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量子脳で覚醒、銀の血脈、異世界のデーモン狩り尽くす ~すべて解析し、異世界と地球に変革をもたらせ~  作者: 藍沢 理
3章 ゲート設置

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102 明治政府と残り三年、あとドラゴン大陸

 明治維新の時代、日本は西欧列強と渡り合うため、軍事力の増強と並行して、圧倒的に少ない資源の確保を目指した。明治政府の発足後、様々な方法論が展開される中、吉報が舞い込む。それは、星学(せいがく)局、京都出張所からのもので、異なる世界への通路を発見したというものだった。


 明治政府はその通路を最高機密とし、発見者の賀茂(かも)保憲(やすのり)を筆頭にして調査を行なった。その結果、異世界は地球と変わらず豊かな自然環境があり、人が生きていけると分かった。しばらくすると、調査団から大規模な金属鉱脈が見つかったと報告が入った。


 日本は鉄と石油を求め、異世界と往来を始めたのだ。


 後日、新たな報告が入った。

 異世界には人が存在し、地球に負けず劣らずの文明的な国家があると。

 その国の名は、ライムトン王国。日本はこのチャンスを逃さず、通商条約を結ぶことに成功。日本とライムトン王国、お互いの国に大使館を置き、本格的に異世界との交流が始まった。


 両国が少しずつ発展し豊かになっていくと、それを邪魔する勢力が現われた。


 ライムトン王国の南側にある大国、ロムニー共和国だ。その理由は単純明快。

 日本から米作を教わったライムトン王国は、食糧の生産量が急激に上がり、ロムニー共和国の小麦を輸入しなくなったのだ。


 それを不審に思ったロムニー共和国は間者を送り、何が起こっているのか調べた。すると、ライムトン王国に出回るコメという穀物が、とてつもない量で流通をしている事が発覚。ロムニー共和国の首脳陣は、小麦が売れなくなったのはコメのせいだと断じた。


 その後ロムニー共和国は、日本と繋がるゲートを破壊。

 日本は異世界との交流が断たれてしまった。


 明治政府が頭を抱えていると、一人の欧米人女性が接触を図ってきた。

 その時代では大変目立ったであろう。金色の髪の毛に青い瞳、スカートとブラウス姿のシビル・ゴードンは、流暢な日本語で、明治政府の役人たちを説得していった。


 異世界へ通じるゲートは、探せばまだあると。


 証拠を見せるというシビルに、半信半疑でついていく役人たち。奥多摩の山中に連れてこられると、目の前にゲートが現われた。そしてその先はライムトン王国だったのだ。


 この時、シビルは野良のゲートを見つけたのではなく、自身の魔法でゲートを繋げていた。ただ、彼女自身は、異世界から追放された一族、ハッグである。故にゲートをくぐれば神々に見つかって討たれる可能性を考慮し、少しだけ後ろに下がっていた。


 明治政府の役人たちは、そんな事など知らない。


 彼らはライムトン王国とまた国交が出来るると大喜び。この場所に事務所を建て、シビルがゲートを管理することで話がまとまった。

 野良のゲートではないので、その都度シビルがゲートを開かなければならない。彼女が事務所の管理人になったのは、当然の成り行きだった。


 こうして、日本政府がライムトン王国と国交を続けるためには、魔術結社実在する死神(ソリッドリーパー)の存在が不可欠となったのだ。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「それから現在に到るまで、結社の連中は日本の中枢に居座っている。もちろん民間には明かされていないが……。だから、板垣くんがいう、政府が板垣博士を脅してゲートを探させている、と受け取られても仕方がない状態なんだ」


 岩崎が言っている事は、月面基地で調べた内容と相違ない。そこまバラしてしまう義理は無いのに、包み隠さず俺に話した。それには何か理由があるはずだが……。


実在する死神(ソリッドリーパー)が政府の中枢にいたとしても、国の政策に易々と口出しできないですよね? でも、じいちゃんの件には、強引に実在する死神(ソリッドリーパー)が介入しています」


「何でそんな事まで知っている……」


「俺も一応調べたんで。本来なら岩崎一佐のような陰陽師(・・・)が、しっかりガードするはずですよね?」


「……」


 岩崎は自分が陰陽師だとバレていないと思っていたようだ。そんなに驚いた顔すると、カマをかけられたらすぐバレるぞ。


「調べたって言ったでしょ? だけど、じいちゃんの件が、どうしても分からないんです。電子媒体だと漏れる可能性があるので、紙媒体で記録を残したと踏んでいるんですが。……岩崎さん、あなたは統合情報部の一佐なのに、知らないんですか?」


「じいちゃんの件、か。板垣くん、君は板垣兵太(ひょうた)博士が生きていて、牛頭人(ミノタウロス)半馬人(ケンタウロス)を含む実在する死神(ソリッドリーパー)七名と一緒に、異世界へ行っている事を知っているのだね」


「知ってますよ。じゃなきゃこんな話はしないでしょ? 俺はじいちゃんを助けたいんですよ。外務省、自衛隊が絡んで、じいちゃんに何をやらせてるんですか?」


 巨大ゲートを探すという話は本当だった。それは日本人を異世界へ逃すための計画。しかし、実在する死神(ソリッドリーパー)がついてきた事で、話が大きく違ってしまった。


 巨大ゲートが見つかっても、日本人が移動できるわけではない。


 大勢の実在する死神(ソリッドリーパー)が復讐のため、異世界へ雪崩れ込んでいくだけだ。


 ただし、酒飲んで屁をこいて寝るだけのじいちゃんが、あれだけ慎重になっていたという点が見逃せない。


「結社が一枚岩で無い事は知っているかな?」


「なんですかそれ?」


 やっと知らない情報だ。


「シビル・ゴードン率いる本流派閥、マリア・フリーマン率いる亜流派閥、表だって争っていないが、水面下では主導権の奪い合いが激しいと聞く」


 ついさっきエレノアから聞いた話だけど、地球へ島流しされたのはハッグだけでは無い……。カヴンって魔女も一緒に来ているから、マリアってやつはそっちの派閥かな。


「つまり?」


「シビルは穏健派、マリアは過激派、と言えば分かりやすいか。板垣博士についている亜人(・・)は過激派で、自分たちが異世界へ行く事を優先している」


「シビルが穏健派? 人違いでは?」


「人違いでは無い。政府に残っている写真に、一枚だけシビルが写っている。最近撮った画像と比較解析して、シビル・ゴードン本人だと確認できている。やつがまったく年を取らず、若いままだという事も……」


 いや、そうか……じいちゃんのあの態度を見れば、同行していた日本人が、どれだけ危険であるのかはっきり伝わってきた。カヴンに与する過激派が牛頭人(ミノタウロス)半馬人(ケンタウロス)なのだろう。


「考え込んでどうしたんだい?」


「いえ、ここでやる事はだいたい済んだと思います。俺は異世界に戻りますね」


「え、ちょっと待ってくれないかな?」


「……なんですか」


「板垣くん、君は何をしようとしているのかな? そこだけでもハッキリ聞いておきたい」


「じいちゃん助けて、地球人を全員異世界に受け入れてもらう。これが俺の目標です」


「……ふふっ、はははっ!! 素晴らしい!! でも、全員は無理だ。そんな時間は残されていない」


「時間? 三十年くらいあるんじゃないんですか?」


 シェルター有りと無しで、だいぶ違ってくるけど。


「三十年説は、実在する死神(ソリッドリーパー)が作り上げた嘘っぱちだ。そのおかげで、世界中でパニックになっていない、という受け止め方もある」


 確かにそうだ。報道やSNSでは、異世界に行きたいとか魔法が使えたという、上辺だけの話題で持ちきりだし。


「三十年がウソだというなら、人類が滅亡するまで、実際に残された時間はどれくらい残ってます?」


「そうだね……。持って三年、かな? これは世界中の科学者が何度も訴え出たんだが、不思議なことに、すべてデマ扱いされていくんだ。そうなるのは……まあ、だいたいの想像はつくが。……板垣くん、私も出来うる限り、ゲートを通じて日本人(・・・)を異世界へ逃したいと思っている」


 岩崎は異世界の南極にしかゲートを繋げられないのに、大丈夫なの?

 ん……? ……そっか、別の場所に繋げられるように教えてやればいいのか。もっと言えば、ゲートを繋げる人を増やせばいい。


「……戻るのちょっと中止します」


「お、統合情報部の手伝いをやってくれるのかな?」


「違います。人類が生き残るために――」


 いや、ダメだ。ゲートを開ける人を増やして、地球の九十億人を異世界の人たちに無断で送るなんて、やりすぎだ。様々な国家があるというのに、そんな事やったら絶対に戦争になる……。


 異世界に行った初日、奴隷商人の馬車で考えたときから一歩も前に進んでねえ。


 だからと言って、九十億人全員は無理だ、……日本を優先しよう。

 選民思想みたいで好きじゃ無いけど、地球温暖化から逃れたい人が異世界へ行けばいい。

 となると……。国がない土地を見つけて、そこに入植すればいいのか。


 周辺の国に建国するって宣言しなきゃいけないけど。


 あとは、どれだけのニンゲンを異世界へご案内できるかって話になってくる。だが、これはもう国がやる仕事だ。


「なんだい?」


「岩崎一佐、異世界の南極は地球と同じ気温ですか?」


「地球の南極は、もう氷床(ひょうしょう)が溶け始めているから、比較対象にはならない。そうだねえ……あっちはマイナス三十から七十って所だね。私の術では、簡単に死ねる場所にしかゲートが繋げなくて残念だよ……」


 そこに移住なんて無理だ。やっぱり他を探さねば。


「分かりました。少し時間をもらっていいですか?」


「え、ああ、構わないよ?」


「ちょっと行ってきます」


 俺は獣人自治区にゲートを開いた。



 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 すごいな……。連結した十本脚にブレードを取り付けて、ブルドーザーをやっている。爆撃で破壊された家屋やお店が、どんどん更地になっていく。そのあとに続く十本脚が、元々あった道に石畳を敷いていた。山のように積まれた石材を組んで、建物の土台を作っている六本脚。

 ドワーフの多脚ゴーレムって、汎用性高すぎるな。


 ファーギめっけ。この世界に一番詳しそうだから聞いてみるか。

 でも、このブライトン大陸は八つの国で満席だ。海を挟んだ南にはエルフの国がある。地球人の移住を交渉して、仮にまとまったとして、三年間で移住できるか? 厳しそうだな……。


「意外と早く戻ってきたな? ホームシックでしばらく地球にいると思ってたぞ」


「やかましいわ! それはそうとちょっと質問。ファーギ、この世界でさ、ニンゲンが住んでない大陸とか島とかある?」


「突然どうしたんだ? んー? あるにはあるけどなあ……」


 ファーギは少し考えたあと、三つの場所を提示してきた。


 サンルカル王国の東に行くと海が広がり、その先に流刑島があるそうだ。その近くには、小さな大陸と大きな大陸があるという。ただし、そこの魔物は、異常に強いみたいで、ニンゲンは住んでいない。小魔大陸、大魔大陸と呼ばれているそうだ。


 もう一つはブライトン大陸の東、ライムトン王国とロムニー共和国から海を渡った先に大陸があるという。そこの魔物はそんなに強くないが、火山が多く地震が多発するため、ニンゲンが好き好んで住むような場所じゃないと言われた。


「そこ! 地震の大陸! その場所教えて!!」


「はぁ? とてもじゃないがニンゲンが住める場所じゃないぞ? ドラゴンもいるし」


「いいからいいから!」


 こちとら地震大国、火山てんこ盛り日本に住んでるんだ。もしかしたら日本人が住める環境かもしれない。行ってみる価値はある。そう思って詳しい場所を聞く。


「今から行くのか?」

「ああ、善は急げ! ちょっと行ってくる!」


 気配遮断、視覚遮断、音波遮断、魔力隠蔽、四つの魔法陣に加え、風魔法で姿を消して、浮遊魔法を使う。上昇しながら障壁を張り、東へ向かう。

 そういえば、と思い出して、サーブ39グリペンの非平面形を思い浮かべ、障壁の形を変える。


「よーし、全速力で飛ぶか」


 音速を超えると、本来なら衝撃波が発生する。しかしこの形状ならば小さな衝撃波しか発生しない。音の壁の次は熱の壁だ。マッハ3を超えると、空気との摩擦で障壁が赤くなっていく。


 持ちそうにないので、神威障壁を十枚重ねて張る。

 マッハ5。障壁の表面温度は1000℃を超える。極超音速になると、理論でしか知らないので、何が起こるか分からない。それでも速度を上げていく。

 マッハ10。障壁の表面温度は2000℃を超える。


 あ、そういえば瞬間移動(テレポーテーション)ができるんだった。


『え? ……忘れてたんですか?』

『い、いや、覚えてたよ? ほ、ほら、どれだけの距離が瞬間移動(テレポーテーション)できるのかまだ分からないし?』

『ソータの思考は丸分かりなんですけどねえ……』

『はいはい、忘れてましたよ!! でもいいじゃんか! もう到着するんだし!!』


 豆粒大の点が、あっという間に、火山のある大陸になった。

 もっと上昇して、この大陸がどうなっているのか見てみよう。


 ……あれは。


『オルズ……。浮遊城ソウェイルで移動してきたの?』


『ソータくーん、やっと話せた!! 淋しくても念話、ずっと我慢してたんだよ?』


『きっしょ! 俺は付き合い始めたばかりの彼氏じゃねえ!!』


 念話で声音を変えるとか、器用なやつだな……。


『ははっ! そう言うなって。今はこの大陸の竜をなだめているところだ。もう少ししたら暇になるから遊びに来い!!』


『いや、遊びに来たわけじゃ無いんだけど……。とりあえずあとで行くわ……』


 竜神オルズの浮遊島が、眼下をゆっくりと飛行している。その周囲に、オルズより大きな竜が十頭以上飛んでいるのだ。あいつたしか竜のとき三百メートルくらいあったよな……。あいつよりでかいって、なんなんだあの巨大竜たちは。


 あそこは、おっかなくて近づけないな……。他を見て回ろう。


 移動しようとすると、障壁が硬い音を立てた。何かをぶつかったみたいだ。

 ここ上空二十万メートル。オゾン層まで上昇しているのに。ぶつかったのは隕石か?


 恐る恐る振り返ると、美女がひとり障壁を張って浮いていた。


「や、やあ!」


「……」


 彼女は無言で俺を睨んでいる。|スケイルアーマー《鱗が貼り付けられている》を装備し、両手で大太刀(おおたち)を構えている。背中の肩甲骨の辺りから一対の翼が生えているけど、動いていない。俺と同じ浮遊魔法で浮いているのだ。


竜人(ドラゴニュート)ですね』


 その女の子とばっちり視線が合っているけれど、逸らせば斬られる。ひしひしとそんな予感がする。なんでこんなピリッとした空気になってんだ……?


「男色か?」

「は?」

「オルズ様を狙ってきたのかと聞いている!」

「はあ?」


 その返答が気に入らなかったのか、女は瞬時に近付いて大太刀を振るった。


 ――――ガッ


 おいおい、神威障壁が一枚割れたぞ……。


「俺は男色じゃ無いし、オルズに会いに来たわけじゃない」


「それなら」


「うおっ!」


「なんで」


「うおおっ!」


「ここに隠れている!!」


「ぬわああああっ!!」


 袈裟斬り、左斬り上げ、鳩尾(みぞおち)への刺突、三連撃を食らった。

 浮遊魔法の扱いは、彼女の方が上で、避けきれなかった。おかげで神威障壁が三枚も割れてしまった。


『もう少しデータが欲しいです』

『そう言うと思ったよ。でも、おっかなくてもう逃げたいんだけど?』

『反撃して殺したくない、でしょ?』

『……それもあるけどさ』


「なにをボサッとしている!」


「しつこい」


「うきゃっ!」


 汎用人工知能と喋っている間に斬りかかってきたので、咄嗟に衝撃波で吹っ飛ばしてしまった。彼女も障壁を張っていたので、直接のダメージにはなっていない。だけど、衝撃波を食らった障壁が先に動き、彼女はそこに頭をぶつけて気を失った。


「あー、面倒くせえ! さっさと地球に帰って色々動きたいのに!!」


 上空二十万メートルからの落下。すぐに終端速度の二百キロメートル前後に達するだろう。地上に激突するまでの約六分間で目を覚ますかな?


 言いがかりを付けられて攻撃されたんだから、そのまま死んでもらいたい所だけど、一応助けておくか。

 竜人(ドラゴニュート)って言うなら、竜神オルズと関係があるかもしれないし。


 どんどん小さくなっていく竜人(ドラゴニュート)を、念動力(サイコキネシス)で掴んだ。


 さて、どうすっかな……。

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