表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
3章 ゲート設置

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

108/341

108 内閣官房参与

 四人ともゲートをくぐって六義園に到着。俺が居ると確認できるはずなのに、統合情報部の連中は誰も銃を下ろさない。何でだろう?

 今はゲロを拭き取って、モーガンが持ってきた服に着替え中だ。汚れたのは上半身だけなので、すぐに終わる。


「そ、そこの男、い、いったい何者だ!」


 門田が青ざめた顔で言う。それはオルズのことだ。……あ、分かったぞ。


「オルズ、ちょっと気配を抑えてくれない? みんなびっくりしちゃってるからさ」


 何度か会って気にしていなかったが、オルズは竜神としての存在感や神聖な気配が突風のように吹き出している。それを抑えないまま人前に姿を現せば、地球の人間は畏怖の念を覚えるだろう。

 アイダやモーガン、ドラゴニュートが平気で接するのは、前に見た距離感の近さ。元から神が側にいるからだ。


「お、そうだったな。すまんすまん」


 オルズがそう言うと、スッと人並みの気配へ変わる。器用だな……。


「あ、岩崎さん! こちらがドラゴニュートの代表者の方です。さあ、こちらへ!」


 オルズを代表だと勘違いして近付く岩崎を、少し強引に軌道修正。モーガンの前に連れていく。


「モーガン・ヴェダです。初めまして」

「イチオウ・イワサキです。今回は急な話に応じていただき、ありがとうございます。準備は整っていますので、こちらへどうぞ」


 モーガンと岩崎の自己紹介が終わると、すぐに移動していった。アイダとオルズも後をついていく。


「行かなくていいのか?」


 門田が声をかけてきた、岩崎たちを見送る俺に。


「外務相会談みたいなやつだろ? 俺が首突っ込んでどうすんの?」


「お前が立場をわきまえるだとっ!?」


「俺を何だと思ってんだよ、年下のくせに」


「ああん!? てめえ喧嘩売ってんのか!! あっ! おい、板垣!!」


 門田をおちょくっていると、ふと目の前が暗くなった。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 寝てたのか……? いや、気を失っていたみたいだ。

 救護室のベッドだから、たぶんそう。様々な薬品の匂いが混じる独特な空気が、リキッドナノマシンの実験をしていた頃を思い出させる。


 壁の時計は十二を指しているが、午前と午後の判別がつかない。ここが六義園の地下で、外の様子が分からないからなあ。


『八時間ほど睡眠を取りました。ソータ、働き過ぎですよ。それと、血液検査をされそうになったので、防御しておきました』


『んじゃ昼間か。その言い方だと、過労で倒れて意識が無いのに、俺が勝手に動いたようになるの?』


『いえ、念動力(サイコキネシス)で、針が刺さらないよう阻止しました』


『うーん、なんか疑われないかな? それはいいとして、リキッドナノマシンは採取されてないんだな?』


『はい』


 日本に戻って三日目でダウンか。そういやあまり食べてなかったな。それが原因かも。


「あっ!」


 会談はどうなった?

 飛び起きると、手術着に着替えさせられていた。何だこれ?


『針が刺さらないので、原因を調べるためにCTスキャン、MRIで詳しく調べられましたが、体組織を変化させて、常人の画像として撮らせました』


 そんなことまでできるの? という気持ちより、もう人間じゃないんだな、という気持ちが勝ってしまう。


 ま、しゃーない。


 カゴの中に俺の服があった。洗濯されて規定に畳まれている。ありがたいと思いつつ、急いで着替えて医務室を出た。


「門田、昨日はすまん。今起きた」


 通路の先を歩いていたので呼び止める。


「おう、もう大丈夫みたいだな。昨日は俺もちょっと、……あれだったな」


 ばつの悪そうな顔をする門田。こいつとは気が合いそうなんだよな。


「あれからどうなった?」


「あれからって、会談のことだよな?」


「そそ」


「ドラゴン大陸だっけか? そこに日本人が入植するのは問題ないって方向で話がまとまったみたいだ。それに、ライムトン王国、日本、ドラゴニュートで交易するみたいだが、それくらいしか分からん」


「十分だ。あとは官僚と政治家に任せよう」


「だな」


 門田とはそこで別れ、岩崎の部屋に向かう。


 あ、大事なこと忘れてた。

 俺は回れ右をして、兵器開発をやっている場所へ移動する。スーツ姿の官僚に銃を向けられたあとは、俺がここに来ても何も言われない。岩崎か門田が俺のことを周知したのだろうが、抜かったな。ふはははは!


 俺がここに出入りできるということは……。


『六本脚の魔法陣を多数確認。多重魔法陣を使用し、脳神経模倣工学と似た技術が使われています。解析します……エラー』


『え? マジで? 俺もゴーレム作りたかったんだけど……。あ、サバイバルモードでやってみて?』


『了解。サバイバルモードに変更。解析します……。解析と改良、最適化が終了しました。脳神経模倣魔法陣、回転魔法陣、伸縮魔法陣、魔力圧縮魔法陣、圧縮魔力放出魔法陣、連動魔法陣、強化五感魔法陣、魔力探知魔法陣、冷却魔法陣、加熱魔法陣、識別魔法陣を確認。ゴーレムを作成する場合、多重魔法陣で強化できますが、魔石の使用量が増えます』


『わかった。ありがとね』


 脳神経模倣魔法陣は、誰の脳を模倣するのかで性能が変わる。この魔法陣が他の魔法陣を操作するのだ。


 回転魔法陣は、関節やタイヤに使われている。


 伸縮魔法陣は、人工筋肉みたいになるのか。ショックアブソーバーや如意棒(にょいぼう)的な使い方も可能だ。


 魔力圧縮魔法陣は、魔導銃の部品的なやつに使われている。


 圧縮魔力放出魔法陣は、圧縮した魔力を発射する役割。


 連動魔法陣は、周りの味方機と連携するようになっている。


 強化五感魔法陣は、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚、この五つがあり、かつ常人より強化されたもの。


 魔力探知魔法陣は、その名の通り、周囲の魔力の動きを察知するものだ。


 加熱魔法陣は機体を暖め、冷却魔法陣は機体を冷やす。


 識別魔法陣は、前に見たやつだ。敵味方の判別をする、重要な魔法陣だ。


 しかしだ、脳神経模倣魔法陣なんて、誰が考えたのだろう……? 地球ですらニューロモルフィック・エンジニアリングは最先端技術だというのに。でもこれでようやく納得できた。帝都ラビントンの無人馬車は、脳神経模倣魔法陣を使っているのだ。ドワーフなどニンゲンの脳を模倣しているのなら、トロッコ問題が起きたとき、あたふたする光景が目に浮かぶようだ。


 いやあ、解析できてよかった。……よっしゃ! これでゴーレムが作成できる。ゲートの設置で日本側に護衛がいても、ドラゴン大陸の魔物がうっかりこっちに来ちゃった、みたいな事件は起こしたくないからね。


 よし、気を取り直していこう。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「すみません。随分寝坊しちゃいました……」


 岩崎の部屋に入り、頭を下げる。


「働き過ぎだ。休むときは休んで疲れを取らないと、優秀だと言えないぞ?」


「……返す言葉もありません。すみません」


「と言っておきながら、ゲートの件なんだが――」


 岩崎は会談のことに一切触れず、巨大ゲートを設置する話を始める。つまり、ゲート設置に日本政府とドラゴニュートが合意したということだ。

 竜神オルズが同席していたので、一方的に日本が有利という不平等な取り決めにはなっていないはずだ。


 そのオルズたちの気配はないので、もう帰ったのだろう。現在、六義園を中心に、ライムトン王国、ドラゴニュートの里、二つのゲートが開きっぱなしになっている。


 巨大ゲートの設置は、日本の四十七都道府県の県庁所在地で行われることになった。


 今後、設置場所が増える可能性があるものの、現在のところ警備員の数が限られているため、秘密を保ちながらの作業は四十七カ所でのみ可能らしい。


 まずは北海道、札幌からだ。設置場所は札幌ドーム。


 昨日の今日で国が札幌ドームを貸し切り状態にしたため、北海道住民たちから反発を招き、SNSでは炎上騒ぎらしい。

 異世界へのゲートを設置するためだと、ちゃんと説明すればいいのに。そう言うと、政治絡み、海外絡みらしく、今はまだ開けっぴろげにできないらしい。


 面倒くさいよな、政治は。


「とりあえず向かいます」


「飛行機のチケットは、準備してあるからね。これが現場の配置図で、板垣くんがゲートを開く瞬間、その場に誰も居ないように徹底してある。君の能力は知られたくないだろう?」


「あ、ゲートで行くので平気です。配置図はいただくとして、ご配慮ありがとうございます」


「はぁ……。チケット代が無駄に」


 岩崎からファイルを受け取って、開いてみる。四十七都道府県の県庁所在地や、ゲートを設置する場所の人員が全て記載されていた。


「ため息つかないでください。ぽんぽんゲート使ってますけど、六義園の情報は漏らしません。出先で見つからないようにしますし」


 俺は魔術師として認識されている。ソリッドリーパーが吹聴したからだ。そのおかげで、俺の力の秘密がリキッドナノマシンと汎用人工知能だと疑われていない。


「それがなあ――」


 情報が漏れている(ふし)があるという。……そういえばあのとき思ったが、六義園を襲撃して神威結晶とミスリルの棒が持ち去られた件と、時間がループして足止めを食らった件は関連がある。六義園はまさに魔術結社実在する死神(ソリッドリーパー)に情報が漏れているのだ。


 岩崎と門田が不在だと、誰かが情報を漏らしたと考えると筋が通る。


 この前の襲撃で拘束された首謀者は、日本のソリッドリーパー幹部で、有名な召喚魔術師だったらしい。門田とあのじいさんが相対していたとき、悪魔を召喚してたからな。

 あの悪魔からもう少し情報を引き出せばよかった……。


「あ、そういえば、松本総理から打診が来てたな」


「なんですか?」


「板垣くんも色々物入りだろうから、内閣(ないかく)官房(かんぼう)参与(さんよ)に起用したいそうだ」


「は?」


 非常勤の国家公務員という立場で、総理大臣のブレーン的な人たちが起用されるやつだ。ご年配の方が多いイメージもある。いやあ、でも、内閣官房参与はニュースで報道されることがあるので、窃盗事件で顔バレ中の俺は無理じゃね?


 なんて考えていると、俺の心を読んだような答えが返ってきた。


「窃盗事件の件は、取り下げになったよ。ニュースの件も、一瞬だけ顔写真が出ただけで、板垣くんの写真をあげている転用サイトはすべて潰したし、SNSも全て削除済み。安心して受けていいと思うよ? 非常勤の国家公務員だけど、給料が出るし」


 そういうことならと、一応受けておく。今回の件で、バイトをやめてるし、大学にも行ってない。目先は貯金で何とかなるが、ゲート設置で時間がかかれば、確実に現金が底をつく。


 院生から、非常勤の公務員か~。とりあえずがんばろっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ