表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

ポコポ

第2回の飲み会。


開始よりもだいぶ早くヴィクトリアが来た。




『ごきげんよう!お二人方!ヴィクトリアリアメリアが来ましてよ!オホホ!』

『ヴィクトリアリアメリア、ヴィクトリアリアメリアですわ!!』


選挙かよ。

名前を略されるのがよほど気に入らないらしい。



『あなた方、お早いお集りですわね、結構結構。わたくしもお手伝いして差し上げようと早めに参りましたの。』


こいつ、前回の飲み会が楽しかったんだろうな…

結構なご機嫌状態だ。



『あら?もう一人の…あれ?誰でしたっけ?あのポンコツっぽい子、遅刻ですの?』


『……』

おれとバニーニは咄嗟に俯いてしまった。

こいつに何と言おうか、そこまで頭が回ってなかった。





――――――



『嘘…ですわよね…?わたくしのこと…からかっていらっしゃいます…?』



『悲しいけど、本当だよ。ヴィクトリア…』


バニーニの真剣な表情を見て、嘘ではないと分かったのだろう。

上機嫌だったヴィクトリアから笑顔が消えた。



『…それで、今回の飲み会は少し方向を変える。おれたちが殺される可能性もある。』

『もし、不安なら帰ってもいい。無理に参加を強制はしない…。』


おれがそう言い、顔を上げてヴィクトリアを見た。




その顔は、真っ赤に震え上がり、目には涙を浮かべていた。


『…許せませんわね…絶対に許せませんわね……』


声を震わせながらヴィクトリアは小声でそう呟いた。

てっきり、「わたくしは関係ありませんから!」とか「あら、死んだんですの、どうでもいいですわ。」

とでも言うと思ったから、意外だった。



『いや…前回の飲み会に他のクラスメイトがいたと決まったわけではないし。』

『うん、いたとしてもその人に殺されたとも決まったわけじゃないよ。』




『いえ、だとしても。ティティアが殺されたこと…わたくし納得いきませんわ。』

『この世界で出会えた…数少ない同士ですもの…』




こいつ…

おれたちは今日、一言もティティアの名前を口に出してない。

ヴィクトリアはさっき、「誰でしたっけ?あのポンコツっぽい子」などと言っていたが

しっかり名前覚えてんじゃねーか。お嬢様ぶって、見栄っ張りなだけで

本当はそんなに悪い奴じゃないのかもしれない。




ヴィクトリアも加担してくれるようだし、

作戦の概要を伝えた。







しばらく待つと他の参加者も集まってきた。


今回は前回と違い、店の前に集合という形にした。

入口におれとバニーニが立ち、1人ずつ身分を聞いてから、店の中に入る。という手順をとった。


『…本名…○○…偽名は××ですね。ありがとうございます。』

『個人情報は一切口外いたしませんので、安心してお楽しみください!』



今回の参加者は事前情報では32人だったが

個人情報が必要となると、断って帰る人も何人かいた。

結局残ったのは、おれたち3人を含める24人の参加者だ。



『アニキさん?結構帰っちゃいましたわよ?これでいいんですの?』


『あぁ…これでいいんだ。バニーニ、前回の参加者名簿をくれ。』




手元にあるのは、

今回、開催前に事前に参加者に書いてもらった偽名の名簿。

そして前回の参加者の名簿だ。


半分くらいが新規で、半分くらいが前回のリピーターだ。




前回のリピーターで、なおかつさっき帰った人はどれだ…?

今回帰った8人のうち、5人は新規の参加者だった。


残りの3人は、「前回は参加したのに、本名が必要な今回は不参加。」だった人だ。



『おれは…この3人が怪しいと考えている。』

『うん、そうだね。ボクもその可能性はあると思ってる。』


『な、なるほどですわね…』





『この3人のことは後日にして、今日は飲み会だ。』

『うん。今日の新規の人の中にも、元クラスメイトがいるかもしれないしね。』


『た、確かに、そうですわね…』




少なくとも、今回の参加者に名字持ちの人はいなかった。

嘘の本名の可能性はあるが、上級国民はこの中にはいないようだ。



『ひとまずは安心していいのかしら…ティティアが死んだことは本当に悲しい。』

『ですけど、悲しんでいたってどうしようもないですわ。』

『わたくしたちがやるべきことは、前に進むこと。ですわよね!!アニキ!!』


『お…おう…』



図らずもヴィクトリアに火をつけてしまったようだ。

この人、やっぱりよく分からない…




『さて…始まる前に一応最終確認しとくか。紛らわしいから再確認のためにな。』



『?』

ヴィクトリアが頭上にはてなマークを浮かべる。



『おれは本名アルメロ。参加名はココノエ。元の名前は九重兄貴だ。』


『ボクは本名バニーニ。参加名もバニーニだよ。隠すようなことないし。元の名前は内緒だけどね。』






『…………え?!?!次わたくしですの!?!?』




『一応な、念のため。』『うん。念のためだよ。』

おれとバニーニがヴィクトリアを見つめる。




顔を真っ赤にしたヴィクトリアが、観念したかのように言う。


『わ、わたくしは…参加名ヴィクトリアリアメリア…元の名前は…竹浜綾子…ですわ…』



『それは分かってんだよ!!聞きたいのはこの世界での本名だよ!!!!』

声を荒げるおれの横でバニーニはクスクス笑っている。



『わかりましたわよ!!ええ!!わかりましたとも!!言えばいいんでしょう!?このド畜生!!!!』








『ポコポ……』



『え…?』



『はい!!言いましたわよ!!終わり!!さっさと飲み会開始してくださいまし!!』




(バニーニ…今こいつ…ポコポって言ったよな…?)


(うん…ボクにもポコポって聞こえた…)



ほ、本名ポコポか…まあ、こっちの世界の言葉だし何らかの意味があるだろうけど

…同情するよ。竹浜綾子…今後も…ヴィクトリアって呼んでやるから安心してほしい…



こそこそと笑うおれとバニーニを見て

ヴィクトリアはさらに顔を真っ赤にさせた。





『よ、よし!じゃあ飲み会を開始するぞ!』


不穏な雰囲気を残しつつも、

第2回目の飲み会が開始した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ