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わがまま放題、やりたい放題。

唖然として黙ってるおれたちに

竹浜綾子は更に追い討ちをかける。


『ちょっと、お二人とも何黙っていらっしゃるの!?なんか言いなさいよ!!おい!!!!』



『あはは…ユ、ユニークなお方ですね…』

『それでは皆さん…カンパーイ!!』




めちゃくちゃ気まずい変な感じの乾杯になってしまった。





おれたちが自分のテーブルにつくと

案の定、竹浜綾子がワイン片手に近づいてきた。



『ごきげんよう』

竹浜綾子がそう声をかけてくると無意識におれたちは身構えた。




竹浜綾子はかなりのトラブルメーカーだった記憶がある…





豊緑高校は普通の進学校だった。

竹浜綾子の父は大手企業の社長だったのを覚えている。


クラスメイトの親はその企業に勤めている割合も多く

その社長の娘である竹浜綾子には、頭が上がらない人も多かっただろう。


親の力とは言え、権力もあり、金もある。

そんな環境で育ってきたら当然、どんな性格になるかはお察しだ。



わがまま放題、やりたい放題。


文化祭の演劇で主役をやりたいと言えば無条件で通り

修学旅行の部屋も竹浜綾子のグループだけ大広間だったりと


典型的なわがまま娘だった。




『えっと、ココノエにアミナカ、おそらく前世の名字ですわよね?下の名前は?』


竹浜綾子のこのお嬢様ぶってる高飛車なしゃべり方、かなり鼻につく…


『こいつは網中健斗。お前と同じクラスメイトだったやつだ。』


『あら。1ミリも覚えてないですわ。わたくしと違ってモブだったんですわね。可哀想に…』



竹浜綾子のデリカシーのない発言に、ティティアはうつむいてしまった。

ちょこっとだけ泣いてる?こいつ…メンタル弱すぎだろ…


『おれは、九重――――』


下の名前を言おうとした瞬間、竹浜綾子がかぶせるように言う。


『九重兄貴。通称アニキ。オホホ、あなたのことは覚えておりましてよ。』




『わたくし、貴方のことが、大ッッッッ嫌いでしたので。』



……


面食らって黙ってしまったおれに竹浜綾子はこう続ける。



『あら、覚えていませんの?1学期の6月23日のこと…』


(日付まで覚えてるわけねえだろ…)




『その日、わたくしは焼きそばパンが食べたくなったのですわ。』

『いつも通り、お友達に購買に買いに行ってもらいましたわ。』

『ええ、もちろん。お友達はわたくしのことが大好きなので、わたくしのために自ら買いに行ってくださいましたわ。』


そんな時、あんた九重兄貴はわたくしにこう言ったのですわ。



『それくらい自分で行けよ。』



『びっくりでしたわ!お友達が好意で買いに行ってくださってるのに、その気持ちをわたくしごと踏みにじったのですわ!!』

『貴女何てことを言うんですのお友達がわたくしの為に買いに行ってくださったと言うのにその気持ちを無視した挙句そんな心無い暴言人間とは思えませんわ貴方覚悟しておいてくださいまし貴方の様などす黒いドブよりも汚い心わたしは一生許しませんから!!!!!!!』



『…そうやってわたくしが折角貴方に全力で有難い指摘をして差し上げているというのに…』




『貴方はそっぽを向いて隣の席の子とカードゲームをしておりましたわ…』



そう言われると、そんなことあった気がする…

確か…購買にパシりにされてるやつを可哀想に思って助けてあげようと思ったんだ。


その助けたやつ、誰だったっけ…あんまり気が強くないやつだったんだよな。

そんで、頼りなくて頼まれたら断れなさそうなやつで…

でもそうやって助けた後から、そいつにはアニキアニキって慕われるようになったんだよな…



チラッと横を見ると、まだうつむいてしょんぼりしているティティアが目に入った


((あーーーーッッッッ!!思い出した!!こいつだーーーー!!!!!!!!!!!))




あぁぁ…なんという偶然…

パシリとパシらせがこんな形で再開するなんて……



…ん?待てよ?

竹浜綾子はティティアのこと覚えてないって言ったよな?



『お前さ、こいつ、網中健斗のこと覚えてないって言ったよな?』


『えぇ、そんなウジウジ君、記憶にありませんわ。』


『お前の焼きそばパン買いに行ってくれた奴の名前、憶えてるか?』


『さ、さぁ…もう昔のことですので…オホホ…』



ティティアが泣いてる理由やっとわかった…

こいつパシリにされてたのに忘れられてんだ…



『こいつだよ。ティティア。お前がパシリにしてたやつ。』


おれがそう教えてやると、竹浜綾子は顔を引きつらせて固まってしまった。



『あ、あら…そうでしたの…覚えていなくてごめんあそばせ…オホホ…』

『でもわたくしの為にパシ…えっと、尽力してくださったことは貴方の望みでもあったのですわよね?』

『こんなアニキだの訳の分からないお方に阻害されて貴方も迷惑だったでしょう?』

『言ってやりなさい!あの時は自分が望んでわたくしの為に焼きそばパンを買いに行ったと!』

『この極悪非道悪鬼羅刹男に愚かさを思い知らせてやりなさい!!!!!!』




『…誰が……お前みたいなわがまま女のために好き好んで買いに行くかよ…』

ティティアは小声でボソッとそう言った。


そりゃそうだ。この世界では親も権力も金もリセットされてんだからな…



『キーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!』

『折角あなたがたのお力になって差し上げようと思ったのに!この恩知らず!!!』

『せいぜいこの世界で細々と生きるといいですわ!!』

『わたくしはもっと有能なクラスメイトを見つけて元の世界に帰る方法を見つけますわ!!!!』


竹浜綾子は顔を真っ赤にして早口でそうまくし立ててきた。

こいつ…プライド高すぎだろ…



竹浜綾子がおれたちの席から離れようとした時

後ろからグッと片手で止められた。



竹浜綾子の後ろにはかなり背の高めの女性が立っていた。



『まあまあ落ち着いて…せっかく仲間が見つかったんだ。仲良くしようよ。ね。』


ショートカットにホットパンツ。引き締まった体の女性はこう続ける。

『話は聞かせてもらったよ。アニキに、網中君に、竹浜さん。覚えてるよ。』

『あはは!姿が違うから全然懐かしくないな~~!変な感じ!』



『ボクは…この世界ではバニーニと名付けられているよ。』


『元の名前、普通に明かしちゃつまんないから、いつかボクが誰だか当ててほしいな。』


『よろしくね。』




そう。この同窓会には、もう一人クラスメイトが紛れ込んでいたんだ。


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