビル・ゴードンの一派は介入するな。二つ、シビルの人選で、世界中に巨大ゲートを設置する。もちろん、地球人を異世界へ逃すためだ。お前らハッグはそれが済んでから、異世界に帰ってくれ」


「はい、……二つともお受けします」


「んじゃ、そっちの条件を聞こうか」


「いえ、もうこちらの条件は叶いましたので……」


「え?」


「わたくしが持ち掛けようとした取引は、巨大ゲートの設置が間に合うように、ソリッドリーパーでもやらせてもらえないかという事でした。その対価はハッグの一族がゲートで異世界へ戻り、神に罰せられないように口添えしてもらうことでした」


「同じ事考えてたって事か」


「ふふっ、そうですね」


「この前言ったことも忘れるなよ?」


 デーモンに関わらないこと、魔石電子励起(れいき)爆薬を作らないこと、この二つを俺は譲れないラインとして提示した。これが無ければ神への復讐なんて出来ないはずなのに、今回のシビルは余裕をかましている。


 やはり神への復讐なんて考えていないのか。


「ええ、もちろんです」


 ミイラのような顔が笑顔になり、ポテトチップみたいな音を立てて顔の皮膚が剥げ落ちている。


「ところでさ」


「はい……?」


「その顔と身体、どうしたの?」


 我慢できずに聞いてしまった!

 服を着ているので、身体はもちろん見えていない。だけど、デニムもシャツもぶかぶかで、明らかにサイズが違う。これは買い換える間もなく変化したことを示している。


「これは……、あなたのせいですよ?」


「俺?」


「はい。地球の魔力は薄いので、魔術を使うとなかなか回復しません」


「美貌を保つための魔力が足りなくなったってこと?」


「……」


「答えたくないならそれでいい。とりあえず、取引は成立でいいな?」


「はい。二つともしっかりやりきります」


「おう、頼むぞマジで。それとさ――」


 視線を動かし、合図をする。シビルも気付いていたようだな。


 沖縄アリーナの屋根からみえる、アメリカ空軍嘉手納基地。そこに八輪の装甲車が並んで止まっている。その装甲車の屋根から上半身を出した兵士が機関銃を構え、銃口を俺たちに向けていた。


「――俺に用事があるみたいだ。ちょっと出頭してくるよ」


 その前に、シビルだ。


 修道騎士団のテッドが言ってたからな。ハッグは一皮剥けば老婆で年齢が解らないと。このままだと干からびて死んでしまいそうなので、神威で、回復、治療、解毒、再生、四つの魔法(・・)を使った。


 効果はてきめんで、見る見るうちに元の美人へ戻っていくと同時に、シビルの枯渇寸前(・・・・)だった魔力も回復した。


 こいつがミイラみたいになったのは、効率のいい魔術(・・)ではなく、湯水のごとく魔力を使う魔法(・・)でゲートを開いていたからだ。何度も見たし。

 彼女はそのせいで魔力の回復が追い付かなくなっていた、そう考えざるを得ない。


「アメリカで大規模ゲートを作って、魔力が足りなくなったらいつでも言ってくれ。すぐ回復しに行くからさ」


 さすがハッグなのか、さすがシビルなのか分からないけれど、満タンになった魔力は、とんでもない量がある。俺が今まで会った、どのニンゲンより包有魔力が多く、巨大ゲートを百や二百、余裕で造れるくらいのものだった。ゲートを維持するために魔石が必要になるけど。


「ありがとうございます。ご無事でお帰り下さいますよう……」


 シビルは泣きながら頭を下げ、ゲートを開いて姿を消した。それは丁度、警備の警察と自衛隊が集まってくるタイミングだった。

お読みいただいてありがとうございます!


これにて第3章完結です。次回より4章開始ですよろしくお願いします。


現時点で少しでもおもしろい、続きが気になる!


なんて思っていただけましたら、ブックマークぽちっと、☆☆☆☆☆にぽちぽちいただけると作者がとても喜びます。


(厂 ˙ω˙ )厂

こんな感じで。


今後ともよろしくお願いします。

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