杞憂
「あー、終わった終わった」
「よーし、行くぞー」
「今日は遠出かあ、帰れるかなあ、、、」
、、などと部屋はザワザワとした喧騒に包まれている。
騎士団のミーティングが終わって、騎士達がぞろぞろと自分の持ち場に戻って行く。
ガレスベイル様も同様で、何か次の用事が差し迫っているかの様にスタスタスタ、と軽快な足取りでこの部屋を出て行こうとする。
と、
僕はガレスベイル様が部屋から出る直前、なんとかガレスベイル様を呼び止める事が出来た。
僕「あ、あの、ガレスベイル様」
という僕の声に
ガレスベイル「ん、なんだい?リオウ君?」
と、ガレスベイル様は僕の方を振り返り、そして親しみのある柔らかい声で僕の声に応えてくれた。
--------------------------------------------------------
ガレスベイル「ナナミかい?元気だよ」
ガレスベイル「第一夫人達からいじめられている?そんな事は無いと思うけど」
ガレスベイル「ふふ、一応確かめておくよ」
ガレスベイル「そうか、君はナナミの友人だったね」
ガレスベイル「心配してくれてありがとう」
ガレスベイル「今度ナナミに手紙を出すように言っておくよ」
ガレスベイル「用事はそれで終わりかい?じゃあ僕は行くよ」
スタスタスタスタ
と、僕の質問に丁寧に答えてくれたガレスベイル様は部屋を去って行く。
次の用事があったのか、その足は駆け足に近いものがあった。
(時間使わせてしまったか、、、)
僕は少し申し訳無い気持ちになりながらも、頭の中は、ナナミの事、に移行する。
僕「、、、、、、、、」
僕「、、、、、ナナミは、元気、、、か」
僕「、、それならそれで、、、」
僕「、、そっちの方が良いんだ。」
僕「、、、良かった。」
杞憂だった。
あんな夢を見たから。
ナナミが泣く所は殆ど見た事無かったから。
少し、びっくりしてしまったんだ。
ただ、それだけの事。
僕「、、、、、、、」
僕「、、、ただ」
(手紙、書いてくれるって言ってたけど)
(書いてくれるのかな、、、、)
ナナミとの文通は途絶えて久しい。
ナナミからの手紙がまた届くかもという期待と、やっぱり来ないんじゃないかという不安と
それが交互にやってきて、
僕はその期待と不安に一喜一憂しながら僕の仕事の持ち場へ歩いて行くのだった。
僕はその時気がつかなかったけれど、僕とガレスベイル様のやり取りを見ていた人が居た。
それは女性騎士サーシャ先輩、だった、、、。
サーシャ「、、、、、、」
サーシャ先輩は何かを考えるように、
皆と同様、自分の仕事の持ち場へゆっくりと歩いて行くのだった、、、。
--------------------------------------------------------
仕事が終わって。
僕は城と城下町の境界である門の前で待ちぼうけしていた。
それはサーシャ先輩から
「門の所で待っていろ」
と、命令されたからだ。
(命令であってデートの誘いじゃ無かったな)
僕は傍若無人な先輩と一緒にいるのは嫌いじゃ無かったから、少し楽しみな気持ちで待っていた。
(僕はこういう人がタイプなんだろうか、、、)
ナナミといい、サーシャ先輩といい似通っている部分がある。
(怒りっぽくて、行動力があって、正義感があって、優しい人、、、)
(でも僕に何かと被害を及ぼす人)
僕は一人で苦笑していた。
と、
そこへ
サーシャ「待たせたな」
という短い言葉と共に先輩が颯爽とやって来た、、、